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魅惑な媚薬(後)

予想以上だった。
まさかあかねがこんなに素直になってしまうとは…


「あんな飴玉食わすんじゃなかった」
俺は猛烈に後悔していた。
だけど。そんな俺の葛藤などお構いなしのあかねは、にこにこ笑いながら俺の隣に座っている。
そう、なぜか広い部屋の中、密着して。
俺はそんなあかねの横顔を盗み見てみた。


にこにことテレビをみている、あかね。
時折口を潤すお茶のせいで、唇がやけに潤って見える。
潤って。
うるお…

(だー!いかん、いかん。俺はなんで唇ばっかに目が行くんだ!)
俺が真っ赤な顔をしながら首を振っていると、
「乱馬…どうしたの?」
あかねが俺の顔を覗きこんできた。

…このまま顔を近付けたら、いとも簡単にその唇を…

(うわーッ、俺って奴はッ俺って奴は!)
「な、なんでもありませんッ」
…やっぱり何故か敬語の俺は、そう言って慌ててあかねから目を反らして立ち上がった。
そして少し顔を冷やそうと居間から出て廊下の窓をあけると…
「!」
俺ははっと息を飲んだ。
「…」
何と、窓をあけたその庭先には…俺にあの妙な飴玉を売り付け姿を消した老人がにこにこした顔で立っていた。
「あのじじいッ」
俺は急いで庭先へ飛び降りると、
「乱馬?どうしたの?」
そんな俺を不思議そうにみているあかねから見えない場所へ、俺はその老人をひっぱった。
そして、
「おい、じいさん!あの飴、解毒剤はねえのか!」
さっそく俺が老人に詰め寄ると、
「そんなもんはないわい。それに、おぬしが望んだことがちゃんと女子に反映されてる見たいだし良いではないか」
老人は懲りた様子もなくからからと笑っている。
「良くねぇッあんなあかねとあと二時間近く二人っきりになってられるわけねーだろッ」
「不粋な男じゃのぅ。昔から良く言うではないか、据え膳食わぬは男の恥と」
「んなこと言ってる場合かーッ」
俺がその老人に掴み掛かろうとすると、老人はひらりと身を躱し、
「ならば…しかたないのう。では特別に…」
そう言って、俺の方を見た。
「お主。フルのとその逆と…どっちが良い?」
「え?」
「いいから。どっちじゃ?」
「じゃ、じゃあフルほうか…な」
老人の迫力に負けて俺がとっさにそう答えると、
「ふむ…フル方じゃな」
老人はにやっと笑って、パチン…俺の目の前で指を鳴らした。
「?」
俺が首をかしげていると、
「お主のワガママどおり、ちと変えておいたぞ。飴の効力を、『雨』に変えてやったわい」
「雨?」
「そうじゃ。フル方が良いと言っていたのからのう」
「飴が雨?」
「そうじゃ。お主が望んだ願いの効力を無理に変えたんじゃ。そのうちお主に雨が降る。それで女子に食べさせた飴の効力はチャラ。もったいないのう」
老人はそう言ってにやりと笑うと、俺から離れて歩いていってしまった。
「え、ちょっと…」
話の途中にも関わらず去り行く老人に、
「あ、待ちやがれ!」
俺は慌ててその老人を追って走りだしたが、
「!」
歩きだしてすぐに追い掛けたのもわからず、その老人はまた…消えてしまった。
「…消えた…」
(一体何なんだよ、あのじいさん…)
一度ならず二度までも老人の姿を見失った俺が憤然としていると、
「乱馬ー…」
そんな俺の元へ、俺を探しにきたのか、家の中からあかねがトコトコと出てきた。
「どうしたの?誰か…いたの?」
不安そうな顔をするあかねに、
「何もいねえよ、別に」
俺はそう言って安心させて家の中まで連れ帰った。
…と。
俺たちが家の中へ入ったのと同時に、ポツ…ポツ…と窓ガラスを叩く音がしたかと思うと、
ザー…ザー…
あっという間にそんな音が窓ガラス越しに聞こえるようになった。
「雨…?」
窓の外を見てみると、まるでバケツを引っ繰り返したような雨が、突如、夜の闇の中その姿を現していた。
「今日は、星が見れますなんてニュースで言ってたのに…」
雨戸を閉める隙に部屋の中へと入り込んでくるヒンヤリとした風に顔をしかめながら、あかねがそんな事を呟いていた。
「そうだな…」
…だけど俺は。
そんなあかねに答えつつも、内心はほっとしていた。
(あのじいさんの言った通り、雨が降りやがった…てことは、あの飴の効力はこれで無効になったってことだよな)
「あー…よかった…」
俺は思わずほっとした気持ちを口に出し、そしてゴロン…と居間の畳の上へと寝転んだ。
(普通のあかねとならテレビ見たり話したりしてれば二時間くらいは…)
飴の効力も消えたし…と、俺はそんな安易な考えをしていた。

二時間くらいなら何とかあかねと二人っきりでも普通に過ごせる。
いつもの事だし…。

(あー、良かった…)
俺は、そんな事をぼんやりと考えていた。
…が。
「ねぇ、乱馬」
「ん?」
「膝枕してあげようか?」
…あかねのその一言で、俺はふたたびパニックに陥ってしまった。
「なっ…なんでッ」
思わず俺が声を裏返して叫ぶと、
「なんでって…ただなんとなく…」
あかねは、「何でそんなに驚くの?」といわんばかりの顔で逆に俺に問う。
「い、いや…その…あまりにも突然だったからその…」
俺がオロオロとしながらあかねをみると、
「せっかく二人なんだし…昼間は喧嘩しちゃったし、改めて仲直りするつもりで…ね?」
あかねはそんなことを言いながら俺に膝でにじり寄ってきた。
「あ、あの…」
ゴスッ…
俺は慌てて起き上がった拍子に机の角に頭をぶつけてしまった。
「ら、乱馬、大丈夫!?」
「…」
俺はぶつけた場所を手で押さえながら黙って頷く。
…そんな俺は一見落ち着いてみえても実は内心、大混乱だ。
(あのじじいッ雨は降っても飴の力は消えてねえじゃねえかッ)
そんな思いと、
(据え膳食わぬは男の恥!か…)
何だかやけに物分かりがいい思いが、俺の中を縦横無人に交差する。

どうする?
どうしたらいい?

「…」
俺がテーブルでぶつけた額を押さえてぼーっとしていると、
「乱馬…大丈夫?」
ぼーっとしている俺を気遣ったあかねが、額に添えている俺の手をそっと退かした。
そして、
「やだ、赤くなってるよ。ぶつけた所」
「そ、そうかな…」
「じゃあ、すぐ良くなるおまじないしてあげるね」
そういうと不意に…潤ったその唇を俺の額の赤く晴れた場所へと…付けた。
「!」
…あかねのその行動が、俺の中の何かを呼び起こしてしまった。


飴の力が消えてようがなかろうが、飴が雨になろうがなるまいが …もう関係ない。
何だかそんなの、もうどうでも良いや。


「…」
俺は、俺の額にキスをしたあかねの背中に、ぎこちない手つきで腕をまわしてみた。
耳をすませば、ぎっ…ぎっ…とそんな機械音が聞こえてきそうな勢いだ。
「乱馬?」
あかねがそんな俺を、笑顔で見つめる。
「瞼…」
「え?」
「瞼と頬も、テーブルでぶつけた」
俺はとうとう自分を押さえ込む事が出来なくて、そんな事をあかねに囁いた。
俺は、明らかなウソをついた。
「もう、そそっかいいんだから…」
するとあかねは、
俺が明らかにウソをついているとわかってるにも関わらず、そう言いながら、俺の言った通りに瞼、両頬…次々とキスの「雨」を降らせた。
(雨…ここでも降りやがった…)
次々と自分の顔にふる甘い媚薬のような雨を感じながら、俺はぼんやりとそんな事を考える。
『フルのとその逆と、どっちがいい?』
…老人は確かそう言ってたっけ。
あの時俺は「フル方が…」何て答えたけれど…
あれって、外に降ってるどしゃぶりの「雨」の事じゃなくて、今のこの状況のように別の「雨」が顔面にフルってことだったのかな。
…逆でも良かったかな。俺は心から思った。
(逆だったらきっと、俺は今頃とっくにあかねを…)
俺がそんな邪なことを考えていると、
「もう、平気そうね」
俺の両頬にキスしてくれたあかねがそう言って、俺から離れようとした。
「あ…」
「え?」
でも俺は、ぎこちなく回したその背中の手を決して離そうとはしなかった。
「乱馬?」
「唇…」
「え?」
「唇もぶつけた…」
「…」
俺のその言葉にあかねは少し顔を赤くしていた。
(…やっぱこれはだめ、だよなあ…)
俺もちょっと赤くなりながらあかねを見ると、
「…もう。乱馬はドジなんだから」
あかねはそういって、俺の唇にそっと指で触れた。
「ここ?」
そう尋ねるあかねに、
「うん…」
俺は自分でもびっくりするくらい素直に答えていた。
そして、あかねがそんな俺に、恥ずかしそうな顔で一度頷くと、そっと顔を近付けてきた。


…もしも。
もしもこれ以上、俺にこんな「雨」が降ったなら。
そんな俺に降る「雨」を、土砂降り、いや暴風雨ぐらいにして、俺はあかねに降らせ返す自信がある。


妙な自信が俺の中に生まれていた。
「…」
…そんな事を思っているうちにあかねとの距離が徐々に近付いて、
いよいよその唇が、かすかに触れた?触れない?
そして、俺の理性が消える?消えない?
…のその瞬間。


「あー、ひどい雨だったわねぇ」
ガラガラッ…
そんな声と共に玄関が一気に騒がしくなった。
(はあ!?)
俺が慌ててあかねから離れて玄関の方を覗くと、
「いやあ、ひどい雨だったなぁ」
「お風呂入りたいわねーッ沸いてるかしら」
…そんなことを言いながら出掛けていたオヤジ達が帰ってきてしまった。
「ああああ…」
なんつータイミング、と俺ががっくりと肩を落とすと、
「ただいまー、二人とも」
「帰ったぞー」
みんながドヤドヤと居間に入ってきた。
そして、あげくの果てに、
「ほれ、乱馬よ。お土産だぞい」
ご機嫌な様子のオヤジが、落ち込んでる俺の頭の上からバラバラ…といくつもの飴玉の包みを降らせた。

「…なんだ、コレは」
頭から降ってきた飴を握り締めわなわな震える俺に、

「雨宿りで立ち寄った駄菓子やで買ったんだか…わはは、飴の雨が降ったみたいだのう、乱馬よ」
「うまい!早乙女くん!」
オヤジそしてオジサンはそんな事を言いながら陽気に笑っていた。
(何が飴の「雨」だよちきしょうッ)
俺は、やり場のないむなしさとお預けくった切なさをどこにぶつけたらいいかわからず結局、
「食ってやるーッ」
そう叫びながらがむしゃらに俺の頭に降った飴を口に詰め込んだ。


そんな俺の様子を隣であかねがおかしそうに見ているみたいだったけれど、
俺やみんなと別れて一人部屋に戻ろうとした立ち上がり際、妙なことをぼそっと呟いたのが聞こえた。

「あのおじいさん、タイミング良すぎよね」
「え?」
俺がその言葉に反応して立ち上がったあかねを見上げると、
「…秘密」
あかねはいたずらっこのような笑顔でこっそりと俺にウインクしてみせ、
「さーて、今日はもう寝ようかなーッあー、楽しかった」
そんなことを言いながらさっさと自分の部屋へと戻って行ってしまった。
「?!」
…もちろん、そんな台詞を聞いてしまった俺は気になって仕方がない。
しかも、「あのおじいさん」とは…?
(まさか…俺があのじいさんに会う前にあかねも会っていた…?)
そして「楽しかった」とは…もしや、
(あかねの奴、そういや俺が渡した飴を口にいれてすぐ俺から離れたっけ…まさか飴の事を知ってて、それでわざと食わずに俺の反応を…)

「くっ…」

俺は、自分があかねとあの不思議な老人に騙されてたかと思うと、何だか急にふつふつと怒りというか何というか、押さえきれない感情が沸き上がってきた。
(あかねの奴ー!)
…こうなったら、絶対にさっきの続きをしねぇと俺の気持ちがおさまらねえ!
「ふ…ふふふ…」
俺は不敵な笑いを浮かべながら床に散らばっている飴をさっと広い集め、居間を飛び出しあかねの部屋へ向かった。
…もちろん、
「今度は俺がアメを降らしてやるッ」
と、力いっぱいにそう叫びながら。


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