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シャンプー

ある日の、お昼休み。
食後の歯磨きも終えてあかね達が教室へと戻ってくると、あかねの隣…つまり乱馬の席で、クラスメートのひろし・大介と共に乱馬が何かを夢中になって話しこんでいた。
「あんた達、午後の授業始まるわよ」
あかねや友人のさゆりが乱馬達に声をかけるも、
「だろ?やっぱそーだよな」
「えーッ俺は違うよ」
ひろしや大介は全くそれにも気がつかず話し込んでいる。
(男の子って子供ねえ…)
あかねは半ばため息をつきながらも、自分の席に着いた。

…と。

「なあ、乱馬。お前はどう思う?」
ひろしが不意に、乱馬に話題を振った。
「え?どうって…そんなの決まってんだろ」
「どっちだよ?」
「…シャンプー」
乱馬は、はっきりとした口調でひろしと大介に言ってのけた。
「だろ!?やっぱそーだよな!?やっぱシャンプーだよな」
そんな乱馬の答えを受けて、ひろしは嬉しそうに叫んだ。
「何だよ乱馬。お前体質は変わってても一般的な男子諸君と同じ感覚なんだなあ」
「どういう意味だよ、大介」
「俺、コロンの方がいいって言うと思ったんだけどなあ…」
大介はそう言って、ちらっと…自分達のほうを見ているあかねへと目をやった。
「…」
あかねは、何だか分からないけれど、慌てて大介の目線から逃れる。
すると、
「関係ねーだろ。俺はシャンプーの方が好きなの」
そんな大介に乱馬は再びきっぱりとそう言い切った。
「ふーん」
大介が納得したようなしないような…そんな返事をしたちょうどそこに、午後の授業の予鈴が鳴った。
「おッやべーやべー。次数学じゃん。俺、予習してねーんだわ」
「俺もだッ」
ひろしや大介はオタオタと自分達の席へと戻っていった。
「…」
あかねは、そんなひろしたちの姿を眼で追った後、ゆっくりと乱馬のほうを見た。
「あー、授業が始まる前から眠い…」
乱馬は、そんなことを言いながら既に机に突っ伏していた。
「…」
あかねは、そんな乱馬を見ている自分の心が実はドキドキと激しく鼓動をしている事に気がついてしまった。

「俺はシャンプーが好きなの」
…乱馬は確かにそう言った。

あかねは、机に突っ伏して眠り込もうとしている乱馬の横顔を見ながら、色んな事をグルグルと考えてしまっていた。
何だろう。
何の話してたんだろう?
何で「シャンプーが好き」何て言ってるんだろう…。
「…」
前後の話を聞いていないから、どういう展開で乱馬がそんなことを言い出したかは分からないけど、
「俺はシャンプーが好きなの」
乱馬のそんなはっきりした言葉が、あかねの耳からは離れなかった。

 

「…」
「なあ、何怒ってんだよ。何で何も喋んねえんだよ?」
…なので。
放課後になって、いつものように一緒に家へと歩いていてもあかねは一言も乱馬と話せないでいた。
昼休みの会話の事が気になって仕方なかったのだけれど、変に口を出して、「だから、俺はシャンプーが好きなんだ」…そんなことをまたはっきり言われたらたまんないと、内心思っていたからというのもあるが。
「あかねってば」
…もちろん、そんなあかねの心のうちなど知らない乱馬は、あかねの周りをちょろちょろと動き回りながらあかねの沈んだ顔を覗き込む。
「あかね」
「…」
「なあ、どうしたんだよ?」
そして。
もうすぐ家まで着こうという、そんな場所で。
学校からその場所まで一言も喋らないあかねの肩をガシッと掴んだ乱馬が、強引にあかねを近くの路地まで引っ張っていった。
そして、
「やっぱ、気になる」
そう言って、何も言わないで沈んだ表情をしているあかねをぎゅっと抱きしめた。
「ちょッ…誰かに見られたらッ…」
ここ、うちのすぐ近くなんだからッ…とあかねがその腕の中でジタバタと暴れると、
「じゃあ、何で怒ってんのか教えてくれよ。教えてくれるまで離さない」
乱馬はそんなことを言ってあかねを腕で捕獲している。
「何でって別にあたしはッ…」
「嘘つけ。昼休み過ぎた辺りからなんかおかしいぞ、お前」
「…」
あかねはその言葉に、ドキッとした。
授業中ずっと寝てたくせに、
しかもあかねが何も話さないのにもかかわらず、乱馬はあかねの様子がおかしいのがいつからか、ちゃんと分かっているようだった。
「…」

あかねは、そんな風に自分を気遣う乱馬の顔をじっと見上げた。
そして、
「シャンプー…」
ボソッと一言呟いた。
「シャンプー?」
乱馬は、そんなあかねの言葉に首をかしげている。
「シャンプーが好きだって…言ってたじゃない」
あかねは、そんな乱馬にもう一度そう呟いた。
「シャンプーが好き?」
乱馬は、あかねのその言葉を怪訝そうな顔で聞いていた。
そして、しばらく考え込んだ後…
「…ばーか」
ニヤニヤ笑いながら、沈んだ表情のあかねの額を指でビシッ…と弾いた。
「痛ッ…な、何すんのよッ」
あかねが額を抑えてカッと言い返すと、
「バカはバカだろ」
乱馬はそう言って、自分が指で弾いたあかねの額にそっと唇で触れた。
そして、
「シャンプーってさ。シャンプーだけどシャンプーじゃねえぞ?」
そう言うと、きょとんとしているあかねの顔を見てニヤッと笑った。
「はあ?何を言ってるの?」
あかねが何が何だかわからないといった表情で乱馬を見ると、
「だから。ひろしがな…」
乱馬は、きょとっとしているあかねに昼休みの教室での会話の事を話して聞かせた。
「ひろしがさ。どっちの方が好みだって言うから…」
「…」
「あ、好みって、人じゃねえぞ?香り、な?シャンプーの匂いか、コロンの匂いか。大介はコロンの匂いが好きだって言ってたけど…俺はシャンプーの匂いの方が…」
乱馬はそう言って、不意にあかねの頭を自分の方に抱き寄せた。
「シャンプーの匂いって言うか…俺はあかねの匂いが好きなんだけど」
「…」
あかねは、ちょっと頬を赤らめながら乱馬のほうを黙って見上げた。
「だから。シャンプーはシャンプーでも、シャンプーじゃねえんだよ。当たり前だろ」
乱馬も、ちょっとばつが悪そうな照れた表情であかねを見ていた。
「…何よ。紛らわしいのよ」
自分が大きな勘違いをしていた事が分かり、取り合えずホッと胸をなでおろしたいあかねだったが、
冷静に考えると勘違いをしていた事がめちゃくちゃ恥かしくなってしまい、思わずそんな悪態が口を出てくる。
「その場で俺に聞かないから勝手に誤解するんだろ」
乱馬もそれは分かっていても、やっぱり素直じゃないあかねが何だかおかしくて、わざとからかうような口調でそう言い返す。
「聞かなくても分かるように話すればいいでしょッ」
「無茶苦茶言うなよ。じゃあ何か?好的香味洗髪液とでも言えというのか」
「うう…」
あかねの反撃に乱馬も負けじと応戦する。
結局、
「勝手に早とちりしてやきもち焼くなよなー」
何をどう反撃しても、
あかねが勝手に勘違いをして「シャンプー」にやきもちを焼いていた事実は消せないので、乱馬がそれに対して妙に嬉しそうに笑っていた。
「ったく。余計な心配すんじゃねえよ」
そして、
「さ、そろそろ帰ろう。誤解も解けたし、あかねの気持ちも分かったし…」
嬉しそうにそう言って、あかねの手をぎゅっと強く握った。
「…」
あかねは、そっぽを向いて膨れつつ、乱馬の握ってきたその手を握り返した。
「素直じゃねえなあ。もう。誤解が解けてよかっただろー?」
「誤解は解けても、解けたら解けたで恥かしいじゃない」
「そうか?俺は全然恥かしくないけど」
「そりゃあんたはそうでしょうよッ」
二人は、そんな会話を交わしながら路地を抜けて、再び家へと歩きだした。
…そんな二人の横を、ふわっ…とした春の暖かい風が通り抜けた。
「…ほら、この匂いだ」
その風によって、フワリとなびくあかねの短い髪から香るシャンプーの匂いに乱馬がそう反応した。
「俺は、この匂いが好きなんだよな」
乱馬はそう言うと、風が通り抜けていく方向に目をやっていた。
「…ばーか」
あかねはそんな乱馬を、思わず笑顔になって見つめていた。
そして、
「そんなに好きなら、いつだって味わわせてあげるわよ…」
小さな声でそう呟くと、繋いでいる手をぐっと手繰り寄せて乱馬の腕へと抱きついた。
「もちろん、そのつもり」
乱馬はそんなあかねの頭をぐっと抱き寄せると、チュッ…とその頭にキスをした。

 

そんな二人の傍をまた、春の風がフワリと通り抜けた。
二人の身体はそんな風に纏われて、今同じ匂いに包まれていた。


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