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裸の付き合い

ある日の放課後のこと。
いつも元気な印象のあるクラスメートが、ベランダから外を眺め何度もため息をついているような姿を、あたしは目撃した。
「…」
その子とは、特別に仲が良いわけではない。
でも、いつも元気な子が落ち込んでいたり元気が無かったりすると、特に目に付くというか何というか。
「ね、どうしたの?元気、ないね」
ちょうど今日は、居眠りのせいで先生に怒られて、別クラスで補習をしている乱馬を待っている為に時間もある。
八割のクラスメート思いな心と、二割の好奇心。
そしてホンのちょっとは時間つぶし…も兼ねて、あたしはその子に思い切って話し掛けてみた。
すると、
「うん…実は彼のことなんだけど」
彼女はちらっとあたしの顔を見て、小さくため息をついた。
そして、
「うちの彼ね、バスケ部なんだけど…」
「うん」
「部活であった事とかは勿論なんだけど、あんまり自分の事、話してくれないの」
と、ポツリポツリとあたしに悩みを打ち明けた。
…聞くところによると、彼はバスケ部のエース。
彼女はマネージャーをしているわけでもなく、バスケの事もそれほど詳しくない。
でも、大好きな彼とせめてバスケの話題を少しは交わしたい!…と決意し一生懸命バスケの勉強をしたらしい。
が、せっかくバスケの話題を振っても、彼は話題に乗ってこない。
その上。
もう付き合って三ヶ月くらいになるのに、彼女は彼の好きなアーティストや好きな食べ物、さらには趣味も…詳しく知らないそうだ。
家に遊びに行きたい、というと「うーん」とか何とか、話をはぐらかす。
家庭構成とかも、聞けば答えてくれるけど、聞いた以上の事は答えてくれないらしい。

「だから、何だかあたしも自分の事を話すのとか、遠慮するようになっちゃって…。彼と話をするとき、何かね、すごく気を使うの…」
「そう…」
「あたし達、何で付き合ってるんだろうって、時々不安になるの…でも、彼がそう言うスタンスを取りたいなら、そう言うスタンスでいるべきなのかなあ…」
寂しいけれど。彼女はそう言って、大きなため息をついていた。
「…付き合うスタンスが違うのならば、別れるっていう選択肢もあるけど、でも別れたくないんだよね?」
あたしが落ち込む彼女の横に並びながらそう尋ねると、
「うん…だって、何ヶ月も片思いで、勇気を出して告白して、やっと付き合うことが出来たのに…」
それは嫌だと、少し目を潤ませていた。
あたしは彼女の肩をぽん、と優しく叩くと、
「だったら…ちゃんと彼と話し合うべきだよ」
「でも…」
「裸の付き合いって言うか、心を裸にしてさ、二人のことなんだから二人で話なよ」
「あかね…」
「第一、そんな風に不安を抱えて付き合っていたって、楽しくないしいつか、潰れちゃうよ?他の誰でもいいわけじゃないんだよ?付き合ってるってことは。好きだから付き合ってるんでしょ?だったら素直に気持ち、ぶつけてみなよ」
寂しいものは、寂しいでしょ…あたしが彼女にそう囁くと、彼女は「うん」と頷いた。
そして、
「ありがとう、あかね。あたし、彼にちゃんと話してみるね」
「それが良いよ」
「それじゃあね!話、聞いてくれてありがとう!」
彼女は、先ほどとは打ってかわったような明るい笑顔で去っていった。
あたしはそんな彼女に笑顔で手を振りながら、彼女が抱えていた問題を自分達に当てはめて考えてみる。

 

…あたしと乱馬は、凄く恵まれている事に一緒の家に住んでいる。
そりゃ、最初は乱馬もお母さんの事とかはあたしに話さなかった。
ま、それは本人も小さい頃に別れたきりだったし、よく知らなかったというのもあるんだけど、
でも乱馬は比較的あたしに何でも話してくれるほうだ。
更には、あたしが何かを秘密にしようとしていると、何とかしてそれを聞き出そうとしたりする、乱馬。
だから、あたし達の間には故意に隠そうとしている「秘密」めいたものは、ない。あえてあるとすれば、あたしの体重くらいだろうか。
おかげであたしには、乱馬の何かを知らなくて不安に思うこととか、付き合い方のスタンスとか気持ちのぶつけ方が違うから寂しいとか、そう言う悩みは感じる事が無い。
そりゃ時々は、気持ちが見えなかったり伝わらなかったりして喧嘩したりはするけれど、
それでもそう言うときは、ちゃんとお互い思っていることをぶつけ合って、そう言う問題を乗り越えて来た。
そうね、悩むとすれば、ほぼ毎晩夜這いのように乱馬が部屋に潜り込んでくるのを、どうにか撃退してやりたい…くらいだろうか。何とも平和な悩みだ。
そう考えると、あたしと乱馬はちゃんと「心が裸の付き合い」が出来ているって事、なのか。あたしは、そんな結論に達した。
悩みとか、些細な事とか、例えば「寂しい」とか。
そう言うのを遠慮せず、気兼ねしないで相手に訴える事が出来るって、本当はすごく、すごく幸せな事なんだなあ…

「…」
あたしにとって、付き合う相手が乱馬で良かったな。あたしはふと、そんなことを思った。
…たまにナルシストだし意地っ張りだし粗忽だし、鈍感でスケベで手を焼く時はあるけれど、
でもあたしだって持っている、色々なマイナスで足りない部分を、
あたしが乱馬を受け入れるように、乱馬も何だかんだいって全部、そんな部分を受け止めてくれているんだよね。
自分が、飾らないでいられる相手って言うのかな・・・そんな相手に出会えることなんて、
この地球上の何億人の中でちゃんと出会えるかどうか、分らないこと。それがこんな身近で出会えた事なんて、天文学的数字並みの奇跡だ。
いくら出会い方が最悪でも、時がたって今のように付き合うことが出来てお互いを思いあうことが出来たって事、本当に凄い確率なんだよなあ。
「…」
あたしはそんなことを思いながら一人、頷いていた。
…そう言えば、「男」の乱馬と出会ったのは、お風呂場だったっけ。
二人とも、一糸纏わぬ姿であっけにとられて。例え、後にそれが彼氏となる人だったとその時にわかっていたとしても、かなり強烈な出会いだった事には変らない。
今思って、あれは本当に強烈な出会い方だった。あたしは思わず苦笑いだ。
…あの時のあたしは、はものすごく心に壁を持っていた。
それに加えて、乱馬と最低最悪な出会い方をした。だから、 「こんな男、誰が認めるものですか!」って、心を許すどころか乱馬の存在さえも否定しようとしていたんだっけ。
ただでさえあたしは、
「男の子なんて大嫌い」
「男の子なんかに負けたくない」
そんな一心でいつも気を張っていたし、その反面で東風先生に叶わない恋心を抱いていたり…自分の心の中を何重にも硬い鎧で雁字搦めにして生きていた。
そんなあたしが、だ。
今では、勿論自分でも身を守るけど、乱馬にものすごく大切に守られて、そしてとっても頼りにして信頼してるんだもの。心が裸になると、こんな風になることも出来るんだと、不思議でしょうがない。

「…」
時の流れは、不思議。
でも、その時の流れにほだされて「心を裸にした付き合い」が出来るようになった自分のほうが、もっと不思議。
「乱馬で、よかったな…」
何だかんだあったけど、出会えた事に感謝する。
…さっきの彼女には悪いけれど、あたしはボソッとそんなことを呟いていた。
と、その時だった。
「わりーわりー。終わったぞ」
廊下の向こう側から、補習で数学の数式を頭に詰め込まれたせいか、若干フラフラとした足取りの乱馬が、あたしの元にやって来た。
「お疲れ様。じゃ、帰ろ?」
あたしがそんな乱馬にさっと寄り添ってその腕を取ると、
「な、何だよ。急に」
乱馬はささっと辺りを見回してほかに人がいないかどうかを確認した。
「何よ、嫌なの?」
「べ、別にそんなこと言ってねえだろ」
「じゃあ良いじゃない」
あたしが口を尖らせながら乱馬にそう言うと、
「いいけど・・・珍しいなあと思って」
乱馬は小さく笑いながらそう言うと、あたしが取っている腕をそっと緩く曲げて、そのまま手をポケットに突っ込んだ。
そうすると、あたし達が腕を組んでいるような状態になるからだ。
あたしはそのままきゅっと自分の身体をその腕に寄り添わせると、
「あのね、良かったなって思って」
「何が?」
「んー…?付き合う相手が、乱馬で」
乱馬と二人、そんな話をしながらゆっくりと学校を出た。
…例の彼女の話を詳しく乱馬に教える事は出来ないけれど、あたしは無理の無いスタンスで付き合えることがどれだけ幸せなのか、乱馬に話した。
「乱馬、無理してる?」
「してねよ」
「ホント?」
「ホント」
乱馬はそう答えながら、隣にくっ付いて歩いているあたしの頭に自分の頭を少し傾けるようにして、そう呟いた。
そして、
「ねえねえ、あたし達は裸の付き合いが出来てるって事よね?」
笑顔でそう言うあたしに対し、
「裸の付き合い…上手い事を言うなあ」
乱馬もうんうん、と妙に嬉しそうな笑顔で、頷いている。
「あたし達、これからもそう言う付き合い方しようね」
「ああ。これからもずっとな」
「ずっと、裸でいようね」
「ああ、裸の付き合いな」
乱馬があまりにも嬉しそうにそう言うので、あたしは若干何かが引っ掛かりつつも、それでも「心が裸の付き合い」をお互いこれからも出来るという事が嬉しい。
「…」
自分に無理しないスタンスで、
最低限の事は気を使ったりはするけれど、無理したり我慢したりしない、遠慮の無い付き合いが出来る相手に出会えて、あたしは本当に良かった。
そして、それを乱馬もそう感じてくれているというその事実が、あたしには嬉しくて仕方が無かった。

ただ---

その日の、深夜。
「あ!ちょっと何よ!何で入って…て、何であんた服を脱いでんの!?」
「何でって、だって俺たち裸で付き合う仲だろ?それに、風呂に入るのに服を着てどうする」
「裸の付き合いって、そう言う意味じゃないでしょ!出て来なさいよっ」
「ダメだよ、もう服脱いじゃったし」
「もう一度着れば良いじゃないのっ…ちょ、ちょっと!」
皆が寝静まった頃、少し遅めの風呂に入ろうとあたしが浴室に入ったところで、タイミングを見計らっていたらしい乱馬が、急に風呂場に忍び込んできた。
あげく、
「あ、脱衣所のドア、鍵かけといたから」
「頼んでないんですけどっ」
「ほら、あんまり大声出すと聞こえるだろーが」
勝手に風呂場に忍び込んできた挙げ句に偉そうな乱馬は、そんなことを言いながら浴室の内側にも鍵をかけた。
カチャン…と乾いた音が浴室に響く。
どうやらこの男、「裸の付き合い」の意味をかなり都合よく解釈していたらしい。
昼間話をしていた時の妙に嬉しそうな笑顔が、ようやくあたしにも理解できた。
「くっ…」
あたしがさっとタオルで身体を隠しながらジリジリと浴室内をあとずさると、
「これからもずっと裸の付き合いをしたいといわれれば、言われたままに従うのが俺の優しさだ」
「知らないわよ、そんな優しさっ」
「心も身体も裸で付き合えるなんて、幸せだよなあ」
うんうん…と、乱馬はそんなことを言いながら、あっという間にあたしを掴まえると、
「俺たちずっと、裸で付き合えるように頑張ろうなっ。なっ?」
「あんたって人は…」
「身体も裸になることで、心も心置きなく裸になれると言うことだ」
俺っていい事言うなあ・・・乱馬はそんな風に一人納得をし、あたしに腕を回しては体を擦り寄らせる。
「…」
…あーあ、だめだこりゃ。
「裸の付き合い」って言葉、
あたしが考えているのよりももっとこう、複雑というか何というか、色んな意味を乱馬は考えていたわけね。
「心を裸にして付き合うことが出来る」なんて、そんなちょっといい話、この男には無効だったって事だわ。
「心五割体五割」というよりも、「体十割、付随して心」みたいに感じるのはきっと気のせいじゃないだろうに。

ああ、ちゃんと「心が裸の付き合いっていいわ」と、言わなかったあたしの責任だわ。あたしは、心の中でこっそりとため息をついた。
「…」
全く、心を裸にするからってその度に身体まで裸にされたら堪らない。

「…皆、ちゃんと寝てるんでしょうね?」
「大丈夫だって!俺、二階以外の全部屋回って確かめてきたからっ」
「…何でそんなことだけ用意周到なの」
偉そうにそんなことを言っては嬉しそうに笑う乱馬のミゾオチを、あたしは拳で殴ってやった。
そして、
「…明日からは、心以外は裸の付き合いするの、やめようかなあ」
「それは無理だ」
「何で無理なの」
「あのな?あかね。心と体は連動しているんだぞ?いいか、スポーツ医学的にはだなあ…」
「あんたが言うと、何もかもが胡散臭いのよ」
だいたい、医学書開いたら眠くなるくせにっ…と、あたしが顎に一発拳を食らわせてやると、
「いてっ」
乱馬は「ばれたか」とばかりに一瞬舌を出しておどけて見せるも、 それでも懲りずに嬉しそうにあたしに抱きつき、そこから離れる様子はない。
「あーあ…ちょっといい話も、狼少年にかかれば台無しね」
あたしは大きなため息をつきながら嫌味を一つ言ってやるも、観念してゆっくりと、乱馬の背中へと腕を回したのだった。




…裸の付き合い一つでも、心と身体じゃ大違い。


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