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その後の記念写真

「それじゃ、そろそろ撮るぞー…あ、こら乱馬!おらのシャンプーにそれ以上近づくでないっ」
「ち、近づいてんのはシャンプーの方だろうが!良く見やがれ、このド近眼!」
「あいやー、ムースはうるさいね。乱馬、もっと私のほうに近づくよろしっ」

 

…それは、「たまたまカメラのフィルムが余ったのよ」、と、あかねが乱馬に話し掛けた事から事は始まった。
「それじゃあ、何か撮るか」
「うん。何かいいシャッターチャンスないかしら」
「なびきじゃあるまいし」
初めはそんなことを言ってあれこれと被写体を捜していたあかね達だったが、
「…俺と、撮る?」
「…うん」
と。その内、そんな流れになって。
「も、もっとくっつかないとフレームに入りきれないだろ」
「う、うん…」
広い道場の真ん中で、あかねと乱馬はそんな事を言いながらお互い身を寄せ合って、カメラを構えていた。
中国・呪泉洞の戦いから帰ってきて、数週間後のある日の昼下がりのことだった。
「…」
隣にただ並んでいるだけじゃなくて、
頬を寄せ合うようにして立たないと、カメラのフレームからは外れてしまう。
ちょっと耳を澄ませば、お互いの呼吸。
ふわりとした息が、耳元にかかりくすぐったい。
「じゃ、撮るぞ」
…そう言った瞬間、乱馬があかねの越しに腕を回して、ぐっと近寄せた。
「きゃっ…」
あかねそれと同時に、乱馬の身体へと吸い寄せられ、ベタっとくっついてしまう。
ふと、触れた乱馬の胸からは、驚くぐらい大きな音で、ドクン、ドクンと音が聞こえた。
あかねがそれに驚いて乱馬の顔を見上げると、
「な、何だよ」
乱馬は、真っ赤な顔であかねを見下ろす。
「…緊張するね」
あかねがそう言って笑うと、
「…そうだな」
乱馬も、ばつが悪そうに笑った。
そして、
「さ、ほら撮るぞ」
「うん」
二人はぎこちなくお互い笑った後、気を取り直してもう一度カメラのレンズの方を向いたが…

 

「あいやー!乱馬、何してるかっ」
「乱馬、貴様っあかねさんに対して馴れ馴れしいっ」
「シャンプー!乱馬なんてほっておいておらとデートするだっ」
「『邪魔しちゃダメだってば。』

 

ようやくシャッターを押そうとしたその瞬間。
どうしたらこんなタイミングで邪魔を出来るのか、不思議なくらいの絶妙なタイミングで、
シャンプー・良牙・ムース、そしてその三人を引きとめようとする玄馬(パンダ)が道場に現れたのだ。
「あっ…あ…」
慌てて乱馬とあかねが離れると、
「乱馬っあかねとでなくて私と写真、撮るよろしっ」
「わっ…は、離れろシャンプー!」
離れた乱馬に対して、シャンプーが勢い良く抱きついた。
「あかねさん、乱馬に何もされませんでしたか!?」
「え…あ、え、ええ…」
その一方では、良牙がそんな事を言いながら必死にあかねの身を案じていた。
「シャンプー!おらとデートするだっ」
「『え?わしと?』」
その横では、眼鏡を外したムースが必死に、玄馬を口説いていた。
「あ、あの…写真を撮ろうと思ってるんだけど…」
何とかしてこのドタバタとした状況を収めようと、あかねがボソッと呟くと、
「だったら皆で撮るね。ムース、お前シャッター、押すよろし」
「な、何故おらがっ…」
「何でも、ある」
あかねと乱馬のツーショット写真を撮らせたくないという気持ちがありありと覗えるシャンプーが、すぐにあかねのその 言葉に反応をした。
そして、
「さ、みんな並ぶあるよ」
ド近眼のムースにシャッターを切らせることに一抹の不安は覚えつつも、
シャンプーの強引な仕切りにより結局は写真を撮ることとなり、更にシャンプーの勝手に皆をしきり並ばせたのだけれど。

「…」

中央には、乱馬。その横、向って右側には、ちゃっかりと腕を取ってべっとりとくっついている、シャンプー。
その後ろの列、向って左から良牙、玄馬。
あかねは、良牙の横、後列の向って一番左側に並ばされていた。
…そう、シャンプーにとっては、前列に自分と乱馬が映っていればそれで充分なのである。
他がどう並ぼうが、実はあんまり気になっていないわけで。
「あかねさん、俺の前にどうぞ」
しかし。
さすがに後列に並ぶと、背の小さいあかねはあまりよくカメラには映らない。
それを見かねた良牙が、気を使ってあかねを自分の前に並ばせてくれた。
「あ、ありがとう、良牙君」
あかねは言葉に甘えて、良牙の前に出た。
幸な事に、シャンプーは乱馬の腕にくっつく事で頭がいっぱいなのか、実は前列にあかねも並んだ事には気が付い ていないようだった。
「…」
あかねがふと、横を見ると。
嬉しそうに乱馬の腕に抱きついているシャンプーと、ため息をついている乱馬。
「…」
…もしも、誰かこの状況を知らない人がこの写真を見たら、一体どう思うだろうか。
まさか、腕を組んでいる男女の、その隣にポツンと立っている女の子が、実はその腕を組まれている男の子の許婚だなんて。
そんなこと、きっと夢にも思わないだろうな。
それを思うと、自然とあかねの口からもため息が洩れた。

 

たしか、以前にも、あった。
遠い島で出逢った人々と、皆で写真を撮った時。
そう、あれは確か、「桃源郷」という場所へといった時の事。
桃源郷の人々と別れる前に、皆で記念写真を撮った。
確かその時、 乱馬の両サイドには、シャンプーと、右京。
二人とも、乱馬の腕をしっかりと掴んでべっとりと抱きついていた。
あかねは、そんな乱馬達から少し離れた場所に立っていた。
目線だけは、乱馬のほうを向いていた。
でも、その隣には…やっぱり良牙や、九能や、そしてその時に一緒だった島の王子が映っていたっけ。

 

「…」
どうしてか、こう…記念写真になると、乱馬とあかねは離れてしまう。
以前の時よりも、もう少し二人の仲も進展…はしていなくても、気持ちは近づいているはずなのに。
「次のときはもっと…」
あの時確か、あかねはそう思っていた様な気がした。
が、残念ながら今回も、前回とはさほど代わりがないらしい。
ああ、また今回の記念写真もか。
そう思うと、あかねはもう一度ため息をついてしまった。

 

…と、その時。

「さ、撮るぞ!」
不意に、ムースがそう叫んだ。
「チーズって言ったら撮るぞ、いーかっ」
「分かったから、早く撮るね」
「す、すまん」
そんなムースをせかすように、シャンプーが叫んだ。
とりあえずは、笑顔で写真に写ろう。
でも、笑えるかな。
あかねはそんな事を思いながら、ムースの構えるカメラの方を向って立った。
すると。
「…あかね」
ふと、あかねを呼ぶ乱馬の声がした。
「え?」
「手」
「?」
乱馬は、真正面を向いたまま、シャンプーや他の人に気がつかれ無いようにと、小さな声でそうあかねをせかす。
「手?」
あかねがそれに戸惑っていると、
「早くっ」
乱馬が、更にそんなあかねを急かした。
「あ…は、はい」
一体、「手」がなんなんだろう。
意味も分からずあかねが、乱馬のほうに右手を差し出すと、
「そっちじゃねえよ、左手だ」
ナマイキにも乱馬は、逆の手を出すように催促をする。
あかねがしぶしぶと、乱馬に左手を差し出すと、乱馬は黙って、その左手をぎゅっと、握った。
(え?)
他の人に気が付かれないようにと、声を必死で押し殺しつつも、あかねがビックリしたような表情を見せると、乱馬は、ちらっとそんなあかねの方を見ただけで、またカメラの方へと目線を戻してしまった。
でも、その手は更にしっかりと握り締め、一本、また一本と、あかねの指へと自分の指を絡めていく。
あかねが、戸惑いながらもその絡められた指に自分の指をゆっくり絡めると、
「…これくらい、いいよな」
乱馬が、ぼそっと小さな声で呟いた。
…顔は前を向いているが、横から覗えるその頬は、少し赤くなっていた。
どうやら、乱馬もあかねと同じことを考えていたのかもしれない。
「今度、写真を撮る時には」
…もしかしたら、そんな事を。
「…うん」
あかねは、やっぱり他の人に気が付かれないように小さな声で、乱馬にそう返事をした。
乱馬はあかねの方を振り返りはしなかったが、でもその横顔は何となく…嬉しそうな表情をしているような、そんな風に見えた。

「はい、チーズじゃ!」
カシャっ…

…その瞬間、カメラを構えていたムースが、カメラのシャッターを押した。

「あいやー、私と乱馬、仲良しの写真がとれたねっ」
そう喜ぶシャンプーと、
「オラもシャンプーと腕を組んで写真を撮るだ!」
…と、シャンプー…ではなく良牙に向ってそうせがむムースと。
「離れろ、ド近眼っ」
そんなムースを足で蹴っ飛ばす良牙に、
「『横顔で 決まるパンダは 男前 …ふっ、一句できちゃった』」と暢気な事をいっている玄馬。
それぞれがそんな事を言いながらカメラの周りに集まり、ワイワイと話していたが、
「…」
そんな皆から少し離れた場所で立ちながら。
繋いだままの手を、皆には見えないように背中側へと隠しながら、二人はそんな彼らの様子を笑顔で見つめていた。

 

以前撮った時は、とても二人は離れていた。
距離も離れていたし、何となく、「心」も少し遠い所にあった。
目だけは、相手を探している。
そんな、記念写真だった。
…でも。
「次に記念写真を撮る時は」
そう、そのときに誓ったように。
今日、こうして皆で撮った記念写真は、以前に比べて大分、だいぶ進歩した。
物理的な距離と同じく、二人の「心」の距離がもっとずっと、近くなった。
繋いだ手から感じている、とても温かい、お互いの温度。
きっとそれが、写真からだって感じられるはず。
今すぐにでも、現像して見て見たい。
そんな「その後の記念写真」。


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