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渚にまつわるエトセトラ

「えー?乱馬くん、女性用の水着もってこなかったの?」



夏も終わりが近づいたある日のこと。
泳ぎ収め、というわけではないけれど、夏休みが終わる前に思い出をもうひとつ…ということで、クラスメート達と海に来ていたあたしと乱馬。
更衣室で着替えをして、いざ海へ…というタイミングで、
ぽろっとあたしが発した言葉に、親友のさゆりが驚いた表情を見せていた。



まあ、それも無理はない。
だって乱馬は、水をかぶると女の子に変身してしまう。だから水遊びをするときは必然的に「女性用水着」を着用しているわけで。
家族で旅行に行ったときも、学校の水泳教室でも。本人はどうだかわからないけれど、慣れた感じで女性用水着を着用してやりすごしていた。
それが、今回の海では水着不所持。
まさか海に入らないということだろうか?…皆がそう思うのも無理はなかった。
無論あたしもそれは不思議に思っていたけれど、
「何度も確認したんだけど、『持っていかない』『必要ない』の一点張りなのよ。逆にあたしに向かって、明日はどんな水着を着ていくかなんて聞き返すくらいで」
乱馬は、あたしにさえもそんな調子なのだ。
「ふーん…海に来たのに海に入らないなんて、変な乱馬くん。遅れてきた反抗期かしら」
「さあ。変なのは前からだから気にしてはいないんだけど」
あたしは、さゆりとそんな話をしながら更衣室を出た。
すると、
「おせーよ」
更衣室を出たところで、サマーパーカーにトランクスタイプの水着を着用した乱馬があたしのことを待ち構えていた。
ああ、はいはい…とさゆりはニヤニヤしながらも気を使って、「あたし先に行くわね」と他のみんなが居るところへと歩き出す。
「別に遅くもないわよ」
あたしはそんな乱馬にさっくりと一言そう返すと、
「ねえ、本当に大丈夫なの?水着」
みんなも不思議がっているよ?と、今回感じている疑問を再度乱馬にぶつけてみた。
すると、
「問題ないって。へーきへーき」
乱馬はそういって、妙に明るい笑顔であたしに答えた。
そして、
「それよりあかね、みんなのところに行く前に散歩でもしようぜ」
「ええ?何でよ。せっかくみんなで海に来たのに、遊ぶ前に散歩するの?」
「そ。だってみんなでせっかく海に来たわけだろ?なら、みんなはまずは泳ぎたいわけじゃん」
究極のカナヅチのおめーがいたら、みんなも気を使うだろ。乱馬は「そういうことだ」とか何とか言いながら、さっさとあたしの手をとり、砂浜を歩き出した。
どうやら、着替えが終わって集まっていた面々には、1.2時間くらい別行動…とかすでに宣言してきているようだ。
そりゃ確かに、筋金入りのカナヅチなあたしがいれば、泳ぐにしても浮き輪+ゴーグル+補助一人以上は確実に必要で、その補助はあたしにつきっきり。みんなが気を使うのは否めない。
「…」
全く、気が利くのか抜かりがないのか、何なのか。
やけに手回しがいい乱馬にこっそりとため息をつきつつ、あたしは乱馬と共に砂浜を歩き出した。

 


夏休み最後の土曜日とだけあり、砂浜は早い時間帯にも関わらず人で賑わっていた。
乱馬はその人だかりの間を足早に、あたしの手を引いて歩いていく。
どうやら、散歩というのは建前ですでに目的地は決まっているようだ。
「ねえ、どこに行くのよ。そっちは岩場だよ?」
乱馬が向かっていくと思われる方角には、大きな岩がいくつも連なる場所だった。
砂浜に比べたら人も減るし、小さな洞窟みたいなスペースもあるし、岩陰もあるし、ゆっくりするには最適の場所かもしれない。
でも、問題が一つ。
そこへたどり着くには波打ち際を通り、少なくとも足首くらいまでは水につからないと通れないスペースを進まないとならない。
ということは、せっかく人気のない場所へたどり着いたとしても、乱馬は女の子の姿。
傍から見たら、仲良しの女の子二人がただ単に休憩しているだけに見えなくも…ない。
そんな乱馬は、あたしの心配をよそに、波打ち際を歩き出してすぐに女の子の姿に変わってしまった。
パーカーに海水パンツだから、ナイスバディを露呈させるわけでもないし一目を気にすることもないけれど、
「…」
散歩とか言い出すから、てっきりあたしと二人きりになりたいのかな…なんて思ってみたけれど、
単に歩きたかっただけなのか?ていうか、こんな簡単に女の子になっちゃうんなら、初めから女の子用の水着に着替えていればいいのに。
あたしは、あたしの手をとり歩き続ける乱馬の背中を見つめながら、首をかしげる。

と。


そんなあたしは、乱馬の後姿を改めて眺めつつ、普段と違う「あること」に気がついた。
パーカーに水着なのはいいけれど、今日の乱馬は背中にいわゆる2wayの細長い小型のショルダーバックをしょっていた。
いつ買ったのだろう?乱馬にしてはおしゃれ?…とかそういうことはまずおいておいて、
一体なぜそんなものをつけているのだろう。
女の子と違って、男の子が水辺で身に着けているのなんて貴重品くらいだろうに。
しかも乱馬なら、持っていてせいぜい小銭。お札を1枚とか2枚持っていたとしても、たたんでしまえばポケットに入る。
わざわざショルダーバックを背中にしょっている意味ってあるのかな。


「ねえ、乱馬」


なので。
波打ち際を歩き、足首まで水につかりながらたどり着いた先の岩場に腰掛けながら、あたしは再度彼の名前を呼んだ。
すると、
「あー、やっとついた」
乱馬は、その岩場が水の影響を受けないことを確認しながら、あたしの横にどかっと腰を下ろす。
そして、
「たどり着くまで不便だけど、たどり着いちまったら便利だよなあ」
人もほとんど居ないし…そんなことを言いながら、背中にしょっていた例のショルダーバックをおろした。
「ねえ、それ何?何が入ってるの?」
タイミングもいいのであたしがそう乱馬に尋ねると、乱馬はそんなあたしの問いにすぐには答えず、まずはにやりとした。
そして、
「まずは…これかなー」
乱馬はそういって、ショルダーバックの中へと手を突っ込み、ちょうど500ミリのペットボトルと同じくらいの大きさの「ボトル」を取り出した。
ボトルといっても、硝子で出来ているものではなく、いわゆる「マイボトル」として飲み物を飲んだりするような、保温機能に優れたタイプのボトルだ。
それはいいのだけれど、
「…岩場で何か飲む為にわざわざ?」
まさか、あたしとお茶を飲む為にわざわざここに来たわけなのか。しかも女の姿になって。
…ますます意味が分からない。
あたしが首をかしげていると、
「飲む為のものじゃねーよ。これはこうするの」
乱馬はそういいながら、ボトルの蓋を開けて中身を自分の頭の上にトポトポとこぼした。
頭にかけた液体は、ほんのりと湯気を立てていた。匂いはしないから、中身は白湯なのかもしれない。
その少量の白湯を頭にかけた乱馬は、一瞬で女の子から男へと変化する。
「うん、わりと適温」
乱馬はそんなことを言いながら、ボトルの蓋を閉めた。そして再びショルダーバックにしまいこむ。
「…お湯、持ってきたの?」
「まあな。これなら、女になってもすぐに戻れるだろ」
「そうだけど…」
「あとは、これかなー」
あっけにとられているあたしをよそに、乱馬はまたショルダーバックの中から何かを取り出した。
小さく折りたたまれた、光沢のある布のようなもの。
よく目を凝らしてみるとそれは…もしかしてレジャーシート?
「なんで岩場にレジャーシートなのよ」
あたしが呆れながら乱馬にたずねると、
「はー?決まってんじゃねーか、そんなの」
乱馬はそういって、すっとその場から立ち上がった。
そして、
「…」
あたし達がいる岩場の影にある、少しくぼんだような岩の上へとひょいっと飛び降りた。
そこも、海からの水の影響を受けることはないのだが、くぼみで日もあたっていない場所。
完全に周囲からの目線はさえぎることも出来そうだが、その代わり腰を下ろしたら、ちょっと体が冷えてしまいそうだ。
そんな場所がどうしたのか?
あたしがそんなことを思いながら首をかしげていると、乱馬はその場所に器用な手つきでレジャーシートを敷いた。
しかもご丁寧なことに、サササと手際よくパーカーを脱ぎ捨て、レジャーシートの上に敷いて「うん、これなら痛くないな」とかなんとか。クッション性能まで確認している。
「…」
…ここでようやく、あたしは乱馬がしようとしていることに見当がついた。



そうだ。
乱馬が。あの乱馬が。あたしと二人きりになって、砂浜を散歩するだけで済むなんてわけがない。
しかも二人とも、水着。おまけに人気がないところをきちんとセレクトしてあたしを連れてきた。
そのうえ、ありとあらゆるシチュエーションを考えて、携帯用のマイボトルにお湯まで入れてくる手際の良さだ。
そういえば、海に来る前にあたしに、どんな水着を着ていくつもりか聞いてきたっけ。
それは、水着によっては肌の露出が多くなるから、身体を無駄に冷やさない対策をしなくちゃって考えるためだったのね。
よーく、よーく考えると察しがつく。


「…何してんの?」


でも、念のためには聞いてみよう。
あたしが恐る恐る乱馬にそう尋ねると、
「だからー…決まってんじゃねーか」
乱馬はにやりとあたしに笑って見せると、レジャーシートを敷いてクッションまで作ったその岩のくぼみへとあたしを招き入れた。
そして、
「せっかく皆とは別行動なわけだし。二人きりで居るわけだし」
「…だから?」
「周りにも人は居ないし、こんなとこ滅多に人も来ないし。おまけに、水着だろ?」
脱ぐ手間も省けるだろ。乱馬はそんなことを言いながら、レジャーシートの上に作ったクッションにあたしを座らせた。
…やっぱり、そうか。あたしは心の中で小さなため息をつきつつ、
「…もしかして、水着を持ってこなかったのも…」
さては、一から皆と別行動になるつもりで、海に純粋に入って遊ぶつもりなどなかったな?
あたしが乱馬の耳を引っ張りながらそう聞くと、
「だって、別に水遊びなんて女の格好にならなくたって出来るじゃねーか。それに、俺は極力男の姿でいたいの」
お前の前では。乱馬はそういって、自分がくぼみの「壁」に背をつけるように座り、あたしの体を自分の膝の上へと乗っけた。



…そういえば乱馬は、前に比べて女の子の姿になる回数が減った気がする。
そりゃ、お得なパフェが女の子なら安く食べられるとか、そういう時はあえて姿を変えていたけれど、
そういうの以外は、男の姿が多くなった。
それは偶然じゃなくて、乱馬もこうして意識していたからだったのね。
乱馬は乱馬。男だろうが女だろうがそれは代わらない。
でも正直言って…男の子の姿の、本当の乱馬のほうが一緒に居て安心する。
きっとそれが、乱馬にとって自然な姿だからなのかな。
そしてあたしも、ちょっとそういう風に感じていた。
あたしのことをちゃんと女の子と意識して、一緒にいたいと思っていてくれるから、そういう風に意識してくれているんだよね、きっと。
「…」
あたしには、そういう乱馬の考え方が少し嬉しかった。
とはいえ…




「それにしても用意周到じゃないの」



膝の上にちょこんと乗っけられ、抱っこされながらのあたしがそうぼやくと、
「そうでもないけど?あ、そういえばこのかばん、見た目よりもやわらかい素材で出来ているから、ちょっとした枕にもなるみたいだぜ?」
「…そういうのを、用意周到っていうのよ」
「へー。そりゃ知らなかった」
乱馬はそんなあたしのボヤキなど全くお構い無しに、あたしの首やら頬やら胸元やらへと唇を下ろす。
「っ…」
水際で冷えた身体に、暖かくて柔らかい唇と舌使い。あたしの体はビクン、とそのたびに竦んでいた。
しかも、片手であたしの体を支えているふりをしながら、スルリ…とビキニの胸のあたりの布を突破し手をすべり込ませている。
「ちょっ…」
誰かに見られたら!…と思わず口走るも、
「こんなとこ、滅多に来ないって」
そういうことももちろん計算済み。乱馬は優しくあたしの肌をなでながら耳元でそうささやいた。
身体のラインに合わせた優しい指の動き。あたしがどこに触れられたらどうなるのか、というのをわかっていて計算したような恨めしいその愛撫に、
あたしの体から、徐々に力が奪われて…支えてくれる乱馬の腕と体に身を預けないと、まるでとろけてしまいそうなほど身体が火照ってきた。
…そんなことをされたら、もう逃げられない。



「…誰か人影が見えたら、すぐにやめるんだからね」
「やめられたらな」
「やめるのっ」
「はいはい。努力はしてみるけど」




膝に乗ったあたしの身体を、そんなことを言っては楽しそうに弄び始める、乱馬。
あたしはそんな乱馬にため息をつきつつも、
でも、



…しばらくは、誰も来ませんように。




心の中でそんなことをこっそり思いながら、ゆっくりと押し付けられた唇の温度を感じながらレジャーシートへと身を倒し、静かに目を閉じたのだった。


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