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空のスクリーン

「ねえねえ、これから二人でどこかに行こうよ」
「どこかって?」
「どこかは・・・どこかよ」


とある晴れた日曜日の朝。
毎朝の日課であるロードワークを終えシャワーで汗を流した後縁側で涼んでいた俺の元に、台所の方からフラリと出てきたあかねが、そんな約束を取り付けてきた。
デートの計画を立てるのは大抵あかねの役目。
そういう時は必ずといって良いほど前もって完璧なプランをコーディネートをするあかねにしてみれば、こんな風に行き先も決めずそれも急に誘うようなやり方は珍しい。
「それはいいけど・・・今日、天気はずっと晴れなのか?」
「さあ」
「今は晴れているからいいけど、もし午後から雨が降るとしたらどうすんだよ」
俺がそんなあかねにそう答えてみると、
「後で雨が降ったら、雨が降っても楽しめる所にその時点で行き先を変更したら良いじゃない」
「・・・」
「何よ、嫌なの?」
「そ、そんな事言ってねえだろ」
結局は晴れていようが雨だろうが、あかねは俺と出かける気満々。
どうやら俺は、ただ単にあかねにデートのお誘いを受けただけのようだ。
最も俺だって、別にキッカケや理由はどうであれ、あかねと二人で出かけることは楽しいわけで。
だからこうして誘ってくれるのは何の問題も無くむしろ嬉しいのだけれど、
「・・・せっかく出かけるのなら、このまま晴れでいて欲しいよな」
・・・そう。憎きは、この雨に濡れると女になってしまう特異体質。
あかねと二人で出かける時は、極力「男」の姿でいたいと思う、俺。
見た目が「男」だろうが「女」だろうが中身は「男」の俺であるわけで、そんな「男」の俺としてみれば、やっぱり大好きな彼女と二人で過ごす時は自分本来の姿ですごしていたいと思う。
でも雨に降られてしまうと、そういう思いが全くもって無駄になってしまうのだ。
「雨が降っても降らなくても、男の姿でも女の姿でも乱馬は乱馬じゃない」
あかねはそう言ってくれるけれど、俺としてはやっぱりそれでは腑に落ちないのだ。
・・・
「・・・」
でも、そんな心配はする必要も無かったのか。
あかねと約束をした後すぐにチェックしたテレビの天気予報と新聞の天気欄には、降水確率ゼロ、という非常に好意的な記述がなされていた。
どうやら今日の俺は、ツイテいるようだ。
あかねにもデートに誘われるし、これならば雨が降る心配もない。何だか今日はいい日になりそうだ・・・と俺は胸を躍らせる。
ところが、
「それじゃ、あたし今から支度してくるから」
「ふーん。じゃあ俺、玄関で待ってる」
「そう?でも一時間くらいかかるから、居間で座っていれば?」
「なっ・・・何でそんなに時間がかかるんだよっ」
「女の子は色々とあるのよ」
・・・天気的にはツイテいる俺でも、
すっかり忘れていたが女は出かける為の支度に、男からは考えられない時間をかけるもの。
待っている間に万が一、万が一・・・天気が崩れたらどうするんだよ、と、待たされる時間が長いと余計な事を気にするようになるというか。
それに通りがかりの金魚屋の水が俺にかかるとか、水道管が破裂する現場に遭遇するとか・・・「降水確率ゼロ」でもその他にも水を被る可能性というか、そんなものまで考え出してしまう。
俺はブツブツと呟きながら一人、玄関先の門の所まで出てあかねを待っていた。

 

 

あかねを待っている間、俺はノンビリと門に寄りかかり空を見上げていた。
雲がぽつん、ぽいつんとしか浮いていないようなとつない、澄んだ空だった。
時折、真っ青な空に色を添えるかのように小さな鳥が群れで飛んでいく。
青い空に茶色の鳥に白い雲。
そこだけ見つめていると、何だかその部分だけ絵画でも見ているような気分になる。
こういう時、きっとあかねだったら、
「絵画?あんたって意外と空想壁があるのね」
「く、空想壁って・・・せめてロマンチストと言え」
「空想は空想でしょ?妄想壁じゃないだけいいじゃない。それに、空は空、鳥は鳥、雲は雲でしょ」
とか何とか、恐ろしく夢のない事を言うに違いない。
まあ、「ウサギ」が「クラゲ」になり「犬」が「ブタ」になり、「馬」が「地球外生物」のような絵を描くあかねに、芸術的センスを求めるのはほぼ皆無に近いわけだけれど、
そういうのを抜きにしても、男の方が絶対にロマンチストだと、俺は思う。
それに、
「・・・・」
そんな風にこの空の風景が穏やかな絵画のように見えるのは、きっと自分の心が今、穏やかだからなんだろうなと、思う。
だからといって、別にあかねの心に余裕がないといってるんじゃないんだけどな。
あいつは、ただ単に芸術的才能が無いだけだから・・・と、本人に言ったら殺されそうなことを思いつつ、俺は空を再び見上げる。
・・・美しい花でも、心に余裕がない時にそれを見れば、それを「花」とすら感じないことがある。
どんなに着飾っていたとしても、心に余裕がないと「足先」つまり靴までは気が回らず姿が洗練されない時がある。
つまり、
心に余裕がなければ、綺麗なものも綺麗に見えず美味しいものも美味しいと感じないというわけだ。
「・・・」
一緒に住んでいるから、今日みたいにアバウトな約束を急に取り付けることも問題が無い。
それにもし今日俺に用事があってこの約束を断っていたとしたって、俺達には「次」がある。
これからもずっと、ずっと一緒にいる俺達だ。だから、今日がダメでも次にまた行くことができればいい。
・・・
・・・考えてみたら、それってすげえ幸せなことだよな。
そして、そんな幸せをすぐ傍に感じながらノンビリと空を眺めている俺は絶対に今、心に余裕があるんだと思う。
勿論、心の「余裕」と心の「油断」は違う。
だからその部分だけは、わきまえているつもりだけれど。
「・・・」
穏やかな絵画のような、澄み切った空。
まるで、自分の心を映し出したスクリーンを見ているみたいだ。
やっぱりどこかロマンチストで夢のある俺は、そんな事を思いながら青空を見上げていた。

 

と、その時。

 

「おまたせー」
ようやく支度を終えたのだろうか。あかねがニコニコと笑顔を見せながら、俺が居る門の所までやってきた。
そんなあかねは、珍しくデートというのにジーンズを穿いていた。しかも、手にはいつも持っている小さげな鞄ではなく・・・籐のバスケット?
・・・
「今日はスカートじゃねえのか?」
別に、
あかねの足を見たいとか、
あかねが短いスカートを穿いていると妙にそそられるとか、
あかねがスカートを穿いていると、人気が無い所で隙あらばめくってみたくなるとか、
・・・口に出せば、いや出さなくても「変態」だと思われそうな行為を全く思わなくはない俺が、あかねにそれとなく尋ねてみると、
「晴れているから、隣町の駅でレンタサイクルしてピクニックでも行こうと思って。自転車漕ぐのに、スカートじゃ不便じゃない」
「ちょっと待て。お前、さっき『どこかに行こう』って言って俺に誘いをかけなかったか?」
「そうだっけ?」
「そうだよ。それなのに何で行き先がもう決まってるんだ?」
だったら最初から、今日は晴れているからピクニックに行こうって言えばいいじゃねえか。
俺が尤もな事をあかねに問うも、
「細かい事はいいじゃない。行くの?行かないの?」
あかねはそんな俺に、妙に強引に話を持っていく。
勿論俺だって、あかねと出かけられることだけでも楽しいし、雨も降らないし、ピクニックだって嫌いじゃないので、
「そりゃ行くけど・・・」
と返事をするが、
「でもさ、ピクニックって言ったら・・・」
「何よ」
「普通は事前から色々と準備をして弁当とか用意を・・・」
そう。
普通、ピクニックといったら弁当持参で行くものだ。
家族で出かける時は、お袋やかすみさんが弁当を作りそれを皆で食べるわけだけど、こんな風に急にピクニックに行く事になったら、準備だって出来ていないだろうし。
コンビニで買って行くつもりなのか?
買うこと自体は問題ないけど、それだとちょっと味気ないよなあ。
俺がそんな事を思っていると、
「うふふふふ・・・」
何故かあかねは、そんな俺に笑顔を見せた。
そして、手に持っていた籐のバスケットを小さく振ってみせる。
「・・・」
・・・えーと。
ちょっと落ち着け、俺。考えろ、俺。
通常、籐のバスケットをピクニックデート時に持参する場合、その中には何を入れると考えるのが普通だ?
財布に小物?本?折りたたみの傘?
「・・・」
いやまて、俺。もっと考えられるものがあるじゃねえか。
まさかな。まさかとは思うけど・・・まさか、その中に弁当が・・・?
「あははは・・・」
「うふふふ・・・」
俺とあかねは、お互い別々の意図で笑顔を見せてみるも、
「・・・」
一体いつ、弁当を作った!?
俺は、若干引きつった笑顔をそのまま浮かべながら、あかねを見つめる。
・・・ちょっと待て。今日は、あかねがアバウトに俺に誘いをかけてきたんじゃねえのか?
それなのに、弁当まで用意されているということは・・・そういえばいつの間にか行き先とか手段も決めているみたいだし、
もしかして前々からこうやってピクニックに行くつもりでいたってことか?
そういえばあかねの奴、俺にデートの誘いをかけてきた時どこから登場した?
そうだ!あかねの奴、台所から出てきたじゃねえか!
しまった、これは全て計算だったのか!
・・・
そりゃ、
「ねえねえ、お弁当作ってあげるからピクニックに行こう」
なんてストレートに誘われたら、ピクニック自体は楽しみでも、何とかしてあかねの弁当を食べずにすむ手段を講じようとするとは思うけど・・・
「・・・」
もしや俺、あかねの策略に嵌ったという事か?
やべえ、空を見て暢気に心の余裕を醸し出している場合じゃねえ!
・・・
「・・・俺、コンビ二の弁当が好・・・」
俺はさりげなくあかねの手作り弁当を食わないで済む方向へ話を持っていこうとするが、
「乱馬が好きそうなおかずも、たくさん作ったからね」
あかねは笑顔で俺の発言を跳ね返してきた。
恋人同士の会話の基本は、キャッチボール。
しかし俺達の会話は、キャッチボールどころか投げたらお互いフルスイングで打つ・・・のホームラン対決になりつつあった。
「いや、俺買った弁当の方が好・・・」
「食べてくれないなんてことは無いと思うけど、そんな事を言うような彼氏とは、もう一緒に寝てあげないからね」
「なっ・・・」
「乱馬、お弁当楽しみでしょ?」
「はは・・・」
もはや、脅しとも取れないようなあかねの笑顔と共に呟かれる言葉に、俺はもう笑うしかない。
そんな俺の切ない心に反応してか、
「あれー?何か空、曇ってきた?」
「・・・」
「やだ、雨だ!ちょっと、今日は降水確率ゼロじゃないわけ!?これじゃ、サイクリングに行けないじゃないのっ」
「・・・」
今まであれ程澄み切っていた青空が、急速に翳りを見せた。しかもご丁寧に、ポツリポツりと雨まで降らし始めている。
・・・空のスクリーン、わが心の鏡。
降水確率ゼロを、根底から覆す力を持つあかねの手料理パワーが恐ろしい・・・。
「・・・」
俺がそんな事を思っていると、
「降らない予定だった雨が降ったってことは、きっと日頃の行いが悪いせいだわ」
あかねが、雨を見つめながらそんな事をぼやいた。
「何だよ日頃の行いって」
お前、料理の腕前だけじゃなくそんなに日頃の行いも悪いのか?・・・俺があかねにそう尋ねると、
「あたしじゃないわよ、あんたよ」
「俺のどこが、日頃の行いが悪いんだよ」
「悪いじゃない。夜になると見境なく人に夜這いをかけてくるし・・・」
「本人同士公認の夜這いは、夜這いとは言わないんだぞ?バカだなあ、あかねは」
「バカはあんたでしょうがっ」
「『もっと』っていつも言うくせに」
「くっ・・・」
ゴスッ
・・・本当の事を言っているだけのはずなのに、何故か俺はあかねに殴り倒された。理不尽だ。
「んんっ・・・」
あかねは不服そうな俺を無視しつつ、真っ赤な顔をしながら咳払いをすると、
「そうじゃなくて。ほら、よく言うじゃない。日頃の行いが悪いと、肝心な時に天気が悪くなるって」
「じゃあ、やっぱりあかねのせいだ。降水確率ゼロだったのに」
「あんたのせいでしょっ。それに、あたし良い子だもん」
あかねが俺に負けずとそう言うと、
ザーッ・・・
「・・・」
何故かその瞬間、雨が強くなったような気がした。
俺の心が、「それは違うぞ?」と訴えているのだろう。
「ほーれみろ」
「な、何よっ」
「日頃の行いが悪いのはあかねってことだ。大体俺には、悪い所なんかねえし?」
「そ、そんな事ないでしょっ」
「あるね」
俺が悔しそうなあかねに自信を持ってそう答えると、
ザーッ・・・ゴロゴロゴロ・・・
「・・・」
何故かその瞬間、雨が強くなったばかりか遠くで雷の音までした。
・・・おかしい、俺は正直者のはずなのに。もはや心が突然反抗期?
「・・・お互い様じゃないの」
「う、うるせえな」
やーい、やーい、と嬉しそうなあかねと、我が心のスクリーンの突然の反抗期に納得いかない俺と。
二人でギリギリ、と睨み合っていると、そんな俺達の様子を反映させるかのように更に雨と雷は激しくなった。
「あー・・・これじゃあ本当に今日、ピクニック行けないよ・・・」
「しょうがねえだろ」
「せっかくお弁当、作ったのに・・・」
激しくなった雨を見つめ、あかねが小さな声でそう呟いた。
その姿が、本当に寂しそうで残念そうで・・・弁当については色々と思うことはあるけれど、何だか俺まで胸が苦しくなる。
「・・・」
・・・ちぇっ。しょうがねえな。
俺達が仲直りというかいがみ合いをやめなければ雨、止まないのかなあ。
だったらもう、俺が観念するしかねえじゃねえか。
惚れた弱み、じゃないけれど、あかねが寂しそうな顔をすると俺まで無性に寂しくなる。
寂しさや痛みがダイレクトに、俺にまで伝わって来るんだよなあ。
・・・
「・・・」
俺はあかねに気づかれないようにこっそりとため息をつくと、
「・・・サイクリングに行って、その先で俺が急病で動けなくなったらちゃんと看病しろよ」
と、ボソリと呟いた。それはイコール、俺があかねに「お前の弁当、食ってやるよ」と言っているのと同じ事なのだけれど、
そんな俺の優しさに気がつかないあかねは、
「ど、どういう意味よっ」
「そういう意味だよ」
「このお弁当はねっ乱馬の為に、朝すごーく早く起きて準備したんだから!おばさまに手伝ってもらって・・・」
と、弁当の安全性について俺に必死で主張をした。
恋人の為に作る弁当の安全性について主張をされるなんて、珍しいことではあるけれど、
「なんだ、お袋が手伝ったのなら安心だな」
作ったのがあかねではなく俺のお袋であるのなら、心配することもなさそうだ。
きっとお袋ならば、俺の身を思い何とか弁当をすり変えてくれている可能性もあるだろう・・・と、俺がホッと胸をなでおろすと、
「・・・乱馬もしかして、マザコン?」
そんな俺に対し、あかねが恐る恐るそんな質問をしてきた。
「何で俺がマザコンなんだよ」
予想外のあかねの反応に俺が怪訝な表情をすると、
「だって、あたしよりよりもおば様の手料を望んでホッとしているなんて・・・この関係はきっと、結婚しても変わらないわ!」
「お前なあ・・・」
「きっと乱馬は、何かにつけて家庭よりもおば様を・・・私だっておば様は大好きよ。でも、夫が妻の味方をしないとあらかじめ分かっているのにこのまま結婚をするのはっ・・・」
あかねは妙に真剣な表情で、そんなことをブツブツと呟いていた。
俺は若干頭痛を覚えつつ、
「・・・お前は自分の料理の腕を全く理解していないのか?」
「何よ、あたしの料理に何か問題があるとでも言うの?そりゃおば様よりは少し劣るけど」
「少しとかそういう問題じゃねえだろっ」
「何よ!あたしは、白ワインとお酢を間違えたりするだけでしょ!でも今日は、いつものあたしとは違うのよっ」
「何がだよ」
「ふふ。今日はね、一緒に台所に立ってくれたおば様に味見をしてもらおうとしたら、『気持ちが篭っていればきっと美味しいわ』って太鼓判も貰ったもん。味見しなくてもおばさん、分かるわって言ってくれたのよ!だから今日のお弁当はとーっても美味しいんだから」
あかねは、どこから沸いてくるのか分からない自信と根拠でハッキリと、俺にそう言い放った。
「・・・」
・・・マザコンうんぬんではなく、どうやら俺は、既に母親に見捨てられているようだ。
いやそれよりも、何故ピクニックに持っていく弁当のおかずに白ワインなんて使おうとする?
俺、冷凍食品をチンしてくれればそれでいいって。
あかねがそんだけの手間をかけて弁当をつめてくれようとするその気持ちだけでいいって。
決して、決して弁当に冷凍食品を使うな!とかそういう傲慢なことは言わないから、
頼むから「食えるもの」を詰めてくれ。
時、既に遅しだとは思うけれど。
・・・
俺は再び小さなため息をつくと、
「俺はマザコンじゃねえし、それに俺はお前の味方だって」
「どうだか」
「本当だっつーの。多分俺、世界中の人間がお前の敵になっても、俺だけは味方で居るつもりだから」
「・・・もしもあたしが、悪いことをしている人だったとしても?」
「二人で悪人になれば問題ないだろ?」
でもその前に、悪い事はさせないように教育するけどな。俺があかねにそう言うと、
「うん・・・」
あかねは嬉しそうな表情で、俺に笑顔を見せた。マザコン疑惑が拭えたのかどうかは分からないけれど、あかねが喜んでいるのは確かだ。
俺もその笑顔を見て、ホッと胸を撫でおろした。
と、
「あ・・・」
「お」
・・・それまで豪雨で雷が鳴っていた空が、再び青く澄み始めた。
空を覆っていた鉛色の雨雲が、上空の風に乗りサー…と移動し始めたのだ。
しかもご丁寧に、遠くの空、俺たちが向かおうとしている方角には綺麗な七色の虹が、青い空に彩を添えていた。
「・・・」
俺たちが言い争いをやめて、あかねの笑顔を見て俺がホッとした瞬間に空が晴れて虹までご丁寧に出る、か。
我が、心のスクリーンの反抗期も終了したのだろうか。
反抗期が終わった途端に随分と素直に心が反映されたものだ。
俺たちはそこで、とりあえず先程までの言い争いとか小競り合いを「もうココマデ」という意味を込め、仲直りのキスを軽く交わした。
そうする事で、先ほどの雨が地面に作った水溜りを、キラキラと空から再び覗き始めた太陽の光が反射したような気がした。
降水確率ゼロの予報から一転、集中型豪雨と雷で一時期はどうなるかと思ったが、
どうやらもう、雨については心配するようなことはなさそうだ。
後は俺が、水溜りのはねっかえりと通りがかりの金魚屋なんかに気をつければ良いだけだよな。
・・・
「行こうか」
「うん」
俺とあかねは、笑顔でお互いを見つめる。

 

・・・本日の行き先は隣の駅、レンタサイクルで自転車を借りたらそのままピクニック。
でもとりあえずその前に、薬局に寄って胃薬購入が必須。

 

「乱馬ー!早く、早くっ」
「分かったって。おい、まずは駅に行く前に薬局な?」
「薬局?ま、良いけど」
・・・
俺の体調がどこまで持つかは分からないけれど、
でも雨上がりの晴れた空の下、籐のバスケットを持ち楽しそうに駆けるあかねの姿を見たら、何だか過ぎる不安もどうでも良くなってしまう。
俺は真っ青な空を地面でも描く水溜りを器用に避けながら、楽しそうに駆けていくあかねの後を追い、走り出した。


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