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歌声

昔々。
ドイツのとある河のほとりに、ローレライという魔女がいた。
ローレライは、その持ち前の美しい歌声で河を進む船乗り達を魅了し、そして船乗り達を川底へと引きずり込んで
いたという。
彼女の歌を一度聞いたものは必ず水中に引きずり込まれ命を落とした…
と、この「ローレライの伝説」は今でもなお語り継がれている、ドイツでは有名な話である。

ある日の夕方。
俺が夕食前の稽古を終えてフラフラと家の歩いていると、
「ふんふん…ー…」
不意に、あかねの小さな歌声…というか鼻歌が、俺の耳に飛び込んできた。

(なんだ?)
俺が声のする方を辿っていくと、それは風呂場のほうから聞こえていた。

…どうやら夕方早々風呂に入っているあかねが、風呂場の中で何やら口ずさんでいるらしい。

(かーッ、晩飯前から風呂に入るたあ、ホントに暢気な奴だぜ)
俺はそんなことを思いながら風呂場の前から立ち去ろうとしたけれど、
…妙にあかねが口ずさんでいるその歌が耳に残ってしまい、思わずその場にとどまってしまった。

(…あれ?この歌、なんて歌だっけ?)

あかねが口ずさんでいるこの歌、俺は聴いた事があった。

そう、 聴いた事ある曲なんだけれど、すんなりとその題名が出てこない。

(なんだっけなあ…中学の時とか…合唱とかやってる奴らが歌ってたような…)

…ただでさえ、子供の頃から修行三昧の俺。
そんな俺が、中学の時に合唱部が歌ってた歌なんてちゃんと覚えてるはずがない。
でも、
ちゃんとは覚えてないんだけど…それでも何となく聞いたことのある印象強い歌。

(なんだっけ…)
そんなうろ覚えの記憶を必死でたどってみるけれど、俺は、あかねの口ずさむこの歌がどうしても思い出せないで
いた。

「なんだっけ…この歌」
俺は、風呂場の前で腕を組んで立ち止まりながら、それでも必死で記憶をめぐらしてみる。

(キーワード…何かタイトルを思い出すキーワード、ねえかなあ?)

俺はそんな事を考えながら、ふと、あることを思いついた。

…そうだ。
もう少し近くでこの歌を聴いてみたらどうなんだろう?
もしかしたらあかねの奴、歌詞かなんかもつけて歌うかも知れねえぞ?

(そうだ、そうしよう。…)
俺は勝手にそう決め込むと、風呂場のドアを静かにあけて脱衣所へと入り込んだ。
そして浴室の中の鼻歌に耳を傾けながら、再び腕を組んで考え込む。

「ふんふんふん…」
…廊下で聴くよりも、更にはっきりと俺の耳に飛び込んでくるあかねの歌声。
でも。
どんなに耳を澄ませても、残念ながらあかねの口からはその歌の歌詞は聴く事が出来なかった。

…せっかく脱衣所に忍び込んでまで歌を盗み聞きしているのに、まだこの歌が何の歌なのか分からないなんて。
何だかこう…身体の隅々がむずがゆくなるような感覚を覚える、俺。

(…これ、何の歌だっけっかなあ…。すげ-気になる…)
あかねが風呂から上がって、「なあ、さっきの歌なんて歌だっけ?」と聞けばいいだけの話なんだけど、
気になることがあれば、「気になった時に」とことん追求しないと気がすまない、俺。
はやる気持ちが先行し、とてもじゃないけど、長風呂のあかねが上がるまで何て待ってられない。

 

…と。
その内ふと、それまで目いっぱい俺の耳に飛び込んできていたあかねの歌声が、ぴたりと止まってしまった。

(あ!まだ思い出す前なのにッ…)
まだ記憶の糸が手繰り寄せられないような状態なのに、その歌声が急に途切れて、俺は少し慌ててしまった。

(あかねの奴、もう一度だけでも口ずさんでくれねえかな…)
なので、内心非常に慌てた俺は、まるで祈るような思いで、あかねのいる浴室のドアの方を見たのだけど…

(…あ!)
何故だか分からないがその瞬間、俺の頭の中に、何かがキラリと光って走り抜けていった。

…そうだ!
「もう一度」…「もう一度」がキーワードだ!
そうだ!あの歌だ!
「もう一度」と言う言葉によって俺の頭の中に素早く駆け抜けていった稲妻が、
俺の複雑に絡んでいた記憶の糸を一気に俺の元へと手繰り寄せてくれた。

…わかったぞ!
この歌…この歌のタイトル!

「『あの素晴らしい愛をもう一度』だ!」
…思わずそう叫びながら、あかねが中にいるにも関わらず、浴室のドアを勢い良く開けてしまった。

「きゃー!」
…もちろん、訳も分からずいきなり浴室のドアを開けられた無防備なあかねは、悲鳴をあげる。
そして、

「入ってくるなッこのスケベー!」
慌てて偶然手にしていたタオルで身体を隠しながら、俺に向って手当たり次第、洗面器やら腰掛やらを投げつけて
きた。

…ドゴ!
すさまじい勢いで、あかねが投げたものが俺の身体にぶつかる。

「い、痛え!」
俺はあっという間に脱衣所から廊下へと追い出されてしまった。

「何考えてんのよッ」
…ボゴ!
廊下にたたき出された俺に、更にあかねは石鹸を投げつけてから、再びドアを閉めてしまった。

 

 

…昔々、ドイツのとある河のほとりに、ローレライという魔女がいた。
ローレライは、その持ち前の美しい歌声で河を進む船乗り達を魅了し、そして船乗り達を川底へと引きずり込んで
いたという。
彼女の歌を一度聞いたものは必ず水中に引きずり込まれ命を落とした…
と、この「ローレライの伝説」は今でもなお語り継がれている、ドイツでは有名な話である。
ドイツの男達にとっては、ローレライの美しい歌声は…恐ろしい魔力。
一度でもその美しい歌声を聞いたものは、水の中へと引きずり込まれて命を落とす。

でも。俺にとっては、そんな魔女の歌声なんかよりも、あかねの歌声の方が…危険。
何しろ、知らず知らずに風呂場にまで乗り込んでってしまうくらいなんだから。
そんなローレライの歌声と同じように、俺はあかねの歌声の虜になったようだ。


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