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カレンダー

(あー、寝れねえな…何か)

年末も押し迫った十二月三十日。
大掃除も一日早く終わって、あとは明日の年越しそばと年を越すのを待つのみ!と、そんなのんびりした夜。
何となく寝付けなかった俺が居間へと行くと、

「あら?乱馬君。どうしたの?こんな時間に」
そこには珍しく、かすみさんがひとり座って、お茶を飲んでいた。

「あ、いや…何か寝れなくて」
大抵早く寝てしまうかすみさんがそこにいること自体に慣れていない俺が、思わずそんなこと言って頭を掻いてい
ると、

「お茶、飲まない?いれてあげるわ」
かすみさんはいつものように優しく笑いながら、俺の湯飲みにお茶を入れた。

「はあ…」
…ゴト。
テーブルに湯飲みを置かれ、俺はとりあえずその場に腰を下ろしてお茶を飲む。

「…今ね、懐かしいものをみつけちゃって。それみてたら寝れなくなっちゃって、私もお茶を飲みに起きてきた
の」
かすみさんはお茶を飲んでいる俺にそう言って、「あるもの」を見せてくれた。

「?これは…?」
俺がそれを覗き込むと、

「これね…十年位前のカレンダーなの」
かすみさんはそういって、ちょっとおかしそうに笑った。

「今日部屋の掃除をしていたときに、たまたま出てきたの。偶然まだ残っていたみたいでね…。それで懐かしくて
ぺらぺらとめくってたんだけど…ほら、ここみて」
かすみさんはそう言って、月めくりカレンダーの最後のページを開いて、指差した。

「…ん?」
俺はかすみさんが指差した部分を見て、思わず言葉を発することを忘れてしまう。

月めくりカレンダーの、十二月三十日の日付部分に、何だかくらげのような…鳥のような…いや、宇宙人?…思わ
ず判断に困ってしまうような、謎の生命体の絵がしっかりと描かれている。

「…これは、あかねが描いたのか…?」
ほぼ間違いないと確信しながら、俺がそう呟くと、

「あら、よく分かったわね、乱馬君。さすがはあかねちゃんの許婚ね」
かすみさんはそう言って、にこりと微笑んだ。
そして、

「あかねはね、来年の「干支」の絵を、決まってそうやって、毎年毎年十二月三十日の欄に書き込んでたのよ。昔
は家中のカレンダーに書き込んでたんだけど、もう最近ではそれもなくなってね。…あかねはまだその時小さかっ
たから、「干支」の十二の動物に興味があったんでしょうね」
かすみさんはカレンダーにしっかりと描かれている「謎の生命体」をみて、笑っていた。

「…へえ。あかねのヤツ、飛んだいたずらしてたもんだぜ」
俺は、「謎の生命体」を見ながらそんなことを言ってやっぱり笑っていたけれど、そのときふと、俺の頭に閃く事
があった。

…子供の頃、家中のカレンダーの十二月三十一日の欄にいたずら書きをしていたあかね。
さすがに高校生にもなって、家中のカレンダーにはもうそんなことしないだろうけど。
でも、あかねの部屋の、自分のカレンダーにならもしかして…?

「…」

俺の心の中に、そんなことが浮かんだ。

えっと、確か来年の干支は「羊」だよな。
もしかしたら、「羊」なのに「羊」ではない「謎の生命体」の絵が見れるかも…。

よし。あかねの部屋の「羊」の絵、あいつが寝てる内にこっそり覗いてみよう。
眠れなかったし、いい暇つぶしだぜ。

俺は、かすみさんにカレンダーを返すと、そそくさとあかねの部屋に向かった。

 

 

 

ほどなくして。
…がちゃり、と、若干手慣れた手つきで、隣の部屋のなびきと、そして中で寝ているあかねに気が付かれないように、そっとドアを開ける。

いつもみたいに堂々とと入っていくのではなく、確実にあかねを起こさず用件を済ませねばならないので、今日の
俺はちょっとだけ、慎重だ。

俺は、そろり、そろりとあかねの机の方へ寄って行き、あかねの机の上に飾ってある、卓上カレンダーに目をや
る。

…と。

十二月三十一日ところに、やっぱり判断に困ってしまうような、「謎の生命体」の絵が、しっかりと描かれてい
る。

…何だろう、これ?
どうみても「羊」に見えないその「謎の生命体」の絵に、俺は再び言葉を発することを忘れてしまった。
羊、というかくらげというか…いや、角らしきものがある火星人か?
それに、この「顔」らしき部分から飛び出している、小石のような丸いもの三つと三角形…
一体何を描写したんだ?

「…」
…この、恐らく新進気鋭の芸術家でも理解できないような、「謎の生命体」の、絵。
それでもやっぱこれは…一応、来年の「干支」なんだろうか…。

「…帰ろう」
俺は、そんなことを思いながら再びこっそりと部屋を出ようとしたのだけれど。

「…乱馬?何やってんの?」
「うわ!」
…俺がこそこそやっている気配を珍しく感じとったのか、あかねが目を覚ましてしまった。

「なッ…ご、誤解すんなよな!べ、別に今日は夜這いとかそんなんじゃなくてッ…」
日頃の行いがものを言う。俺がそんなあかねに必死で弁解すると、

「誰もそんなこと聞いてないわよ。ふわ…」
あかねは、のんびりとあくびをしながら、身体を伸ばしていた。

「…で。何してたのよ?」
「…」
俺は仕方なく、かすみさんから聞いたことをあかねに話した。
すると、

「やだ、かすみお姉ちゃんたら!変なこと乱馬に話して」
あかねは照れたようなでもちょっとむくれた顔をしていた。
そして、

「そりゃ…ちっちゃい頃からのクセで、今年もあたしの部屋のカレンダーには落書きしてるけど…でも、さすがに
昔みたいに家中のにはしないし、それにたとえ乱馬にだって見られるのは恥ずかしいわよ」
そんなことを言いながら、机の上に飾ってある卓上カレンダーに手をのばした。

「…あの、あかね」
…俺は。殴られるのを承知で、思い切ってあかねに聞いてみた。

「それ…来年の干支、描いたのか…?」
「あ、これ?」
…すると。次の瞬間、あかねから予想もしない、信じられない答えが返ってきた。

「やーね、見てわかんないの?これは、乱馬よ」
「は?」
…その衝撃の事実を聞いた俺が、「え?え?」…と、その絵のほうを何度も見たり、自分の顔をぺたぺたと触って
いると、

「何よ、わかんないの?ほら、このおさげの部分なんてあんたそのものじゃない」
ばっかねー、なにいってんのよ!とでも言い出しそうな表情で、あかねは「謎の生命体」の「顔」らしき部分から
飛び出していた3つのマルと三角形を指差した。

「…」
…あのさ、あかね。
「何よ、わかんないの?」って。はい、わからないから聞いたんですけど…。

それは、俺か?
俺なんだな?
俺だと言い張るんだな?お前…。

「はは…そっか、俺か。俺なんだ」
…引きつる笑顔の裏で、俺は何だか無性にむなしさを感じていた。
が、一方のあかねはそんな俺にお構いなしで話しつづける。

「本当はね、来年の干支の羊を書こうと思ってたのよ。でも…」
あかねはそう言って、ちょっと照れたような表情で、自分の頬をポリポリと掻いていた。

「でもね。せっかく来年の’象徴’を描くんだったら、羊じゃなくて…その…」
「?」
「その…来年はもっといいことがありますようにって意味を込めて…」
「え?」

俺は、どんどん小さくなるあかねの声に思わず大きな声で聞き返すと、

「もう!つまりそういうことよ!とにかく、それは乱馬なのッ」
あかねは耳まで真っ赤になりながらそういって、机の上のカレンダーを自分の胸へとぎゅっと抱いてしまった。

「…来年はもっと、いいことがありますように、ね」
俺は、そんなあかねから無理やりカレンダーを奪い取った。

「何よ!聞こえてんじゃないの!返しなさいよ!」
あかねはそんな俺から再びカレンダーを奪い返そうと躍起になて飛び掛ってきたが、

「やーだね」
俺は、そんなあかねをひらりと交わすと、あかねの額に素早く人差し指を付いて、グン、と前へ押し返した。

「きゃッ…」
あかねは不意にバランスを失って、ヘナヘナヘナ…とベッドの上へと腰をおろしてしまった。

「何すんの!」
あかねが俺に突かれた額を両手で抑えながらわめいているけれど、

「おまえなー。順番が逆だろ?『来年はもっといい年にしような』って、まず俺にはじめに言わねえでどうすんだ
よ?」
俺は、そんなあかねの頭を手のひらでポスっと叩くと、ため息をついた。

「え?」
あかねは、俺のそんな言葉に始めはキョトン、としていたけれど、

「…だから。おまえが一人でこっそりそう思ってるつもりでカレンダーに絵を書くのと、俺もそう思ってるって事
をお前が知って、そーゆー心持でカレンダーに絵を書くのじゃ全然違うだろうが」
俺がそうやって更に続けたことで、
「…う」
あかねはようやく俺の言いたい事を理解したのか、頬を赤くして俯いた。
俺も、自分で言っといてちょっと照れ、あかね同様俯く。

…真暗な部屋の中に、静かな時間が流れていた。
カチッコチッ…という時計の針が進む音と、お互いが呼吸している息の音だけがいたずらに静かな空間に流れてい
る。

「…じゃあ。ちょっと順番逆になっちゃったけど」
…と。
そんな張り詰めた沈黙を破るように、あかねが小さな声で呟いた。

「…乱馬、来年…」
そして、あかねがそう言おうとした矢先…俺は、そんなあかねの口をそっと、人差し指で抑えた。
「?」
あかねは俺のその仕草のせいで、「ん?」と言葉を飲み込んでしまう。

「…来年はもっと、いい年にしような」
俺はそんなあかねに、一言そう言った。

…ったく、あかねのバカ野郎。
俺だって、来年はもっともっといい年にしたいって、思ってるに決まってんだろ。
そんな言葉はなあ、いくら俺が照れやだからって言っても、やっぱり俺から先に言いてえんだよ。

それに、来年の「干支」じゃなくてカレンダーに俺の似顔絵…らしきものを描くなんて、ちょっと可愛いなとか、
思っちまったんだからしょうがねえだろ。

「…うん」
…あかねは。
俺にふさがれていた口に当てられている人差し指を両手できゅっと握ると、そっと外した。
そして、ちょっと照れたような笑顔でそう答えると、

「…乱馬。ありがと」
その握った指から手を離し…改めて俺のその手に指を絡めた。

「べ、別に礼を言われる事のもんじゃねーよ」
俺は、その絡められた指を力をいれて握ると、ちょっとだけ、あかねを自分の方へと引っ張ってみる。

「…カレンダー、こっそり見に来ただけじゃなかったの?」
あかねは、俺の方に引き寄せられ、そのまま身を寄せた状態で俺に言った。

「寝れねえから、暇つぶしにな。でも…」
俺は、そんなあかねにやっぱり身を寄せる。

「俺の似顔絵だって言い張るその絵にもまだまだ物申さなくちゃいけねえし…」
「何よッ」
「来年を良くする為に今年の反省会もしなくちゃいけないし…」
「何も、今からじゃなくたって…」

…要は、一緒に居たいんです。

「…ばーか」
あかねは、一言そう呟いた俺に耳まで真っ赤になりながらそう呟くと、

「…仕方ないから、付き合ってあげるわよ。まったく、羊じゃなくて羊の皮を被った狼だったわね」
そんなことをぼやきつつも、少し嬉しそうな表情をしながら、俺の首に手を回すようにそっと、抱きついた。
「へへ…」
俺はそんなあかねの気持ちが嬉しくて、抱きついたあかねの背中にそっと手を回してみる。

 

何となく寝れなかった夜。
かすみさんに聞いた、あかねの子供の頃からの「イタズラ」。
そして、あかねのカレンダーの、十二月三十一日の欄にこっそりと描かれていた…「俺」らしきイラスト。

そのイラストが、「来年ももっといい年にしよう」という意味を持ってるものならば、
じゃあ、今年が俺とあかねにとって「いい年であった」その証も、やっぱり残しておきたいんだよ。

一月一日から今日、十二月三十日まで。
その間がどんな日々を送ってきていたかなんて、今から話したところでどれくらいかかるか分からないけれど。

でも、
その一年の間、俺がどれだけあかねの事を好きでいたか、あかねがどんだけ思ってくれていたか。

…それだけは、改めて確かめ合えたらいいな、なんて。
たとえ、一晩かかっても。
そして、その気持ちが今年もいい年であった「証」に出来たら…

「最高なんだけどな」
…俺は、俺に抱きついているあかねの耳元へそっとそう呟いた。

「そうだね」
あかねは、そんな俺の言葉にすぐ返事をすると、笑顔で頷いた。

 

 

今日は、十二月三十日。明日になれば、大晦日。
だけど俺とあかねの「二人」のカレンダーは、たった今から日めくりを開始する。

春が過ぎ、
夏を迎え、
秋になり、
そして冬を迎えたちょうど十二月の今日の日付になった、その時に。
俺達が「いい年だったね」と、お互い笑い合えるそんな「証」を得られるように…

 

 

 

俺は、今夜は自分の腕の中にあるこのぬくもりを…手放す事は出来なくなりそうだ。


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