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ありがと(なびき視点)

「あら、あかね。何かいいことでもあったの?」
「ん?うん、ちょっとね」

夕食前の、居間で。
そう言ってニコニコとしているあかねの左手の薬指には、決して高くないだろうと思われるイミテーションの指輪がはまっていた。

一応はシルバーだけど、今にも取れそうなちゃちい石がこじんまりと付いている。
目利きのするあたしだったら、絶対に買わないような安っぽい感じの指輪だ。
でもきっと、あかねにとってはどんなブランドの指輪よりも、どんな高価な指輪よりもずっとずっと、崇高で価値のある指輪なんだろう。

学校に行くときはさすがにしていなかったと思うんだけど。
でも嬉しくて、こうやって家で、つけているんだろう。

「お姉ちゃん、お茶入れてあげようか?」
「ねえねえ、この本面白いの?」

・・・ことあるごとに、その指輪がはまっている手を見せるかのように動かしながら話し掛けてくる、あかね。
その頬を染めて嬉しそうにしている様子を見る限り、この子が昔は「男なんて大嫌い!」なんて言いながら、言い寄ってくる男の子達を蹴散らしていただなんて、全く思えない。

可愛いのに、勿体無い。それに・・・何かいつも、片意地を張っているというか。
笑っているし友達も多いし、別に暗いわけじゃないけど・・・でもどこか何か隠しているというか、時々見せる寂しそうな表情が気になる時もあった。

それに、男なんて嫌い、結婚なんてしない、恋愛より格闘技に興味がある・・・今はそんなこと言っていたって、いずれはそれだけでは済まされないのが世間。
それを分かっていないのか、それとも分かろうとしようとしないのか?
とにかく、いつも強情で意地っ張りなあかねがあたしは心配だった。

そんなこの子を変えたのが、彼だ。
そう、この子の指にこの指輪をはめてくれたアイツ。
突然、「許婚」にされて最初は反発しあっていたのに、結果的には「親同士が決めた許婚」じゃなくて「自分達もそう望んでいる」許婚になったってことよね?
まあ今でも意地っ張りな所はさほど変らないみたいだけど、それでも「男なんて大嫌い」とは、今はもう言わないでしょ。
大嫌いだったはずの男に、命を賭けて守ってもらっているんだもん。
とても大切に、とても愛されているんだもん。

堅く冷たく閉ざされていた、あかねの心の奥・・・そこに光を照らして温かくしたんだよね、乱馬君が。
あたしや、かすみお姉ちゃんや、お父さんでも出来なかった事を、乱馬君はやったんだ。
はん、乱馬君のクセに生意気な。
生意気だけど・・・・・・

「ねえ、あかね」
「なあに?お姉ちゃん」
「あんた今、幸せ?」

あたしは、何故か無性にあかねにそんな事を聞きたくなった。
どうしてそう思ったのかは分からない。多分答えだって、想像は出来ている。
でも、何だかあかねの口からはっきりと、答えを聞きたかった。
勿論あかねは、

「・・・うん」
先ほどから紅潮させている頬を更に赤くさせながら、何の躊躇いも無く頷いた。

「そ」
「お姉ちゃん、それがどうしたの?」
「別に、どうもしないわよ」

あたしは素直に答えたあかねにそっけなくそう言うと、サッ・・・と立ち上がり居間からで
た。
と、

「はー、ひでえ目にあった・・・」
あたしが居間を出て廊下を歩いているちょうどその向う側から、フラフラとおぼつかない足取りで乱馬君が歩いてくるのが見えた。

彼がフラフラしているのは、極度の疲労のため。
ちなみに何故それをあたしが知っているかというと、あたしが契約をしてきた運動部の助っ人を掛け持ちでやっているはずだから。
スケジュールを組んだのがあたしなんだから、これは間違いが無い。
・・・

「あ!なびきてめえ!」
案の定、勝手にレンタルされる事になっていた乱馬君は、あたしの顔を見るなりむっとした表情をしていた。

「お帰りー、乱馬君」
「お帰りー、じゃねえ!てめえどういうつもりだ!約束じゃサッカー部だけのはずだろうが!」
「仕方ないじゃない、柔道部と卓球部も貸して欲しいって泣きついてくるんだもの。困った人に手を差し伸べるように、天道家では教育を受けているのよ」
「・・・俺には差し伸べねえのかよ」

そして、あたしに文句を言うも悉く返され交われ、ため息をついている。
その内、

「あかねは?」
「居間にいたけど」
「・・・ふーん。あーあ、俺はまず風呂に入ってくるか」

あたしに言い返したところで敵わないと、そろそろ学習できるようになったのか。
乱馬君はもう一度ため息をつきながら、まずはあかねの所在を確認しつつ、あたしの横をすり抜けて「風呂に入り」にいくはずにも関わらず、何故かあかねのいる居間へと続く廊下を
歩いていく。

「・・・」
あたしは、そんな乱馬君の後ろ姿をじっと見つめていたけれど、

「乱馬君」
彼が、あかねのいる居間に入るべく戸に手をかける直前・・・あたしは乱馬君を呼び止めた。

「なんだよ?明日は助っ人はしねえぞ、あしたは用事があるから」
乱馬君は、険しい表情であたしにそう主張する。もしかしたら明日は、あかねと学校帰りにデートでもする約束をしているのかもしれない。

「別に、そんなこと頼まないわよ」
「じゃあなんだよ」
「・・・」

あたしは、「一体何を頼まれるのか」と不安そうな顔をしている乱馬君を見つめ、一息置いた。
そして、

「ねえ、乱馬君」
「なんだよ」
「ありがと」
「は?」
「・・・ちょっとお礼が言いたかっただけよ。安心しなさい、あんた達のデートを潰すような野暮なことはしないわよ」
「なっ・・・」
「それだけ。じゃあね」

あたしは乱馬君に一方的に御礼を言って、そのまま居間から遠ざかり自分の部屋へと戻った。
乱馬君にしてみれば、あたしにお礼を言われる事なんて殆ど無い事だし、かなりそれが不気味だったようだ。
あとで居間にいたかすみお姉ちゃんに聞いたところによると、

「なびきが、俺に御礼を言ったぞ・・・」
「助っ人の?」
「いや、アイツはそんな事を言うタマじゃねえ!だいたい、アイツが契約してきた助っ人なのに何故俺に礼を・・・」
「乱馬 ・・・イタリアのマフィアとかって、相手を殺す前に豪華な贈り物をしたり友好的な態度を見せるって何かの本に書いてあったよ」
「殺されるのか、俺はー!?いやまて、アイツは殺すよりも何かもっと、俺に対して恐ろしい事を・・・」

あたしのお礼の言葉に対し、乱馬君とあかねはそんなことを話していたらしい。

そりゃ、あたしが純粋に人に対して御礼を言うなんて滅多にないことだけれど、それはいくらなんでも失礼よねえ。
でも・・・

何を勘ぐられようが、どう思われようが、あたしはお礼を言いたかったのよ。
あかねが・・・心配していたあかねが、何の躊躇いも無く今を「幸せだ」って言えるようにしてくれたことを。
純粋に誰かを、愛せるようにしてくれた事を。
あかねが本当の笑顔を、他人に見せるようになれた事を。

だから、お礼ついでにさっきのマフィア呼ばわりもチャラにしてあげるわ。
・・・もう、言わないからね。
言わないから、その代りちゃんと覚えておきなさいよ?

一応はあたしだって、乱馬君に感謝しているって事。
そして、ちゃんと忘れるんじゃないわよ?
これからも、他の誰よりもあんたが、そのあかねの笑顔と、幸せを守ってあげるんだってことを。


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