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ヒミツゴト

「ここ、ここ!ここだよ、あかね!」

…夏休みの、ある暑い日の午後。
「なあ、ちょっと出かけねえか?」
家族で旅行にきた温泉旅館の窓から外を眺めていたあたしに、乱馬がそんな提案をしてきた。
「え?別にいいけど…」
ちょうど今は、お父さんとおじ様は卓球をしに行ってしまって、留守。
おば様はお風呂に入りに行ってしまっていないし、かすみお姉ちゃんとなびきお姉ちゃんは、お土産を見に売店へ行ってしまった。
そう、部屋にはあたしと乱馬しか残っていなかった。
「見せたいものがあるんだ」
「見せたいもの…?なに?」
「行ってからの御楽しみ」
…乱馬はそう言うと、何か部屋に備え付けの棚の中をごそごそと漁ってポケットに入れた。
そして、
「さ、行こうぜ。それにこのまま部屋いるのは、色々と問題があるし」
そう言って、あたしの手を取って部屋を出る。
「なんで問題があるのよ」
あたしが乱馬に手を引かれながらそう尋ねると、
「だってさ。皆がいつ部屋に帰ってくるかもわかんねえのに、楽しんでなんて」
「…あんたね。旅先でもそんなこと考えてんの?」
「人間が生きていく上では必要な行為だろ」
乱馬はにっと笑いながらそんな事をぼやいている。
「もー」
「いてッ」
あたしはそんな乱馬の額をピシッと指で弾いてやると、
「それじゃ、早く行きましょ。ちゃんと連れてってよ」
そのままその手を、乱馬の腕に絡めた。
「はいはい」
乱馬はその絡められた腕を自分のポケットに突っ込むと、ちょっとだけあたしの方に頭を傾けながら、歩き始めた。
そして、歩き始める事約十五分。
旅館裏手の緩やかな山道を登った先にある、とある木の下で立ち止まった乱馬は、
「ここ!ここだよ!」
…そういって、あたしにその木を指差してみせたのだった。

 

「ここって…ただの木しかないじゃないの」
あたしがそう言って首をかしげると、
「木じゃねえよ。見せたいのは、これ」
「?」
「ほら、ここだよ」
乱馬はそう言ってあたしを手招きし、指差した木の幹の「ある部分」をトントン、と叩きながら強調する。
「んー…?」
あたしは乱馬に指示された通りにその幹の一部に目を凝らしてみると…

永遠の愛を誓う   玄馬/のどか

…ご丁寧に二人の名前の上には「相合傘」まで描かれた、そんな落書きがあった。
「こ、これは!?」
その落書きに驚いたあたしが口をパクパクさせながら乱馬に尋ねると、
「ここな、親父とお袋の新婚旅行の場所なんだって。んで、そん時に刻んだらしぞ」
乱馬はそう言って、ちょっとハズカシそうな顔をしていた。
「へー…おば様はともかく、あのおじ様がね…」
あたしがそんな事を言いながらその落書きに指で触れていると、乱馬はそんなあたしの足元に急にしゃがみこんだ。
そして、なぜか…しゃがみこんだ、その地面を掘り始めた。
「…何してんの?」
あたしがそんな乱馬の横に同じようにしゃがみこみ、一生懸命地面を掘っている乱馬に話し掛けると、
「いーの。ほら、お前はこれ、持って」
「?」
乱馬はゴソゴソと自分のポケットを漁り、旅館を出るときにポケットに詰め込んできたらしきものを、あたしに差し出した。
「?」
それを受け取ったあたしは、更に首を傾げてしまった。
…乱馬が差し出してきたのは、白いメモ用紙とボールペンだったからだ。
「乱馬、これ…?」
あたしがその二つを受け取りながらさらに不思議そうな顔をすると、
「よし、出来た」
乱馬は地面を掘り終えたようで、額にうっすらと掻いていた汗を拭った。
そして、
「これにな…その、俺たちも何か書いて埋めてみようかなって思って」
「え?」
「だってさ。あのスチャラか親父の誓いが、ちゃんと守られるようなご利益のある木が植えられている場所だぜ?ちょっとくらいは俺たちにだってご利益があってもいいだろ」
そう言うと、土で汚れた手をパン、パンと払った。
「この木に、彫っちゃダメなの?」
あたしがそんな乱馬の手を、持っていたハンドタオルで拭いてやると、
「親父達に見られるの、何か釈然としないんだよな。それに…」
「それに?」
「ほら、親父とお袋の名前の上に相合傘があるだろ?」
「うん」
「その相合傘の「柄」の部分、二つの名前の間を真っ直ぐに分けるように下に伸びてるだろ?」
「うん」
「二人の間から生まれてるその線がな?何だか”俺”を表しているような気がしたんだ。だから、この線をずーっと真っ直ぐ下まで伸ばして…伸ばした位置の地面に、今度は息子の俺が、あかねとのそーゆー記念を残してやろうと思ってさ」
乱馬はそんな事を言いながら、笑った。
「ふーん…。乱馬にしては、可愛い事考えるじゃない」
あたしがそんな乱馬にそう言って笑ってやると、
「なッ…いいだろ、別に」
乱馬は少し照れたような表情をする。
「えー、別にいいわよ」
あたしはそんな乱馬の真っ赤な頬を指で突っつきながらそう言うと、
「ほら、書こうよ。あ、でも何を書く?」
そう言って、乱馬から先ほど渡されたペンを握り、白いメモ用紙をトントン、と叩いた。
「うーん…そうだなあ…」
「何よ、それは何も考えてないの?」
「し、仕方ねえだろッ」
乱馬はちょっと焦ったような表情でポリポリと頭を掻くと、
「やっぱ…」
「やっぱ?」
「…あれか?」
そう言って、あたし達の上部、木の幹を指差した。
「あれって。もしかして、おじ様たちが書いたヤツ?」
あたしが「本気?」とちょっとニヤリとしながら乱馬に尋ねると、
「い、いいじゃねえかッ。ほかに思いつかないし!」
乱馬は更に真っ赤になりながらそう叫んであたしからメモ用紙とボールペンを奪い取った。
そして、
「ほらッ。俺はもう書いたぞッ」
素早くそのメモ用紙に自分の名前を書いて、あたしに渡した。
「…」
あたしは、クックッ…と笑いを堪えながらもそんな乱馬の名前の横に自分の名前を書き
…そこでペンを走らせる手を止めた。

…白いメモ用紙には、あたしと、乱馬の名前が記されているだけの状態だった。

「…書くの、やなの?」
あたしがいつまでたっても、おじ様たちの落書きと同じように…名前の上に相合傘を書いたり、例のフレーズ「永遠の愛を誓う」も記そうとしないので、乱馬が少し表情を曇らせた。
「そんなこと言ってないでしょ」
あたしは乱馬にそう言うと、表情を曇らせてる乱馬に向って自分の小指を差し出した。
「な、なんだよ…」
乱馬はそんなあたしの行動に驚いていたけれど、
「…だって。書く前に、まずちゃんと約束してよ」
「え?」
「だから…その…誓ってくれるんでしょ?」
「…」
あたしのその言葉で全てを察したのか、
「うん。…誓うよ」
そう言って、あたしのその小指に自分の小指を絡めた。
「約束よ?破ったら、承知しないからね…」
「おめーもな」
「あたしは平気よ。乱馬が破らなければ」
「俺だっておめーが破らなければ問題ねえよ」
「じゃ、全然問題ないじゃない」
あたしは乱馬と絡めた小指を上下に揺らしながらそう言って笑うと、
「じゃ、書くね」
ようやくメモ用紙にフレーズと傘を書くべく、再びペンを走らせようとしたけれど。
「待った」
「え?」
「書くの、待った」
いきなり乱馬がそう言って、あたしからペンを取り上げてしまった。
「…書かれるの、やなの?」
…今度はあたしがそう言ってさっと表情を曇らせると、
「違うよ」
「じゃあ何で…」
「誓いだから」
「え?」
「誓いのキス、するの忘れてた」
乱馬はそう言ってにっと笑うと、
「あッ…」
ボーっとしていたあたしの唇にチュッ…と軽くキスをした。
そして、
「はい、ペン」
あたしに再び取り上げたペンを渡すと、あたしがちゃんとメモ用紙に「フレーズ」や傘を書くのをじっと見ていた。
「…はいッ、できた!じゃ、これ早速埋めようよッ」
程なくしてあたしはそれをメモ用紙にしっかりと書き込むと、さっそく乱馬が先ほど掘っていた穴へと埋め込むべくそこにメモ用紙を置いた。
…が。
「あ!」
あたしがメモ用紙を置いたのと同時に、乱馬が急に手を出して、その地面に置いたメモ用紙をさっと取り上げてしまった。
更に、
「あ!ちょっとッ…」
あたしの反対側の手に握られていたペンを素早く取り上げると、あたしに見えないような位置で、そのメモ用紙に何かを書き足していた。
「ちょっと!何書き足してんのよッ」
あたしが乱馬の背中越しに覗き込むと、
「いいの。あかねには関係ないことなの」
乱馬はそう言って、あくまでもあたしに見えないようにしながらメモ用紙を折りたたみ、
そして素早くその上に土を被せてしまった。
そして、
「さ、行くぞ」
「あッずるいじゃないッ」
「いーから、行くの」
埋めた場所を掘り返そうとしていたあたしをその場所から遠ざけるように立たせると、
乱馬は足でその部分の土をペン、ペンと固めてしまった。
「もー…」
あたしは、ぶーッ…と頬を膨らませて乱馬を睨みながら、
「なんて書き足したか、教えてよ。気になって寝れないじゃない」
そんな事をぼやいた。
「じゃあ寝れないままでいろ」
「ひっどーい!人間は寝ないと死んじゃうんだからねッ」
「安心しろって。その代り俺は、あかねがぐっすりと眠れるように”疲れさせて”やる事は出来る」
「…疲れても寝れないかもしれないじゃない」
「余計ないこと考える事が出来ないくらい疲れる事だってあるだろ」
乱馬はそう言ってニヤッと笑うと、「例えばな?…」と親切丁寧にあたしの耳元でその説明を始めた。
「いやーッもうッ」
あたしはそんな乱馬の言葉が消えないように耳を両手で抑えた。

 

「ばかだな、あかねは。耳抑えてたら、俺の声が聞こえないだろ?」
「ばッ…わざと聞こえないようにしてるのよッ」

結局乱馬はその後、何だかんだ話を誤魔化して、あたしに「何を書き足した」のかを教えてはくれなかった。
…でも。

 

乱馬はちゃんと教えてくれなくても。
あたし、乱馬がコソコソっとメモ用紙を折りたたむ時一瞬だけ…実はその文字を目で捕らえていた。
だから、本当は教えてくれなくても…知ってるんだ。
『これからもずっと』
…乱馬が隠した紙には、そう書いてあった。
「これからもずっと」。
これから「も」。
てことは、今まで「も」ずっと、そう乱馬は思ってたって…事なんだよね?

(…ったく、バカなんだから。そんなこと、隠さなくたっていいじゃない)
初めから、紙にそう書けばよかったのよ。
…あたしだって、そうなんだから。
「…意地っ張り」
…何だかそんな乱馬がちょっと可愛く見えた。
あたしは、一人そんな事を呟いて笑った。


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