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笑うと可愛いよ

週末にクラスメートと旅行に行ったあかねを、かすみさんに頼まれて、駅まで迎えにこさせられた俺。
しかし、電車の到着時刻から十分以上立っているにも関わらず、一向にあかねはその姿を見せない。

…おっせーな。もう電車ついてんだろーが。

別に、あかねに「迎えに行くよ」と本人と約束していたわけでも、逆にあかねから「来てほしい」と言われたわけではない。
本当に今日、たまたま居間でテレビを見ていたら、
「そういえば、旅行帰りってことは荷物があるかもしれないわ。お土産買ってくるって言っていたし」
「へー」
「お土産買ってきてくれるって、言っていたの」
「へ、へー…そうですか」
「お土産、たくさん買ってきてくれるかもしれないし。結構重いのよね…お土産」
「…荷物、持ってやったほうがいいです、かね…」
「まあ、乱馬君優しいのね。お願いね」
別名、笑顔の敏腕スナイパー。妙に迫力のある菩薩の笑みで見つめられた俺は、若干嫌な汗をかきながら、しぶしぶとこうしてやってくるはめになったのだった。
だから、かすみさんから言われた電車の到着時刻に合わせてこうしてやってきたのだけれど、
あかねの姿は一向に改札から見えない。
電車が遅延しているわけでもなさそうだ。ということは、ホームでおしゃべりに夢中になっている、ってところか。

…電車から降りたら、さっさ解散して改札出てくればいいのに。

これだから、女は困る。俺はぶちぶちと文句をいいながら、改札の横で欠伸をしながらあかねを待っていた。
と。

「なあ、さっきの子、すげーかわいくねえ?」
「あ、お前もそう思った?」

そんな俺の耳に、ふいにそんな会話が耳に飛び込んできた。
声のした方を見ると、俺と同じ年か、ちょっと上くらいの男二人組。
どうやら、駅構内に偶然、自分達の好みのタイプの女がいたらしい。
…あーあ、のんきな奴らはいーよな。
あれくらいの年頃の男だと、頭の中はそんなことばっかりかもな…なんて。
まるで壮年の紳士にでもなったがごとく、 俺はその会話を適当に聞き流していた。
が、

「三人組の、真ん中の子だろ?」
「そーそー、ショートカットの。スタイルもいいし、超かわいーよなー…」

二人組みは更に盛り上がって会話を続けている。
そして、もう一度、改札を出てくるその女を見ようとでも言うのだろうか。
特にその場所から動きもせず、ちらちらと構内の方を覗いている。
近頃は、そうやって好みの女性を見つけてはこっそり後をつけて家を突き止めたりする輩もいるらしい。
全員が全員そういうわけではないとは思うけど、絶対に違うとも言い切れないわけで。
それに…
「…」
そんな二人の様子に、 俺は嫌な予感がしていた。

…あかねの奴、クラスメートのさゆり・ゆかとあかねの三人で旅行に行くって、確か言っていた。
降りる駅は、三人ともこの駅。
それに、その三人の中でショートカットなのは確か…あかねだけだったような気がする。
「…」
ショートカットでスタイル良くて、可愛くて。
手前味噌ではあるけれど、そのすべての条件が当てはまる奴なんてそうそういない。
「…」
俺は、ざわざわと騒ぐ胸を押さえつつ、無関係を装いつつも二人組の会話に耳を傾ける。

「なあ、お前声かけてみろよ」
「え!お、お前がいけよ!」
「この間の女は、俺が声かけたじゃねーか。今度はおまえだろ?」
「ちぇっ…しょうがねーなあ」
「でも、独り占めすんなよな?」
「何か、わりに合わねえなあ」

二人組はそんな事を言いながら、そわそわと駅構内の方を覗き込んでいる。
聞くからに、あまり良い類の輩ではないようだ。
俺はますます、嫌な予感に苛まれた。
そして、嫌な予感と一緒に、ムカムカしてくる気持ちも生まれてるのも感じていた。

「…ったく」

俺は小さくため息をつくと、とりあえずその二人組の横を何気ない顔ですり抜けた。
そしてなけなしの金をはたいて入場券を購入し、駅構内に入った。
構内に入ると、一路あかねが降りたはずのホームへ向かって歩き出す。
と、ほどなくして、
「あれ?乱馬?」
俺がホームへの階段を昇ろうとしたところで、あかねと、あかねと一緒に居たさゆりとゆかに鉢合わせした。
どうやら三人、やはり電車を降りた後ホームの上でおしゃべりに夢中になっていたようだ。
「やだあ、あかねお迎えなの?」
「いいわねー、あかねは」
俺の姿を確認した途端、さゆりとゆかが口々にそういって、「じゃああたし達はここで!」と先に改札へ向って消えていった。
あかねはそんな二人に手をふりながらも、予想外に登場した俺を見て尚、不思議そうな顔をしている。
あげく、
「来てくれたの?だったら、改札の所で待っててくれて良かったのに」
のんきなあかねは、そんなことを言う始末だ。

…こいつ、人の気も知らないで!

「…色々あんだよ」
俺はそんなあかねに一言だけそういうと、あかねの荷物をひったくるように奪い取った。
そして、あかねの細い手首を掴んで強引に歩き出す。
「え!ちょっと、ちょっと…!」
突然俺に引っ張られて歩き出すあかねは、手を掴まれて歩いてる照れと、急に強い力で引っ張られた驚きで、複雑な表情をしている。
「帰るぞ」
俺はそれだけ呟くと、そんなあかねに構わず、ズンズンと改札を出た。
その時に俺は、改札横に居た例の二人組をチラッと見た。
二人組は、「なんだ、彼氏がいたのかよ」とでもいいたげな顔で俺を睨んでいた。これ見よがしな舌打ちも聞こえる。

「…」
…あったりめーだろ!

おめーらがあかねに手を出そうなんざ、百年、いや五百年は早えんだよ!
俺はかなり不機嫌な目で奴らを睨み、そのままそこを通り過ぎた。
「乱馬ったら!ねえ!」
勿論事情が全く分からないあかねは、俺の後ろでいろいろと叫んでいた。が、俺は構わず歩きつづけた。
そして、 駅からしばらく離れた道の端っこで、ようやく俺は立ち止まった。
「もう、乱馬ってば!一体何なのよ!」
そこで俺があかねの手を離すと、あかねは今度はむっとした表情で俺にそう言った。
それに、
「しかも、さっき改札の所にいた男の子達の事、睨んでたでしょ?向こうも乱馬のこと睨んでたけど…喧嘩でもしたの?」
鈍いあかねにしては珍しく、先ほどの俺の行為に気が付いているようだった。
あかねは、ちょっと心配そうに俺の顔を覗き込む。
…普段は恐ろしく鈍いのに、何でこんな事だけ鋭いんだお前は?
俺は思わず口に出してしまいそうだったが、
だからといって詳しく事情を話すと、何だかあかねにバカにされそうだったので、
「別に」
とりあえずは、黙っている事にする。
…だけど。
俺のそんな浅はかな考えなんて、あかねはすぐに見抜いてしまったようだった。

「…ばーか。何心配なんてしてんのよ」

結局は俺に詳しい事情を話させ、状況を理解したあかねは、ちょっと面白そうな口調でそういって、再び俺の手をとった。
俺は照れくささを隠すため、
「うるせーな!世間には、もの好きな奴だっているんだよ!」
そう叫びながら、あかねの方を振り返ることなく歩き出す。
「えへへへへ…」
だけど。
悔しい事に、俺が照れれば照れるほど、あかねは嬉しそうだった。

…コイツ!人の気も知らないで。

「ね、ね、それよりね…旅行に行ったらね…」
しかも、ふてくされている俺の心なんて全くお構いなしに、あかねは満足そうな顔をして、俺に話しかけてくる。
俺はそんなあかねに心の中でため息をつきつ、そんなあかねの楽しそうな表情を見て、ぼんやりと考えていた。



…こいつ、さっきも駅のホームで、きっとこんな顔してさゆりやゆかと話してたんだろうな。
だから、あんな変な輩に目を付けられたんだよ。
ったく、スキが多いんだよ。
そんな顔して話してたら、嫌でも他の男の目を引いちまうだろーが!
ああ、もう学校が電車通学じゃなくて、本当に良かったぜ。
笑うなとは言わねえけど、
いや俺はお前の笑った顔が好きだから見たいけど、
やたらめったら、ほかの男に見せるのはどうかと思うんだよな。


まるで、娘を心配する父親しかり。
いや、きっとこれは彼氏が思う範疇を超えてはいないはず。
…俺は、あかねの話を聞きながら家に帰る道々、そんなことを考えていた。
そして、

「あかね」
ほどなくして家についた時。
俺は、すぐに家に入らず、門の前で立ち止まってあかねに声をかけた。
「何?乱馬」
あかねが、俺のその声で足を止める。
「…お前さ」
…あんまり他の奴らの前で、笑うなよ。
俺は思わずそう言ってしまいそうになって、口を閉ざした。
あかねは可愛い。それが笑うと、もっと可愛くなる。
俺だってその笑顔が好きだ。
だから、もしも俺が「笑うな」なんて言ってしまったら、
不器用なあかねはきっと、それ以外の感情も顔に出せなくなってしまうかもしれない。
…それじゃあかねらしくない。

 

「…どうしたの?」
急に黙ってしまった俺を見て、あかねが心配そうに呟く。
「お前さ…」
俺は、そんなあかねの頭をポンと軽く叩くと、一足先に天道家の門をくぐった。
そして、一瞬だけ考えると…振り返らずにそのまま前を向きながら一言、あかねに言った。

 

「お前さ…笑うと可愛いよ」



すると、
「な…何よ、急に!」
あかねは、そんな俺の言葉にちょっと驚いていた。
そして、真っ赤な顔して門をくぐり、俺の背中に追い付いてくる。

「何って、そう思っただけだよ」
「乱馬。…熱でもあるんじゃないの?」
「失礼なヤツだな、お前」

 

…本当は、あかねの全てを独占してしまいたいけど。
あかねの笑顔を無理やり奪ってしまう事は、いくら俺だって出来ない。
だったらせめて、その笑顔が好きな気持は伝えよう。
俺がそう言い続ければ、きっとあかねはこれからももっともっと、俺にその可愛い笑顔を見せてくれるから。
まあそのせいで、多々心配な事もあるけれど…今しばらくは、我慢してやるか。

「ねえねえ、急にどうしたのよ?あ、わかった。お土産期待してるんでしょう?」
「別に」
「乱馬にはねー、おいしいお団子買ってきたよ」
「団子だけかよ」
「まー、贅沢ね!買ってきてもらったこと自体に感謝してよね」

 

俺は、先ほどとは一転、意地悪い笑顔で笑うあかねの、また違う可愛いその表情に心の中で満足しつつ、
あかねと二人、皆の待つ家の中へと入っていった。


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