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雨のち、晴れ

乱馬と喧嘩した。
喧嘩の原因は、些細なこと。
今となっては、それが何だったかさえも、はっきりとは思い出せない。
でも、乱馬と喧嘩したってことだけは…あたしの頭の中にはやけにはっきり残っていた。
わめくだけわめいて、泣くだけ泣いて。
あたしはひとり、家の外へと飛び出してきた。

でも。
家を飛び出した時は雨が降っていたのだけれど、
雨があがって、雲間から青い空が見え隠れする今は、アスファルトを駆け抜ける為に差していた傘さえも、単なる水溜りを飛び越えてゆくための杖に七変化だ。
ふと、空を見上げると、ちょど隣町の方角に…うっすらと七色の虹がかかっているのが見えた。
霞がかっているものの、雨があがった直後に虹に遭遇するなんて…と、あたしは少しだけ感動していた。
そして、 虹に感動する心の余裕が出来たのと同時に、あたしはようやく、かっかとしていた頭を冷やす事が出来た。
冷静に、乱馬としてしまった喧嘩について考えられるようになった。


喧嘩の原因は良く思い出せないけど、喧嘩の最中に、乱馬に対して色々とひどいことを叫んでしまったのは…確か。
「何でいつも、そんなひどい事ばっかり言うのよ!」
…あたしは喧嘩の最中、何度となくそう叫んだ。
でも、そんなあたしだって、乱馬に負けないくらいひどいことを彼に言ってしまっている。
そう、いつだって…


…謝ろう。


何故だかは、分からない。
でも、
空にかかる透きとおった虹を見ていたら、何だあたしの中に、そんな気持ちが生まれた。
「心が洗われた」
…そんな風に表現したら絶対にオーバーかもしれないけど、
美しいものを見たら心もうつくしくなる気がするのと同じように、透き通ったものを見たら心も透きとおったような気がする…それと同じなのかもしれない。
「謝ろう、乱馬に」
あたしは、もう一度荘自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「可愛くねえ!」…そう何度も言われて。
「素直じゃねえ!」…何度もそうなじられて。
そんな言葉をいわれているうちに、腹が立っていろいろとひどい事を、あたしは叫んでしまったんだ。
「乱馬なんて、大ッ嫌い!」
手当たり次第その辺にあったものを投げつけて、挙げ句の果てに床にめり込むぐらい叩きのめして。
あたしはこうして一人、家を飛び出してきてしまった。
だけど、時間が立てばたつほど、乱馬を叩きのめした手が痛くなってくるのと同時に、心がとても、痛かった。
「謝れ」
心が、あたしにそう語りかけている。
遠くの空に映える透き通った虹を見ていたら、腹が立ったことよりも、そんな心の語りかけの方があたしの心を支配していく…そういっても過言ではなかった。
透きとおった七色の虹を見て、時に立ち止まって、真っ白な雲の合間からのぞく、青空を仰ぐ。
そして再び、アスファルトの水溜りを上手に傘で飛び越えながら道を歩いていくあたしには、腹が立ったこととか、悲しかった事とか。
そういうことを全て帳消しにして、
「ごめん!」
…乱馬に対して、素直に謝れるような気がした。
「ゴメンね!」
…あたしは。
乱馬に謝る前の練習をかねて、そして自分自身を奮い立たせる為に、遠くの空にかかる虹に向って大声で叫んでみた。
すると、

「わ、わかったよッ」

大声で叫んだあたしの背後から、そんな声が不意に聞こえた。
「え…」
あたしがギョッとして振り返ると、
「そ、そんな大声で叫ばなくても分かったからッ…」
…そこには、
女の子の姿をした乱馬が、照れたような少し赤い顔をして立っていた。
「なッ…いつからそこにいたのよッ」
謝るつもりで練習を兼ねて叫んでは見たものの、予想もしなかったらんまの登場に、あたしはドキドキとしながら叫ぶ。
「結構前から」
「え?」
「お前、前ばっか見て後ろ振り返んないから」
らんまはそう言って、あたしと自分の間にある大きな水溜りを、上手にジャンプして飛び越えた。
そして、
「…」
不意に、自分の右手をあたしに差し出した。
「な、なによッ…」
あたしがそんならんまの手に戸惑っていると、
「な、仲直りの握手に決まってんだろッ」
らんまは恥かしそうにそう言って、戸惑ってるあたしの手を強引に掴んだ。
「…」
あたしがそんならんまの顔をじっと見ると、
「…今日は、その…言いすぎた。ごめん」
らんまはぼそぼそっとそういって、あたしの手を更に強く握る。
「…仕方ないわね。そんなにらんまが言うなら許してあげるわよ」
あたしがそんなことをらんまに向って言うと、
「な、なんだよそれ。あんな風に叫んで謝るから、俺だって仕方なく謝ってやったんだぞッ」
「なによッ。あれは練習だったのよッ。あんたが先に謝ったから、あたしだって折れてあげたのよッ」
「何を!?か、可愛くねえッ」
…あたしたちは再び手をつないだまま、口喧嘩を始めた。
けれど、
「…」
喧嘩をしてるくせに、繋いだ手だけは絶対に離そうとしないそんな自分達の姿が何だか急におかしくなってしまって、
「…」
あたし達は、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
そして。
「もーやめようぜ喧嘩すんの」
「…そだね」
ようやくあたし達は本当に仲直りをして、水溜りの多いアスファルトを、上手く避けるようにして歩きだした。
そんな最中、あたしは横を歩いているらんまの服を見てふと…思う事があった。
…らんまの服。
よーくみると、しっとりと濡れていて、裾からは水が滴り落ちている。
女のらんまの身体には、少し重そうな…そんな感じを受けた。
(あたしは傘を差して外へ飛び出してきたけど…)
もしかしたら、いやもしかしなくても、らんまは傘も差さずに飛び出してあたしの事を探してたのかな…あたしはふとそんな事を思った。
人一倍、自分が「男」でありたいと願ってるらんま。
あたしと一緒にいる時は極力男の姿でいたい…いつだって、そう言っている。
なのに、こうして今あたしを追ってきたらんまが女の子の姿をしてるって事は、そんなこと考えてる余裕もないくらい慌てて、あたしの事を追ってきたんだろう。
『あんな風に叫んで謝るから、俺だって仕方なく謝ってやったんだぞッ』
…らんまはさっき、そんな事を言ってたけれど、
らんまだってもしかしたら、あたしに早く謝りたくて、あたしと早く仲直りしたくて、傘も差さずに雨の中を飛び出したのかもしれないな。
(…何よ、あんたの方が全然素直じゃないじゃない)
そのくせ、意地っ張りならんま。
だけどそんならんまの本心というか…気持ちを考えたら、あたしは何だかとても、心が温かくなった。
…雨上がりの、この真っ青な空のように。
あたしの心は、完全に晴れたような気がした。
なので、


「…らんま」
「なんだよ」
「好き」
「なッ…」

…あたしが突然そんな事をぼそっと呟くと、らんまは耳まで真っ赤になってしまった。
「な、な、何だよ、急にッ…」
オタオタとしているらんまに、
「なによ、いいじゃない。何だか言いたくなっちゃったんだもん」
そう、あの綺麗な虹を見ていたら…と、あたしは遠い隣町の空の上にかかる虹を指差しながらそう言ってやった。
すると、
「そ、そ、そういうことは、俺が男の姿をしている時に言ってくれ」
らんまは妙に恨めしそうな顔であたしにボソッと呟いた。
「なんでよ。いーじゃない。男でも女でも、乱馬は乱馬でしょ」
あたしがすぐにそう切り返すと、
「じゃ、今キスしていい?」
らんまはダダッコのような顔でそんな事を言いながら、あたしに向ってぐっと顔を近付けた。
「だめ」
もちろんあたしは、そんならんまの顔を即座に手のひらで押し戻す。
「なんだよッ男でも女でも、俺はオレなんだろッ」
「乱馬は乱馬でも、女は女でしょッ」
「何だよッそれじゃ言ってる事がおかしいじゃねーかッ」
「おかしくても、いーの!」
「かー!そんな妙な理屈オレは認めねえッ」
女同士じゃだめよ、とキスを拒んだあたしに、らんまはとても悔しそうな顔をして見せた。
あたしはそんならんまに、「ごめんね」と悪戯っ子のような顔で笑ってやった。
「あー、もういっそのこと、空から降る雨が、全部お湯になればいーんだッ」
歩きながらそんなことをずっとぼやいてるらんまと、
「それじゃあ、傘を差してシャワーに入ってるようなもんじゃないの」
そう言って、笑うあたし。
「シャワーだったら、どんだけいいかッ…あー、こんな話してたら、無性に風呂に入りたくなっちまった」
「そうねえ」
「早く家に帰って、風呂に入ろうな?」
「…。なによ、その語尾の”な?”って」
「いや、ほら、仲直りついでに一緒に入るのもいいかな、と」
「なッ何言ってんのッ」
「これなら、女同士でもいいだろー」
「お湯に入ったら、あんた男に戻るでしょうがッ」
「細かい事は気にすんなよ。すぐに慣れるって」
「慣れるかーッ」


…雨上がりの、小気味が良いくらいに真っ青な空の下。
二人で上手に水溜りを避けながら、仲良くてを繋いで歩くあたし達。
「ちぇっ…一緒に風呂、はだめかあ」
その内、らんまがそんなことをぼやいて、不意にあたしを背中に背負って歩きだした。
「ちょっとお。らんま、服が濡れてるから冷たいじゃないッ」
背中でぼやくあたしに、
「身体、背中にぎゅっとくっつければそんなの気になんねえよ。濡れてるオレの服、温めてくれ。寒いから」
らんまはそんな事を言って、あたしを背負ったまま道を歩いていく。
「寒いから」なんて言って入るけれど、
さっきお風呂の話をしてからは、実は女の姿であっても、あたしともっと触れていたい。手を繋いでるだけじゃ物足りなくなってきた…
…らんまが実はそんな事を思ってて、あたしの身体を急に背中に背負った事ぐらい、
「鈍い」「鈍感」
そんな事を言われつづけるあたしにだって、簡単に予想できる。
なので、
「えっち。変態。スケベ」
あたしの身体を背負いながら、何故かやたらと手を動かしているかのらんまに、あたしは、コツンとらんまの頭をこづいてやって、笑った。
「ちょっとぐらいいーだろ」
何だ、やっぱりばれてたのか…と舌をペロっとだすらんまは、
「だって、オレだってあかねが好きなんだからしょーがねえだろッ」
そんな事を言って、背中に負ぶさってるあたしの方を振り返った。
「そーゆー事は、男の姿のときにも言ってよね」
あたしがそんならんまの耳元でそう囁くと、
「言う。遠慮もなく言うから、だから家に帰ったら一緒に風呂に…」
「だめ」
「何でーッ」
…やっぱり妙に悲しそうな顔をしてがくっと肩を落とすらんまが、あたしは何だかおかしくて仕方なかった。



雨上がりの、小気味が良いくらいに真っ青な空の下。
遠くに見える透きとおった虹と、アスファルトに残る水溜りが妙に眩しく感じる、家への帰り道。

「あかねーッ」
「だめったらだめッ」

…喧嘩して家を飛び出してしまった数時間前よりも、何だか少しだけ仲良く慣れたような気がした、あたし達だった。

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