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君が一番

クリスマスが終われば、あっという間に正月だ。
サンタとトナカイ、赤と緑で溢れかえっていた商店街は、いつの間にやら正月飾りで溢れている。
あれだけクリスマスケーキとチキンを売り出していた食料品店も、現在ではおせち料理の大売出し。
年末は、本当に流行でさえも慌しい。
・・・それは、ここ天道家でも同じであって、二十五日まではクリスマスツリーが設置されていた道場も、今日十二月三十一日となれば、正月飾りでオメカシ だ。
「うん、綺麗に出来た。これで。来年も道場は安泰ね」
もうすぐ年も明けようという、深夜十二時近く。
年越しそばができるまで・・・と、俺とあかねは昼間に掃除した道場の最終チェック・・・とは口実で、何となく二人きりになりたくて、道場へとやってきてい た。
とりあえず、昼間に掃除をした時飾った正月飾りを眺めながら、あかねがそんなことを呟いた。
「・・・」
とはいえ、そのお飾りを飾り付けたのはあかね。
「綺麗に出来た」とはいったって、それは「あかね視点」からであり、
俺からしてみれば、「なあ、その飾り 右にえらく傾いてねえか?それに、新品なのに何でそんなに綻んで・・・」と、ツッコミどころ満載の出来栄え。
でも、もちろんそんな事あかねに言おうものなら、
「何よ、乱馬のばか!あたしが一生懸命作ったのに、何でそんなこというのよ!」
と、年末年始で喧嘩になってしまうこと、間違いない。
せっかくの新年、頭からあかねと喧嘩をするのも嫌なので、
「はは・・・随分と個性的な飾りだな」
俺は、当り障りのないことを返しては、やれやれとため息をつく。
「ふふ・・・いいでしょー」
そんな俺の気苦労を知らないあかねは、暢気にそんな事を言ってはニコニコしていた。
そして、
「あ!」
不意にそんな声を上げたかと思うと、急に道場の床へと正座をした。
「おい?」
一体どうしたのだろうか。俺が不思議に思ってあかねに声をかけると、
「乱馬も、ほら!早く座って!」
あかねは、戸惑っている俺の腕を取り床に座らせると、
「あけまして、オメデトウございます」
あかねは、座った俺にそう言って頭を下げた。
俺がはっとして道場の壁にかかっている時計を見ると、時計の長針と短針がぴったりと重なって見える。
いつの間にやら、十二時・・・そう、新年を迎えたようだった。
日本人というのは、こういう所は無駄に律儀だ。
それまで普通に話をしていた相手にも、日付が変っただけで、新年ならば「明けましておめでとう」、クリスマスならば「メリークリスマス」。そうやって声を かける。
こと新年になれば、普通の友達にだってわざわざ、「年賀状」を送りあう。
別に送らなかったといって、そこで友情がなくなるわけでもあるまいに・・・俺は、ふとそんな事を考えた。
でも、
そんな風に思っていたって、いざこう挨拶をされると何だか不思議と嬉しくなるもので。
「オメデトウございます」
俺も、あかねにつられてしっかりと挨拶をしていた。
するとあかねは、
「うふふ・・・新年になって、一番最初にお話したのが、乱馬なんだー。何か今年は、いい事がありそうな予感」
そんな事を言いながら、ニコニコと笑った。
「・・・」
・・・可愛いじゃねえか、この野郎。
俺は、「日本人は無駄に律儀」なんて思っていた先ほどまでの考えを、自分勝手に蹴散らせてそんなことを実感する。
「・・・俺も、今年はいいことがありそうだな」
俺は、笑っているあかねの手を取り立ち上がらせると、そのまま身体に腕を回して抱きしめてみる。
「いい事があるに決まってるわよ」
「何でだよ」
「だって、乱馬も今年一番初めに話をしたのがあたしなんだもの」
あかねは、俺の身体に自分もぎゅっと抱きつくと、そんな事を言ってまた笑った。
その笑顔がまた、なんともいえなく可愛らしい。
俺は「そうだな」と小さく呟きながら、そんなあかねをもっと強く抱きしめてみる。
あかねは完全に俺に自分の身体を預け、そっと目を閉じた。
俺はそんなあかねに軽くキスをして、そのまま自分も目を閉じる。
・・・新年そうそう、今年は何だかいい年だ。穏かだし、それに温かいしついでに柔らかい。
去年までの、慌しい年始とは嘘みてえだぜ。
修行で山の中、ひもじい年越しをした事もあるし、パワーアップするソバを食ったあかねに、散々腕相撲を挑むが負けて、泣きながら過ごした年もあった し。猫のシャンプーに顔面を舐められた年もあったし。
それに・・・
「・・・」
俺は、それまでの年始の瞬間を色々と思い浮かべながら、ふとある年のことを思い出した。
そう、それは俺がこの天道家にやって来た初めの年のこと。
まだまだ、俺もあかねも全然素直じゃなくて、反発ばっかりし合っていた時のことだった。
・・・
「乱馬君、あかねちゃんを呼んできてくれる?もうすぐ年も明けるし、おソバも出来上がるから」
・・・俺は、かすみさんの言いつけを受けて、一人道場にいるというあかねを、呼びに行った。
皆が居間に集まっているというのに、あかねは何の気まぐれか、道場から戻ってこない。
ったく、何やってんだあいつは?
俺はぶつぶつと呟きながら、道場へと向かった。
そして、
「おい、何やってんだよ。皆、居間で待ってるぞ」
ガラっ・・・と入り口の扉を開けて、俺は道場の中にいるあかねへとそう叫んでやった。
すると、
「・・・」
あかねは、少し驚いたような顔で俺のほうを振り返り、
「・・・何であんたなのよ」
と、そのまま訳の分からない事を呟いた。
「は?」
一体何のことだろう。俺が首をかしげながらあかねの元へと歩み寄ると、
「あーあ、年の初めに一番最初に話をしたのが乱馬だなんて。今年はろくな年にならないわね」
あかねはそう呟きながら、壁の時計へと目をやった。
「・・・」
俺があかねと同じように時計へ目をやると、ちょうど時刻が十二時を回ったところだった。
「なっ・・・俺だってなあ、別に好き好んでおめえと言葉を交わしてんじゃねえよ」
取り合えず、失礼極まりないあかねに俺が反抗すると、
「そんなに嫌ならこなきゃよかったでしょ」
あかねはさらに可愛くない事をいって、挙げ句ため息までついている。
「あのなあ!俺だって、頼まれたからおめえを呼びに来てやっただけなんだからな!
 ありがたいと思われたって、嫌味を言われる覚えはねえ!」
俺があかねの態度にムカッとしながらそんなことを叫ぶと、
「そうなのよねえ」
「・・・は?」
「あたしは最悪だ、って思っても、シャンプーとか小太刀とかにしてみれば、あんたなんかと年始そうそう話を出来た事が嬉しくて仕方がない子がいるのよ ねえ。それが不思議でならないわよ」
あかねは更に可愛くない事を呟き、一人勝手に、道場から出て行こうとする。
「おい!どこに行くんだよ!」
俺が叫ぶと、
「どこって・・・あんた、あたしを居間に呼び戻そうと呼びに来たんでしょ?居間に戻るのよ」
あかねはそう言って、一人さっさと、居間から出て行ってしまった。
「くっ・・・」
可愛くねえ!
俺は、失礼極まりない上に悪態をついて去っていったあかねに、妙に腹が立った。
・・・そりゃあ、俺と話が出来て嬉しがる奴らがいるのも事実だし、俺自身、それが不思議でならねえよ。
でもな、
おめーと話が出来て喜ぶ奴らだって・・・たとえば九能先輩とか良牙とか、五寸釘とか。いや、俺が把握しきれねえような奴だっているだろうし、
おめーと話をできたってことで嬉しがって顔が緩むような奴がいるんだろうなと、そっちの方が不思議でならねえ。
こんな可愛くねえ女と、年明け一発目、一番に話が出来て嬉しくて顔が緩むような野郎の、顔が見てみてえよ!
「可愛くねえ!」
俺は、最後にもう一度、あかねの後ろ姿に向かってそう叫び、自分も居間へと戻っていった。
・・・
「・・・」
俺の脳裏に、ふと少し前の年始の、そんな思い出が甦っていた。
あの時から考えると、今この、こうしてあかねと穏やかに過ごしている状況が信じられない。
「・・・」
俺は、俺の腕の中でぎゅっと抱きついているあかねの温もりをしっかりと感じながら、そんな事を思う。
そして、俺はそっと目を開けて、道場の壁際にあるガラスの戸を見つめた。
・・・あの時、「こんな可愛くねえ女と、年明け一発目、一番に話が出来て嬉しくて顔が緩むような野郎の、顔が見てみてえよ!」なんて俺は思っていたけれ ど。
「・・・」
ガラスの戸に映っている、にやけた男の幸せそうな顔。
「・・・」
はは、あれがあかねと一番初めに話が出来て嬉しくて仕方がねえ男の顔か。
どうしようもねえな。幸せで顔が緩みきってるぜ。
「・・・」
俺は、ガラスに映っている自分のにやけた顔を見つめながら、そんなことを思っておかしくなる。
「・・・乱馬?」
と。
そんな風にガラスを見ながらにやけている俺に、それまでぎゅっと抱きついていたあかねが声をかけた。
「どうしたの?何で笑ってるの?」
勿論あかねは、俺がそんな昔の事を考えているなどとは思っていない。
なので、俺の笑顔の意味がわからずに不思議がっているが、
「何でもねえよ」
・・・当然ながら、俺がにやけている理由なんて、あかねに言えるわけがない。
「それより、そろそろ居間に戻ろうぜ。ソバ、出来上がってる頃だしな」
「あ、何で誤魔化すのよ!」
「誤魔化してねえよ、さ。行こうぜ」
俺は、不思議がるあかねにもう一度だけ軽くキスをして、そのままあかねと連れ立って、道場から出て行った。



「こんな可愛くねえ女と、年明け一発目、一番に話が出来て嬉しくて顔が緩むような野郎の、顔が見てみてえ」
そんなことを言っていた等の本人が、こうしてにやけながら、あかねの側にいるんだもんな。
人生って、何があるか本当にわからないもんだぜ。
でも・・・


何だかそれも、悪くない。

「さー、今夜はソバを食ったらすぐに寝ないとなー。明日、初詣の時に眠くて仕方がねえから」
「初詣だし、そんなに早い時間から行かないから大丈夫よ」
「疲れて体がだるいと困るだろ」
「・・・何で疲れるのよ」
「年明けだぞ?何事も気合を入れないと仕方ないじゃないか」
「・・・あんたまさか、年明けそうそう一緒に寝るつもり?」
「年明けだから、だろ?さ、早く食べて早く寝ような」
「・・・」
俺はあかねと居間へ続く廊下を歩きながら、そんなことを思い一人、今この場所にあるこの幸せを、噛み締めていた。

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