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Calling

いつも一緒にいるのが当たり前だから、たまに数日顔を合わせないだけで不安になる。
行き先だって知っているし、いつ帰ってくるかだってわかっている。
『ヤマデシュギョウ、イツカゴカエル』
そうやって今回も出て行った。
・・・
そんな『イツカゴ』・五日後までは、あと三日。
気ばかり焦ったって仕方がないし、カレンダーをその日までめくったところで時間が早まるわけではないのだけれど、何だか、ソワソワしてしまう。
必要以上に肌の手入れをしたり、いつも以上に髪の毛をブラッシングしたり。鏡だってチェックしたり。
自分でも分かるほど、あかねは何かをせずにはいられないのだ。

でも。

結局の所、そうやって一生懸命オシャレをしても、一番喜んでくれる相手がすぐ傍にいて誉めてくれなければ張り合いがない。
誉めてくれるのは、五日後。分かっていても、何だか少し拍子抜けも、する。
それに加えて、
「えっ…皆今日、出かけちゃうの?」
「そうなのよ。留守番おねがいね、あかね」
…重なる時には重なるもの。他の家族が、それぞれの用事の為に今夜、家を空けたのだ。
よって今夜、あかね一人で家で留守番をしていることになる。
「…」
こうしてもの思いに更けるあかねに、声をかける家族だって今夜はいない。
寂しさを紛らわせようと必要以上にテレビの音量を大きくしても、流れてくる音声が明るければ明るいほど、大きければ大きいほど、何だか虚しいだけ だ。
「…」
…どうせ、誰も見てないし。
おしゃれに気遣った所で、誰も誉めもしないし。ぶっちゃけジャージ姿で寝転んでいたって誰が見ることも無い。
「…今日くらいは、頑張るのもサボっちゃおうかなあ」
あかねがそんな事を呟きながら、居間でゴロゴロとしていると、

トゥルルルル…

ふと、電話が鳴った。
天道家に夜、電話がかかってくることなど滅多にない。珍しい事だった。
電話の音にピクリと反応しつつも、あかねは立ち上がる様子を見せない。
…今は、夜だ。それも、
「…」
今の柱時計を見ると、時刻は既に九時を回っていた。
「…」
出たところでイタズラ電話だったら…それを考えると、何だか素直に電話に出る気がしないのだ。
「…」
今夜は一人だし、出ないほうが無難。それに、放っておけば切れるかな。
あかねがそんな事を思い居間でじっとしているも、

トゥルルルル…
トゥルルルル…

…電話は切れることがない。
電話の主も、相当がんばっているようだ。
「しつこいなあ…」
呼び出し音も、長く続けばただの騒音。
いい加減耳障りになり、
「はい、天道です…」
あかねがしぶしぶと受話器を取ると、

「あ…あの、俺」
「はあ?どちらの俺様ですか?」
「へ?お前、何でそんなに機嫌が悪いんだよ」
「えっ…あ…あ…、乱馬…?」

思い切り不機嫌な様子で電話にでたのはいいが、よく聞くと、聞き慣れた声。
そして、あかねがずっと聞きたかった声だった。

「ご、ごめん…まさか乱馬だとは思ってなかったから…」

修行先から電話をくれる事など、滅多にない。
全くのノーマークだった予想外の相手に、あかねが慌てて謝るも、
「なんだよ、電話しちゃいけねえのかよ。ちぇっ…せっかくあかねの声、聞きたいと思ったから掛けたのに」
「そ、そんなこと言ってないじゃない…。珍しいなあって思っただけよ。あたしだって、乱馬の声、聞きたかったんだからっ」
「どーだかなあ。どーせ声聞いたって、俺の声なんかもう忘れてたりして」
せっかく修行先から電話をかけたのに、最愛の許婚に邪険に扱われれば、乱馬だってふてくされる。
更に、
「ごめんね。今夜は一人きりだから、イタズラ電話だとイヤだなって思ったから…」
「おい、今一人なのか?!」
「え?そうだけど…」
「な、何考えてんだみんなは!危ねえじゃねえかっ!」
あかねが今夜一人だと聞いた事で、更に乱馬は機嫌を悪くした。
「家中の雨戸はしめたか!?鍵はかけたか!?」
「もーっ子供じゃないんだから」
「関係あるかっ !あ、風呂に入る時は、浴室の窓、閉めて入れよ?お前よく開けっ放しで入るから!」
「うん…って、何であんたがそんな事知ってんのよ?」
「だって、俺がいつも外から閉めてるんだそ。感謝してもらいたいくらいだ」
「ああそう、それはありがとう…ってちょっと待って」
「なんだよ」
「今一瞬騙されそうになったけど、それはつまり、あんたいつもあたしのお風呂、覗いているってことよね?」
何て男なの!…あかねがぶつぶつと乱馬に文句を言うと、
「仕方ねえだろ。それに、どこにホクロがあるかとか、胸がどの位大きくなってきたかとか…俺がちゃんと確認しておかないとどーすんだ」
「どーもならないでしょ」
あかねはやれやれ、ため息をつくと、
「とにかくあたしは大丈夫だから。だから乱馬も、修行頑張って」
「ああ。あとちょっとだから」
「うん」
「一人で寝れるか?」
「もー…子供じゃないんだから」
「子供みたいなもんじゃねえか」
乱馬はそういって、受話器の向こうで小さく笑っていた。
耳に馴染む、低く柔らかい声。
耳元に囁かれるだけで、何だか胸がくすぐったい。
「…」
…初めはちょっと驚いたけれど、ようやくちゃんと、『乱馬』の声を感じる事が出来た。
あかねはそっと目を閉じながらその声を、心に染み込ませる。
「どうした?あかね」
「ん…あのね」
乱馬の声、何か聞いてると安心するなあって。…あかねが素直にそう呟くと、
「初めは邪険に扱ったくせに」
「しょ、しょうがないでしょっ」
「この償いは、家に帰ってからしてもらうとしようか」
乱馬はなぜか受話器の向こう側で、楽しそうな口調でそう呟いていた。
「あんたって人は…」
一体何をさせるつもりなのかしら。あかねは、思わず苦笑いになる。
でも、

「あかね」
「…なあに?」
「ん…おやすみ」
「うん、おやすみ」

電話を切る直前。
いつものように、寝る前に乱馬が囁いてくれた、言葉。
不思議なことに、電話越しでも耳にしたとたんに、ふんわりと柔らかな気持ちで包まれる。
それまで呆れたり、苦笑いしたり、怒ったり…そういう感情も、全て穏かにさせてくれるような、不思議な声、そして言葉だ。
ああ、今日もこれから寝るんだな。…そんな事を思い出させてくれる言葉を聞いて、あかねは言いようの無い安堵感に、包まれた。
「おやすみ、乱馬」
…ガチャン。
あかねは最後にもう一度そう囁いて、電話を切った。
「…ふふ…」
そして、受話器を置きながら、思わず微笑んでしまう。
ちょっと声を聞いただけなのに、この満たされた心はなんだろう?
いつもと同じ言葉を囁かれただけなのに、この胸の中に感じる温かいものはなんだろう。
何だか背中がピン、と延びてしまうような晴れやかな気持ちはなんなんだろう。



ああ、やっぱり今日も、オシャレは頑張ろ。
誰も見て無くても、あとちょっとで帰ってくる乱馬のために、忘れずにガンバろう。
何だか良くわからないけど、
あの声はあかねを、そんな気分にさせてくれる不思議な、不思議な声。


「さ…じゃあまずは、お風呂にでも入るかなー…」
そうそう、ちゃんと戸締りはしてからね。
あかねはちょっと伸びをしながら気合いを入れると、そんな事を思いながら、長風呂を楽しみに風呂場へと向かったのだった。

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