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サヨナラ 3

ようやく、さゆりとゆかに追いついたあたし。
とりあえずはさゆりを落ち着かせよう…と、あたしとゆかはさゆりを家まで送り、そのまま彼女が少し落ち着くまで一緒にいてあげた。

「平気…そ、それにひろしにはああいう大人しい感じの女の子が似合ってるかも。ほら、向こうは制服もセーラー服だし、それに…」
さゆりは、あたし達が何も聞かないのにもかかわらず、やけに饒舌にあたしとゆかにそんな事を話している。

「さゆり、分かった。分かったから…」
そんなさゆりを、ゆかが優しく抱きしめながら落ち着かせる。

「分かったから…ね?」
そう言って、さゆりを優しく抱きしめるゆかに、さゆりは、顔を見せないまま無言で頷く。
あたしも、そんなさゆりの手をぎゅっと握りながらさゆりが少し落ち着くまで黙っている。

「頑張って」「元気出して」「きっと大丈夫」

…そんな言葉が、いかに無力か。あたしは思い知った。
こんな風に落ち込んでいるさゆりに、何て言葉を掛けていいか分からない。

ただ、これだけは分かる。
『自分の好きな人が、他の女の子と楽しそうに過ごしている場面を見て、心が痛い』
その”痛み”だけは…わかる気がした。

…あたしも。
乱馬が他の女の子に腕を取られたり、騒がれたりしているのを見ただけで…心に波が立つ。
今だって、気が触れてしまいそうなほど動揺しているけれど…
さゆりが直面したように、正式に付き合っているわけではない相手に彼女が出来るかもしれない…それに対して、自分は何も咎める権利もない。
そんな状況だったら、きっと…行き場のない想いをいったいどうしたらよいか…あたしだって、わからない。

「…あたしだったら、立ち直れない」
…さゆりの家からの帰り道。
先ほどまで一緒にいたさゆりの心の痛みを案じたゆかが、ちょっと涙ぐみながら呟いていた。

「あたしね、さゆりとひろし君てすごくお似合いだと思っていたんだ。絶対、ひろしくんもさゆりの事好きだって思ってたのに…」
そう言ってため息をつくゆかに、

「うん…」
あたしも、ポツンと答える。

「男の子って…やっぱり”女の子”っぽい、お嬢様タイプの子が好きなのかな…」
まるでヒトリゴトのようにそう呟くゆかに、あたしは何も答えないまま…ぼんやりと別の事を考えていた。

さゆりの事もすごく気になった。
気になって…ひろし君に対して、ちょっと軽蔑のというか…「そんな人だったの?」そんな風に思ったりもしている。
でも…それと同じくらいに、あたしにはどうしても心に引っ掛かる事があって…どうしてもそちらを考えてしまっていた。

(あれが、乱馬が最近会っている女の子なのか)
ぼんやりと考え込んでいるあたしの脳裏に、先ほど乱馬の腕にしがみついていたあの女の子の顔が浮かぶ。

あたしと同じショートカットで。
あたしなんかよりもずっとずっと女の子っぽい感じで。
とっても甘え上手で。
…ゆかが今さっき言っていたみたいに、男の子って、もしかしたら「女の子っぽくてお嬢様タイプ」な子が好きなのかもしれない。

そんな事を考えると、あたしの表情も再びどんどん暗くなっていく。
はっきり言って、あんな場面に出くわしてしまってショックだった事は確か。
でも、それより何よりもっとショックだったのは、

「クラスメート」
「おっかけ」

あたしを説明する時に、そうやってあたしの事を見た彼女に乱馬がはっきりと否定しなかった事。

(…あの子の前では、あたしはただのクラスメートでおっかけ…?)
そう思ったら、何だか怒ると言うよりも悲しくなった。

付き合い始めてからは、「彼女」…そういう風に、色んな人にも紹介してくれてたんじゃないのか。
そう考えると、ズキ…と胸が締め付けられる。
(あれって、やっぱり乱馬の心があたしから離れてしまってる証拠なんだろうか…)
あたしは、ふとそんな事を考えた。

…もしかしたら。
もしかしたら、あたしが聞きたくない最悪の「言葉」を。
あたしは乱馬から近いうちに聞かされるのかも…そんなことを思うと、知らず知らずに胸がムカムカして、頭が痛くなって…ボーっとする。

 

「…あかね。あかねッ」
「え?」

 

…と、その時だった。
あたしは急にゆかに大声で呼ばれて、慌てて顔をはっとわれに返った。
みると、差し掛かっていた横断歩道の信号が赤。
あたしは赤信号の交差点へそのまま歩いて突き進んでいきそうになっていた。

「あ…」
あたしが慌ててゆかのいる静止位置に戻ると、

「あかねも大丈夫?さゆりも落ち込んでたけど、あかねだって、乱馬君…」
ゆかは、ぼーっとしていたあたしを気遣って心配そうにそう声をかけてくれる。
あたしは慌てて笑顔を取り繕い、

「あ、あたしは大丈夫。それより、さゆりの事を心配してあげようよ。あ、ねえ…明日土曜日だし、気分転換にさゆりをどっかに連れ出してあげようよ。 きっとさ、家に篭ってると余計な事まで色々考えちゃうし…」
と、半分は自分に言い聞かせるようにそんなことをゆかに提案する。

「うん、そうだよね。ぱーっとさ、遊園地とか行こうか。さゆりには後であたしから電話しとくから、明日九時半に駅に集合ね」
「うん…」
「あかねもさ、明日は気分転換にぱーっと遊んでさ、元気出して?ね?気分を換えてみたら、また違う事も考えられる
ようになるから…ね?」
ゆかは、あたしの提案に快く乗ってくれたばかりか、あたしを励ましながら「家まで送るわ」と、家の門の前まで送ってくれた。

「ゆか…ごめんね。ありがとう…」
頭を下げるあたしに、

「気にしないでよ。それより、明日出かけるんだから、ちゃんと今日は寝るのよ?寝不足だったら承知しないからね」
ゆかはにこっと笑って見せながら…帰っていった。
あたしはそんなゆかの後ろ姿を彼女が見えなくなるまで見送りながら、心の中でもう一度頭を下げた。
そして、

「ただいま…」
大きくため息をついた後、あたしは門をくぐって玄関の引き戸を引いた。

…と。

「…あ」
玄関の戸を開けたあたしは、思わずビクッ…と身を震わせる。
…昨日の夜、あたしがそうしていたように、今日は乱馬が、あたしの帰りを待つかのように玄関へ座っていたからだった。

「…ただいま」
あたしは冷静さを装いつつも、そんな乱馬と目が合わないように玄関へあがりそのまま自分の部屋へと行こうとしたけれど、

「あ、待てよッ。今日の事なんだけどッ…」
乱馬は慌てて立ち上がると、自分の前を通り過ぎようとしたあたしの手を掴もうと手を伸ばしたが、
あたしは、その手を掴まれるより一瞬早く自分の手を胸元へと持っていきギュと握り締めると、そのまま乱馬の前を通り過ぎる。

「ちょっと、待てよあかねッ」
あたしがそのまま二階への階段を上がって行くので、乱馬は慌ててそんなあたしを追って階段を上ってくる。
部屋の前までやってきても尚乱馬はあたしを追って走ってくるので、

「…疲れてるの。今日は、話したくないのよ」

…もしかしたら、聞きたくない最悪の「言葉」を乱馬から聞かされるんじゃないか。
そんな怖さにおびえるのもあり。あたしは、乱馬の顔を見ずにそう答える。
そしてそのまま乱馬と取り合わずに部屋のドアノブへと手を伸ばそうとするけれど、

「でも、大事な話だからッ…」
乱馬はあたしが手を伸ばしたドアノブの前にすばやく回り込み、あたしがそのまま部屋に入ろうとするのを塞き止める。
あたしがそんな乱馬をジロリ、と睨みつけると、

「あの…今日のあの子、別に何でもねえんだよ。俺、ひろしに付き合って大介とあそこに行ってただけで…あの人とは別に…」
あたしが聞きもしないのにそう勝手に説明しだした乱馬に、

「…電話」
あたしは、わざとそんな乱馬の言葉を遮るように言ってやった。

「え?」
「昨日の夜、あの子から電話あったよ…”早乙女君はいませんか”って」
「え?」
「いないって答えたら…”あ、来た来た”っていって…電話切ったのよ、あの子。…昨日、一緒にいたんでしょ?あんな夜に…待ち合わせしていたんでしょ?」
あたしが、静かなトーンで淡々とそう話すので、乱馬は少し驚いたような表情をしていた。

「…嘘つき」
そう最後に呟いたあたしに、

「嘘じゃねえよッ。そりゃ、昨日ちゃんと全部説明しなかった俺も悪かったけどッ…でも昨日あの場に、ひろしも大介もいたんだッ。ひろしがあの女子高の子に呼び出されてて…でも待ち合わせ場所で上手くあえなくて、そんで遅れて到着したんだけどッ。ひろしがさ、勝手に自分達との連絡先はとかいって、俺の電話番号を向こうの子に教えちまったらしくてさ、だから…待ち合わせ場所に現われない俺達と連絡を取ろうとして、家にまで連絡してきたんだよッ。それ以外に、あの子が家に連絡してくる理由なんてねえんだッ。ホントに…」
乱馬は、必死であたしにそう説明するけれど、それさえももう殆ど「言い訳」にしか聞こえないし、それに「あの子」を何だかかばっているようなそんな説明にうんざりしてしまって、
あたしはそんな説明を半分聞き流しながら、

「明日にして」
…そう言って、乱馬の身体をドアの前から押しのけるようにし、自分の部屋に入ろうとする。

「ちょ、ちょっと待てよッホントなんだよ!」
そんなあたしを引きとめようと、乱馬はあたしの身体を掴まえようと腕を伸ばしてきたが、
その瞬間、

「触らないで!」

…あたしは、自分でもビックリする位鋭い声で、ぴしゃりと乱馬にそう叫んでいた。

「えッ…」
その声のあまりの鋭さに、乱馬もビクっとして一瞬手を宙で停止させてしまう。

「…触らないで」
あたしは、もう一度乱馬に向って静かな口調で言った。

「…あの子に掴まれていた手で」
「え?」
「あの子を抱きしめたかもしれないその腕でッ…あたしに触らないで」
「あ、あかね…」
「ずるいよ、乱馬は」
あたしは、乱馬に再び触れられないように身を一歩引いた状態で、静かな口調のまま続ける。

「大事な事は何にも話してくれないし…こんな事がなければずっと黙っているいつもりだったの?それに…あたしは、クラスメートで、おっかけで…あの子には、そんな程度にしか説明してないくせにッ…それなのに、あたしの前では、”あの子は何でもない”だなんて…そんなのずるいよ。そりゃあ、男の子だから…可愛い女の子にあんな風に好かれるのは嬉しいでしょ。でも…あの子の前でもいい顔して、あたしの前でもいい顔してなんて…そんなのずるいよッ。あたしは…自分の事、彼女だと思っていたのに…」

…それまで冷静に話していたつもりだったのに、そこまで言った所で、あたしの中に徐々に抑えていたものがふつふつとこみ上げてきた。
そんなあたしのただならぬ様子に、

「今回のこと、黙っていたのは悪かったよ。ひろしに口止めされていたのもあったんだけど、あかねはさゆりの友達だし…ひろしもさゆりにはあまり知られたくないっていってたから…。
それがズルイってことも分かっているけど、でも…」
乱馬は必死でそんな説明をしてくれるも、

「あたしがさゆりの友達だから?…だから、あたしに乱馬が知っている事を話せば、それがさゆりの耳に届くとでも思ったの?」
「え?」
「あたしは、そんなに乱馬に信用されてないの?乱馬は、あたしをその程度にしか信用してないって事?」

あたしのそんな切り替えしてきた言葉に、乱馬は、少し苦しそうな表情をしていた。

「…毎晩毎晩、遅く帰ってくるし…誰からかの電話、ずっと待っているみたいだし…。あたしの知らない所で、女の子と待ち合わせしているし…」
「…」
「どうしたのって聞いても話を逸らすし…ずっと心配してた所に、今日のあれだもの。乱馬があたしを信用してないように…あたしも、もう乱馬を信用できない」
あたしが乱馬に顔を見せないまま、小さな声でそう呟くと、

「毎晩のあの電話はッ…あれはひろしが俺に相談があるっていってかけてきてたんだッ。毎晩だったし、夜も遅い時間の電話だから他の人に取らせるの悪いと思って…」
「…」
「ホントなんだよッ。確かにあの女の子は…その、ひろしの相手の友だちだったからあんまり邪険に扱ったら悪いなと思って遠慮しながら接したけど…でも、ホントに何も…ッ。
  それに女の子から電話があったのは昨日が初めてだし、それにアレは向こうが勝手に…」
乱馬は、さっきよりも必死な声であたしにそう説明をするも、あたしは、そんな乱馬の説明を自ら拒絶するように、耳を両手で押さえる。

「あかね、聞いて。今、大事な話、してるんだ」
乱馬は、そんなあたしの手を耳から引き剥がそうと必死だけれど、あたしは首を左右に振っては、乱馬のその手を自分から離れさせようとしていた。

・・・とその時だった。

トゥルルルル…トゥルルルル…
突如、階段の下の電話が、鳴った。
そしてほどなくして、

「乱馬くん、いる?」
電話を取ったかすみお姉ちゃんの声が、階段のしたから聞こえた。

「あ、はい…」
あたしのことを気にしつつも乱馬がその問いかけに反応すると、

「あのね、佐々木さんて女の子から電話なんだけど…。あの…」
かすみお姉ちゃんはそう言って、ちょっと困ったような声を出していた。

「え?」
「…」
電話をかけてきた人物の名前を聞いた途端、乱馬は困ったような表情をし、そしてあたしは…更に表情を固くする。

…昨日も、家にかかってきた電話の主と同じ名字。
あたしの脳裏に、昼間女子高の校門の前で乱馬の腕を嬉しそうに取っていた女の子の顔がすぐに思い浮かんだ。

「え…何で電話…」
どうして自分にかかってきたのか?とでも言いたいのか、乱馬は階段の下とあたしとをオロオロと交互に見比べていた。
そんな乱馬に対し、

「…嘘つき」
…あたしは一言だけそう呟いて、

「電話、早く出たら?」
乱馬の手を振り払って、素早く自分の部屋に飛び込む。
それがあまりにも素早い動作だったので、乱馬もあたしを掴まえる事が出来なくて。

「あかねッ…」
慌ててドアをノックするも、あたしが乱馬のためにその扉を開けることはない。

 

…もう、何がなんだか分からなかった。

とにかく部屋の中に飛び込んだあたしは、ドアによりかかるようによりかかってズルル…としゃがみこんで。
どのくらい時間がたったのかも分からず、ぼーっとして。
どのくらい時間が過ぎたか分からない頃、再び乱馬があたしの部屋のドア越しにずっと何かを語りかけていたのも、
一体何をあたしに対して話し掛けているのか、面白いくらい全然耳に入ってこなくて。
その内、そんな乱馬の声すらも聞こえなくなった頃にはもう、あたしただ目を閉じて、ドアにもたれかかりながら一人うなだれているだけだった。

 

モヤモヤしていた。
乱馬のしてくれた話、きっと本当の事なんだろうけど…それを心の奥底で信じきれてない自分がいた。
そしてそれがとても…嫌だった。
次から次へと起こるいろいろなことに、気持ちも頭もついていかない。
聞きたくなかった最悪の「言葉」…乱馬の口からは聞かなかったけれど、
もしも…さっき言われていたら?
そしたら、こんなモヤモヤした気分で時を過ごさなくても、きっと泣くだけ泣いて、傷つくだけ傷ついて…そしたらさっぱりした?
…そんなことさえ、思ってしまう。

「…」

あたしは、乱馬の事を信じられない。
そんなあたしは、「彼女」なんだろうか…
自分は乱馬に対して、「あたしは彼女じゃないの!?」…そんな事を叫んだくせに。
今までどうやってあたしは乱馬と付き合ってきたっけ…。
付き合っていた…付き合っていた…?本当に?

今までゆるぎなく心の中にあったはずのそんな自信が、そんな確証さえも…きちんと持つ事が出来ない。
あした、さゆりを気分転換に誘って遊びに行けば、少しはこんなモヤモヤした気持ちは晴れるの?
気分転換…ホントにそんなことなるの?

 

…分からない。

 

これから自分がどうしたらいいのかも、どうなっていくのかも。
ただ一つ今のあたしは、混乱している。それだけははっきりといえる。

「…」

あたしは、膝を抱えて顔を伏せながら、いつまでも、いつまでも…着替えもせずに真暗な部屋の中で座り込んでいた。
電気もつけない、この部屋の暗闇が、なんだかあたしと乱馬のこれからの恋の行方を暗示しているような気がした。


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