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サヨナラ 1

「乱馬君、今日お夕飯いらないんだって」

ある日の夕方。
ご飯の支度をしながら、かすみお姉ちゃんがあたしにそう言った。

「今日も?」
あたしがかすみお姉ちゃんにそう尋ね返すと、

「そうなんだって。ていうか、あんたがその理由を知らないのにあたし達が分かるわけない
でしょ」
夕飯の手伝いと言うわけではなく、飲み物を取りに来たなびきお姉ちゃんのそんなツッコミに「そ、そうだけど…」あたしは思わずぐっと詰まってしまう。

そう。
最近乱馬は、やけに帰りが遅い。

数日前、乱馬と些細な喧嘩をして、その時にあたしが乱馬に、
「そんなにあたしの事可愛くないって思うんだったら、可愛い女の子と付き合えばいいでしょ!」
そう叫んだら、

「あー、そうすっかな!」
乱馬はそう返して来た。乱馬はそのままひろし君達とどっか遊びに行って、あたしはさゆり達と憂さ晴らしに買い物にでて。

…でも、その夜、ちゃんとあたし達は仲直りしたんだけど、その次の日から何故か乱馬は、帰る時間が遅くなった。
学校からの帰りも、

「乱馬、一緒に帰ろう」

あたしがいつもと同じように誘っても、

「悪い、あかね。俺用事があるから先に帰っててくれ」

乱馬はそう言って、ひろし君たちとそそくさと教室を出て行ってしまう。

そして、夜になって帰ってきても、なんだかやけに電話のところでそわそわしてるし。
電話がかかってくれば、こそこそと、一時間近くは話しているし。

「ねえ、最近どうしたの?」
それが一日二日だけじゃなく、もう一週間近く続いているのでさすがのあたしも気になってしまい思い切ってそう聞いてみたけれど、

「なんでもねよ」
乱馬はすぐにはぐらかして、
「それよりさ、今日の宿題ってもうやった?見せてくれよ」
…と、あたしがその話題に触れるのを嫌がる。

 

…なんか、変。

 

乱馬の様子は、何か変、だった。
あたしがその事をなびきお姉ちゃん達に相談すると、

「乱馬君もしかして、他に気になる女の子でも出来たんじゃないの?」
なびきお姉ちゃんはにっと笑いながらあたしにそう言い捨てる。
普段なら、

「そんなことないよッ」
…そんな風に言い返す元気があるあたしも、さすがに今回のことは不安に感じているだけに、いいかえすことができない。

「ちょっと、冗談よ。ほら、ね?あかね。あの男にそんな甲斐性あるわけないでしょ」
あたしがあまりにも落ち込んでしまって、それを見たなびきお姉ちゃんは慌ててそんなことを口走るが、
「なびき」
そんななびきお姉ちゃんをかすみお姉ちゃんが軽く戒めた。

「…とにかく、こう何日も夕飯も食べないで遅く帰宅するのはうちとしても心配ね。大丈夫よ、あかねちゃん。私が後で乱馬を問い詰めておくわ」
そんなあたし達のやり取りを横で聞いていた早乙女のおば様も、あたしを励ますつもり…なのかは分からないけど、
そう言って、いつも携帯している日本刀をキラリとちらつかせながら微笑んだ。

「おばさま…もしや事の次第によっては…乱馬君を切り捨てるおつもりで…?」
思わず苦笑いをしながらそんなことを呟くなびきお姉ちゃんに、

「可愛い息子ですもの。出来れば生かす方向で考えたいけれど」
でも、やむえない時は仕方ないわ…と、おば様はサラリと恐ろしい事をつぶやく。
あたしは、そんな家族達から無言のままそっと離れ、一人自分の部屋に戻った。
そして、ベッドにどさりと身を任せると、大きなため息をつく。

…ここ数日、なんだかよそよそしい乱馬にあたしは声が掛けずらかった。
はっきり言って、ろくに会話もしていなかった。
学校でも、乱馬はひろし君達とずっといっしょにいるし。
朝は何だかドタバタしていてゆっくりはなすことも出来ないし…帰りは別々。
夜だって、乱馬は遅く帰ってきては電話の前でウロウロしていたりするから…この一週間、一緒に寝る事もない。

そういえば、一緒に寝るどころかこの一週間、キスはもちろん手だって繋いでない。
ちゃんと会話が出来てない事も手伝って、あたしはとても不安と言うか胸騒ぎを感じていた。

…なんだか急に、乱馬が「遠い存在」になってしまったような気がした。
(どうしちゃったの…乱馬)
あたしの心に、どんよりとした雲が立ち込める。

『そんなにあたしの事可愛くないって思うんだったら、可愛い女の子と付き合えばいいでしょ!』

…あんな事、言わなければ良かった。今更ながら後悔した。

『おー。そーすっかな!』
乱馬はそう答えはしたけど…ちゃんとそのあとあたしと仲直りしたから…

(あの言葉は、撤回って思ってていいんだよね?あの言葉はもう、無効よね?)
自分が言い出した種ではあるけれど、何だか急に不安になる。

…何で、会話をはぐらかすの?
どうして、教えてくれないの?
ねえ、毎日遅くまでドコで何してるの?
誰からの電話を待ってるの…?

聞きたい。
思い切って聞いてしまえば楽になるのかもしれない。
でも、聞くのが何だか、怖くて仕方ない。
もしも、あたしが予想しているような「最悪」な答えだったらどうしよう…そう思うと、心が大きく震えた。
ズキ…と走る痛みに、思わずぎゅっと、胸の前で手を握る。
「…」
あたしは、どうにも出来ないこのモヤモヤした気持ちを押しつぶされそうになりながら、ぎゅっ…と唇をかみ締めた。

 

そして、その翌日の夜のこと。
とうとう、あたしが予想していたような「最悪」な事態を思わせるようなことが起こってしまった。

 

 

今日も、乱馬は帰りが遅い。
そして、相変わらずその理由をあたしは聞けずじまいのままだった。

「あーあ…」
今日も今日とて、もやもやした気分のまま。
あたしはため息をつきながら、お風呂上りに家の廊下をポツン、ポツンと歩いていた。

と、その時。

トゥルルルル…トゥルルルル…
あたしが電話器のところに差し掛かったところで偶然、電話が鳴った。
ふと近くの時計を見ると、夜の八時。

「はい、天道です」
そんなことを思いながら、あたしが何気なしに受話器を取り上げると…

「あれ?あの・・・早乙女君…のお宅じゃないんですか?」
「…え?」
…受話器の向こう側から、あたしと同じくらいの歳じゃないかな?と思われるような若い女の子の声がした。

(…なに、この子…)
あたしの、受話器を持つ手が急に震えた。

電話の向こうの女の子は、「早乙女君のお宅じゃないんですか?」っていった。
うちの高校の人なら、あたしと乱馬が一緒に住んでいることを知っているから、こんな風に尋ねてくる事はないはずだ。
だとすれば、この人は他校の生徒ってことになる。
「あたしの知らない」…他校の女の子。
あたしは、自分の身体からサー…と血の気が引いていくような感覚に見舞われていた。

「あの、私、佐々木といいますが、早乙女くんいますか?あの、もしもし?」

受話器の向こう側の女の子が、ボーっとしてしまって無反応のあたしにもう一度必死に呼びかけてきた。
あたしは慌ててはっと我に返り、

「…あの…まだ帰ってきていませんが…」
…声が震えるのを抑えながら、あたしは必死にそう取り繕う。
すると、次の瞬間。あたしは、信じられないような彼女の言葉を…聞いた。

「そうですか…家にいるわけじゃないんだ…あ、なんだ、来た来た!あ、分かりました結構です。すみませんでした」
「えッ…あのちょっとッ…」
…あたしが叫んだときには、もう電話は切れた後だった。

(何…何?今の…)

あたしは、切れてしまった受話器を宙に浮かせてもったまま、電話の相手の言葉にあたしは思わず吐き気がするくらい動揺していた。
ドクン、ドクン…と大きく脈打つ胸の鼓動が、頭の先から足の先まではっきり分かるくらいに伝わっていく。

『来た来た』ってことは…電話の向こう側のあの女のこと、乱馬は待ち合わせをしていたって事?
こんな時間に?
こんな時間に、「あたしの知らない」女の子と待ち合わせしてるって…こと?
こんな時間に…こんな時間に?
こんな時間に、何の気もない女の子と…待ち合わせ何かする…?普通。

『乱馬君もしかして、他に気になる女の子でも出来たんじゃないの?』

なびきお姉ちゃんの、昨日のあの言葉があたしの心をぐるぐると巡っていく。

(…そういえば、この一週間。乱馬は誰からかの電話、ずっと待っていたっけ…)
あたしの心に、大きな「波」が何度も打ち寄せる。

(…)

あたしの知らない…誰かがいる?
誰かがもう、あたしの知らない誰かが…乱馬の心の中に…いるのかもしれない。

そんなことを考えると、知らず知らずにあたしの身体はガタガタと震えていた。
震えを抑えようと必死に自分で身体を抱いても…震えは一向もおさまらない。

「…」

事実をちゃんと確かめたわけじゃないけど、あたしの心にそんな不安が立ち込める。
こうしてあたしが一人不安に感じているこの時間も、乱馬はあの電話の主と…一緒にいるんだ。
そう思うと、胸が…痛い。

わからない。
わからない…
何で?
何でこんなことになっちゃったの?

『そんなにあたしの事可愛くないって思うんだったら、可愛い女の子と付き合えばいいでしょ!』

…あんな事、例え勢いだったとしても、冗談だったとしても、言わなきゃよかった。
あたしは、心からそう後悔した。
乱馬の心の中に誰か他の人がいて、あたしをすごく大事にしてくれていたのと同じような事を、他の人にしている…そう思うと、気が狂ってしまいそうだっ
た。

「…」

あたしは、そんなことを考えながら…のろのろと玄関の脇に座り込んだ。
そして、乱馬が帰ってくるのを、待つ。

……

ちゃんと、聞いてみなくちゃ。…あたしはそう思っていた。
乱馬の帰りをこうやって待って、一体どういうことなのか聞いてみなければ…心からそう思った。

佐々木さんて、誰?
何で待ち合わせしていたの?
何していたの?
どこに行っていたの?

…あたしは玄関の横に膝を抱えて顔を伏せて座りながら、何度何度も聞きたい事を頭の中で復唱していた。

乱馬を待っているこの時間が、何だかあたしにはとても長く、ながく感じていた。
実際には、近くの時計はまだ八時二十分を指している。
あの女の子からの電話を切って、まだたったの二十分しか経っていなかった。
でも、この二十分は…あたしが今まで過ごしてきたどんな二十分よりも、とても長く…長く感じた。

 

と、その時だった。

 

「ただいまー…」

ガラッ…不意に玄関の引き戸が開いて、乱馬が妙に疲れた顔で帰ってきた。
そして、

「わッ…あかね、おまえこんな所で何やってんだ?髪の毛濡れたままだし…風呂上りにこんなトコ座っていると風邪引くぞ」

玄関の所に座り込んでいたあたしに驚いた乱馬はそう言って、あたしの頭をポンと軽く手で叩いたけれど、

「…どうしたの?」
それに対して全くの無反応なあたしに、何だか様子がおかしいと気がついた乱馬が少し心配そうな顔であたしを覗き込んだ。
あたしはそんな乱馬に対して、さっきまで何度も心の中で復唱していた質問事項を伝えようと口を少し開いたけれど、

「…」

…何故だか、再び唇を閉じて黙ってしまう。

佐々木さんて、誰?
何で待ち合わせしていたの?
何していたの?
どこに行っていたの?

本当は、さっきまで復唱していたようにそう聞きたかった。
でも、実際に乱馬が目の前にすると…うまく声が出せなかった。
心が、震えていた。
答えを聞くのが怖くて、心が震えた。

「…今日も、遅かったね…」

だから。
あたしは、自分が本当に聞きたい事を聞く事が出来ずに…とても回りくどい表現で乱馬に尋ねた。
するとそれに対し、乱馬は、

「ああ、ひろし達と会っていたんだ」
そんなあたし質問に、乱馬は何のためらいもなくすぐにそう返して来た。

…うそつき。

「…そう」

そう呟きながらも、心の中ではあたしは、大きな声で何度もそう繰り返していた。
怒ると言うよりも…ショックを受けているのが分かった。

何で?
何で嘘つくの…?
あの子と一緒にいたんでしょう?
佐々木さんって言うこと、今まで一緒にいたくせにッ…

「…」

でも、そう叫びたいのに叫べない自分も…嫌だった。

「あかね?」
乱馬は、ずっと黙ったままのあたしを更に心配そうな顔で覗き込んだ。
そして、俯いたままのあたしの唇に軽くキスをすると、

「具合悪いのかな…だったら、ちゃんと休まないとダメだぞ。な?」
そう言ってあたしをあたしの部屋まで連れて行き…自分は自分の部屋へと戻っていった。

 

乱馬が戻ってしまった後の、部屋の中で。
あたしは、電気もつけずにペタン、と床に座り込むと、さっき軽くキスされた唇を指で触れながら…一筋の涙を流した。
キスをされて、「心が痛い」…そう感じたのは、初めてだった。

…乱馬が、あたしに嘘をついた。

そう思うと、何だか心がバラバラに引きちぎれてしまうような感覚に襲われる。
乱馬が、あたしに嘘をついた。
消えないその事実に、あたしは一人…動揺していた。


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