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SUMMER MEMORIES 5

翌朝。
昨夜の一件の後からあかねとはまだ一言も口を利いていない俺は、何とかしてあかねと話をしようと試みるが、


「乱馬、今日は私と一緒に過ごすよろし!夕方から、イベントがある、みたいね!」
「乱ちゃんはうちと一緒に行くんや!なー?乱ちゃん」

どうやら今日の夕方に砂浜ではイベントがあるようで、その情報を仕入れたシャンプーやうっちゃんに朝も早くからべたべたとくっつかれていて、あかねの傍には近寄りづらい状況に陥っていた。
普段なら、この二人も俺があかねとそのイベントに出かけるだろうと察し、しぶしぶと諦める素振りも見せなくはないが、
今日に限っては、俺とあかねの雰囲気が何となくおかしいことを察したのだろうか。
俺にべたべたした所で、そんな俺を見もしないあかね。
ならばチャンス・・・とでも思っているのだろう。
二人は、あかねに遠慮することなく、俺の腕を取りべたべたとくっついて離れない。

と、そんな中。

時刻は、午前八時。
朝食もろくに食べてないあかねが、民宿の玄関の方に向かって歩き出した。
しかも時計をちらりと見て、なにやら時間を気にしている。
もしや、何か予定があるんだろうか?
でも、こんな朝も早くから、一体誰と何の・・・?
・・・

「ちょっと俺、用事があるから」
「え、ちょっと、乱ちゃん!?」
「乱馬、逃げる、ずるいね!」
俺はシャンプーとうっちゃんの腕を何とか振り切って逃げ出すと、

「あかね!」
民宿の入り口で靴を履いて外に出ようとしていた、あかねに声をかけた。
が、あかねはそんな俺の声には何もこたえずそのまま外に出ようとする。

「・・・」
聞こえなかったのか、それとも無視をしたのか。
・・・今の状況では、明らかに後者か。自業自得とは分かっていても、恋人に無視をされるというのはやはり傷つく。
俺は内心胸を痛めつつも、再び「あかね」と、彼女に声をかけた。

「・・・」
二度目に呼びかけた俺に対し、あかねはゆっくりと振り返った。
笑いもせず、怒りもせず、何の感情も持たないような・・・表情。
その表情が、昨夜の俺の愚かさや奢りを改めて俺に思い知らせているような気がした。

「あの・・・どこか、出かけるのか?」
それでも、何か話をするきっかけをつかんで、もう一度ちゃんと話をしたい。
俺の悪い所を謝って、それで、どうしてこんな事になったのかをきちんと、もう一度話したい。
・・・多分あかねは、俺が例の梶谷美咲と何か関係を持ったかもしれない、と疑って怒っているのではなく、
俺が、あかねという彼女がいるというのにも関わらず、たとえ相談を受ける為とはいえヒョコヒョコと二人きりで夜に会っていた事、そこに行く為に、わざわざあかねに嘘をついたこと、
そして・・・あかねが武と話をしたいと思っていた「本当の理由」を考えもせず、込み上げて沸き起こる嫉妬心で、無防備なあかねを不満に思っていたこと。
それを、怒っているのだ。俺は、そう気がついていた。
信用していないわけじゃなかった。いや、寧ろ守りたいと思ったからこそ、俺は・・・
・・・
俺がそんな事を思っていると、

「ちょっと出かけてくるから・・・」
あかねは俺にそれだけ呟くと、さっさと民宿から出て行ってしまった。
「出かけるって、どこへだよ!」
俺も慌てて靴をつっかけてあかねを追い外に出るが、
「・・・そんなのあたしの勝手でしょ。一人になりたいの」
あかねは追ってきた俺にピシャリとそういい捨てると、砂浜の方へと歩いていってしまった。
俺はそんなあかねを追っていくことが出来ずに、ただその場に立ち竦み、ため息をつく。

・・・もしかして、武の野郎と昨日の夜、何か約束でもしているのだろうか。
そういえば今朝から武の野郎の姿を見ていない。
もしかしたら今日、民宿と海の家の仕事が休みで、それを利用してあかねと二人でどこかに・・・?

「・・・」
・・・考えただけでも、気が狂いそうになった。
俺は再び砂浜へと歩き出し、先に歩いていったあかねの姿を探す。
たくさんの人の中にいても、俺はあかねの姿を見つけ出す自信がある。
朝もまだ八時過ぎだというのに、砂浜には海水浴客が溢れている。それでも俺は、あかねの姿を見つけ出す自信があった。
でも・・・もしも見つけたあかねの姿の横に、武の姿があったら。
そう思うと、あかねを探したいのに、探しだしてしまいたくない複雑な思いが胸を交差する。

「・・・」
俺は、人で混雑している砂浜をノロノロとした歩調で歩いていった。

 

 

その日の、午後。
結局あかねを砂浜で見つけることが出来なかった俺は、民宿の入り口の応接セットに陣取り、あかねが帰ってくるのを見計らって彼女を捕まえ話をしよう、という作戦に切り替えることにした。

昼食の時間になっても帰ってこなかったあかねをお袋やかすみさんは心配していたけれど、
「あの子だってもう子供じゃないんだから。ねえ?乱馬君」
「な、何だよ。何で俺にそんな事を聞くんだよ」
「別にー・・・」
あかねが帰ってこないということは、一人分昼食の分け前が多くなるということ。
やはり食べ物にシビアな天道・早乙女家は、あかねが帰ってこないことよりもそちらの方に重きを置いているらしく、 何故あかねが昼を食べないのか、という事については誰も触れぬまま、飯を食べている。
俺は昼もそこそこ、応接セットに居座っては、外を見たりたまに玄関をウロウロとしたりしている。

が、一行にあかねが帰ってくる気配はなく、無常にも時間だけが過ぎていく。
時計を見ると、時刻は既に午後一時半。
あかねが民宿を出て行ってから、もう五時間以上経つ。

「・・・」
どこ、行っちまったのかな。
まさか、ホントに武の奴とどこかに・・・

「・・・」
・・・振り払いたい。心の中からこんなもの、追い出してしまいたい。これが原因で、あかねと厄介なことになってしまったと言うのに。
俺の胸に再び、黒い嫉妬の渦がこみ上げてくる。
考えたくない時に限って、頭の中はそういうことで一杯になる。そして、人は弱い心をそれに飲み込まれてしまうんだ。
でも、そうだと分ってはいるのに、どうしても俺は、この渦を払いのけることが出来ない。

「・・・」
俺は、思わずため息をつく。
・・・精神的に弱っている時に優しく声をかけられると、普段何とも思っていない奴がよく見えてしまうこともある。
あかねに限っては大丈夫だと思うけど、でも・・・

「・・・」
・・・くそ、ホントに最低だな、俺。守ってやるとか言っていたくせに、疑ってどうすんだよ。
俺は自分の空っぽな頭をぽかぽかと叩いては自分を戒め、そして再び気持ちを落ち着かせながらあかねのことを待った。

と、その時。

「何やってんだ?あんた」
「武・・・」
「民宿の入り口で、何してんだよ。他の客が驚くだろ、妙なことしていると」

自分の頭を叩いたり、ため息をついたりウロウロしたり・・・と明らかに尋常じゃない行動を取っていた俺に、話しかけてくる人物がいた。
武だった。武は、民宿の裏手から入り口へとやってきたようだった。
そして、Tシャツにジーンズ姿で、いぶかしそうな表情で俺の事を見る。
「・・・」
民宿や海の家の手伝いをする時は、スタッフだと分かるようにエプロンを着用するのがここの慣わしのようだけど、今の武はそれを着用していない。
ということは、やはり今日は休みだったのか・・・
しかも、一人でここに来たという事は、今まであかねと一緒だったわけじゃないのか・・・?
そうだよな、一緒だったら、一緒に戻ってくるだろうし・・・
・・・

「・・・」
最低最悪の状況でも、出来れば物事は良い方向に考えたい。
俺が武の問いには答えずにその姿を睨み付けていると、

「・・・ま、俺には関係ないことだけど」
武は、フン、と鼻で俺のことを笑い、俺の横を通り過ぎて民宿の中へと入っていこうとしたが、

「・・・あ、そうそう」
何故か、そんな事を呟きながらふと立ち止まった。

「・・・なんだよ」
俺が、今度はそんな武をいぶかしそうな表情で見つめると、

「今日の夕方に海辺であるイベントだけど・・・俺、あかねと行くことになったから」
「なっ・・・」
「しょうがねえだろ?あかねの方から俺を、誘ってきたんだから」
武はそう言って、「ほらな、俺の言ったとおりになっただろ?」と、俺に挑戦的な瞳を投げかける。

「あ、あかねがてめえなんか誘うわけねえだろ!」
昨晩の事もあるし、いささか信じられずに俺が思わず声を荒げるも、
「だったら本人に聞いてみれば良いだろ?恋人がいるのに他の女と逢引していたような男には愛想が尽きたんじゃねえか?」
「何を・・・!あれはてめえがっ・・・」
「百聞は一見にしかずって言うだろ。さ、今夜が楽しみだな」
武は俺を更に挑発するかのように笑うと、さっさと民宿の奥へと入っていってしまった。

「っ・・・」
一人その場に取り残された俺は、思わずダン、と応接セットのテーブルを手で強く叩いていらだたしい気持ちをぶつけてしまう。

・・・なんだよ、今までやっぱり一緒だったのかよ。
何だよ、何で・・・昨日、例えあんなことがあっても、俺、説明したのに。
色んな事情があったから、こんな事になってって・・・一応説明したのに!

「・・・」
俺の胸に、再び嫉妬の渦がこみ上げ一気に身体を駆け巡っていく。
泣いているあかねに優しく接した武に、心、許しちまったのかな。
何でだよ、あかね!
「・・・」
俺がそんな事を思い胸に不満と不安を募らせていると、ザッ、ザッ・・・と玄関に物音がして、誰かが民宿の中へと入ってきた。俺が音のした方に目をやると・・・それはあかねだった。
武とは少し時間差があったものの、あかねがようやく民宿へと帰ってきたのだ。

「おい、あかね!」
俺は、戻ってきたあかねの前に素早く回りこむ。
「・・・」
あかねはそんな俺をちらりと見ただけで、すぐに俺を交わして民宿の中に入ろうとするも、
「・・・今日のイベント、あいつと一緒に行くって、どういうことだよ!」
俺は、そんなあかねの進路を妨害し先ほどから胸の中に募らせていたイライラを爆発させた。
すると、

「海辺で行われるイベントだもの、地元の人と一緒に行ったほうが色々と便利だし楽しいでしょ」
「そ、それはそうだけどっ・・・でもっ」
「・・・それに、他に誰かに誘われていたわけでもなかったし」
あかねは冷たい口調で俺にそう言い放つと、さっさと靴を脱ぎ、民宿の中へと入っていく。

「じゃあ!・・・俺が今お前を誘ったら、あいつと行くの、辞めるのかよ!」
俺はそんなあかねの背中に向かって、思わず感情的にそう叫んだ。
が、

「・・・」
あかねは一瞬立ち止まるも俺のその問いには何も答えないまま、歩いていってしまった。
一人残された俺にして見れば、そんなあかねの態度は消化不良他ならない。

「・・・」
何でだよ。
・・・誰にも誘われなかったからって、何でアイツを誘うんだよ。
俺がどうして昨日、あんなことをしたのか・・・一応、あんな状況だったけど、話したじゃねえかよ。 それが分かっていて、何でアイツと・・・
・・・

俺の方の事情は、もう俺が何を言っても、信じても聞いてもくれねえのかよ。
・・・
「・・・」
こうしたくなかったから色々とやってきたのに、全てが裏目に出てしまう。
誤解を解きたくて、仲直りをしたくて話したいのに・・・話せば話すほど、険悪な雰囲気になってしまう。

・・・一体、どうすりゃいいんだよ。
このままあかねと武を一緒にいさせるのなんて、俺、嫌だ。
例え俺達が明日、この民宿から帰るとしても、 その前夜に、あいつと一緒に思い出作らせるのなんて俺、嫌だよ。

「・・・」
嫌だという気持ちは強いのに、でもどうしていいのかが全然分からない。
俺は、モヤモヤした気持ちのまま、その場にいつまでも立ち尽くしていた。


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