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SUMMER MEMORIES 4

ボート小屋では依然として、興奮して泣きながら俺の胸にしがみついている彼女と、俺がいた。
突き放すわけにも行かず、かといってこのままでいられるのは居心地が悪くて困る。
俺がそんな事を思っていると、

「好きなだけじゃ、ダメなのかな・・・」
彼女が、俺にしがみついたままポツリとそう呟いた。

「いや、その気持ちは大事だと思うけど・・・」
「でも、分かってもらえないし・・・」
「それで諦めるならそこまでの気持ちなんだろ。じゃあやめるのか?」
「やだっ・・・あたしは諦めたくない」
「だったら、頑張れば良いじゃねえか。自分にとって状況が辛くても、好きなら思いを通せば良いじゃねえか」
俺はそんな彼女の扱いに困惑しながらも、そう呟く。

「・・・分かってもらうまで話すしかないってことだよね」
「そうだな。でも俺が間を取り持つのは何かおかしい気もするんだけど・・・」
「・・・悪かったよ。とりあえずあたし、自分の気持ちを分かってもらうまで話をする。だって・・・好きなんだもの。あたし、ダメだとは分かっていても好きになってしまったんだし・・・」
そうこうしている内にようやく彼女も落ち着いたのか、未だ俺の胸にしがみついたままではあるけれど、少しは前向きな発言をした。

やれやれ、とりあえずは一安心なのか。
あとは、彼女に頑張ってもらって、武の野郎の監視をしてもらわねえとな。
俺はそんな事を考えながら、
とりあえずもうそろそろ俺から離れてもらわないと困るのもあり、しがみついている彼女の肩に両手で触れ、その身体を自分から引き剥がそうとした。

ところが、ちょうどその時だった。

キイ・・・
不意に、耳に木が軋む音が飛び込んできた。
これは、ボート小屋の入り口の音だ。しっかりと戸は閉めたはずなのに、小屋が古いから、風で開いてしまったのか?
俺がそんな事を思いながら入り口の方に目をやる。
が、

「あっ・・・」
「・・・」
小屋の入り口には、民宿においてきたはずのあかねが、立っていた。
そして、困ったような表情をして、俺と、そして俺の胸の中にまだいる彼女を見つめている。

・・・あかねにしてみれば、散歩に行くといって外へ出た俺が、こんな薄暗いボート小屋で、しかも女と二人で抱き合っているように見えているんだろうか。
確かに彼女は俺の胸にしがみついているけど、そんな彼女の肩を、俺は今両手で掴んでいたわけだし・・・

「あ・・・ち、違う!俺は別に何もっ・・・」
これは・・・まずい。これは、厄介な事になる。
夕方、彼女の事を「ただのセイバー」「挨拶をしただけ」と話していることもあるし、
それさえも嘘だと、取られてしまうかもしれない。
事情を考えて全てを語らずにいたのに、それが全て仇になってしまう。
俺はあかねに誤解されてはたまらない、と慌てて彼女を自分の胸から引き剥がすも、俺が彼女を引き剥がしたのを見たか見ないかのタイミングで、あかねは小屋の入り口から走り去ってしまった。

「ちょっ・・・あかね!」
俺はそんなあかねを追い慌てて小屋から飛び出そうとするが、

「あーあ、大変だ」
・・・そんな俺の姿を、同じく小屋の入り口にいた武が見つめながら面白そうに笑っていた。
どうやらあかねをここに連れてきたのは、武のようだ。

「っ・・・」
一体、誰のことに巻き込まれてこんな事になったと思ってやがる!
俺がキッ・・・とそんな武を見つめると、

「おいおい、人のせいにするなよな。俺はただ、あかねにボート小屋はどこか、って聞かれたから連れてきてやっただけなんだから」
「何を!?」
「あんたが散歩に行ったのを探しに行くって言うから、それだったらこの海辺だと防風松やボート小屋のあたりが散歩しやすいんじゃないかなって説明してやっただけさ」
「くっ・・・」
「それがまさか、彼女に嘘までついて、女と抱き合っていたなんて・・・なあ?美咲」
武はそういって、それまで俺にしがみついていた彼女へと話を振る。

「・・・」
彼女はそんな武には答えず、何故かずっと、俯いていた。
何だか様子が、おかしい。
何で、否定しねえんだ?
あれほどさっき、武のことを好きだと、好きで仕方がないと俺に叫んでいたじゃないか。
『何言っているのよ、あれは違うのよ!』
それぐらい必死で否定してもおかしくないだろ?なのに何で・・・
・・・

「・・・」
俺はそんな二人の様子を暫くじっと見つめていたが、その内ハッと息を呑む。
・・・まさか。

「・・・おい。あんたまさか・・・」
嫌な、予感がした。
先ほどまでの彼女の様子と、武が現れてからの彼女の、この様子。
何かがおかしい。
もしかして・・・!

「・・・てめえら、俺を騙しやがったな!?」
・・・そう。
多分武と彼女は、初めから俺とあかねを気まずくさせる為にこのシチュエーションを作ったのかもしれない。
そういえば彼女は、自分で時間を指定したにも拘らず、遅れてきたっけ。
もしかしたら待ち合わせをした時点ではこの計画はなかったのかもしれない。
でも直前になって武に何かを吹き込まれて、それで急遽・・・それで来るのが遅れたんだ!
武のヤツも、あかねがもしも自主的に外へ出ようとしなかったのなら、なんだかんだ理由をつけて、俺のことを探しに行かせようとしたのかもしれない。
そして、上手い事このボート小屋へと誘導したんだ。
彼女にしてみても、きっと武の奴に「協力してくれれば色々な事を考えてもいい」とか何とか、甘い言葉でも囁かれたのか。
・・・くそ!油断していた俺が、甘かった。

「・・・どけ!」
俺は、彼女と、そして入り口の所で楽しそうな表情で俺を見ていた武を押しのけて、ボート小屋を飛び出した。
そして、先に戻ったあかねを追って民宿へと駆け戻る。

「あかね!」
あかねは、民宿の俺たちにあてがわれた部屋ではなく、民宿裏手にひっそりと設置されていた木のベンチの所にポツン、と座っていた。
遠目でも見ても肩ががっくりと落ちて、明らかに元気がないのが分かる。
俺がそんなあかねの元に駆け寄ると、あかねはスッ・・・とベンチから立ち上がり、俺を無視して民宿の中へと入ろうとする。

「ちょ、ちょっと待って!俺の話を・・・」
このままあかねを戻すわけには行かない。
俺には疾しい所なんてなかったし、それに誤解だけはどうしても解いてしまわなければいけない。
俺は必死にそんなあかねの手を掴みその場に引き止めようとしたが、

「あたしに触らないで!」
「っ・・・」
「彼女を抱きしめた手で、あたしに触らないで!」
・・・びっくりするような鋭い口調と、そしてその口調と正反対の弱弱しい声に、俺は思わずビクリ、と身を竦める。
でも、ここで怯んでいたら俺は誤解されたままで終わってしまう。
「違うんだよ、俺、本当にそう言うのじゃなくて・・・あれは話をしていただけでっ・・・」
俺、あいつら二人に騙されたんだ。俺は必死に弁明しようとあかねに話しかける。
そして、実は彼女は武の彼女であり、あの二人がもめている事、彼女がどうしても武と話を従っていることを一気にあかねに聞かせた。
が、

「・・・」
俺がいくら真実を話しても、あかねは何も答えてくれない。それどころか、俺の話の途中で首を左右に一度、振った。

何だ、この反応は・・・。
この話の展開で、何故首を振るんだ?
何だか妙な胸騒ぎがして、俺が思わず口を閉ざすと、

「・・・乱馬は、嘘をついた」
あかねは、そんな俺に小さな声で一言、そう言った。

「ついてねえ!本当に俺とあの人はそういうのじゃ・・・!」
俺がそんなあかねに必死で弁明をするも、あかねはもう一度そんな俺に対して首を左右に振った。
そして、

「・・・乱馬は、あたしに二回、嘘をついた」
「二回・・・?」
「夕方、あの人と話をした時に『挨拶をしただけだ』って言った」
「そ、それはっ・・・」
「そして今夜あの人と会いに行くのに、散歩に行くだけだって・・・言った」
あかねはそういって、俺が掴んでいた手をそっとはずした。

「・・・」
・・・そうだ。確かに俺は、二回あかねに嘘をついた。
でもそれは決して疚しい気持ちがあったからじゃなくて、
「それは・・・色々と説明しなくちゃいけないこともあったし、それに説明した所でお前が信じないって思ったからっ・・・」
俺は、嘘をついたことを謝る前に、何故こんな事になったのかを必死で弁明を始めた。

「だいたい、お前が武の野郎にやすやすと言い寄られるから、周りがこんなに色々としなくちゃならなかったんだぞ!」
「な、何よっ・・・あたしのせいだっていうの!?」
「おめーが、武の事を最初から跳ね除けてれば俺だってこんな苦労はしないし、武の野郎だって諦めたんだよ!」
「な、何よっ・・・あたしが何したって言うのよ!昔に一度会ったことがあるハトコと、話しただけじゃない!それの何がいけないの!?」
「隙が多すぎるって言ってんだよ!おめーはそうかもしれなくても、あいつがそれだけで近寄ってきているわけじゃないことくらい、何でわかんないんだよ!だから、梶谷美咲だって、妙に追い詰められてアイツにそそのかされてこんな事を・・・」
「な、何よ・・・自分が嘘ついたこと棚に上げて、あたしを責めて・・・彼女の肩持って・・・」
が、そんないい合いをしている内に、あかねがそんな事を呟いてぶるぶると小刻みに震え始めた。

俺は震え始めたあかねの顔を見つめ、ハッと胸をつかれた。
あかねの大きな瞳が、黒光りして潤んでいた。人形のような長くてぱっちりとした睫に、大きな水滴が滑っていく。
「どうして・・・?あたしはただ、昔・・・お母さんと一緒に会った事があるハトコに会えたから、懐かしんだだけじゃない。会って、あの時の話、楽しくしただけじゃない!お母さんがまだ生きていた時の思い出を、話したりしていただけじゃない!それの何がいけない
の・・・?」
「お、おい・・・あかね、俺は別にそんなっ・・・」
「何よ・・・自分なんていつも・・・こんな所にまで来て、色々な女の子にべたべたされてっ。それを責められたら、謝るどころか、あたしが悪いって言うの・・・?武くんのせいにするの?じゃあ乱馬は、何も悪くなかったの!?」
「っ・・・」
「疑われるような状況を、無防備に自分だって作ったんじゃない!それなのにっ・・・」

・・・最低。

あかねは、最後の言葉はまるで吐き捨てるかのようにして俺へと投げかけると、瞳に溜めていた涙を瞬きをして零れ落とし、俺の前から走り去ってしまった。

「あっ・・・」
本当は、追いかけていきたい。でも、今の俺があかねを追いかけたって、あかねはきっと・・・
「・・・」
・・・あかねに、「バカ」だの「嫌い」だの「最低」だの、今まで何度だって言われたことはあった。
でも・・・
こんな風に吐き捨てられるように呟かれた事はなかった。涙を零されて。

「・・・」
・・・確かに俺は、あの武の野郎からあかねを守ることばかり考ええいた。
あかねは無防備で、素直で、人を疑うことを知らない。
話しかけられたら、すぐに愛想よく武に接する。端から見ている俺はそれがイライラして、何とかならないかと、そればかり考えていた。
だからこそ、武のことを好きだという梶谷美咲に頑張ってもらいたくて、武の事を何とかして欲しくて彼女の話を聞こうとした。
でも・・・

「・・・」
俺、あかねのことを自分が一番良く分かっているつもりでいたけれど、
『どうしてあかねが武をきつく跳ね除けないのか』
その理由についてまで、深くは考えなかった。
あかねは素直で無防備だからって・・・隙だからだからって、そう思っていた。
でも、違ったんだな。
小さい頃に武と会った時、あかねはあかねのお袋と一緒だった。武も、その時にあかねのお袋の姿は見ていた。
だから・・・あかねのやつ、単純に武と昔の話をして仲良くしたいだけじゃなくて、お袋さんのこと、お袋さんの姿をちょっとでも思い出したくて、その思い出に浸りたくて・・・『昔話がしたいし』って、言っていたんだ。
思い出を作りたいって・・・そう言ったのは、単に武との思い出だけを作りたいって意味だけじゃなくて、あかねのお袋さんの思い出も、作っておきたいって。そういう意味だったのか。
・・・

「・・・」
あかねは何も考えてなくて、なんて俺、思い込んでいたけれど、
何も考えてなくて、嫉妬で突き動かされていたのは俺の方だったんだな。
胸にこみ上げる黒い嫉妬の渦に翻弄されて、それで自分だけでなくあかねまでも包み込もうとして。
しかも、あかねが言ったみたいに『疑われるような状況を無防備に作り出した』なんて。

「・・・最低だな」
誰よりもあかねの事を分かっているつもりでいたくせに、誰よりもあかねのことを、分かってやれていなかったんだ。

・・・俺がそんな風に思っている内に、民宿の入り口へと向かって歩いていたあかねのその姿に、近寄っていく影があった。
武だった。
武は泣きながら歩いているあかねに何やら声をかけると、優しく肩に手を回しあかねの頭を撫でていた。
あかねは、肩に回された手はすぐにどかしたものの、身を屈め自分を見つめる武の目の前で泣いていた。
武は、遠くでその姿を見ている俺の存在に勿論すぐに気づき、再びあかねの肩に手を回してあかねを民宿の中へと優しく誘導していった。
そして、民宿の入り口に設置されている応接セットにあかねを座らせ、何やら話を聞いたりしている。
「・・・」
・・・

こうさせたくなくて、色々と考えて行動をしたはずなのに。
全てが空回りして、こんなことになって。挙句、あかねを泣かせちまって。
俺が、守ってやるんじゃなかったのかよ。
・・・

「・・・」
ホント、最低だな・・・俺。

最低、というたった二文字の言葉が、俺の胸にはまるで鋭いナイフのように深く、深く刺さっていた。


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