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SUMMER MEMORIES 1

「ちょっとー、まだ喧嘩してんの?あんたたち」
「・・・」
「夏だってのに、ホントに暑っくるしい。せっかくの旅行なんだから、いい加減仲直りした
らどうなの?」

 

八月上旬の、ある暑い日。
俺達早乙女一家とあかね達の天道一家は揃って、とある海辺の民宿へと来ていた。
夏休み、家族旅行で海、その中には恋人もいる・・・本来ならばそんな好シチュエーションの元、夏休みのこの海を思い切り楽しめるはずだった俺と、あかね。
でも、「はずだった」という言葉の通り、現実はそんなに良いものではない。
そう、俺とあかねは、楽しい旅行の一日目にして喧嘩。
それを見かねたなびきが、あかねが風呂に入りに行った隙に俺へと話しかけてきたのだ。

「余計なお世話だ」
せっかく気を使って話しかけてくれたにも拘らず、俺がぶっきらぼうな口調でなびきにそう返すと、

「あんたねえ・・・男の嫉妬ほど見苦しいものはないわよ?」
「なっ・・・俺のどこが見苦しいんだよっ。それに俺は嫉妬なんて・・・」
「嘘おっしゃい。全身から妙なオーラが出てるわよ。『俺のあかねに手を出すな』みたいなむさ苦しい妙なオーラがね」
なびきは、どこぞの占い師かのような仕草で俺の身体に手をかざし、にやりと笑う。

「うるせえなっ・・・そんなんじゃねえよ!」
俺はそんななびきからさっと逃れると、一人民宿の外へと出て砂浜に歩いていった。
そして、波が届かない位置にあった石段へと腰掛け、ため息をつく。

 

 

・・・そう、それは俺達が民宿へと着いてすぐの事だった。

「あれ・・・あかねか?」
「え・・・あ、武くん!?」

電車を三つほど乗り継ぎ、計三時間近くの長旅を終えて、俺達はとある海辺の民宿へと着いた。
そして、ようやくゆっくり出来る・・・と、飲み物を片手に、宿泊の為の宿帳を記入しているおじさん達を待ちつつ話をしていた俺とあかねに、一人の若者が近寄ってきた。

よく日に焼けた肌に、短めの髪。そして、鍛え上げられている身体。
一般的に女性受けしそうなタイプの出で立ちのこの青年、いきなり近寄ってきて何故かあかねの名前を呼んだ。
しかも、あかねも何だかこの男を知っているかのようだ。

「・・・」
何だ?コイツ。いきなり話しかけてきて、馴れ馴れしい。
それに・・・

「・・・」

何より一番気に食わないのが、俺の知らない男が、あかねのことを「あかね」って呼び捨てにしたこと。
しかも、俺の目の前で。

「・・・」
俺は、思わずその「武」と呼ばれた男をじろりと睨み付ける。
すると、

「あ、乱馬。彼は私のハトコなの」
「え?ハトコ・・・?」
「うん。亡くなったお母さんの方のね。子供の頃、お母さんと親戚の家に行ったときに会った事があるのよ」
すごい偶然だわ・・・あかねは俺に簡単に説明をして、「ね?武くん」とその男を紹介した。

「どうも。皆川 武です」
改めて武、と紹介されたその若者は、くったくのない笑顔で俺に頭を下げた。
意外に礼儀正しいので、複雑な気持ちを抱きつつも、俺も頭を下げる。

「久しぶりだね、武くん!十年?ううん、九年ぶりかなあ」
「ああ、それぐらいになるな。それにしてもあかねは、あの頃に比べると随分、女の子っぽくなったな。あの時のあかねのおばさんに似てきたんじゃないか?」
「ええ?ホントー?何かそういわれると嬉しいな」
「ちょっとしか覚えてないけど、確かあかねのおばさんも、今日のあかねみたいにニコニコしてた記憶があるんだ」
「お母さんも、笑顔が素敵だったって、あたしもそういう記憶あるよ。あ、でもそういう武くんも、すごく逞しくなって」
「俺はそうでもないよ。でもあかねは・・・すげえ可愛くなった。これはホントだ」
「やだ、もう。そんなことないよ」

武は俺に頭を下げた後、再び俺をそっちのけで、あかねと話し始めた。
あかねも、俺のことなどお構いなしに武と話している。
俺にしてみればそれだけでも気に食わないのに、
それに、だ。

「・・・」
・・・話をしている武は、何度も何度も、あかねの全身をちらちらと見ている気がした。
楽しそうに、嬉しそうに。
そう、どう考えても「一目ぼれ」でもしたかのように熱い視線で。

当然のことながら、鈍いあかねは武のそんな視線には微塵も気づく様子もなく、
可愛い笑顔を武に惜しげもなく向けていた。
・・・そんな顔で微笑まれたら、どんな男だって惹かれてしまうというのに。
その笑顔は、俺だけのもののはずなのに。

「・・・」
俺がそんな事を思いながら不機嫌そうな表情をしていると、

「あらあら、これじゃあいつもと逆だわね」
それまで俺達の様子を楽しそうに眺めていたなびきが、ニヤニヤしながら俺に近づいてきてそう囁いた。
「何だよ、逆って」
あかねと武があまりにも楽しそうに話しているので、癪に障る俺がそんな二人の姿を見ないようにととりあえず民宿の外へと出ると、
なびきもそれにくっついてきて再びにやりと笑った。

「まあ怖い」
「どこが。面白いって顔しやがって!」
「だって、いつもは乱馬君にあかねがヤキモチ焼いていたでしょ。シャンプーとかうっちゃんにべたべたされた乱馬君をみて」
「そ、それは・・・」
「あたしとかすみお姉ちゃんは会った事がない子だけど、あかねはよく亡くなったお母さんにくっついていたから、偶然一緒に行った親戚の家で会ったのね」
「と、とにかく。俺にはあんな無節操に人のことを『可愛い可愛い』って口にする男、関係ねえよ」

俺は、明らかに根に持ち、そして明らかに強がった口調でそういいきると、

「それに、俺の方が女として魅力も色気もあるし?武の野郎も、あかねの魅力がたいしたことない、ってことくらいその内気づくだろ」

と、どう考えても悔し紛れの台詞を得意げに言い放った。

・・・そう。
一般的に見ても女のあかねよりも男の俺が女になったほうが、ナイスプロポーション。
悲しいくらいに、スタイルは俺のほうが良い訳で。
そういうのを見れば、武の不穏な気もすぐに紛れるはずだ。俺はそんな事を思いながらなびきを見た。
ところが、

「あら。でもあんたより色気のないあかねを、あんた好きなんでしょ」
「そ、それとこれとは話がっ・・・」
「男の嫉妬は見苦しいわよ?それに、一般的に色気があろうがなかろうが、客観的に見て武くんが、あんたよりあかねの方を好みならしょうがないじゃない」
一瞬で俺の心うちをなびきに見破られ、俺は内心焦るも、

「・・・うるせえな!あんなヤツ、俺達には関係ねえよ!」

そう、アイツはただのハトコ。
それが突然現れただけで、何を俺が焦る必要がある?
たかが旅行中に、昔あったことがあるハトコとやらに再会しただけじゃないか。
俺は、ふいっと横を向く。

たまたま民宿に勤めていたことが発覚しただけの「ただの男」「ただのハトコ」なだけであり、それ以上でもそれ以下でもない。
俺達のこの旅行に、必要以上関わるわけでもないし・・・そう、俺にもあかねにも、これ以上あいつとはなんの関係もなくなるんだから。
俺はそんな事を思いながら、楽しそうに話をしているあかねと武を横目でにらみつつ、民宿の中へと再び入っていった。

 

 

が。
民宿について一時間後。
皆で海へと繰り出した俺達だったが、利用する海の家と民宿が提携していたこともあり、

「いやあ、悪いねえ。武くん」
「いえいえ」

海の家に向かった俺たち一行を、例の武がもてなす羽目になった。
武は、民宿の手伝いと海の家の手伝いもしているようだ。
しかも、やたらとサービスが良くて、俺以外の家族には受けが良いのが気に食わない。
これにはおじさんも、俺のお袋、そして、

「てめえ!食ってばっかいるんじゃねえ!」
「『パフォ?』」

既に家を出発する時からパンダ姿に成り下がっている親父も、トモロコシを頬張り大喜びだ。
挙句の果てに、

「そう言えばあかね、泳げないんだったよな?今はもう泳げるの?」
「ううん、全然・・・」

武は、俺が親父と話しをしている隙に、ちゃっかりとあかねの隣を陣取り話しかけていた。
勿論この海の家にいる俺は、女の姿をしているわけで。
武の奴は、民宿の入り口にいた「若い男」があかねの傍にいないことをいい事に、すばやく寄ってきたのだ。

「だったら、この民宿の近くに眺めの綺麗な場所があるから、俺が後で案内してやるよ」
「え、でも・・・」
「海に来たのに泳げない、じゃつまんないだろ?店が終わったら、行こう。昔の話もしたいし・・・」
「うん・・・」

しかも、ちゃっかりとあかねと何やら二人きりになる約束まで取り付けている。
全く、油断も隙もない。
しかもそれに対してあかねも、「嫌」とも「困る」とも意思表示をしない所が、俺は気に食わなかった。

「・・・」
おい、あかね!お前、何でちゃんと断らねえんだよ!
腹が立った俺は、

「んんっ・・・んっんっ・・・」
あかねに聞こえるように、何ともわざとらしい咳払いをしてやるが、

「あら、乱馬、喉の調子悪いの?」
「・・・」

何故か俺は、あかねに飲み物を渡されてそれっきり、放って置かれてしまう。
武はあかねに話しかけているし、あかねもまんざらでもなさそうに話を続けているし。
当然の如く、俺の機嫌は更に悪くなる。

「・・・」
何で言わねえんだ。
自分には彼氏がいるから、誘われても困るって。何でそれをハッキリと言わねえんだよ?

「・・・」
俺がそんなあかねの態度がどうしても気に入らず、ブスッとした表情であかねに渡された飲
み物を一気にがぶ飲みをした。
と、

「ところであかね。さっき俺が挨拶した、あかねと一緒にいた男のことなんだけど・・・」
それまで楽しそうにあかねと話していた武が、ふと、そんなことを口にした。

・・・その男とは、勿論俺のことだよな!?
チャンス!これは、あかねに近寄ってきた悪い虫を払いのけるチャンスだぞ。

「あー、さっきの彼のことー?彼、かっこいいでしょー?」
俺は、自分の事ながらも何とか持ち上げつつ、二人の間にわざと入るようにして、そう呟いた。
ところがそんな俺に対し武は、

「あの人、あかねの兄貴か?あかねは姉さんが二人いただけだと思ったけど・・・兄貴もいたんだな」
と、とんでもないことを言い出した。

「あらあ?貴方には彼が、お兄さんに見えたわけ?」

そんな武に対し、俺はわざといやみっぽい笑いを浮かべながらそう返してやる。

そう、俺はあかねの許婚であり恋人だ。
兄貴になんて見えるわけがねえ。
そりゃ、入り口では武の存在に気を取られ、ぶっきらぼうな態度をとったりはしたけれど。
兄貴と恋人、ではあかねを見る目線の温かさだって愛情の深さだって違うんだ。
俺がそんな事を思いながら武の次のアクションを伺っていると、

「何だ、じゃああの人、あかねの弟だったのか」
「・・・はあ!?」
「そういえば、おじさん再婚したのか?家族も増えてるみたいだし・・・家庭の事情で弟とか、あんたみたいな妹も出来たんだな」
「ちょ、ちょっと待て!何で俺が妹で弟でっ・・・」
「俺はてっきり、兄貴かと思ったから・・・なんだ、弟じゃそんなに気にすることはないな」

武は豪快に笑いながら勝手に一人納得すると、

「じゃあ俺仕事があるから。あかね、後でな。六時ごろ、民宿の入り口にいてくれよ」
一方的にあかねにそう約束を取り付け、去っていってしまった。
「あ!おい待ちやがれ!誰が、あかねの弟だ!俺はあかねのっ・・・」
許婚なんだぞっ・・・と俺が事実を叫ぼうとするも、そんな俺の叫びを聞き入れないのか無視するのかは分からないけれど、武は去っていってしまった。

「あはは、乱馬が弟だって」
そんな俺のヨコでは、あかねが武の言葉を受けて可笑しそうに笑っていた。

「何が面白いんだよっ」
俺がそんな無神経なあかねに対し思わず声を荒げると、

「もー、何を怒ってるのよ?」
「怒るに決まってんだろ!何で俺が弟なんだよ!」
「お兄さんに見えたほうが良かったの?」
「見え方の問題を言ってんじゃねえ!俺の存在の問題だっ」
「まあまあ、そんなに怒らなくても。後で出かけた時にちゃんと話せば良いじゃない」
「後でって…おい、まさかあいつと行くつもりじゃねえだえろうなっ」
「乱馬も一緒ならいいでしょ?綺麗なスポット、見てみたいじゃない。それに昔の話も、したいもの・・・」
あかねはそう言って、何だか妙に嬉しそうな表情でそう言った。

「・・・」
そりゃ、二人きりで行かれるよりはいいけどさ・・・
・・・

 

可愛いあかねのその表情を見つつ、俺は内心複雑な思いだった。
悪いけど、はっきり言って俺にしてみれば面白くない。
明らかに、あかねに気があると思われる男と、あかねに同じ時間を過ごさせたくない。
例え俺が男の姿で傍にいても、だ。
あかねだって、逆の立場ならそう思わねえのかな・・・俺は、嫌だ。
しかも、俺の知らない昔の話を、二人で楽しそうにするんだろ?
・・・思い出までも支配しようとは思わないけど、何か、複雑なんだよな・・・。

「・・・」
俺がそんな事を思いながら複雑な表情をしていると、

「武君はね、ご両親が離婚したこともあって・・・あの頃も大変だったらしいわ。詳しくは分からないけど、そんな記憶があるの」
そんな俺の横で、聞きもしないのにあかねが武の事を語りだした。
あかねにしてみれば、久しぶりに会ったハトコでもあるし幼い頃のヤツの苦労を考えても別に邪険に扱う理由も見当たらない。
だから、普段他の奴らと接するのと同じ態度で接しているみたいだけど、

「・・・」
・・・俺にしてみると、明らかに武の奴は可愛くなったあかねを色眼鏡で見ていること他ならない。

それに気がついていないのはあかねだけであって、
それが分っているのにも拘らず、我慢していなければいけないのは癪に障る。
「おい、おめーはそういうつもりかもしれねえけど、アイツは・・・」
俺は、無防備・無邪気そして警戒心がないあかねに説教をしてやろうと、あかねと向き合った。
そして、

「アイツって、武くんのこと?」
「それ以外に誰がいるんだ」
「何よー、ねえ、何かここに来た時から機嫌悪くない?」
「あのなあ・・・」

いよいよ、男と言うのは羊の皮をかぶった狼なんだ・・・と、きっと俺が言ってもまるっきり説得力のない説明をするべく、暢気なあかねをぎろりとにらみつけた、ちょうどその時だっ
た。

「あいやー、乱馬!」
「らんちゃーん!」

・・・海の家の入り口付近から、どうにもこうにも聞き覚えのある黄色い声が店内に響いた。

「げっ・・・しゃ、シャンプー!?」
「右京!あんた達なんで・・・」

現われたのは、シャンプーとうっちゃん。
二人とも、水着姿にエプロンをつけた出で立ちで、海の家の中にいた俺に向かって手を振っている。
どうやら、夏だという事もあり海辺へ出張店舗でも出しているのか。
・・・何も、電車で三時間も離れた海辺に出さなくてもいいのに、と俺は思うも、
もしかしたら俺達がこの海に行く事を事前に察知して、わざわざ追いかけてきたのかもしれない、とも思えなくはない。
どちらにしろ、いつもの如くものすごい行動力だ。
・・・

俺とあかねが慌てて店内を飛び出し、二人がいる入り口へと出ると、
「こんなところで乱馬に会えるなんて、私幸せね!」
隙ありっ・・・とばかりに、シャンプーが俺の首っ玉に勢い良く抱きついてきた。
「こら、離れえっこの恥知らずっ・・・乱ちゃん、うちも乱ちゃんに会えるなんて思わなかったわあ!これはもう、運命やね」
そのシャンプーを引き剥がすかのように、今度はうっちゃんが俺に抱きつきニコニコと微笑む。
「こ、こらお前ら!離れろって!」
例え今は女の姿をしているからといっても、元々の俺は男。
俺にしてみれば、水着姿の二人に力いっぱい抱きつかれているという状況には変わらない。
しかも、自分の彼女の目の前で、だ。
当然のごとく、

「・・・」

本当は俺が不機嫌になり俺があかねに説教をするはずだったのに、みるみる内にあかねは不機嫌になり、

「・・・良かったわねー、可愛い女の子に抱きつかれて」
あかねは小さな声でボソリとそういうと、海の家の中に戻っていってしまった。
そしてそんな風に一人戻ったあかねに、ソツなく再び武の野郎が近づき話し始めた。

「・・・」
海の家の入り口で、シャンプーたちに抱きつかれている女姿の俺。そんな俺の目に映る、自分の彼女と彼女に明らかに気がある男の楽しそうな姿。
・・・俺が今、男の姿だったら、絶対にあの二人の間に割って入ってやるのに!
例え今、シャンプーたちを振り切ってあかねと武の間に入ったとしても、女の姿のままじゃ何とも説得力がない。
俺は何とも複雑な思いのまま、楽しそうに話をしている二人の姿を見つめていた。
・・・そして。
結局、今日は民宿の方が忙しいということで、武があかねを誘い出した約束は明日へと延期されることになった。
それに対しては俺は安心したけれど、

「あいやー!乱馬達も同じ民宿か!」
「奇遇やなあ」

流石は民宿、食事は宿泊客総出で食堂でとるのだけれど、その場所で再びシャンプーたちに遭遇。

「うちが乱ちゃんの隣っ」
「私が乱馬の隣ある!」

食事の時まで俺は彼女達に追い回され、俺は更にとばっちりを受けることになった。
食事に関してはシビアな天道・早乙女両家。
俺が彼女達にまとわりつかれているが為に、俺の分の食事は彼女達と一緒、と換算している
らしく、俺が困っているにも拘らず、何とも楽しそうに皆で一人分多くなった食事を食べている。
そしてあかねは、というと、

「武君、料理もするの?」
「まあな。手伝いをしているうちに覚えちまったんだ。おかげで、そこらへんの若い女のよりは上手いんだぜ?」
「へえ、うらやましいなあ・・・あたし、お母さんと違ってお料理苦手だから・・・」
「はは、確かに昔も、親戚の家なのにあかねのおばさんが料理、作ってくれたよな」
「うん。美味しかった」
「まあ、でもさ。可愛い上に料理も上手かったら、完璧すぎちまうだろ。何か苦手なものがあったほうが、可愛さも増すって」

・・・ようやく男の姿になっても、彼女達にまとわりつかれている俺の目の隅で、飯もろくに食わずに、武とそんな話をしていた。

「・・・」
あの野郎!又無節操にあかねの事を可愛いなんて褒めやがって。
あかねは単純だから、あんなふうに言われたら・・・

「・・・」
俺がそんな風に心配をしている通り、

「ありがと」

あかねは、嬉しそうな笑顔で武に微笑んでいた。
武はそんなあかねに対し、少し照れたような赤い顔をしている。
落ち着きなく頬とか掻いて、またあかねを喜ばせるような会話でも探すつもりなのか、必死にあかねに話しかけていた。

 

「・・・」
・・・あの笑顔は、俺の前だけで見せて欲しいのに。
あんな顔されたら、またアイツを好きになる奴が増えちまうじゃねえか!
俺にしてみるとそれが気に入らなくて仕方がないけれど、
そんな風に思っている俺の両脇には、俺の意志とは正反対にシャンプーとうっちゃんがへばりついている。
それこそ俺が今、二人の間にすごみを聞かせて入ったところで、説得力がない。
「・・・」
でも、自分の彼女が他の男と楽しそうにしている姿をどうにも出来ないで見ているだけって言うのは嫌なものだ。
俺はそんな事を考えながら夕食の時間を過ごし、そして部屋に戻ってもそんな事を考えブ
スっとしていたところ、なびきに話しかけられたのだった。
・・・

 

 

 

 

ザザー・・・
ザザー・・・
海は今、ちょうど引き潮のようだ。
砂浜の少し遠くで、のんびりとしたリズムで波の音がする。
沖から押し寄せられた貝や小枝が黒光りして濡れている砂浜に打ち上げられては、緩やかに、でも強引に再び沖へと連れ戻されていく。その繰り返しだ。
・・・

都会の海と違って、田舎の海の夜は「暗い」。
月明かりに照らされた波が時折キラキラと輝くが、辺りを照らしきるだけの明るさはない。
まるで、潮の満ち引きに誘われて海へと出れば、吸い込まれてしまいそうだ。
それに加え、街頭もなくネオンとも無縁のこの辺り。
夜の闇も、夜の海も普段よりもずっと、深く感じる。

まあ、物理的にも夜の闇は深いのかもしれないけれど、
この闇は、俺の今の心境そのものなのかもしれない。
前髪を軽く揺らす程度の海風と、それにのった潮の香りを感じながら、俺は一人、ぼんやりと石段に腰掛けて夜の海を見つめていた。
と、その時だった。

「乱馬・・・」
ぼんやりと海を眺めていた俺は、ふと人影を感じた。
そして、聞き覚えのある声が耳へと飛び込んでくる。

顔を上げて声がした方向を見ると、そこには少し表情を曇らせたあかねが、立っていた。
風呂上りの、あかね。民宿で支給されている薄手の浴衣を着用しているけれど、その胸元が思った以上に開いているな・・・なんて、俺は瞬時にそんなことを思う。
まだ風呂から出てぞんなに時間も経っていないだろうし、白い肌だって、この暗闇でも近くで見れば分るくらい高潮している。
一般的にみたって、どう考えても男にとってはそそられるような姿だ。

「・・・」
・・・こんな格好で、こんな暗い場所に一人で歩いてきたのか。
俺が一緒じゃないのに、それが危険な事だって、何でコイツは気がつかないのかな。
無防備にも程がある・・・俺はそんな事を思うが故に、自然とあかねを見る表情が険しくなる。
勿論、そんな俺の真意を知らないあかねは、表情が険しくなった俺に対し先程よりも表情を曇らせる。
そして、

「まだ・・・機嫌悪いの?」
今にも消え入りそうな声で、俺に呟いた。

「・・・」
俺はそんなあかねに手を伸ばし強引に彼女の手首を掴むと、

「きゃっ・・・」
グイッ・・・
あかねの身体を自分の方へと引き寄せた。立っていたあかねはバランスを崩し、石段に座っている俺の膝の上に倒れこむような感じで座る形になってしまった。
俺は自分の膝の上に座り込んだあかねの為に少しだけ足を開いて彼女が座りやすくしてやると、

「悪いよ」
俺にしがみつくような形で抱きついたあかねの耳元に、そう囁いた。

「・・・何で?」
あかねは、そんな俺に対して再び消え入りそうな声でそう尋ねる。
俺は小さなため息をつくと、あかねを俺と向かい合わせで座るような形で抱っこしなおした。
あかねは、俺の両膝両腿にまたがるような状態で、俺と見詰め合う。
「・・・」
俺は、表情を曇らせているあかねの鼻先に軽くキスをすると、

「アイツの前で、笑うなよ」
「アイツって・・・武君のこと?」
「アイツに、可愛いって言われるとムカツクんだよ」

そう言って、ゴスッ・・・とあかねの額に俺の額をぶつけた。

「武君は、あたしのハトコだよ?」
「ハトコだろうが何だろうが、俺以外の男はオトコなんだよ」
「可愛いって、アレは社交辞令で・・・・」
「俺にはそう見えないね」
俺は口答えするあかねをじっと見つめつつ、その口答えする口を強引に自分の唇でふさいでしまった。

「ん・・・」
・・・波の音に紛れて、あかねの少し苦しそうな吐息が俺の耳に飛び込んでくる。
でも、その苦しさをまだ開放させずに、離れようとする唇を何度もふさぐ俺。
その内あかねも離れることを諦め、そんな俺に改めてぎゅっと、抱きついた。
俺は、そんなあかねを片手で抱きしめつつ、片手で浴衣の肩をずらし肌を闇に晒した。
もちろん、辺りに誰もいないこと、そして自分が座っている石段が意外に辺りから死角になっていることを素早く確認した上で、だ。
浴衣をずらし、胸を覆う下着の肩ヒモをずらし、露になった肌や胸を大きな手で撫でる。

「・・・ここじゃ、恥ずかしい」
そんな風に小さく呟いたあかねの唇をまた俺は塞ぎながら、それでもその行為を止めない。
そして、

「男は、皆コウイウコトしたいって考えてるんだから」
肌を撫でる手を止めないまま、俺はあかねの耳元でそう囁いた。
「・・・自分だって、他の女の子に抱きつかれてるくせに」
途切れ途切れの声で、あかねが小さく呟く。

「それは・・・でも俺は自分からアイツらにちょっかい出しているわけじゃねえし」
「あたしだって」
「でも話しかけて楽しそうにしてるじゃないか」

それに、俺が弟だって言われてるのに否定もしないし。
俺はあかねの耳元にそう囁いた後、彼女の耳を軽く噛んだ。
そして、ビクビクッと身を震わせ背筋を伸ばしたあかねの身体をぎゅっと強く抱きしめると、

「明日アイツと出かけるの、絶対に俺も一緒に行くからな」
「うん・・・」
「それと・・・俺が見てないところでもしアイツと話す機会があるんなら・・・」
「あるなら?」
「・・・弟はコンナコトしないって、言っとけ」

俺はそう言いながら、それまで片方だけしかはだいていなかった浴衣のもう片方もはだいてしまうと、露になった肌へと改めて唇を押し付けた。
「うん・・・」
甘くてかすれた声で、あかねが小さく答える。
ちょっと困ったような顔で、恥ずかしそうな顔。こんな表情を、他の男にはやっぱり見て欲しくない。
特に、あかねに気のあるって分っているような野郎には。

 

・・・例え独占力が強いとか、男の嫉妬は見苦しいとかそんな事を言われたとしても、
絶対に俺は、その部分は譲れない。
あかねは、俺のあかねだ。
俺が誰よりも、
俺が誰よりも一番・・・あかねのことを分かっているんだから。
絶対、他の奴に渡してたまるか。
「・・・」
俺は、一生懸命俺に抱きついているあかねの身体を強く抱きしめそして貪りながら、そんな事を考えていた。


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