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それぞれの気持ち

あかねは、ぐちゃぐちゃに解かれた毛糸の糸とにらめっこをしながら、ため息をついていた。
数えて、三十五回である。
あかねは、再びため息をつきながら、部屋の隅にかかっている時計を見つめた。
一人部屋で机に向かい、編物を始めてからはや、三時間経っている。
それにも関わらず、いまだ編み棒には編目さえも作られてはいなかった。
それどころか、買ったばかりのはずの毛糸は、水を吸ってふやけすぎたインスタントラーメンのように、ぐちゃぐちゃと机の上に盛り上がっていた。



あかねがこうして編み棒を使い編目を作り始めて、そしてそれが上手くいかなくて解く回数、三十五回。
よもや、それも三十六回目に突入しようとしていた。
しかし、その三十六回目も…失敗の色が濃厚に感じられるのは、絶対に気のせいではない。
そもそも、

「くっ…せやっ…」

…編目を作る為に、決闘よろしく、気合を口から発する女子高生は、そうそう滅多にいないだろう。
加え、必死で編み棒と毛糸、そして毛糸を指にかけている指を見本の本通に動かしているはずなのに、
「あ、あれ!?」
何故か毛糸が、首にまで絡まっている始末だ。
もはやここまで来ると、不器用を通り越してイリュージョンである。


「もー!この本、なんか間違ってるんじゃないの!?」


『幼稚園児でもできる簡単編み物』
そんなタイトルにつられて本を購入したというのに、本が間違っていたら話にならないわ。
首に掛かった毛糸を解きながら、三十五回の失敗の言い訳してみるあかねであったが、
一体どちらに原因があるのかは、一目瞭然である。
いや、本当はわかっているのだ。どちらに原因があるのかということは。



「…何でこうなっちゃうの?」
気持ちを込めて一生懸命作れば、絶対に上手に出来るはず。
あかねは、なんどもそう思って物事に取り組むけれど、結果はこれこの通り、現在三十五連敗中だ。
『好きこそものの上手なれ』
言った奴、出てこい。
上手なれ、の部分はどこへ行ってしまったのだろう。
どうして、想う気持ちと作品の完成度は比例しないのか。
「…」
あかねは、一向に編目さえも出来上がらない毛糸を睨みながら、再びため息をついた。







…凝りもせず。
「お前は不器用だ」
とか、
「それは地引網か?」
とか。
何を作っても散々馬鹿にされては、
「何よ!乱馬のバカ!」
そういって腹を立てるにも関わらず、あかねは節目節目のプレゼントの時には必ず、
「手作り」
そう、口が悪い許婚殿に手作りのプレゼントを用意する。



あかねとて、もう自分自身と十六年も付き合っているのだ。
自分がどれだけ不器用かだって充分に理解している。
しかし。
それが分かっていても、どんなにひどい言葉をぼやかれても。
どうしても、手作りのプレゼントを贈りたい…あかねは、いつもそう思うのだ。
手作りでも買ったものでも、気持ちを込めれば変わらない。そうは思うけど、それでも手作りの方が心がこもっているような錯覚がする。気持ちが伝わりやすいような気がする。そんなところだろうか。
ただ…正直、編み上がったマフラーも、必死で作ったマスコットも、お世辞でも「上手」とはいえない代物ばかりだ。
マフラーなんて、編目を落とした穴の方が面積を占領していて、もはや「網」。
毛糸で編んでいるはずなのに、言わば「スケルトン」。
防寒対策用品のはずなのに、どう考えても防寒効果は期待できない代物だ。
それこそ、実物はまさしく、許婚殿の言う通りである。



しかし。それに対し、許婚殿はというと。
初めはなんだかんだ文句を言っていても、
「こんな防寒機能の無いマフラーをしても風邪ひかねえのなんて、世界中探しても俺ぐらいしかいねえだろ」
…とかなんとか。
最後は結局、あかねが渡したプレゼントを受け取ってくれる。
もちろん受け取るだけではなく、
「…ありがとう」
聴こえるか聴こえないかぐらいの、小さな声でお礼を呟きながら、だ。




たとえ口が悪くても、馬鹿にされても。
最後にはそんな風に贈り物を受け取ってくれる、許婚殿。
だからあかねは、手作りのプレゼントを止めることが出来ない。
どんなに話題の小物より、
どんなに高価な雑貨より、
それが一番、自分の「気持ち」を、ありのままの自分の姿を、伝える事が出来るような贈り物のような気がするからだ。


…いつか、
「おめーの作ってくれたマフラー、あったかけーよな」
人前でも嬉しそうな顔をして自慢して、マフラーを巻いてくれるような。
そんな上手なものを編む事はできるんだろうか。
喜ばせてあげたい。
自慢させてあげたいな…


「…」

あかねは、ふっとため息をついた。
そして、
「…もう一回やってみよう…」
気を取り直して、三十六回目の挑戦を試みるのだった。










そんな、あかねが編物と格闘をしている部屋の窓の外では。
そんなあかねの様子を、こっそりと覗いている人影があった。
そう、言わずと知れた許婚殿である。

「まーた、こりずに作ってら。あいつ」

やれやれ。
許婚殿は、あかねの様子を見ながらそんなため息をつくも、
口は悪くとも、そんなあかねの様子を眺めてはにやけた顔を隠せないようで、ポリポリ、と頬を掻いている。
たとえ、見栄えは悪くとも、
それに込められた精一杯の気持ちは、やっぱりちゃんと伝わっているのだ。
そして何より、
そんな風に覗いている許婚殿にとっては、こうやってあかねが一生懸命、自分の為にプレゼントを作っている、その事自体が何よりも嬉しい事であり、たとえそれがどんなものであっても、嬉しくて仕方がないことなのだ。


贈る方も、贈られる方も。
それぞれが目一杯相手を思いやっている。


許婚殿はともかく、それにあかねが気がつくには、まだもう少し時間が掛かりそうである。


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