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××KISS××6

明けて、文化祭二日目。
いよいよ、例のイベントが行われるその日。
その日も朝から、俺は喫茶店内でウェイトレス、あかねは小道具係として食料等の買出しに追われていた。
「ああ、でも今日は午前中の客入りが多かったわねえ」
…ちょうどお昼くらいになって。
交代で昼を取りながら休んでいる最中に、クラスの女子の一人が、そんな事を呟いた。
「何言ってんのよ、智美。あれのせいに決まってんじゃない」
智美、と呼ばれたそのクラスメートにすかさず、別のクラスメートが突っ込みを入れる。
「あれって?」
「ほら、午後のイベントよ。みんな早めにお昼とか取って、イベントに遅れずに行こうとしてるのよ」
「ああ、そうか。ねえねえ、美奈も行くの?」
「あたしは…そうだなあ、彼がね、バスケ部の交流試合でその時間試合の真っ最中なのよ。だから試合を見に行くつもりなの」
「けなげだねえ」
「智美は行かないの?」
「あたしは、そのイベントの後のカラオケコンテストの方の準備があるから…」
「ああ、そうか!智美、歌上手だもんね。イベントの盛り上がりを持続させるように上手な歌を一つ、頼むよ?」
「う、プレッシャーはお断りだって」
智美、そしてその友だちの美奈は、そんな事を言いながら午後のイベントについて盛り上がっていた。



「乱ちゃん!」
と、その時。
やっぱり交代で休憩に入ってきたうっちゃんが、俺の傍へとそそくさと寄ってきた。
「おー、うっちゃん。お疲れ様」
俺がうっちゃンに声をかけると、
「乱ちゃん、あかねちゃんと仲直りまだ出来てへんのやろ?」
「ぐっ…」
…うっちゃんは、いきなり容赦ない言葉を俺に向かって浴びせ掛けてきた。
俺が思わずそれにつまってしまうと、
「だったらさ、あの約束、復活せえへん!?あかねちゃんと行かへんのやろ?だったら、うちに付き合ってえな」
うっちゃんはにこやかな笑顔でそう言うと、俺の腕へとしがみついてきた。
「う、うっちゃんっ」
俺はうっちゃんの腕を慌てて引き剥がすと、
「…ごめん。悪いけど今日は、そんな気になれねえんだ」
そう言って、うっちゃんから少し離れた。
「乱ちゃん、いつまでもぐちぐちと悩んで立って仕方あらへんよ?」
「…」
「だったら、気分転換に、うちと一緒に見に行こう。な?」
うっちゃんは、それでも笑顔で俺を誘ってくれるが、
「…ごめん。やっぱり俺、行けねえよ」
俺は、そんなうっちゃんに頭を下げた。
「…もー。乱ちゃんはホントに、あかねちゃんの事が好きなんやね」
すると。
うっちゃんは、やれやれといった表情で俺にため息をついて見せた。
「ま、ここで乱ちゃんが、『それじゃあ一緒に行くか』とか言ったら、うちはそれはそれで複雑やったけど。でも、絶対にそういわないような気がしてたから…なんか安心したわ」
「うっちゃん…」
「ま、そんな乱ちゃんだからこそ、うちは好きになったんやけどね」
こら、完全に諦めるまでに、まだまだ時間が掛かりそうやな。
うっちゃんはそんなことを言いながらため息をつくと、
「こないだの、キスの事。もしあかねちゃんとこじれそうになったら、うちがきちんと説明したる。あれは、うちが勝手にした事やって。だから、な?安心せえ」
うっちゃんはそう言って、ポンポン、と俺の肩を叩いた。
「おお」
…実はもう、とんでもないくらいこじれてしまっているのだが、そこは胸にしまいつつ、俺はうっちゃんのその気持ちに心から感謝をした。
と、その時。
「右京様ー…」
喫茶店の入り口から、そんな声とともに、ひょこっと顔を出すものがいた。
「ん?あれは…」
俺がよく目を凝らすと、
「あ、右京様っ」
…それは、両手にいろんな食べものを抱えて幸せそうに走ってくる、うっちゃんの家の居候・小夏だった。
どうやら、うっちゃんから文化祭の模擬店のチケットをもらっていたのか、生まれて初めて目にする「文化祭の模擬店のたべもの」に感動しつつ、いろいろと買い込んできたようだった。
「あほか、お前は。そんなに買い込んできてどないすんねん」
うっちゃんが、小夏を自分の元へと呼びながら呆れながらそう言うと、
「早く買わなくては、なくなってしまうと思いまして…あ、右京様も食べます?」
小夏はそんな事を言いながらフランクフルトをうっちゃんに差し出した。
「まだお昼やし、なくならへんて」
うっちゃんはそれを受け取ってもくもくと食べ始めると、
「さ、それ全部平らげたら、面白いイベント行く前に、学園祭でも堪能しにいこか。小夏、あんた学園祭なんて参加するの初めてやろ?」
そう言って、自分の横で食べ物を口いっぱいにほおばっている小夏に笑いかけた。
「学園祭!はい、初めてです!ああ、どんな味がするんでしょう!」
「…だから、食いもんやないって。ほら、はよ食べ。あんま遅いと置いてくで」
「はいっ右京様っ」
小夏は嬉しそうな顔で返事をすると、山ほど買い込んで来た食べ物をほおばり始めた。
「…うっちゃん」
…さっき俺にあんな誘いかけてたくせに、本当は今日の朝家を出るときから、小夏とイベントに行くつもりだったのか。
「…ごめんな」
うっちゃんの心遣いに俺が頭を下げると、
「乱ちゃんが気にすることやないやろ。それに、気にする相手、違うんちゃうか?」
うっちゃんは小夏の必死に食べ物をほおばる姿に目をやりながらそう呟くと、
「ま、うちのことは気にせんと。乱ちゃんは自分の事、がんばり。ま、正直…見せ付けられたというか思い知らされたというか」
「え?」
「乱ちゃん、ほんまにあかねちゃんのこと好きなんやなあって。何か、一人で『諦めさせて欲しい』って思ってたうち、バカみたいやなって、思ってしもた」
すまなそうな顔をしている俺を見て、笑った。
「万が一、あかねちゃんとこのままこじれて別れるような事になったら、すぐにうちに声かけえ。今だったらうちは、大喜びで乱ちゃんのものになったるさかいな」
「はは…」
俺が苦笑いをすると、
「…あかねちゃん、さっき買い物から帰ってきたみたいやから、その辺にいるんやない?」
うっちゃんはそう言って、再び小夏と何か話ながら食べ物を食べ始めた。
俺は、うっちゃんに頭を下げた。
そして、あかねの姿を捜そうと教室を出ようとしたが、
「あ、らんま君どこ行くのよ。休憩、もう終わりよ」
「え、もう!?」
「そうよ。看板ムスメなんだから、逃げられちゃ困るわ」
教室を飛び出そうとした矢先、他のクラスメートに見つかり腕をつかまれ、再び教室の中へと引き戻されてしまった。
「あ…あーあ」
…再び店に戻る羽目になった俺。
今度あかねを探す為に自由になれるのは、店じまいをした後。
イベントの前の、ほんの少しの時間だけだ。

「…」

もしかしたら、その時間。
あかねは、別の誰かの横で楽しそうに笑っているかもしれない。
…そんな姿を見たら、俺は一体どうなってしまうのか。
それを考えると再び胸が、ズキ…と痛む。
でも、とりあえずはあかねの姿を見つけないと。
俺はそんな事を思いながら、その時を、待った。
…そして。




「じゃ、今日はこれで店じまいなー」
「お疲れーっ」
午後、三時。三時半からのイベントのために、1-Fの喫茶店業務も終了した。
俺は、慌ててウィトレスの衣装から自分の着てきたチャイナ服に着替えて教室のなかを見回した。
「…」
笑顔のクラスメート達でごった返している教室の中には、あかねの姿は既になかった。
もしかしたら、そのイベントにいっしょにいくっていう奴と、すでに教室を出てしまったのかもしれない。
そう思うと、何だか胸が異様に早くなり始めた。
「…っ」
俺は、イベントが始まる前に何とかもう一度あかねと話をしなくては…と思いながら、そのまま教室を飛び出した。
そして、
「わ、ちょっと…」
「あ、す、すみませんっ…」
文化祭で遊びにきている一般客でごった返している廊下を、縫うようにして走り始めた。
廊下も、建物の中も、人・ひと・ヒト。
思わず吐き気がするほどの人ごみであったが、何でだろうか。
そんな人ごみにも関わらず、俺は何故か…俺にはあかねを見つけることが出来る。
そんな気がしてならなかった。
たとえあかねが、その隣に俺以外の誰か、と並ぶように歩いているとはいえ。
それでも俺は、何故だか分からないけれどあかねを…見つけることが出来るような気がした。
「…」
…まずは、イベント会場。
一足先に、まだヒトがまばらなイベント会場へと向かった俺は、必死で辺りを見回したがそこにあかねの姿は無かった。
次に、そのイベントで花火があがるのが一番良く見える場所…屋上。
そこへ向かったが、そこには多数のカップルが並んで座っているだけで、あかねらしき姿は無かった。
「…」
(あとはカップルでいそうな場所…)
裏庭かな…なんて。
俺がそんな事を思って走り出したその矢先、
「あれ?乱馬君。あんた何やってんのよ」
「げっ…な、なびき…」
「まー、失礼ね。まるでお化けでもみたみたいな顔しちゃって」
俺は、廊下の曲がり角でなびきと、その友人達に出くわしてしまった。
「こんな所でなにやってんのよ。イベント会場、向こうよ?あかね、はどうしたのよ」
なびきが、ジュースをすすりながら暢気にそんな事を聞いてくるので、
「え、あ、まあその…」
俺が答えに困ってつまっていると、
「あ、もしかしてこの人ごみではぐれちゃったんじゃないの?そういえば、なびきの妹さん、向こうの渡り廊下の
所にいたような気がするけど」
なびきの友人の一人が、そんな事を呟いた。
「渡り廊下?」
イベントの花火とか全容が見えないような、その場所に。何で?と俺が首をかしげていると、
「一人で立ってたみたいだったから、妹さんも君の事、捜してたんじゃないの?」
なびきの友人はそんな事を言って笑っていた。
「一人?」

…何でだよ。一緒に行く男と、そこで待ち合わせでもしてんのか?
俺がそんな事を思いながら黙っていると、

「…とにかく、行って見たら?」
なびきが、ニヤリと笑いながら俺の肩を叩いた。そして、
「さ、あたし達は今年最後のイベントとやらを見に行きましょうかね」
「そうね。ばいばい、なびきの将来の弟さん」
友人達を連れて、さっさとヒトでごった返すイベント会場へと行ってしまった。
(その場所で、相手の男と待ち合わせしてんのか…。わざわざ人目がつかないように…)
それを考えると胸が少し痛むが、俺は、慌てて教えてもらった渡り廊下へと走った。
(…こんな風に、追っかけてきて。あかねの奴、俺のことうざってえ奴だとか思うのかな)
走りながら、俺はそんな事を考えた。
…だけど、そう思う気持ちは、俺にはもうどうしても止める事ができなかった。
俺は、あかねも知っている通り、恋愛に関しては異常に不器用だ。
だから、
たとえあかねが誰か別の奴を受け入れてしまったとしても、そう簡単にこの気持ち、消す事なんて出来ないのだ。
そんな簡単に他の誰かを好きになることなんて出来ないし、
受け入れる事だって…出来るわけが無い。
(…)
そんな事を考えながら俺は、渡り廊下に向かって走っていたが。



「…ん?」
ふとそこで、ある事に気が付いた。



…あれ?ちょっと待てよ?



「…」



…そうだ。
俺は確かに、恋愛に関して不器用だ。それは、あかねだって分かっている事だ。
でも、ちょっと待て。
俺が不器用なのと同じくらい、いや、それ以上にあかねだって…不器用なはずだ。
そんなの、普段のあかねを見ていればすぐに分かる事だ。
しかも、自分の気持ちよりも他人の気持ちを考えて気を使っちまうような、お人よしだ。
「…」
…そんな奴が、だ。
本当に、こんな簡単に気持ちを切り替えて、誰かを受け入れたりしたのか?



「…」
それを考えた俺は、思わず足を止めた。



…あかねから、「別の人とイベントに行く」と聞かされたとき。
俺はショックのあまり、上手く頭を回す事が出来なくて動揺していた。
真面目なあかねだからこそ、中途半端な気持ちで誰かの誘いを受ける事はない。
だから、誘いを受けたって事は、あかねがそいつに好意を持ったということ。
…そう考えて、それでショックを受けた。
でも。
でも、本当はそうじゃなかったのではないか?



「…」
そう考えると、俺はブルリ…と身を震わせてしまった。



…そうだ。
本当は、もしかしたらそうじゃないのかもしれない。
もしもそれが、あかねが俺に付いた「嘘」だったとしたら?
本当は、だれともイベントに行くつもりがなくて、あかねが嘘をついたのだとしたら…。



「…」



…そう考えると、全てに納得が行く。
真面目なあかねだからこそ、中途半端な気持ちで誰かの誘いを受ける事はない。
だから、誘いを受けたって事は、あかねがそいつに好意を持ったということ。
…単純に考えればそれで終わりだけど、でも実はそうじゃなくて…
真面目なあかねだからこそ、俺と同じように…たとえ俺との中がこじれるような事があっても、そんな簡単に誰かの誘いに載る事なんて出来なかった。
誰も受け入れられなくて、それでも俺に気を使って。
…本当は人一倍寂しがり屋で、そのうえそういうイベントが好きなくせに。
俺に嘘をついて…一人で我慢してるんじゃないか。

「誘ってくれた人がいるから」

そんな風に、もっともらしい答えで誤魔化して。
…全部、本当はそんな誘い、断っちまったくせに。



「っ…」
くそ、何やってんだ俺!
何でそれにもっと早く気が付かなかったんだ!?



「くっ…」
…ようやくあかねの本心に触れたというか、それに気がついた俺は、
当たり前の事にたどり着けなかった悔しさで、自分が腹立たしくて仕方がなかった。
「っ…」
俺は、再びあかねがいるらしき渡り廊下へと走り出した。
そして…



「…」
…ガラスの壁に覆われた、人気の無い渡り廊下に。
背をもたげるようにして俯いて立っているあかねの姿を見つけたその瞬間、ピタリ、と廊下に差し掛かるその手前で立ち止まった。
ふと、壁の時計を見ると三時半。
グランドでは、ちょうどイベントが始まった時間だった。



「…」
俯いて立っているあかねのとなりには、誰の姿も無かった。
あかねとて、まるで誰かを待っているような素振はちっとも見せていなかった。
ただ、イベントが見えないようなこの場所で、徐に俯きながら時間を潰している。
そうとしか見えなかった。

「…」
俺は、そんなあかねに一歩、また一歩と静かに近寄った。
あかねは、俺が近寄ってきている事など、全然気がついていないようだった。

「…」
俺は、もう一歩だけゆっくりと歩を進めた。
そして次の瞬間、
ふわっ…
思い切り地面を蹴って、俯いているあかねの目の前へと降り立った。
「あっ…」
あかねが、そんな俺の姿を見てギョッとしたような表情をした。
「…何してんの?」
俺は、俯いているあかねの手首をそっと掴んで、そう尋ねた。
「…待ち合わせよ」
あかねは、そんな俺に対してそれでも頑なにそう言い放った。
そんな俺達の背後で、イベントの盛り上がりを示すような大きな鐘の音が響いていた。
「…」
その、鐘の音を聞きながら。
俺とあかねは、真剣な顔のままそう言ったきりお互いの顔を、見つめていた。

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