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××KISS××5

結局、あかねとそれ以上何も話せないまま、文化祭当日を迎えた。
昨夜もあかねは、家に帰って来なかった。
なびき曰く、「文化祭が終わるまで帰らない」と電話があったようだ。



「着替えとかどうすんだよ」
俺がぼそっと呟くと、
「着替えなんてどうにでもなるわよ。服は借りればいいし、下着だって今はコンビニで買えるし」
そりゃあ、乱馬君のお気に入りではないかもしれないけど…と、なびきは暢気に笑っていた。


「…」
いつもなら即座に言い返せるようなその冗談も、今の俺には言い返す気力もなかった。
恥ずかしいけれど、その日のは一睡も出来なかった。
頭の中は、昼間の屋上での会話で一杯だった。
『乱馬とは一緒にいけない』
そういったあかねのあの姿が、異様に目に焼き付いていた。
「男か?」と。聞いたら「うん」と、あかねは答えた。
同じクラスの中に、あかねが心を許した奴がいる…そう思うだけで、気が狂いそうだった。
もしかしたらあかねは今、そいつの家に…そう考えたら、めちゃくちゃに叫んで暴れたくなった。
不安な気持ちが、心を荒れさせる。
今も誰かに触れられたり、笑顔を見せたりしているのか。
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
きっと、クラスメートのさゆりやゆかの家に泊まっているのだろうと。そんなこと少し考えれば分かるような事なのに…俺は、勝手な不安の波に包まれては一人、苛立ちを隠せないでいた。

「…」

俺は、フラリと夜中に布団を抜け出し、主のいないあかねの部屋へと向かった。
がちゃ…とドアを開けると、
主のいないその部屋は、いつもにも増してガラン、としていて妙に広さを感じた。
吸い込まれるような闇へと、俺はふらふらと部屋の中へと入る。
そして、いつもあかねと一緒に横たわっているベッドへと、横になる。
二人だと狭いのに、一人だと随分広いな…なんて、俺はぽつんと呟く。
普段なら、『乱馬、もっと遠慮して寝なさいよっあたしが寝れないでしょっ狭いのよ!』とか何とか。
勝手に部屋に入り込んだ俺に、あかねは容赦なく足で蹴っ飛ばしたりする。
でも俺は、そんなあかねの攻撃を上手く交わしながらも、
「狭いんならもっとくっつけばいーだろ」
何て言いながら、暴れるあかねを自分の方へ引き寄せてそして…

「…」
…そんな事を思うと、不意にズキ、と胸が痛んだ。

「…」

あかねは一体どう思うだろうか。
俺がこうしてあかねの部屋で夜を明かそうとしているのを知ったら。
……
ため息すら、もう口からは出てこない。
不透明なモヤの掛かった気持ちを胸に秘めたまま、俺はその夜をそこで過ごした。




そして。
もちろんそんな気持ちのまま夜を越せば、翌朝になってもそれを引きずっているのは当然の事だった。
「…」
文化祭だというのにも関わらず、俺の表情は異様に暗かった。
その日は朝からウェイとレスの恰好をするために女の姿をしているが、
これだって元はあかねをよその男から守るために自分から名乗り出た事だった。
でも、よその男から守るどころか、同じクラスの奴に奪われるなんて…そう思うと、いいしれぬ思いが胸を疼く。
「それじゃあ、今日から三日間、頑張りましょう」
一日目の朝、九時半。
少し遅めの時間に教室に集合した俺たちは、クラス委員のそんな号令と共に各自の持ち場へとわかれた。
勿論俺は、今日は朝から「女」。
さゆり達が準備してくれたウィトレスの衣装に身を包まされ、ポン、と店へと放り出される。
「おーおー、似合ってんじゃん」
「いっそのこともっとスカート短くしたらどうだ?」
妙にフリルのついた服を着させられてボーっと立っている俺に、ひろしや大介がそんな事を話し掛けてくるが、
「お色気喫茶かよ」
俺は、ため息をつく。
「とにかく、お前に頑張ってもらわねえとうちのクラスの看板なんだから」
「そうそう。その売上いかんせんで、今日のプチご苦労さん会の菓子と飲みモンの金額が決まるんだぞ」
ひろしと大介はそんな事を言いながら俺の肩を叩いた。
「看板って。うちのクラスの看板は、その…あかねじゃねえか」
だから俺は、あかねを妙な奴らの手から守ろうと女になって傍に…・とそこは口に出さないにしろ、俺がぼそっと呟くと、
「あれ?お前聞いてねえのか?」
「え?何を?」
「あかねの奴、ウェイトレスじゃなくて小道具係りに変更になったんだぜ?今日の朝突然」
「え!な、何でっ…」
「何でって…それは俺も良く聞いてないけど、右京と代わったらしいんだよ。ま、右京もそれなりに可愛いけど、だな。今のうちのクラスの売上は、お前の肩に掛かっている」
ひろしと大介はそう言って再び俺の肩を叩くと、それぞれの持ち場へと戻っていった。
(何で…?だって、昨日だって、あんなに嬉しそうな顔をして試着とか、してたじゃねえか)
…なのに、何で?


「…」
…まさか、俺と一緒に同じ場所に立つのがイヤだから…とか?


「…」
確信が持てない以上、ありとあらゆる悪いことを考える俺だったが、
「らんま君!お店開店させるわよっ。何やってんのよ!」
そんな俺の背後から、クラスの女共の容赦ない叫び声が聴こえる。
「乱ちゃん。ほら、はよせなっ」
ぼーっとしている俺の手を、あかねの代わりにウィトレスの衣装に身を包んだうっちゃんが引っ張る。
「あ、ああ…」
俺がうっちゃんに手を引っ張られつつも、「小道具係」として店の奥にいるはずのあかねの姿を捜していると、
「…あかねちゃんなら、ここにはおらへんよ」
「え?」
「小道具係は、当日は物品の調達とかで買出しに出るんよ。今も、午後の分の食料を買出しに出てるはずや。食料は当日じゃないと買えないし、それに学校近隣のスーパーは品切れやから、隣町まで行ってる筈やし」
戻ってくるのは、お昼近くなんちゃう?…と、うっちゃんは俺に言った。
「あかね、なんで小道具係に?」
「さー…今朝になって、うちにそう言ってきたん。ま、あかねちゃんとさほど服のサイズは変わらないし…あ、ちょっと胸はきつけどな?でも、代わって欲しいって言うんなら仕方ないやろ。それに乱ちゃんと一緒にいる時間が増えるし、うちは二つ返事でOKしたんよ」
うっちゃんは陽気にそう言うと、
「さ、がんばろうなあ、乱ちゃん。あ、妙なオトコに絡まれたら助けてえな」
ニコニコと笑顔で、自分の持ち場へと立った。
「…」
俺はとりあえずうっちゃんに頷いて見せ、自分の持ち場へと立っては見たものの。
その胸中はえらい複雑だった。



…小道具係。
大道具ほどではないにしろ、男も混じっている。
もちろんそうなれば、一緒に買い物に出るだろうし…



…まさか、その中に例の奴が?



「…」
今もそいつと、楽しそうに買い物をしているのだろうか。
そう思うと、ぎゅっと胸が締め付けられる。
そいつと一緒にいたいから、まさか買い物を代わったとか?
いや、ちょっとまて。あかねはそんな短絡的な女じゃねえ。
だとしたら、なんで…?
…やっぱり、ただ俺と一緒にいたくないから?


「…」
…そう考えると、余計に胸が締め付けられる。



「おー!お下げの女!何て可愛らしいのだ!」
「か、帰りやがれー!」
なので。
喫茶店開店と同時に、剣道部の面々を引き連れて店に来た挙げ句、一日中俺の傍に引っ付いている九能先輩をぶっ飛ばしながらも、俺はそんなことばかり考えていた。









…その日の、夕方。店を閉店後。
「はーい、今日は一日お疲れさまでした!」
「乾杯!」
まずまずの売上をはくし、機嫌上等の面々は、閉店後の店内で軽い打ち上げパーティを催していた。
営業はあと二日あるが、思った以上に客足もよく、予算に浮きが出来そうなので比較的豪華なパーティーになっていた。
「おー、看板ご苦労さん」
ひろしや大介も、そんな事を言いながら俺の頭をもみくちゃにする。
「ま、俺の魅力あっての事だな」
俺が、浮かない心内を隠しつつそんな事を言っておどけると、
「その色気で明日も頼むぜ。外部の奴は、看板ムスメがオカマだとはしらねえんだからよ」
「オカマじゃねえっ」
「似たようなもんだろ」
カカカ、とひろしと大介は笑っている。
「…ったく」
俺は、手にしたコップに並々と注がれているジュースを思いっきり飲み干しながら、ため息をついた。
そして、
「…」
ひろしたちとそんなたわいも無い様な会話を交わしながらも、目線だけはある方向へと向けられていた。


…目線の先には、あかね。
そのあかねの周りには、数人の男子がたむろしていた。
ここ数日、俺があかねと一緒にいないのに気が付いているのかいないのか。
あかねに気があるような奴らは、ここぞとばかりにあかねに話しかけようとしているのが目に見えて分かった。


(…)


…あの中の、誰かなのかもしれない。
あかねに誘いをかけて、OKの返事を貰った奴。


「…」


そう思うと、再び胸がざわついた。
『乱馬はあたしと付き合ってるのよ』
一昨日。噂を打ち消そうと、あかねが必死になってクラスメートの前でそう叫んだその場にだって、そのオトコはいたはずだ。
それを知ってて誘いをかけて、更にそいつはOKを貰った。

『付き合ってるとか言って、そんなの本当は見せ掛けなんじゃねえか?』

…もしかしたら、そいつはそんな風に思ってるのかもしれない。
付き合ってるって言ってんのに、誘いをかけたらOKしてもらったし、なんて。
…そんな事を思っているやつがいるかもしれない。
そう考えただけで、俺は異常に腹がたってきた。



「…」



誰だ?
誰だ?
あかねに誘いをかけた奴は、誰だ?



「…」

…そんな事を考えながらあかねの方を見る俺の目つきは、異様に険しくなる。
「ら、らんま」
と、その時。
そんな事を考えながらあかねの方を見ていた俺に、ひろしが慌てて声をかけてきた。
「えっ…あ、何だよ」
俺がはっと我に返ってひろしの方に目をやると、
「お、お前…どうした?」
「え?どうしたって…」
「すげえ、殺気立ってるぞ?何かこう…今にも誰かを呪い殺してしまいそうな迫力が」
ひろしはそう言って、オロオロとしている。
「そ、そんなことねえよ」
俺が慌てて身を取り繕うと、
「今は女の姿だったからそれぐらいの印象ですんだけどよ、普段の男の姿だったら、間違いなく誰かに襲い掛かってそうな迫力だったぜ?」
ひろしはそう言って、苦笑いをしていた。
「そ、そうかな…」
内面がそんな風に表に現れていたとは…と、俺は少し焦ってしまった。
「何か変だぞ、おまえ」
「そうそう。もしかして…あかねと喧嘩でもしてんのか?あの、噂のせいで」
ひろしと大介が俺に気を使ってそんなことを尋ねてくるので、
「べ、別に…」
「さゆりに聞いたんだけど。あかねの奴、ずっとさゆりのうちに泊まってんだってな」
「え?」
「さゆりのうち、いま両親が海外旅行に行っちまってるから、寂しくなくて嬉しいの、とか言ってたけど。さゆりが寂しくない変わりに、おまえが寂しくなってんのか」
「なっ…別に俺は寂しくなんてっ」
…まさか昨日、あかねの部屋に忍び込んで感傷に浸っていたとは言えないが、俺は慌てて否定した。
「あかねの奴、ウィトレスから小道具係りに代わっちまったし。話すきっかけがねえのか」
「べ、別にそんなんじゃ…」
「よし、だったら俺たちが人肌脱いでやろう。何とかしてお前と、あかねが話すきっかけ作ってやるからな」
が。
おせっかいというか、頼もしいというか。
人の話をちゃんと聞かずにいきなりそんな事を叫び始めたひろしと大介は、
「ちょっと待ってろ」
…そんな事を言いながら、あかねの傍にいるさゆりと、ゆかの所へと走っていって何かを囁いていた。
さゆりとゆかは、少し驚いていたような表情をしていたが、それでもなにやら頷くような素振を見せ、俺のほうに向かって、「まかせといて」とでもいいたいのか、陽気に親指を立てて見せている。
「…」
そんな友人達に少々不安を覚えつつも、俺がそわそわと待つこと…三十分。
「…」
そろそろ帰るか、と強引に教室の外に連れ出された俺は、
ひろし、大介、さゆり、ゆか…そしてあかね。計六人で、学校の校門を歩き出る事となった。
なんでも、
「もう夜も遅いから、女の子を家に送るついでに一緒に帰る事にする」…とか何とか。とってつけたような言い訳を元に、俺たちは一緒に夜道を歩く事になった。
しかも、ひろしの隣には、彼女であるさゆりが。
大介の隣には、大介の意中の片思いの相手、ゆかが。
そうなれば、


「…」


俺の隣には、あかねが。並んで歩く事になるのは自明の理だった。
あかねはさゆりの家に泊まるわけなので、「ひろしくんが送ってくれればいいわよ」とでも言いたそうな顔だった
が、
「ひろしとさゆりが二人で歩いているその後ろにぽつん、と歩いていくのも寂しいだろう」
…大介のとっさの機転とアドバイスにより、あかねはしぶしぶ俺が隣を歩く事を了承したらしい。


「…」
「…」


…前を歩く、二組の楽しげなカップル達を目に、俺とあかねは一言も会話を交わさぬまま歩いていた。
何を話し掛けたらいいのか。
普段なら、こんな風に何を話すかなど考えなくても自然に口から会話が飛び出すのに。
「…」
それが、必死に考えても口から出てこないなんて事があるのか。
それを思うと何だか、妙な感じだった。

「…」

普段の学校からの帰り道とは違って、あかねの手には、通学カバンは握られていない。
そのかわり、ぎゅっと…頑なにその手は堅く胸元で握られていた。

「…」

いつもなら。
そんな手にそっと手を伸ばして、当たり前のように手を繋いでしまうのに。
今日は、それさえも許してもらえ無い様な雰囲気を漂わせている、あかね。

「…小道具係は、大変だった?」
「…うん、まあまあかな」

…そんな風に、途切れ途切れの、当り障りの無い会話を続けるこの帰り道、二の腕分の距離くらいしかあかねと離れて歩いていないのにも関わらず、何だかそれ以上に。あかねとの距離が出来ているような感じだった。

「明日は、誰と一緒にイベントに行くんだ?」
はっきりと、そう聞いてしまいたかった。
でも、それをはっきりと尋ねる勇気が俺には、無かった。

「あかね、あの…」
俺が、それでも何か切り出そうとすると、
「…らんまは」
「え?」
「らんまはウィトレス、どうだったの?疲れた?」
そんな俺の言葉をわざと遮るように、あかねが、当り障りの無い事を俺に尋ねる。
「あ…ああ、九能が一日店に居坐ってたから…」
「九能先輩、らんまのこと好きだもんね」
あかねは、やれ九能先輩はどうだとか、あとは俺が本当は男だと知らない他校の生徒がいい客だとか何とか。
なびきが裏で妙なチケットを配っていたとかどうとか。
俺に話をする隙を与えないように一歩的に話しつづけ、
「…あ、さゆりの家についたから」
「え?」
「…ここでいいよ。ありがとう」
やがて、そういって俺がフラフラと離れさゆりの元へと駆け寄ってしまった。
「あかねっ」
俺が小さくあかねの背中に向かって叫ぶと、
「明日…」
「え?」
「明日も…がんばろうね」
あかねは、俺のほうを振り向かずにそう答え、そのまま行ってしまった。
「…」
思わず手を伸ばしたが、俺は去り行くあかねを捕まえる事が出来なかった。


「…おい。話は出来たか?」
「仲直りはしたのかよ」
…さゆりとあかね、そしてゆかを家に送った後。
ひろしと大介がこっそりと俺にそんな事を聞いてくるが、
「…」
俺は、首を左右に振る事しか出来なかった。
「しょうがねえなあ。どうすんだよそれじゃあ」
「…どうにもなんねえよ」
俺は、ひろしたちにとりあえず礼を言って、そこで別れた。


…そう。
今の俺にはもうどうにもしようが無かった。
あかねの心に俺以外の誰かがいて、
それであかねも俺を避けている。
殺気立つくらいその「誰か」を睨みつけても、あかねの心がそちらに向かっている以上はどうにも手がうてない。
「…」
…情けないけど、今はそれをじっと耐えるしかない。

「…」
闇を彩る街のイルミネーションや、車道を走る車のヘッドライトも、この心の闇を照らしてくれる事は無い。
すでに日の暮れた夜の街を、女の姿のままで俺は、ポツン、ポツンと家路へ向かって一人、歩いていた。

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