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××KISS××3

「何か、どえらいことになってしもたなあ。ごめんな、乱ちゃん」



その日の昼休み。
あかねと朝以来話をする機会がなくなってしまい、
何とかきっかけを作ろうと考えていた俺に、うっちゃんがこっそりと話しかけて来た。
「どこで誰がみているかわからないもんやねぇ」
まるで他人事の様にぼやくうっちゃんに、俺は、
「…」
心の中で溜息をつきつつも、
「とにかく。俺達が変に弁解したり慌てたりすれば、余計に周りの思うツボだから。何言われても、無視してようぜ」
「そやな」
俺達は教室の隅でそんな事をこっそりと相談していた。
しかし周りは、言っているそばからもう、
「あかねとどっちをとるのか迷っている」
だの
「今後の事について相談している」
だの好き放題噂をしている。
「…」
教室の真ん中辺りにふと目をやれば、あかねの後ろ姿が見えた。
あかねよりも背の高いクラスメートに囲まれて、
「ねぇねえ、あかねと乱馬くんてどうなってるの?!」
「あかねは平気なの?」
あかねを囲んでいる奴らは、心配しているようなそぶりを見せつつも、無神経な質問をあかねに浴びせ掛けている。
あかねは困ったような笑顔のまま、小さな背中を少し丸め、そんな奴らの質問を交わしていた。
「乱ちゃん、あかねちゃんにはちゃんと言うんやろ?何でうちとキスしたか」
と。
あかねの方を見てじっと黙っている俺に、うっちゃんがぼそっと尋ねた。
「キ、キスったってあれは偶然そんな風になったようなに見えただけで、あんなの…」
「たった一瞬でも、キスはキスやろ?」
そりゃ確かに、唇のほんの先が掠めた位だけやけど…と、うっちゃんはそう言って更に声を潜め、俺を見る。
「でも、乱ちゃんがさっさとしてくれないのが悪いんやで?」
「そ、それは…っ」
俺が言葉を詰まらせると、
「はいはい、わかってます。あれはうちの不意打ちやもんな。…せやから、乱ちゃんは自分からキスする代わりにうちと学園祭、一緒に回ってくれる事を選んだんやもんな」
ウッチャンはそういって苦笑いをしていた。

と、その時だった。

「なー、早乙女。お前上手いことやるよな」
「そうそう。二人も相手にするなんて、大変だろ?何ならあかねは俺達が引き受けようか?」

普段からあかねを気に入っている奴らが、そんな事を言いながら俺とうっちゃんに近づいて来た。
「何やねん、その言い草は」
と即座に言い返すうっちゃんはともかく、俺は無言のままそいつらを睨み返した。
ザワリ、とそれまで静かだった辺り一体の空気が変わる。
「久遠寺もそのほうが嬉しいだろ?」
無神経にそんな事を言ってくる奴らに、
「な、何やてー?!」
うっちゃんは更に反論しようとかっと口を挟むが、
「うっちゃん!」
俺はそんなうっちゃんを手で制して、奴らと対峙する。
これ以上俺が慌てたり、弁解しようとしたりすれば余計に周りは喜ぶ…と、考えたからだ。
しかしそう考えようのは本人たちだけで、「オイオイ、否定なしかよ」と、周りは更に色めき立つてしまった。
(まいったな…)
俺とウッチャンは、思わず顔を見合わせてしまった。

と、その時。

「いいかげんにしなさいよ!」

バン!と、不意に机を鳴らして叫んだものがいた。
「あ、あかね?」
「あかねちゃん?」
…それは紛れも無い、それまで、笑顔でクラスメートの質問を交わしていたあかねだった。
「もう、一体いつまで根も葉もない噂に振り回されれば気が済むの?」
あかねは教室中に響き渡るような大きな声でそう叫ぶと、
「ほら!あなた達もくだらない事言わないで。そんな風にちゃちゃ入れられたら迷惑だわ」
あかねははっきりとした口調でそう言い切ると、
「きっと他のカップルと見間違えたのよ。だいたい、こんな不器用な乱馬が二股なんてかけられるはずないじゃない。ね?乱馬」
あかねはそういって、俺の元まで走り寄って来て、突然、俺の腕に顔を伏せるようにして、しがみついた。
「お、おお?!」
俺も驚きながらもそんなあかねに腕を取られて立ちすくむ。
うっちゃんも少し驚いているようだったが、
「ほ、ほんま二人は仲ええなあ。うちはかなわんよ、ほんと」
そんな事を言いながら俺達の「芝居」に合わせる。
「噂?ホントに噂なのかよ?」
が、目の前の奴らやクラスメート達は、簡単にはそんな猿芝居では納得しようとはしない。
「噂に決まってるでしょ。だいたい、乱馬はすごく不器用なんだから。あたしと右京に二股なんてかけたりしたら、直ぐに分かるのよ」
あかねはそんな事を言いながら、以下に俺が恋愛に関して不器用かを、饒舌に皆に話して聞かせる。

すげえ、必死に皆に話している。
周りの奴らが、「ま、マジかよそれ」とか何とか、思わず笑ってしまうような内容まで、一生懸命話している。
一生懸命…真実を誤魔化そうと、必死に話している。

「…」

…そんなあかねの、俺に向けている背中。
大きな声で、皆を笑わせて話題を誤魔化すように話すあかね。
頼もしいはずのその背中は、何だかいつも以上に小さく、見えた。

「それに乱馬はねっ…」
あかねがそうやって一生懸命に話そうとすればするほど、キリ…と胸が締め付けられる。
知っている。
あかねは、知っているんだ。本当は、例えどんな事情であれ、俺とうっちゃんが一瞬でもキスをしてしまった事を。
それなのに…。

「…」

それを思うと、胸が、苦しい。
あかねが必死に弁解しようとすればするほど、胸が苦しくなった。

「…」

ちらり、と俺の横に立っているうっちゃんを見ると、

「…」

うっちゃんは、とても真剣な眼差しであかねを見つめていた。

一体その胸中は何を思うのか。
それは俺には分からないけれど。

「…」

俺がそんな事を思っていると、遠くで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ、五時間目が始まる。ほら、みんな次は移動教室でしょ?こんな事話してないで、行きましょうよ。遅れると
先生に怒られちゃうわ」
あかねが、パンパン、と手を叩きながら皆にそう促すと、
「ちぇっ…仕方ねえなあ」
「なーんだ、噂はただの噂かー」
とか何とか。
それまであかねの話を興味深く聞いていたやつらが皆、そんな事を言いながらばらばらと散り始めた。
「あかね、なんだ、乱馬くんと上手く行ってるんじゃないの」
「当たり前でしょ」
先ほどまであかねを質問攻めしていたクラスメート達も、そんな事を言いながら五時間目の授業の先へと向かって
いく。
「…」
あかねは、そんな好奇心の塊のクラスメート達をすべて笑顔で見送っていた。
そう、俺と、あかねと、うっちゃんと。教室の中に、俺たち三人だけになるまで、ずっと。


「…」


遠くで、五時間目が始まるチャイムがなった。
移動教室のために、俺たち以外の人間はもう、誰も教室の中にはいなかった。

「…」

皆がいる間中は笑顔だったあかねは、皆が全てで払ったその瞬間に、その笑顔を消した。
「…」
そして、何も言わず黙って、俺とうっちゃんに背を向けながら移動教室の準備をしている。



「あかねちゃん」



と。
そんなあかねに向かって、うっちゃんが静かに声をかけた。
「…」
あかねは、そのうっちゃんの問いかけには答えようとしない。
「あかねちゃん」
うっちゃんは、もう一度あかねに声をかけた。
「…」
それにも、あかねは何も答えなかった。
そればかりか、荷物をまとめおわったのか、あかねはまとめた荷物をもってそのまま教室を出ようとしていた。


「あかねちゃん!」


そんなあかねに、もう一度うっちゃんは大きな声で叫んだ。
その声の大きさに、ビクっ…とあかねが身を竦めて立ち止まる。
うっちゃんはそんなあかねの姿をじっと見つめ、そして…言った。
「なあ、あかねちゃん。うちら、ホントにキスしたんやで?」


(う、うっちゃん!)


俺は、突然そんな事をあかねに言ったうっちゃんに対し、思わずギョッと目を向ける。
うっちゃんは、あかねがその事実を知っているという事はもう十分知っているはずだった。
さっきだって、それを知っていてわざと皆にああやって嘘をついたあかねの気持ちだって、充分すぎるほど分かっていたはずだと、俺は思っていた。
なのに、なのになんでわざわざそれを壊すようなこの言葉を…あかねに向けるのだろうか。
「あかね!これには本当にわけがっ…」
俺は、うっちゃんの言葉を聞いたきり黙ってしまったあかねに、慌ててこれまでの経緯を説明しようと割って入ろうとしたが、


「…訳は!」
「え!?」
「言い訳は、聞かないから」


あかねは、そんな俺の言葉にかぶるように、呟いた。
「あかねっ」
それでも俺が説明しようと口を開こうとすると、
「訳は聞かないからっ…だから、もうこの話はこれで終わり!ね?」
あかねはそう言って、俺と、うっちゃんの方に振り返った。
「…あたしが我慢すれば、いいことだから」
振り返ってそう呟いたあかねは、困ったような笑顔をしていた。
いや、困っているのか、何というか。
唇が震えているというか…今にも泣き出しそうなのを必死に耐えているというか。

「あかねっ」

…こんな顔をしているあかねなら、普段なら迷わずこの腕に引き寄せて、力いっぱい抱きしめてやりたい。
そう思う。
今のこの状況でさえ、たとえうっちゃんが俺達の姿を見ていたって。
迷わずあかねをこの手で引き寄せてしまいたいのに。

「あ、あの…」
…なのに手を伸ばそうとすれば、何かが俺を躊躇させた。

それは、「うっちゃんとキスをしてしまった」という罪悪感からなのか…分からない。
「あかね、あのっ…」
俺がそれでも、今回の事を弁解しようとすると、
「もう、終わりにしよう?この話は、もう終わり!」
あかねは、俺とうっちゃんにそう笑った。
そして、
「あたし、先に移動教室に行くね!二人も早くくるのよ?」
「あかねっ」
「やだ、もう授業始まってから十分も過ぎてるっ。大変だっ」
笑顔のままでそう叫ぶと、荷物をもって教室から出て行ってしまった。
「あっ…」
俺が慌ててそんなあかねを追って出て行こうとすると、
「乱ちゃん、追ったらあかんよ」
机にぶつかりながら前に進もうとしていた俺の服をハシっ…と掴んだ。
「何でっ」
俺がうっちゃんの方を振り返ると、
「…あかねちゃんかて、あれだけ強がったん。泣き顔なんて、みられたないやろ」
「っ…」
「…ほっといたり。うちに帰ってから、ゆっくり話し。その方が落ち着いて話せるんとちゃう?」
学校で人目を気にするよりも…と、うっちゃんはため息混じりに答えた。
「…」
俺は、あかねが出て行った教室の入り口をじっと眺める事ぐらいしか出来なかった。
追っていく資格なんて、ねえよな。そんなことすら思った。


また、泣かせちまった。
好きで、好きで仕方ねえのに。何よりも大切だと思っているのに。
…何で、こんな傷つけ方しか出来ねえのかな。


「…」


小さな背中で、必死に饒舌に皆に話していたあかねの姿を思うと、胸が締め付けられる。
「…文化祭の時のあの約束、破棄したるよ、乱ちゃん」
「え?」
「こんなことになってしまったし…それに、乱ちゃんがそんな困った顔してるの、うちかていややもん。ちゃんと
全部話して、まずはあかねちゃんと仲直りして元気になり。そしたらまた、別の条件考えるわ」
うっちゃんは、表情を曇らせている俺に向かって、そう声をかけてきた。
「・・・すまねえな、うっちゃん」
「謝るのは、こっちの方やろ。とにかく、仲直りする方が先決や」
そして、
「さ、このままあかねちゃんも乱ちゃんも授業に出ないとなると、また妙な噂が立つんやろうなあ。 うちだけでも授業、でなあかんなあ」
うっちゃんはそんな事を言いながら、ゆっくりゆっくりと教室から出て行った。
「…」
俺は、うっちゃんにも心の中で「ごめん」と手を合わせその後ろ姿を見送った。



…そうだ。
まずは、ほかの事なんて何も考えないで。
まずは、今日、うちに帰ってゆっくりとあかねに話さないと。
「もう終わりって言ったでしょ」
そう怒られてもいいから、まずはあかねに今回の事を説明しないと。
そんで、仲直りして…あかねが「見たい」って言っていた文化祭のそのイベントにも一緒に行ってやろう。
そうすることぐらいしか俺には出来ないけれど、でも、まずはそこからだよな。
本当は、今すぐにでもこの教室から飛び出して、どこかで泣いているかもしれないあかねを探し出したいけれど。
そこをぐっと堪えて俺は、そんなことを思った。
なので、授業終了後、どさくさにまぎれてひょっこり帰ってきたあかねを見ても、
授業が終わると同時に、女友達らと一緒に「何か食べてこう!」と元気に教室を出て行ったあかねを見ても。
(うちでゆっくり話そう。そしたらあかねだって…)
…許してくれはしないかもしれないけど、でも理由は分かってくれるかもしれない。
そんなことを考えていた。



…が。
それがいかに甘い事か。俺は、その日の夜思い知った。
あかねはその日、家には帰ってこなかった。

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