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愛し君へ2

「やだ、あんたホントに知らなかったの?」
なびきが、そんな俺の様子に少し驚いたような表情をする。
「…」
俺がそれに対して何も答えずに黙っていると、
「正式に決まったのは、今日の放課後だったみたいだけど。あかねに話があったのは、一週間くらい前だったみたいね。あたしも、英語部の友達に今日、聞いて驚いたわ。だから、餞別代りにプレゼントを用意したのよ」
なびきはそう言って、自分の部屋へと行ってしまった。
一人階下に残された俺は、異常にドキドキとしている胸の鼓動を感じながら、必死に頭の中を整理する。


一週間前っていったら、俺があかねがちょうど、俺を避けはじめたって思い始めた頃だ。
そう言えば今日、職員室で教師が話していた、留学生の事。
あの時は、「真面目な奴が選ばれるんだ」なんて俺、人ごとみたいに思っていたけど、
まさかあかねが…くそ!何でだよ!


「…」

一生懸命冷静になろうとしても、「何で」「どうして」という思いが先行し、俺は冷静さを保てなくなる。

留学、しかも海外に留学と言ったら、一日二日で帰ってこれるわけがない。それくらい俺にだってわかっていた。
そりゃ、「語学に興味がある」なんて・・・そんな話を時々、あかねがしていた事はある。
それゆえに、あかねが海外とか、そう言う環境で勉強できるといことに興味を持っていた事は知っていたけど、まさか、留学なんて・・・と、俺にとっては想定外の事。
それに・・・

「・・・」

するならするで、そんな大事な事、何で一番初めに俺に、話さないんだよ。
何で、その話が来た時に俺に話さなかったんだ?
俺、そんなに信用されてないって言うか・・・どうでもいいような存在だったのか?


あかねがいなくなる、という衝撃と、どうして秘密にされていたんだ、というショックが、頭の中をグルグルと巡る。

「…」

…とにかく、確かめなくちゃ。
そう、もしかしたらなびきとなびきの友達の勘違いなのかもしれない。
それだったら、笑い話ですむだろう。
俺は、フラフラと二階への階段を上がっていき、中で着替えているはずのあかねの、部屋のドアをノックした。

「はーい…あら、乱馬。どうしたの?」

程なくしてあかねが、ドアを開けた。
「…ちょっと、話があるんだけど」
俺が真剣な表情でそう言って、あかねの部屋にそのまま入ろうとすると、
「あ、ご、ごめん…ちょっと今日は・・・」
…あかねは、そんな俺の部屋への侵入をやはり拒み、俺と一緒に廊下に出た。

また、拒まれた。

その行動に、俺は少なからずズキ、と胸を痛める。
「すぐ済むから」
それでも俺がめげずに部屋に入ろうとすると、
「あ、だ、だめなの・・・部屋、散らかってるの」
あかねはそんな俺を入口でブロックし、「外で話そう」と、中を見せないようにして自分も外へ出てきた。
「…今まで、散らかってたって部屋に入れてくれてたろ」
俺があかねにボソッと呟くと、
「ホントに散らかってるの…それに、二人きりで話がしたいなら、部屋じゃなくても、あ、道場でも良いじゃない?」
あかねは俺の質問から逃げるようにそう言って笑うと、道場へ向かって歩きだした。
どうしても、俺を部屋に入れたくないのか。俺にはどうにもそうとしか取れない。
「…」
俺は、笑顔で歩きだしたあかねの背中をじっと見つめた。


…何でだよ。
叫びたい気持ちが、胸を過る。
留学の話が持ち上がったからって、何で俺を避けるんだよ。
今すぐあかねに問いただしたい気持ちが、先行する。
でも、ここであかねにそう気持ちをぶつけた所でどうなるか。
俺は、必死に冷静を装う努力をした。


「あかね」
二階からの階段を降り、夕食の支度に忙しい居間を通り過ぎて、家から道場へと続く渡り廊下に差し掛かった時。
俺は、前を歩くあかねの背中に向かって声をかけた。
「なあに?」
あかねが、俺のほうを振り返らずに明るい声で返事をする。

「…」
…何で、そんなに楽しそうな声で答えるんだ。

俺は、普段なら聞こえ応えのある可愛い声なのにも関わらず、そんなことを思う。
「…」
俺は、一度大きく深呼吸をした。
そして、意を決してあかねに尋ねた。


「…なあ」
「なあに?どうしたのよ、乱馬」
「留学するって本当か?」
「え?」
…俺がそう尋ねた瞬間、前を歩くあかねの足が、止まった。

「…」
あかねが、驚いたような顔で振り返る。


「留学するって、本当なのか?」
俺は、そんなあかねにもう一度ゆっくりとそう尋ねた。
するとあかねは、
「…うん。今日にでも皆に話そうと思ってたんだけど…乱馬、どうして知ってるの?」
あかねは、困ったような顔をして笑いながら、俺にそう言った。
その言葉に、俺は再び胸をズキッと痛める。


『どうして知ってるの?』『皆に話そうと思ってた』


…なあ、あかね。その言葉、何かおかしくないか?
俺、お前にとっては他の家族と同じくらいの存在なのかよ。
確かにさ、家族は大事だって。俺だってそう思う。
でも、その中でもさ、俺は…もうちょっと違う存在、じゃないのかよ。
何だよ。
『皆』に言う前に、俺に話してくれるって、そんな選択肢、なかったのか?



「…」
納得がいかない。
俺がモヤモヤとそんなことを考えながら黙っていると、
「一週間前に、英語の先生にお話を貰ったの。でもすぐに即答できなくて、ここ一週間色々な資料をみたり英語部に話を聞きに言ったりして考えて、昨日返事を出したのよ。正式に決まったのは今日だったんだけどね。出発は、三月十五日よ」
「…」
「これから準備もあるし、今、部屋が荷物のせいで散らかってるの」
あかねはそう言って、「足の踏み場もないんだもの。ゆっくり出来ないでしょ?」と、笑っていた。
俺は、更にそのあかねの笑顔が理解できずに、黙り込む。
「どうしたのよ」
そんな俺の顔を、あかねが不思議そうな顔で見つめた。
俺にしてみたら、あかねにその台詞をそっくりそのまま言ってやりたい。



「…なんで」
俺は、理解できない気持ちを必死に抑えようとしながら、ぼそっと呟いた。
「何でって、何が?ああ、どうして留学生に選ばれたかってこと?うん、前々から留学には興味があって…」
俺の問に、あかねはそんなことを答えて笑っていたけれど、

「そうじゃねえよ!」

俺の言いたい事が伝わらない、そして噛み合っていない会話に今の自分の中のモヤをぶつけるかのように、俺は声を荒げた。
その鋭い声に、
「な、何よ急に大きな声、出して…ビックリするじゃない」
ビクっ…とあかねが身を竦める。
「何で留学するかを聞いてんじゃねえよ!何で…何でそう言うこと、俺に一言も話さないで決めちまうんだよ!」
俺は、胸に留めていた想いをそのままあかねにぶつけた。
するとあかねは、
「だって…」
「だって、何だよ。話したら、俺が反対するとでも思ったのかよ」
「そんなこと…それに、反対されたって多分あたしは、留学する事を選んだわ、だって、これはあたしの夢だったんだもの。乱馬なら分ってくれるって、思うから」
あたしの夢は、あたしが叶えるもの。誰にも束縛なんて出来ない…そうでしょ?
あかねが、はっきりとした口調でそう言った。
「乱馬だって、強くなりたい、男に戻りたい・・・そう思って、中国に行く日が来るかもしれないじゃない。あたしはそれに対して反対はしない」
「・・・」
あかねの言葉に、俺は何も言い返すことが出来ない。


・・・たしかに、人それぞれの夢はその人のもの。
他の誰が束縛する事なんて、出来るわけがない。
だから俺だって、そりゃ寂しくて仕方ないけどあかねが留学したいならそれを応援してやりたいし、逆に俺が中国行く、っていう時は、あかねに気持ちよく送り出してもらいたい。
絶対にまた、再びここに帰ってくると約束できるから、安心して送り出して欲しい。
あかねの場合も、あかねがここに帰ってくると信じているから、送り出してやりたいと思う。
そう、問題は「留学をする」事なんかじゃないのだ。
問題なのは・・・


「・・・何で、留学なんて大事な事、教えてくれないんだよ」
「え?だから今日、皆に言うつもりだったんだってば」
「そうじゃねえよ!だからっ・・・」

だから、何で俺に初めに話してくれないんだ。俺は、語気を荒げてそう叫んだ。

そう、俺が気にいらないのは、
あかねが留学をして遠くに行ってしまう、事ではなく、
あかねが留学をする、ということを、どうして誰よりも先に話してくれなかったのか。
なぜ、そんな大事な事を他の皆と同じ時に俺に聞かせようとするのか。
そのことだ。

「俺達、ただの同居人か?」
「え?何言ってるのよ。そんなわけ・・・」
「じゃあ何でだよ。お前にとっても俺にとっても、そんな大きな事・・・何で黙ってたんだよ!」
俺があかねに向かって再び叫ぶと、次の瞬間、あかねは、信じられないような理由を呟いた。



「・・・だって、たいしたことないと思って」



その瞬間、俺の頭の中が真っ白になった。



「だって、そう思ったんだもん。それに・・・」
あかねは、俺の目の前であーだこーだと色々理由を述べているが、頭が真っ白になった俺には、あかねの話している言葉がまるで耳に入ってこない。
日本語で話されているはずなのに、まるで聞いた事のないような言語で話されているかのように、感じる。


たいした事ないって、何だ?
留学をして遠く離れていく事が、あかねにとっては対した事、ないのか。
恋人がいて、たとえ夢を追うとはいえ突然離れていく事が、どうしてあかねにとってはたいした事、ないんだ。
・・・わからない。
なあ、あかね。俺には全然わからねえよ。


「・・・」
俺は、色々と俺に理由を述べていたあかねの話をまるで聞かないまま、あかねに背を向けた。
「乱馬っ」
あかねが、自分の話を聞いていないと分ったおれに慌てて声をかける。
「・・・」
でも、あかねの気持ちが理解できないのと、突然降ってわいたようなこの話にどうしても心が対応できないのと・・・俺には再びあかねの方を振り返る気に、どうしてもなれなかった。
「・・・なびきが、餞別買ってきたって」
「乱馬!ねえ、あたしの話をちゃんとっ・・・」
「夕飯、もうすぐ準備できるみたいだぞ。俺、先に戻る」
俺は背中の向うにいるあかねにそう言うと、そのまま廊下を走って家の方へと戻っていった。
そして、

「あら乱馬、どうしたの?」
「あの、俺夕飯いらないから」
「まあ、どうして?具合でも悪いの?」
「いや・・・ちょっと用事があって出かけるから」

台所と居間を忙しそうに動き回っていたお袋にそう言うと、そのまま家を出て行った。
もちろん誰と約束をしているわけでもなく、行き先なんてないのだけれど。
でも、混乱している頭を整理する為には、あのまま家に留まっているのは無理だと、思った。
ましてや、いつもと同じように笑顔であかねの隣に座って一緒に晩御飯を食べるなんて無理だと、そう思った。


たいした事ないと、思ったの。
そんなあかねの言葉が、どうしても耳から離れない。


何でだよ、あかね。
何でたいしたことないんだよ。
毎日顔合わせて、毎日一緒にいて、ずっと一緒にいるって、正式に契約を交わしたわけじゃないけど、約束はしたじゃねえか。
心の準備もする暇もなく、いきなり俺の前からいなくなることを決めて、「たいした事ない」って。
・・・俺には、たいした事どころかすげえ、すげえ大事な事なのに。
お前が行きたいっていうなら、反対はしねえよ。
快く送り出してやりたいって思うよ。
でも、こんな風に何の相談もなしに、他の家族に伝えるのと同じ時に俺にも発表するなんて、それはあまりにも酷くねえか?
大切なことだからこそ、大切な夢がかかっているからこそ、一番初めに話してほしいって、思うのに。
・・・



「・・・」



夕暮れの、人がまばらの商店街。
ため息をつきながら歩いていく俺の足取りは、異様に重い。
あかねにとって、俺との付き合いってその程度のものだったのか。
恋人とか許婚って、こんなに大きな出来事も「たいしたことない」で済まされるくらいの簡単な間柄なのか。
それとも、理解できない俺が子どもなのか。
でも、
「・・・」
これを理解しなくちゃいけないのなら、俺は大人にはなりたくねえなあ・・・。
身体は大人、心は子ども。
ピーターパンでいたいとは思わないけど、でもそれが今の俺みたいなものなのか。
あかねへの気持ちが強ければ強いほど、俺はそんな気持ちに苛まれていく。
「・・・」
ふって沸いたようなこの話、全部夢だったらいいのに。
俺はそんなことを思いながら、ふらふらと夕暮れの商店街を歩いていた。

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