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愛し君へ1

最近あかねが、俺と一緒に下校をしなくなった。
「何か用事があるのか?」
そう尋ねても、曖昧に笑って誤魔化すだけ。
夜も、
「今日はちょっと・・・」
「ちょっとって?」
「うん、その・・・勉強をしたいの…」
そんな言葉でやんわりと、俺が部屋に行くのを阻止しようとする。
勿論そんな日は、一緒に寝るなんてことにはなりはしない。
何だろう。
どうしたんだろう。
尋ねた所で、あかねからの明確な返事は帰ってこない。
…別に、四六時中一緒にいなければ満たされないような恋愛関係ではないと分っては、いる。
どちらからともなく、今から将来の話をしたりして、
さりげなく、「これからもずっと一緒」って事を、お互いでお互いに確認したり。
これまでも、これからもずっと一緒。
心のどこかにそう言う思いがあるからこそ、
「俺、強くなりたい。修行でもう一回中国に行きてえなあ。呪泉郷もあるし」
「あたしは語学の勉強って興味あるのよね・・・。中国語もそうだけど、英語とか」
「へー」
「でも、なかなかそんな機会もないしねえ。趣味程度なもの?」
「喋れたらすごいけどな」
「そうね」
・・・こんな風に、お互いが全然違う夢を描いていても、不安になることが無い。
俺の隣に、あかねがいる。
それは、きっとこれからもずっと変らないんだ。
俺がそう思うように、きっとあかねもそう思ってくれているだろう。
そう、
たとえ接触する機会が減ったって、心が通じ合っていれば、
不安になることなんて無いんだ。
To Heart。心が離れていればTwo Heart。
俺達は、まだまだ前者。きっと、そう。
あかねと接する機会が減った俺は、それによってわき上がろうとしている不安を、
そう思う事によって掻き消そうと思っていた。
一緒の家に住んでいるんだ、たまにはこういう時だってある。
人には一つや二つ、隠しておきたい事だってあるだろうし。
別にそれがあるからって、俺達の関係がどうにかなるわけではない。
そんなこと、俺だって子供じゃないんだし理解はしているつもりだ。
ずっと一緒にいるって約束もしたんだ。
…けれど。
でも、それでも。
彼女の気持ちが見えないのは、不安で不安で仕方がない。





春休みも近い、ある日の放課後の事。
「乱馬、ごめんね。今日も先に一人で、帰って?」
教室でカバンに荷物を詰めていた俺に、あかねが手を合わせながらそう言った。
「…何か用事でもあるのか?」
あかねが、こうやって一人で下校したがる事が続いて、はや一週間。
俺が理由を尋ねても、何だかはぐらかしては結局理由を言わない、あかね。
「ちょっと、ね。夕ご飯までには帰るから」
「それは良いけど…どこ行くんだよ」
「うん、ちょっと」
やっぱり今日も、曖昧な言葉で誤魔化しては、「ごめんね、乱馬!」と俺にもう一度謝って、さっさと教室から出て行ってしまった。
「…」
あかねは、俺とは別に下校をして、夕飯前にはふらりと帰ってくる。
別にどこかの部活に助っ人に行っているわけでもないと言うのに、一体何をしているのか。
俺と違って、居残りで勉強をさせられているわけでもあるまいに。
一体、どうしたというんだろう。
「…」
俺がそんなことを考えながらボーっとしていると、
「何や、乱ちゃん。最近倦怠期?」
そんな俺の元に、冗談とも本気とも取れないような言葉を口にしながら、うっちゃんがやって来た。
「うっちゃん」
「あかねちゃんと、上手くいってないんちゃう?いい機会やし、うちに乗り換えとかん?」
「べ、別にうっちゃんに心配してもらわなくても」
俺が、一応は虚栄を見せつつそう主張するも、
「カップルが破局を迎える原因てな、乱ちゃん。些細な事からずれていく二人の距離、すれ違いからなんやで」
「…」
「乱ちゃんがフリーになるんやったら、うちは大歓迎」
うっちゃんはそんなことを言いながら、更に俺の不安な胸中を煽ると言うか。
「あかねちゃん、乱ちゃんに内緒でバイトとか始めたんちゃうか?」
「バイト?」
「そう。で、そこのバイト先の誰かといい感じに…ありえない話ではないなあ」
「…」
「お互い彼氏彼女がいても、接しているうちにどんどん惹かれあって…禁断の恋は燃えるっちゅーもんや」
うっちゃんはそういって、自分で自分を抱きしめるような素振で「きゃー!いややわー!」とか何とか叫ぶと、
「…ま、ホントのトコはどうかわからんけど。せいぜい、手遅れになる前に気いつけ」
なんて。
煽るだけ煽っておきながら、さっさと帰ってしまった。
どうやら今日は、店の方に団体予約が入っているようだ。準備に忙しいのだろう。
一人残された俺は、何ともいえない複雑な表情で、その場に立ち尽くしていた。

「…」

…あかねが、バイトを始めたなんて聞いた事がない。
だいたいあかねは、バイトなんて無理にしなくてもちゃんと貯金もしているし、それに超がつくほどの不器用人間
だ。
一般的なアルバイトなんて絶対、務まるわけがないだろうに…
でも…

「…」

でも。
俺は徐々にもモヤモヤと胸を満たし始めた思いに、自然とため息をつく。



…ここ一週間、あかねの俺への態度がおかしいのは確かだった。
一緒に帰ろう、と言っても、「用があるから先に帰って」と断るし、家でも、夕食後に部屋に行っても、
「今日はちょっと、勉強したいの…」
「勉強なんて、後でも出来るだろ」
「うん、でも・・・ちょっと今日は、ごめんね」
優等生らしいもっともらしい台詞で、俺の入室を拒否する。
勉強をしたい、と言われれば勿論それを邪魔するわけには行かず、俺はすごすごと引き返すわけで。
おかげで、

「あら、乱馬。最近この部屋で過ごす時間が増えたんじゃない?」
「『珍しい』」

…なんて。お袋とオヤジにまで余計な心配をされる始末だ。
二人にしてみれば、それまで俺があかねの部屋に入り浸っていた頻度を考えての事だろうけど、言われた方は言わ
れた方で、情けないやら恥かしいやら。何だか、自分達の部屋とあても居心地が悪い。
まあそんなこんなで、
俺達はここ一週間、キスどころか手も繋いでいないのだ。
朝だけはかろうじてあかねと登校するも、朝は遅刻スレスレに走って登校する俺達は、手なんて繋いだり色々と語らっている暇はない。
つまりここ一週間の俺達は、一緒の家に住んでいるのにも関わらず、ろくに会話も交わさなければ接触さえもして
いないような、状態だ。

…俺は、何かあかねに嫌われるような事をしたんだろうか。
クリスマス、正月、バレンタイン…どれもこれも、何の問題もなく越してきた。
一応はこんな状態ではあっても、三月の十四日…ホワイトデーの約束だけは二月の時からしてあって、
出発時間とかは決めてこそいないけれど、一緒にどこか行こう、ということだけはバレンタインの時に決めているのだ。
もしも俺のことが嫌だとか疎ましいのなら、そんな約束だって早々と解消しているはずだし。

俺は、自分を安心させるかのようにそんなことを言い聞かせる。
喧嘩だってした記憶もないし、最近は邪魔者だって入らないし…

「…」

ありとあらゆる可能性色々と考えてみるも、俺には心当たりがない。
あかねは、一体どうしてしまったんだ?
それとも、純粋に俺と一緒にいたくないだけなのか。
俺は、荷物を詰め込んだカバンを背中に背負いながら、そんなことを思いつつ、ノロノロと教室を出た。



放課後の学校と言うのは、何だか妙な貫禄があるというか。
昼間差し込む眩しいばかりの太陽の光が、ちょっと黄金色を帯びるだけで、セピア色のムーディーな世界感を醸し出す。
「…」
俺は、普段は走って通り過ぎるだけの廊下をのんびりと一人、歩いていた。
普段は目にすることのない、壁に貼り付けられている掲示物。

『生徒会役員募集!君の熱意が学校を変える』
『遅刻したらトイレ掃除デース!』
『野球部員募集、長髪の君でも今すぐレギュラー!』
『短期留学制度始めました。興味がある人は英語部をチェキラ!』
『格闘茶道始めました。講師は格闘茶道家元夫人・五月さん』

…などなど。
改めてみると、うさんくさそうな物ばかりだな…なんて。俺は妙なところで感心してしまう。
そういやあ、生徒会役員選挙なんてものも、メンドクサイからって行かなかった記憶もある。
体育会系の学校行事には喜んで参加するけれど、文科系の学校行事にはパーフェクトで参加していないよな、俺。
だいたい、うちの高校は校長がもう非常識と言うか変態と言うか…そんな状態なのに、生徒会がちょっとやそっと苦労して学校の秩序を作ろうとしたところでどうにもなるものではないと、俺だけでなく皆がきっと、心の中で思っているはず。
全く効果のない風紀委員会による風紀チェックも、遅刻撲滅運動、と毎朝校門の前で遅刻する生徒のチェックをしている生活指導の教師も焼け石に水、のれに腕押し、ぬかに釘。
やっても効果があるとは思えないと分ってはいてもやらなくてはいけないだなんて、
「優等生は、大変だなあ」
生徒会役員なんて、成績のいい奴がやるもんだ。
そう思い込んでいる俺は、苦労の耐えない彼らを勝手に労って、そんな言葉を吐いた。

と。

「…いやあ、でも今年は良かったですなあ」
ちょうど俺が職員室の前に差し掛かったところで、教師の一人がそんなことを言いながら他の教師と笑っている姿が目に入った。

「毎年候補者選びには苦労しますが、今年は立候補者がいて助かりました」
「留学ですからね、それなりの生徒じゃなきゃ困りますからなあ」
「そうそう。これで向うの学校の校長にも安心して報告できますよ」

…どうやら、教師の一人は英語部の顧問。
廊下に掲示しているポスターにあった、短期留学制度の留学生候補が見つかった事を、喜んでいるらしい。
うちの学校の校長は、言わずと知れた変態校長。
それゆえに、それなりのしっかりした生徒を送り出さないと、変態校長と生徒は全て同類…みたいに見られてしまうらしい。
…生徒にしてみれば、あの変態校長のおかげで迷惑極まりない。

「…」

ま、でも。
留学なんて真面目な奴らがすることだし、さっきの生徒会役員募集、と同じで、俺には一切関係ねえし。
まあ、誰だか分らないけれど頑張ってくれたまえ。
体育会系ならともかく、文科系の行事に全く興味がない俺は、誰だか分らないその留学生に勝手にエールを送りつつ、職員室の前を通り過ぎる。
そして、そのままゲタ箱へ向かい、一人家へと帰っていった。



「ただいまー」
…それから、二時間くらいして。
既に帰宅して、居間でそわそわとテレビを見ていた俺の耳に、
ちょうど夕飯の直前、グッドタイミングであかねが帰宅した声が、入ってきた。
「あら、お帰りあかねちゃん。遅かったのね」
そんなあかねを、かすみさんが玄関で出迎える。
「うん。ちょっとね」
あかねはそんなかすみさんに笑顔で答えると、「荷物を置いてくるね」と二階の階段を上がろうとした。
「…遅かったな」
本当は、あかねが帰ってくるのを待っていた俺だったけれど、
あくまでも冷静を装って、そんなあかねに声をかけるべく居間から出て行くと、
「うん。ちょっとね」
あかねはそれ以上は何も言わず、笑顔で階段を上がっていく。

「…」

…ちょっと、ってなんだよ。
俺は、トン、トン、トン…とリズミカルに階段を上がっていくそんなあかねの態度が、どうしても納得が出来ない。
やましい事がなかったら、別にどこで何をしているとか、教えてくれても良さそうなのに。
「ちょっとね」
そんな言葉で誤魔化されたような気がして、何だか胸にモヤモヤしたものが、残る。
「…」
きっといつものあかねだったら、
これこれこういう事情で一緒に帰ることが出来ないんだ…絶対に自分から言ってくるはずなのに。
わざわざ隠しているという事は、何か、俺に知られたらまずい理由でもあるんだろうか。
まさか、うっちゃんが言うように他に好きな奴でも出来たとか。
だから、俺と最近一緒に下校しないどころか過ごさなくなったとか。


「…」

不安な心が先行し、余計な事まで俺は考えてしまう。
…そりゃ、人には隠しておきたいことくらい、いくつかあるだろうけど。
でも、急に俺を避けるようになった理由は、わざわざ俺に隠しておかなくてはいけないものなのか?
一体、なんだってんだよ。


俺は、あかねが登っていった階段をじっと見つめながら、そんなことをモヤモヤと考えていた。

と、その時。

「ただいまー」
ガラッと玄関のドアが開いて、なびきが姿を表した。
「…いなかったのか?」
「あんた、さりげなく失礼ね」
あかねのことで頭が一杯で、そういえばなびきの姿を見かけてなかったなあ・・・なんて。
今頃になって気がついた俺は、玄関に上がってきたなびきに対してそんなことを呟く。
「あら、なびきお帰り…やだ、まだ帰ってきてなかったのね?」
それに追い討ちをかけるように、台所からかすみさんが顔を出してそんなことを呟いていた。
「お姉ちゃんも、酷いわね。そんなにあたし、存在感薄いわけ?この家で」
「逆だろ」
「そうかしら」
なびきは家族の散々な扱いに不満そうな表情をしていたけれど、
「ま、いいわ。着替えて来ようっと。…それより乱馬君、あかねは?」
「え?ああ、荷物を置きに部屋に行ったけど・・・」
「そう。じゃあ、今の内に渡しておこうかしら」
俺にあかねの居所を確認し、そんなことを言いながら、自分も二階への階段を上がっていった。
「?」
一体何を渡すんだ?
俺がそんなことを思って首をかしげていると、
「乱馬君は、何を用意するつもり?」
ふと、二階の階段を上がりかけていたなびきが、急に階下の俺を振り返って、そう質問してきた。
「用意?」
俺が何のことだ、と言う表情をすると、
「もう知ってるんでしょ?あかねのこと」
なびきはそう言って、足を止め、もう一度下に降りてきながら俺にそう言った。
「あかねのこと…?」

…ドクン。

なびきの言葉に、何故だか分らないけれど、俺は妙な胸騒ぎを感じた。
あかねのことって、何だ?
「…」
俺がさっと表情を強張らせて黙り込んでいると、
「…その様子じゃ、あんたまだ、あかねから聞いてないの?」
なびきが、「あちゃー、こりゃ言わない方が良かったかな」といった表情をする。
「…あかねが何だよ」
でも、俺だってこんな風に気になることを言われれば、このまま聞かなかった事になんて、出来ないわけで。
ドクン、ドクン、と徐々に大きくなる胸の鼓動をはっきりと自分自身で感じながらも、俺はなびきに問う。
「…まあ、あたしが今言わなくても、あかねはあんたにちゃんと言うだろうけど」
なびきは、そんな俺に小さくため息をつき、そして一息置いてから、言った。

「あかねね、うちの学校の代表として、アメリカに留学する事が決まったのよ」



…アメリカに、留学?
聞きなれない言葉に、一瞬で頭が真っ白になる。



…留学って、何だよ。
そんなの、いつ決まったんだよ。俺、そんなの全然知らねえよ。
大体そんなの、頭の固い優等生が行くもんじゃねえのかよ。
何で、あかねなんだよ。
何で、あかねが行かなくちゃいけねえんだよ。
何でっ…俺よりも他の奴がそれを先に、知ってるんだよ。


「…何だよ、それ」
…なびきの言葉が俺の耳に届いたその瞬間、俺の周りの時間が全て、凍りついた。
思い描いていた「当たり前にあるはずの未来」が、一瞬にしてホワイトアウトしたような気がした。

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