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opposite

どんな顔で接すればいいのか、分からなくなってしまった。




乱馬との出会いは、ホントに最悪だった。
大体、初対面が風呂場で全裸って、考えられない自体だ。
あげく、人のプロポーションにまで文句をつけるなんて、デリカシーがないにも程がある!
…でも、時が経てば経つほど、あたしはそんな酷い男に惹かれるようになった。
人の心はホントにミステリアスだ。
どこをどうやったら、そんな最低男を好きになるのか?自分自身の思考回路が全く理解できないし理由が分からない。
だけど、 そんなあたしのはずなのに、
いつしか「何故惹かれたのか」を考えるよりも、「乱馬は私のことをどう思っているんだろうか」ばかりを考えるようになる。
恋をするが故、なんだろうか。
…でも間違いなく、
こんな風に考えてる頃にはきっと、あたしはもう、乱馬のことをすごく好きになっていたんだろうな。
好きなのに、
可愛くいたいのに上手くそれを伝えることもそうであることも出来なくて、
些細なことで一喜一憂していた日々。
…でもそういうのをたくさん乗り越えた先で、あたしと乱馬は結ばれた。
たくさん遠回りして、何度も傷付いて、でも確実に少しづつ近付いたあたしたち。
近付く度にお互いの存在の大きさを感じていった。
だから…二人の気持ちが通じあって、そしてその後また時間を経て心も、身体も結ばれた時は、初めての事で不安もあったけど、あたしは嬉しかった。



それなのに。



…初めて結ばれた翌日、あたしは、乱馬にどんな顔で接すればいいのか分からなかった。
特別に意識する必要はないわけだし、普段通りに接すれば良いこと位、あたしにも分かる。
実際に乱馬だって、
「もう朝か…なびきに気付かれる前に部屋、出ねえと」
「う、うん…」
「じゃあ俺、行くな」
ポン、とあたしの頭を大きな手で軽く叩いたあと、すごく、すごく優しいキスをして部屋を出て行った。
乱馬のその口調も表情も、普段と変わらない。
当たり前だ。身体が目当てというわけじゃないし、
ことが済んだからと言って、突然変わる必要なんて何も無いんだから。
…だからあたしだって、別に何を意識して妙な態度も表情もすること無いんだ。
でも…
「…」
今朝早くに乱馬を部屋から見送ってから、あたしは一言も乱馬と話していないし、きちんと顔もみていない。
話す機会がないわけじゃ、勿論ない。
あたしは意図的に乱馬を避けていた。
乱馬はいつもと同じようにあたしに接しようとしてくれているのに、あたしはきちんとそれに答えることもしないし、目だってあわせることが出来なかった。
そのあまりの避け具合に、
「あかね、あんた乱馬くんと喧嘩でもしてるの?」
なんて。
見兼ねた友達があたしにそんな事を聞く始末だ。
喧嘩なんて、とんでもない。
それどころか、二人の気持ちを感じあって心も身体も一つになったばかりだというのに。
「…」
普通にしたいのに、なんで出来ないの?
乱馬の事、すごく、すごく好きなのに…
「…」
あたしは心と身体の連動が取れていない自分に何度もため息をついていた。


その日の夜。
「あかね、風呂あいたって」
乱馬が、あたしの部屋のドアを軽く叩いた後、顔を見せながらそう声を掛けて来た。
「かすみさんが、あかねに先にどうぞって…」
…普段は、そんなことをわざわざあたしの部屋に来てまで言うことなんてないのに。
わざわざ理由づけしてまでこんなことを言いに来たのは、多分…今日のあたしの態度のせいだ。
まともに話をしなくなったあたしと、何とかして話をしたい、きっかけを掴みたいって、
思っているのだろう。
「あ、ありがと…」
でも、
それが分かっていると言うのに、あたしは態度を変えてあげる事が出来ない。
あたしは部屋に来てくれた乱馬の顔をろくに見もせず、彼の横をすり抜けて部屋をでた。
そして、お風呂場に続く脱衣所に飛び込む。
バタン、とドアを閉めた後自分の胸に手をあてると、びっくりするくらい、胸が激しく鼓動していた。

「…」

どうして、こんなになっちゃうの?
どうして顔も見れないの?
好きなのに、
好きだから見れないの?でもこんな態度じゃそれさえも伝わらない…

「…乱馬、何て思ったかな」

あたしは、ぽつんとそう呟いてみる。
どんなに乱馬が鈍感だったとしても、流石にあたしの態度がおかしい事には気がついてるはずだ。
「…」
乱馬には非なんて何もない。
恋人とお互い望んで結ばれたということに、悪い事などあるわけがない。
こんな風に勝手に意識して、避けて二人の間に妙な空気を流してしまったのはあたし。
そう、これはあたしに原因があるんだ。
でも、それが分かっていてもどうにもすることが出来ない。
どうしたらいいか、分からない。
「…」
どうしたらいいんだろう…
あたしは洗面台に手を突き、大きな溜息をついた。

と、その時だった。

ため息をついたあたしの背後でカタン、と何かが動く音がした。
「…」
ん?何の音だろう。
あたしは手をついていた洗面台から顔を上げて、洗面台についている大きな鏡へと目をやった。
その瞬間、三つのことが同時に起こり、あたしは混乱した。
一つは、何気なく見た鏡にそれまで居ないはずの乱馬が映っていたこと。
一つはその乱馬の表情が今にも泣き出しそうな、困ったような感じだったこと。
そして最後の一つは、その乱馬が…あたしに背後から抱きついてきたことだった。
「…ッ」
びっくりするくらい強い力で、抱き締められたあたし。
一気に胸が早く鼓動しはじめた。
驚きすぎて声がでない。
カアーッと頭に血が上って、パニックを起こしそうだ。
「…」
あたしは乱馬に抱きつかれたまま、まるで人形になってしまったかのように、彼の腕の中で固まっていた。
と、
「…俺のこと、嫌?」
固まっているあたしの耳元で、乱馬が小さな声でそう呟いた。
あたしは、ビクン、と身を竦める。
「あんなことしたから…俺の事、嫌いになっちゃったかな…」
ギュッ…と更に強くなる腕の力。
でも囁く声はそれに反比例して弱くなる。
「…」
あたしはその言葉にどうすることも出来ず、固まっている。
それと同時に、ズキ…と胸が軋むのを感じていた。
乱馬が言う『あんなこと』とは、勿論昨日の夜から朝にかけてのことだ。
今朝から態度がおかしいあたしに対し、乱馬はそのことが原因だと思ったのだろう。
だからこんな風にあたしに謝るんだ。


違う。
乱馬は何も悪くない。
悪いのはあたし…。あたしが勝手に乱馬を意識して避けて…

「…」
胸の痛みと溢れる思いは増しているのに、それを相手に伝える事が何故か出来ないもどかしさ。
態度がおかしなあたしを責めるのではなく、自分に非があると自らを責める乱馬。
優しいから、
余計に自分を責めて苦しいんだ…

「…」

乱馬…ごめんね。でも乱馬が悪いんじゃないの。
「・ ・・」
答えてあげたいのに、何故か上手く言葉が出てくれない。
もどかしい・・・ あたしがそっと目を閉じると、
答えないあたしのそれを「答え」と取ったのか。 乱馬はそんなあたしの首筋に唇をつけ、そして顔を埋めるようにしながら、
「あかねが嫌なら、俺もうあんなこと…絶対しない。絶対しないからっ・・・だから…だから
さ…」
俺の事、嫌いにならないで…
先程よりも更に小さな声で、乱馬が呟いた。
「・・・」
…その言葉に、その声に。
あたしの胸が更にズキ…と軋んだ。
乱馬が今、どんな気持ちでこの言葉を呟いたのか。
それを考えると、胸が潰れてしまうかと思う程苦しくなった。
…ようやく好きな人と結ばれたと思ったのに、その行為を拒絶するかのような対応。
まるで、もう二度としないで、とでも言っているかのような…
「…」
あたしは、あたしの態度が彼にこんなことを言わせてしまうほど苦しめていたことを思い知り、更に軋む。
…言わなくちゃ。
あたしが今何を思ってどうしてこうなったか、きちんと言わなくちゃ。
違う、そうじゃないって。
乱馬は何も悪くなくて、そして嫌なんかじゃなくて、って。
じゃないと…
「…」
あたしは、そっと乱馬があたしに回していた腕をほどいた。
振り返ると、そこには不安そうな表情の乱馬がいた。
皆の前では、いつも偉そうで自信満々で勝ち気で生意気な顔ばかりのくせに、あたしの前ではもっと…感情的な顔を見せる。
それは、乱馬そのもの…強さも、弱さも、乱馬はあたしにきちんとさらけ出してくれる。
だからあたしも、そんな乱馬にちゃんと答えたい。ううん、答えなくちゃいけないんだ。
あたしは、そんな乱馬の胸に自分からそっと抱きついた。
乱馬はそんなあたしに一瞬驚いたようだったけど、驚きよりも本能が先立つのか、抱きついたあたしの身体をギュッと強く抱き締める。
「…」
抱き締めながら、優しく髪を撫でる乱馬の手の温かさを感じながら、あたしはぽつんぽつんと話し始めた。
「…違うの…乱馬は何も悪くないの」
「…」
「あたし…乱馬とその…先に進めて、嬉しかったの…だからっ…乱馬は謝ることないの…なのに…」
「…」
「あたし…乱馬の事意識しちゃって、どんな顔でどんな風に話したらいいのか分かんなく
なっちゃって…嫌いなんかじゃないからっ…だからっ…」
だから…あんなこと言わないで
あたしは最後の言葉を呟きながら、乱馬の胸に顔を埋めた。
…顔を埋めた広くて逞しい胸から、彼が今日、どんな気持ちで過ごしてきたかがヒシヒシと伝わってくる。
今更…あたしがこんな風に謝ったって、乱馬は信じてくれないかもしれない。
でも、嫌いだから、嫌な事をされたからあんな態度をとったって、そんな風に思われるのだけはきちんと否定したいと思った。
「好きなの…」
小さな、小さな声であたしは呟いた。
きっと乱馬には聞こえて無いかもしれない。でも…
「…」
あたしは、更にムギュッと顔を胸へと押し付けて乱馬に抱きついた。
と、
「…」
そんなあたしの身体を、乱馬がそっと自分の胸から離した。
「…」
やっぱり…今更あたしがこんなことを言ったところで、信じてもらえないのかな…
あたしが不安げな表情をしながらそんなことを思っていると、
「…」
乱馬はそんなあたしを、まるでそのまま抱き潰してしまうかと思う位強い力で、自分から抱き直した。そして、
「…俺…嫌われたんじゃなかった…?」
と呟いた。
でもその声は、まだどことなく不安げだ。
「嫌いなんかじゃないもんッ…」
あたしがそう答えると、乱馬はあたしの頭に何度も頬をすりよせ、
「良かった…嫌われたんじゃなかった…」
と呟きだした。
「…」
あたしも何も言わずに、ただただ、乱馬と頬をすり寄せる。
温かくて、柔らかくて。でもたくさん、乱馬の温度を感じることが出来る手段。

…不思議、だった。
キスしなくても、愛の言葉を囁きあわなくても、今のあたし達にはこれで…充分過ぎる程お互いの気持ちを感じあうことができている。
動物の本能、なのか?理由は分からない。
でも、少しすれ違って生じていた誤解を解くには、十分すぎるほどの行為だった。
あたしの言いたい事も、乱馬の不安だった気持ちも、全部全部、今伝わって、そして伝えている気がした。
あたし達は、何も言わずただ、ただ頬を寄せあいお互いを感じあっていた。

「…あのな?」
「うん…」
「俺…どんな顔のあかねも見たい」

・・・しばらくして、そっと身体を離した後。
先程と少し体勢を変えて、洗面台に少し腰掛けるようにして立った乱馬が、不意にそう呟いた。
あたしはそんな乱馬の腕の中にいて、背後から抱き締められている状態だ。
あたしが乱馬の言葉にゆっくりと振りかえると、
「どんな顔していいか分からないって言うあかねの、そういう顔も全部見たいから…不安と
か怒りとか辛さとか、俺、そういうのも全部見たい。だからさ…どんな顔でもいいんだよ」
「乱馬…」
「分からないって、そういう顔のあかねで、いいんだ」
乱馬はそう言って、じっと話を聞いていたあたしの額に優しくキスをした。
「…」
『どんな顔でもいいんだよ』
その言葉が、まるで渇いた大地に染み入る命の水のように、あたしの心に広がっていく。
そして、どうしてもっと、早くにそれに気付かなかったのかと非情に悔やまれる。

どんな顔をしたらいいのか分からない、だなんて。
そんなの、そんな風に悩む事自体、おかしかったんだ。
あたし・・・何やってるんだろう。
あたし・・・


「…ごめんね」
あたしが素直に乱馬にそう謝ると、
「…」
乱馬は、ホッとしたような、嬉しそうな、先程とは比べものにならないくらいの明るい表情をした。
そして、
「…俺、やっぱりこれからもあんなこと、するよ?」
「…うん」
「そんで…これからももっと、あかねの事好きになるよ?」
そう言って、あたしの額に自分の額をゴスッと軽くぶつけた。
「…うん」
あたしはそれに、ためらわず迷いなく答える。
すぐ目の前の、大好きな人の顔。
とても幸せそうで嬉しそうで、自然にあたしの顔にも笑みが零れる。
あたしが笑えば乱馬が笑って、乱馬が笑えばあたしも笑う。
幸せの、相乗効果。
何だかそのことも嬉しくて仕方がない。
分らないなら分からない顔を見せてくれれば良い。
答えなんて、考える必要もないくらい簡単で、すぐそこにあったんだ。
難しい事とか余計なことなんて考えなくて良くて、あたしはあたしのまま、ありのままの姿で、乱馬と接すればいいんだね。
そう、乱馬がいつもあたしにそうしてくれているように。
・ ・・ それを教えてくれた乱馬に心から感謝しながら、
あたしは優しい彼の胸のなかに再びその身を委ねたのだった。

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