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Dearest5

・・・それから、どれくらいたったろうか。
色んなことを考えすぎて、頭がボーっとしていた。
ほぼ、丸二日眠っていないような状態だった。目も、何だかしょぼしょぼしていた。
考えたりボーっとした所で心の整理がつくわけでもなく、そして状況が進むわけでもない。
あたしは気持ちを切り替える為に少し、毛布の中で目を閉じた。
そしてそこで一度記憶が途切れ、次にあたしが気がついた時・ ・・あたしは毛布をはいで顔を外に出してみた。
・・・カーテンの隙間から、眩しいくらいの日の光が差している。
どうやら夜が明けているようだ。というより、もう大分日が高い・・・?
あたしは、ぼんやりとしている目をこすりながら、ベッドの枕もとに置いてある時計へとをやった。
時計は、一時をさしていた。
「・・・」
日が昇っている以上、一時というのは昼の一時。
「・・・学校・・・」
あたしは、はっと、息を飲んだ。昼の一時なんて、学校に通っている者からしてみれば家にいてはおかしい時間帯だ。
あたしは慌ててベッドを飛び出してまず服を着替えようと身に纏っていた衣服に手をかけるも、
「あ・・・」
ふと目をやった、壁にかかっていたカレンダーの日付を見て、ほっと、ため息をつく。
・・・今日は、土曜日だった。
土曜日は、学校は休み。休みの日なのだから学校の支度等勿論しなくて、良い。
支度をしなくて済むという事は、部屋の外に出なくても良いという事。
居間に降りて、乱馬と顔、合わせなくても良いってことだ。
・・・
「…」
あたしは再びノロノロとベッドへ戻り、蒲団を頭から被った。
そして、猫のように身体を丸めてため息をつく。
・・・そういえば、学校で乱馬達の話を偶然聞いてしまった時、
『そうえば今週末だろ?』
ひろし君が乱馬にそんな事を言っていた。
今週末の乱馬の予定。
それは・・・美由紀さんに指輪を渡すこと。
今日は土曜日、ということは、乱馬が指輪を渡すのは・・・
「今日か、明日・・・」
あたしは小さな声でそう呟いて、ため息をついた。

・・・昨日、あんな事があった。あたしと乱馬の関係に一つ、区切りがついた。
それを受けて乱馬は、この週末に彼女に指輪を渡す。お互いの名前を刻んだ、特別の指輪
を。
あたしとの関係をそれなりに形をつけた後に、改めて贈る気持ちの篭った指輪。
そんな風にされたら、贈られた方だってもっと、もっと喜ぶに決まっている。
そして二人は・・・

「・・・」

この週末にされると思われるやり取りを思うと、自然に胸がぎゅと、締め付けられた。
・・・指輪を贈る彼。それを喜ぶ彼女。週末、学校がない日のデート。
指輪手にした二人が、「ありがと、それじゃあ」なんて・ ・・そのままサヨナラするとは思えない。
気持ちが前向きに同じ方向へと向かった二人はきっと・・・
「・・・」
ありとあらゆることを一人で想像し、それに耐え切れなくてガバっ…と、あたしは蒲団をはいだ。
「・・・」
・・・気持ちを落ち着かせようと目を閉じても、昨夜楽しそうに腕を取り合っていた二人の姿
が浮かぶ。
全てを拒絶したくて耳を抑えて身体を丸めても、
「ごめん、それは出来ない」
指輪を渡すのをやめてくれたら信じる・・・とあたしが言ったときの乱馬のあの答えが、耳か
ら離れない。
「・・・」
昨日、はっきり答えが出たじゃないの。
乱馬は、美由紀さんを選んだの。あたしに自分のことを信じてもらうよりも、彼女に指輪を渡して喜んでもらうことを選んだの。
「お前がそう思うなら仕方がない」
乱馬は、そう言った。それが、全てじゃないの。
指輪の事がばれるのが嫌でバイトのことも隠していて・・・やがてそれもばれて、ああやって話した結果、乱馬が出した答えをあたし、ちゃんと聞いたじゃない。
こんな風にグチグチと考えていたって、こんな風に一人で泣いていたって、その出された答えとあたしが出した答えは変わらない。

・・・もう、終ったんだよ。あたし達。

「・・・」
あたしはそっと目を閉じて、少し汗ばんでいた額にかかる髪の毛を掻きあげた。
理解、しなくちゃ。受け止めなくちゃ。自分に何度もそう言いきかせる。
「…」
とん、とん。
あたしは今度は髪を掻きあげたその手で、自分の胸を軽く叩いてみた。
何だか、随分と軽い音がしたような気がした。
心の中から乱馬がいなくなっちゃっただけで、あたしの胸の中はこんなに空っぽになっちゃうのか・・・そう思うと、何だか妙な気分になった。
そしてそれと同時にやっぱり・・・自分の中でどれだけ彼の存在が大きかったか、改めて思い知る。
「・・・」
悔やんでも悔やみきれない事ばかりだ。
そして、悔やめば悔やむほど、寂しければ寂しいほど・・・楽しくて幸せだった頃の記憶ばかりが甦る。
事情はどうであれ、あたしは浮気をされて裏切られた。
付き合っている時だって、酷い言葉で傷つけられたり嫌な思いをさせられた事だって、ある。
乱馬のそういう嫌な部分やいい所ばかりじゃない所を思い浮かべれば、少しはこの気持ちも楽になるかもしれないのに。
そう思ってそれを思い出そうとしても、全然そんな記憶は浮かんでこない。
・ ・・昔誰かが、
「人間が動物よりも優れている事って何だと思う?それはね、忘れるって言う事を意図的に出来る事なんだよ」
そんな事を言っていたのを、あたしはふと思い出した。
「・・・」
だったら、楽しい記憶も全て今は意図的に忘れる事だって出来るはずでしょう?
「乱馬がいなくても大丈夫だから」
・・・あの時あたしは言い切った。
だから、今だけはそんな記憶、忘れさせてよ。
「・・・」
あたしはそんな事を思いながら記憶を操作しようとするも、
そうしようとすればするほど・・・やっぱり楽しくて幸せだった頃の記憶が胸を満たす。

「・・・」

もう、戻れない日々をどうにもできないというのに思い出す、ばかり。
・・・こんな時間が一体これからどれくらいの長さ続くの?
「・・・」
先が見えない暗闇に迷い込んでしまったかのような、あたしは妙な錯覚と眩暈を覚えたような気がした。






「あら、あんたやっと起きたの?」
「え?う、うん…」
「いくらなんでも寝すぎよ、寝すぎ。もうみんなお昼だって食べ終わっちゃったわよ」
それから、またしばらくして。
とりあえず洗面所で腫れぼったい目を冷やすように洗った後居間に行ったあたしは、テレビを見ていたなびきお姉ちゃんに声をかけられた。
居間の柱時計を見上げると、時刻は既に午後二時半を差していた。
お姉ちゃんとは、昨夜乱馬のバイト先で一方的に別れて以来話どころか顔も合わせていなかった。
一人で置いて帰ってきてしまってごめんなさい、も、
一緒に来てくれてありがとう、も、
あたし達、終ったんだよ・・・という報告も。全て出来ないままあたしは、お姉ちゃんと話をしていない。
何だか少し気まずいような気もしつつ、あたしはお姉ちゃんの傍へと腰を下ろす。
「ご飯は?あ、かすみお姉ちゃんとかおば様は出かけちゃったから、用意は自分でしなさいよ」
「いい・ ・・いらない」
「じゃ、この煎餅たべなさいよ、ほら」
あくまでも他人の為に食事の用意をしてやろうというつもりがない、お姉ちゃん。
お姉ちゃんはそんなことを言いながら、居間のテーブルの上に置いてある菓子置きをあたしの方へと差し出した。中には醤油の煎餅と、透明な子袋に入ったサラダ味の煎餅が入っていた。
でも、あまりお腹も空いていないあたしは、気持ちだけ受け取る事にしてそれをお姉ちゃんに押し戻した。
「…」
お姉ちゃんはそんなあたしにチラリと目をやるも、特にそれ以上は何も言わなかった。
あたしも特に自分から何を言い出すわけでもなく、黙ってそこに座っている。

・・・居間に流れる、無駄に明るいテレビの音。
張り詰めた空気にそぐわないミスマッチなシチュエーションに、あたしは何だか妙に息苦しさを感じ、とんとん、と自然に胸を拳で叩いていた。

と。
「…あ、そうそう。乱馬君、出かけたわよ」
「・・・え?」
「今日は朝から用事があるんですって。夜、何か花火大会に寄って帰ってくるっていっていたから、遅いみたいだし。昼間家の中で会う機会なんてないわよ」
お姉ちゃんは、テレビを見たままの姿勢であたしにそんな事を言った。
「そう・・・」
あたしはお姉ちゃんのその言葉に驚きつつも、
・・・指輪を渡すの、やっぱり今日なんだ。それを確信しそのまま俯く。
指輪を昼間二人で買いに行って、彼女を喜ばせてその顔を見て自分も喜んで・・・そのまま夜の花火大会で二人は。
「・・・」
想像が出来る、一連の流れ。
それを思い浮かべた途端、ズキン、ズキンと胸に痛みが走った。先ほどまで頭を蝕んでいた頭痛と合わさり、何だか体がおかしくなりそうだ。
「・・・」
それを知ったところで、あたしにはもうどうにも出来ない。
どうにでも出来ないし、もうあたしには何を言う資格なんてない。
だって、あたし達はもう終ったんだもん。
乱馬は、もう美由紀さんが・・・
「・・・」
頭では、上辺だけだけれどそう理解しようとしていた。
でも、それに全然心が付いていかない。
心と体が、バラバラになりそうだった。
「・・・」
ちゃんと気を引き締めていないと、お姉ちゃんと一緒の部屋にいる今この瞬間にもまた、泣いてしまいそうだ。
もう、いい加減そんなのやめなきゃ・ ・・あたしはぎゅっと唇を噛み締めながら何度か深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせようと努力をしていた。
すると、
「で?」
「・・・え?」
「乱馬君は朝から出かけて夜は花火大会。あんたは、そんな風に四六時中、陰気くさい顔してこの土日を過ごすつもりなわけ?」
「あたしは・・・」
「あたし以外の、事情を良く知らないお姉ちゃんやおば様、お父さん達があんたのその顔を見たら、心配すると思わない?」
俯いて、今にも泣き出しそうな顔で心を落ち着かせようとしているあたしに、お姉ちゃんがゆっくりと振り返りながらそう声をかけた。
そして、無言であたしに小さな手鏡を渡す。
あたしはその手鏡を、じっと見つめた。
鏡には、なんとも冴えない表情をしたあたしが映っていた。
洗って冷やしても赤く腫れぼったい瞳と、生気の無い顔…それに、血色の悪い唇。
髪の毛だって、寝グセで先端がピンと跳ねたりして。
百年の恋も冷めそうな顔…って、まさにこういう顔の事を言うんじゃないかしら。あたしはそんなことを思った。
「…」
・・・昨日の、美由紀さんの元気でハツラツとした可愛らしい姿と、今のこのあたしの冴えない姿。
これじゃ、乱馬じゃなくたって美由紀さんに心奪われるよ・・・あたしがそっと目を伏せながら、その鏡をお姉ちゃんに返した。
お姉ちゃんはその鏡を受け取ると、コトン、とテーブルの上に伏せた。そして、
「昨日あれから、乱馬君と話したんでしょ?」
「うん…」
「その様子だと、あんまりいい方向に話し合いが行かなかったみたいねえ」
「…」
「ま、昨日あんな事があったのに乱馬君は朝から出かけちゃうわけだし?あんたはそんな感じだから大体想像つくけど…くよくよ悩んでいても仕方ないでしょ。男と女なんて、なるようにしかならないってことよ」
次に誰かを好きになるときには、あんまり「好き」と言う気持ちに油断とか余裕とかもたないようにするのね・・・お姉ちゃんは、あたしに同情するわけでもなく、かといって乱馬を責めるわけでもなく…あたしにそんなアドバイスをした。
「・・・」
あたしは俯いたまま小さく頷く。
なびきお姉ちゃんは、そんなあたしの項垂れた頭をぽん、と軽く叩いた。
元気を出せ、とでも言っているのか。あたしはもう一度俯いたまま小さく頷いた。

と。

「ねえ、気分転換に夕方、あたし達も出かけない?」
項垂れたままのあたし、お姉ちゃんが急にそんな提案をしてきた。
「え?」
あたしが驚いてゆっくりと顔を上げると、
「どうせ今日、皆出かけているわけだし、あたし達だけで夕飯を食べるわけだし。ほら、これ」
お姉ちゃんはそう言って、ヒラヒラヒラ・・・と五千円札をあたしに見せびらかす。
どうやら、先に出かけたかすみお姉ちゃんと早乙女のおば様があたし達の夕食代として置いていったのかもしれない。
「でも・・・」
だけど、夕飯はおろかお昼も食べる気がしないようなあたしが少し躊躇していると、
「いいじゃないの。あ、そうだ。じゃあさ、あたし達も花火大会、見に行きましょうよ。屋台とか出店がたくさん出ているから、好きなもの食べられるし。あまったお金は仕方がないから山分けという事で」
あくまでもあまった夕食代をかすみお姉ちゃん達に返すという気がないお姉ちゃんは、そんな提案をあたしする。
「今年はまだあんたも花火、見てないでしょ?」
「うん・・・」
「あたしも見てないし、丁度いいじゃない。せっかくだからあたし達も行こうよ」
「でも・・・」
「花火大会の会場なんて広いんだし、何千人と観客がいるのよ?そんな中で乱馬君と会う訳ないじゃない。会う事の方が奇跡だわ。会いッこないから安心しなさいって」
「・・・」
「あのねえ、あかね。そんな辛気臭い顔でいつまで生活されていたら、あたし達だって気を使うのよ。あんた一人暮らしじゃないんだから」
「お姉ちゃん・・・」
「起こってしまった事は仕方ないでしょ?後悔しても、起こってしまったものはもう、な
かったことにはできないのよ。これからどうするかが、大切なの」
「・・・」
「気分転換に花火でも見てリフレッシュして、気持ち切り替えた方が、あんただって少しは楽になるわよ」
「お姉ちゃん・・・」
「このあたしが夕飯代の残りは山分けって腹をくくって、あげく親切に誘ってあげているのよ。ありがたく思われるならまだしも、迷惑だ何てそんなこと考えたらあんた、許さないわよ。いい?あんたは夕方、あたしと一緒に花火を見に行くの。分かったわね?」
「う、うん・ ・・」
「よろしい」
なびきお姉ちゃんは、あたしに強引にそんな約束をさせると、
「ま、冗談はともかく、たまには姉妹で花火見に行くのもいいでしょ」
「うん・・・」
「夕方六時、出発よ。それまでに・・・その赤く腫れた目をちゃんと冷やして、シャワーに入って身支度を整えておく事。浴衣、着てくなら着付け手伝ってあげるから。あんた不器用だし一人じゃ着られないでしょ?」
そう言って、居間から出て行ってしまった。
「…」
あたしはお姉ちゃんが出て行った居間で一人、ため息をつきながらゴロン、と畳に転がり天井を仰ぐ。
そしてまたぼんやりと考え事をする。

…あたしがこうして畳で寝転んでいる間にも、きっと乱馬は美由紀さんとデートとか、してるんだろうな。
RtoM。そんな名前が刻まれた特別の指輪をもらい、喜ぶ美由紀さん。その彼女を見て喜ぶ乱馬。
デートの最後は夜の花火大会。きっと、二人で寄り添って楽しそうに見るんだろうな。
そんな二人と、もしも出会ってしまったらどうしよう。
思い出したくない時に思い出してしまう楽しい出来事があるように、
会いたくない時に限って会ってしまうこともあるかもしれない。
お姉ちゃんは、会場には何千人もいるんだから会った方が奇跡だといっていたけれど、
そんな奇跡を起こしたくないと思っていても、もしかしたら今のあたしなら、起こせるような嫌な力があるかもしれない。


「…」

そんなことを考えると、何だか胸がまた締め付けられるようで苦しかった。
じんわりと、目尻に涙が滲んだ。あたしは慌てて手の甲で目をこすり、畳の上に置いてあったティッシュの箱へ手を伸ばし、ティッシュを取る。
そして、チンと鼻をかむと、ため息をついた。
「…」
…家にいて部屋に篭っていても、こんなことずっと考えているだけ。
こんな状態のままいれば、当然の如く他の家族だって気がつく。触れられたくないことでも、「どうしたの?」と心配させてしまうのは当然だ。そうなればあたしは勿論、他の家族だってあたしに気を使って、雰囲気が悪くなるだろうに。
『一人暮らしじゃないんだから』
お姉ちゃんの忠告が、あたしの胸を過る。
そう、あたしは皆と一緒に同じ家に住んでいるんだもの。
人前であからさまに落ち込んでいるのなんて、他の人にとっては、心配はしてくれるも迷惑極まりない。

「・ ・・」

なびきお姉ちゃんが言う通り、少し気分転換に外でも出た方がいいのかな。
気分が晴れてリフレッシュしたら、楽にはならないかもしれないけど、少しは前向きに考えられるようになるかな。
甦る楽しい記憶を、一つ一つ「それはもう、戻る事の出来ない時間なんだ」って・・・向き合える強さを得るための一歩を踏み出す事ができるかな・・・
・・・
「…」
あたしは、ゆっくりと寝転んでいた身体を起こした。

・・・そうよ。せっかく、あのお姉ちゃんが気を使って忠告して、誘ってくれたんだもん。
あたし達二人だけで夕飯なら、別に出前を取ればいいだけの話。
それをわざわざこうして、誘ってくれたんだよね。
口調は強くても、高圧的でも、でもこんな風にあたしの気分転換をさせようとしてくれているんだもの。お姉ちゃんのためにも、そしてあたしの為にも・・・頑張って外に出なくちゃ。

「…花火か。そう言えば今年、初めてだなあ…」
・・・去年は乱馬と一緒に見に行ったな。そして来年も一緒に見ようって、約束をして。
「・・・」
・・・また甦る、幸せの記憶。でも、あたしは必死に首を左右に振ってその記憶を消し去るように努力をする。
「・・・」
あたしは、ついている居間のテレビの音をわざと大きくした。
テレビの音が大きくなったところで、あたしの胸の中にあるものは掻き消たりしない。
でも、少しは気を紛らわせようとする、意志を自分に知らしめる事はできる。
あたしは無駄に明るいバラエティ番組の音声を耳にしながら、ぼんやりと花火大会に出かけるまでの時を過ごしていた。






「ほら、あかねー。早く行くわよ」
「あ、ま、待ってよお姉ちゃん」
「六時に出るって行ったでしょ!全く、ぎりぎりになって浴衣の着付けを頼むんだから」
「ご、ごめん…」
夕方、六時半。当初の出発予定よりも三十分ほど遅れて、あたしとお姉ちゃんは家を出た。
ぼんやりと居間で過ごしていたあたしは、うっかり時間を無駄に過ごしすぎ、気がついたときにはもう五時半。
慌ててシャワーを浴びて汗を流し、お姉ちゃんに浴衣の着付けを頼んだのが既に六時。
この時点で出発時間を迎えていた。
「あんたねえ、のんびりしているにも程があるわよ!」
お姉ちゃんは、浴衣ではなくいつものTシャツと、動きやすそうなジーンズをはいていた。
既に支度を終えて玄関にいたお姉ちゃんは、まだタオル姿でウロウロしていたあたしを見て呆れ顔だ。
「ごめん・ ・・」
「ほら、早くしないといい場所取れないでしょ!浴衣、どれ着るの?」
「うん、これ・・・」
「もう、しょうがないわね」
お姉ちゃんは、あたしが渡した浴衣を手際よくあたしに着せると、ぼやぼやしているあたしをせかして家を出た。
「あ、ま、待って・・・」
あたしも慌てて下駄を履いてお姉ちゃんを追いかけ玄関から出る。そして急いで玄関に鍵をかけてお姉ちゃんに追いつき隣に並んで歩きだした。
「あかね、何食べる?夜」
お姉ちゃんは、あたしから玄関の鍵をさっと受け取り自分の鞄に入れるとあたしにそう尋ねる。
「お姉ちゃん、鍵あたしが持とうか?」
「いいわよ、別に。あたしが持っているほうが何かと便利だし」
「ふーん…?」
「それよりも、あんた何食べたい?花火見ながら食べるとなると、やっぱあれかしら。ヤキソバとかより串系よね。もしくはトウモロコシ」
甘い物は、食後のデザートね・・・お姉ちゃんはそんな事を言いながら、あれこれと出店のメ
ニューを口にする。
「・・・何でも」
あたしはお姉ちゃんに、ぼそっとそう答えた。あまりお腹がすいていないから、どうも何を食べたいとか、ピンとこないというか。すると、
「何でも、じゃ買うとき困るでしょ。出店周りだって込んでいるんだから、決めたものを
さっさと買わないと、時間がかかってしょうがないわ」
「ご、ごめん・・・」
「それに、あんた浴衣着ているしあんまり込んでいる所で動くの大変でしょ?あたしが買ってきてあげるわよ」
「いいの・・・?」
「仕方ないでしょ。それより、会場に着くまでに何を食べたいか決めとくのよ」
お姉ちゃんはあたしにそう言って、更にスタスタと道を歩き出す。
「あ、ま、待って・・・」
「早く早く。会場、混むわよ」
「う、うん・・・」
あたしがぼやぼやしていたせいで、こうして道を急ぐ羽目になっているのだ。
あたしはカコカコ・・・と普段履きなれない下駄と、そして浴衣の前がはだけないように急いで足を動かしながら、お姉ちゃんの後を必死で着いていきながら花火会場へと急いだ。
…今日の花火は、町の川原付近で行われるもの。
いわゆる、海辺の街の盛大な花火大会みたいなものではないんだけど、川自体は近隣の町まで流れ出ているような大きな川なので、それなりのレベルだ。
夜の七時半、開始。そして夜の八時半終了。
もちろんその前二時間くらいから出店や小さなイベントなんかも会場設営されて行われているし、早めに行けば割りといい場所で花火が見られると、夏休み前には全国版のレジャー雑誌に取り上げられたくらい評判も高かった。
おかげであたし達が花火大会の会場についた頃には、まだ花火が始まるまで三十分近くあるというのにも関わらず、浴衣姿の女の子や、甚平姿の男の子、はしゃいでいる親子連れなどで会場がほぼ埋め尽くされていた。
これみよがしに並んでいる食べ物屋台にも、何メートルも列を作って人々が並んでいる。


「あちゃー・・・こりゃ、いい場所では見られそうもないわね。ほら、あかねがぼやぼやして
いるから!」
「ご、ごめん・・・」
「全く…これだけの人は、一体どこから沸いてくるのかしら!」
子どもは夕方六時以降外に出るな!・・・とか何とか。
ほぼやつあたりなんだけれど、お姉ちゃんが、イライラした口調でそんな事を叫んだ。
どうやらお姉ちゃんは、人ごみがあまり好きではないみたい。
それなのにこうして、人の多い花火大会にあたしを誘ってくれたのは、もちろんあたしを励ます為。
「ごめんね・・・」
お姉ちゃんの心遣いに感謝しつつ、あたしが小さな声でそう謝ると、
「仕方ないわね、とりあえず先に場所だけ確保しましょ。ここから少し離れた所にある橋なら、まだ人も少ないでしょうし」
「花火見えるの?」
「見えると思うわよ。そりゃ、打ち上げる傍じゃないから少し迫力は欠けるかもしれないけど」
「う、うん・・・」
「その橋で、あんたは場所とりね。あたしは場所を確認したら買物にいくから」
「うん・・・」
お姉ちゃんはそう言って、会場に尚も流れ込みつづける人ごみの流れに逆らって、歩きだした。
あたしもそんなお姉ちゃんの後について会場を出る。


あたし達は、会場へ続く道から一本山側の道へと歩いて行った。
外灯もろくについていない路地を抜け、住宅街を通り、薄暗い小さな神社の前を通過して、あたし達はやがて大きな橋へと辿り着いた。
橋の下には、川原。会場付近の川よりも上流だけあって川幅は狭い。でも、そこにかかっている橋はとても大きく、もともと車両通行止めなのと会場から少し離れているのもあり、とても静かで落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
屋台もないし、会場から離れているので、橋の上には人はまばら。
後に少し込むかもしれない事を考えたとしても、それでも先ほどの会場よりは断然ゆったりと花火も見られるしごはんも食べられそうだ。
「あかね、あんたここで待ってて。あたし買物行ってくるから」
「う、うん・・・」
「いい?ぼんやりしていて場所とられちゃった、なんて勘弁してよね?で?何食べる?」
「えっと・・・その・・・」
「あーもう!じゃああたしが決めるわ、あんたはトウモロコシにしなさい。ね?」
「は、はい・・・」
「いってくるわ」
…結局何を食べるか決められなかったあたしに、お姉ちゃんは一方的にそうメニューを決め付けると、すたすたと今歩いてきた道を戻っていった。

「はー…」
あたしは、思わずため息をつく。そして、橋の欄干に背をつけた。

ふと、周囲を見回してみると、橋の上にはまばらだけど人影がちらほらしていた。
どれも、カップルだった。
しかも、辺りはそろそろ夕闇に包まれる頃。仲良さげに抱き合ったり、たまに人目を盗んでキスをしていたり…それぞれのカップルは、他のカップルなど全く気にしていない様子。
もちろん、カップルではなく一人ぽつん、とお姉ちゃんを待っているあたしなんて彼らが気にするわけも無い。
何だか、あたしが立っている部分だけが、その橋の上で異様な空間を醸し出していた。
「…」
・・・乱馬、いないよね。
嫌な奇跡を起こしそうな予感が胸に疼くあたしは、恐る恐るカップル達の顔を確認するも、
そこには乱馬と、そして美由紀さんの姿はなかった。
あたしは取りあえずほっと一息つく。
でも、

「・ ・・」

…お姉ちゃん、早くこないかな。
乱馬達の姿は見えなくて安心したけれど、このまま一人で、この場所で長い間待つのは嫌だなと、あたしは小さな声で呟いた。

カップルに囲まれていると、また、記憶が甦る。
カップルだった時の記憶が、
場所は違えど二人で見に行った花火大会の記憶が、
そして、回りのカップルがしているようにべたべたとくっ付いて過ごしたその時の記憶が
甦ってしまう。

「・・・」

あたしは、欄干に肘をおき腕をぺったりとつけると、そこに顔を伏せる。
せっかく紛らわせようと努力していた事が、ここにきて一気に報われない。
「お姉ちゃん、早く戻ってきて・・・」
あたしは小さな声でそう呟く。でも、買物に行ったお姉ちゃんが戻ってくる気配は全くない。
そりゃそうだ。会場へ戻るだけでも時間がかかるし、行列が出来ていたあの出店で幾つも買物をして帰ってくるんだもの。それなりに時間がかかるのは仕方がない。
そんなあたしに容赦なく甦る、記憶。
あたしはそっと目を閉じて、その甦る記憶と一つ一つ向き合った。

・・・去年の花火大会。
何だかんだいって、実は会場までは他の家族と一緒だった。
だから、花火を見る間だけ二人きりになれる・・・そんな状況になった時、そのほんのわずか
二人きりになれる時間を得た乱馬はとっても嬉しそうに手を握ってきたっけ。
家族がばらけているその場所からわざわざ離れて、ちょっと人気のないスペースに来てべったりとくっ付いて。
花火なんてそっちのけで、
「来年も来ような」
「うん」
「二人でだぞ。俺とだぞ」
「当たり前じゃない。他に誰と来るのよ?」
なんて言い合って、来年の約束をさっさと二人で取り付けたりして。
みんなの元に戻る時も、他の家族と出来るだけ合流する時間を遅らせようとして、わざと人ごみにまぎれてみたりして。
そのせいで、結局は人ごみに紛れた分ゆっくり出来ないし、皆を待たせたって家族に怒られても・・・それでも二人で手を繋いでいられるのが嬉しいからってニコニコしていて。
・・・

「・・・」
そんな去年の花火から、一年。
一年経った花火大会は・・・あたしはおねえちゃんとこうしてここにいて、乱馬は別の子と見に来ている。
あの時、「一緒にくるのが当たり前」なんて言って約束をしたのに。「あんた以外に他に誰と来るの?」なんて約束をしたくせに。
結局あたしはお姉ちゃんと二人でここへ来て、乱馬は・・・あたしではなく美由紀さんとここに、来た。
まさか一年後にこんな風に・・・二人が別れるなんて思わなかった。

「・・・」

あたしはふと顔を上げ、欄干から手を離し自分の胸に手を当てていみた。
・・・薄い浴衣越しに、とくん、とくんと胸を刻む鼓動。でもその鼓動は何だか胸の中で妙に軽い音をたてている。空っぽの胸の中で、無駄にとくとくと音だけ響いている。まさに、そんな感じ。

この胸の中に、たくさんの場所を乱馬は占領していた。
時には勝手に土足で入り込んでいて、人の気持ち引っ掻き回して。
でも今は・・・

「嘘つき・・・」

あたしは小さな声でそう呟いた。
嘘つき、俺と一緒に二人で来るんだぞって、言ったのに。
それに・・・

「・・・」

・・・それに、一昨日は「明日も明後日もずっと傍にいる」って言ったのに。
バイトと浮気のことがあたしにばれて話をしたら、「お前がそう思うなら仕方ない」って、それで終ってしまって。
去年から約束した事も、そして肩を抱きながら言ってくれた事も、全部全部、嘘になっちゃったね、乱馬。

「・・・乱馬」

あたしは、乱馬の名前をいつの間にか呟いていた。
そして、あれだけお姉ちゃんに「場所はちゃんと取っておきなさい」と言われたにも関わらず、あたしはその場所からフラフラと離れてしまった。
あたしが場所を離れた瞬間、すぐにそこに別のカップルが立ってしまった。
もう、その場所には戻れない。
まるでそれは、乱馬の隣みたいだ・・・あたしはそんな事をぼんやりと思った。
あたしが退いたら、すぐに美由紀さんがそこに納まって何事もなかったかのように時が流れる。
あたし達と、一緒・・・
「・・・」
ふと気がつくと、あたしの視界が翳んでいた。
じんわりと、目尻が熱い。また、涙が込み上げてきた。
「・ ・・」
・・・こんな花火会場で、メソメソと涙を流すわけにはいかない。
あたしは浴衣の袖でさっと目尻を拭うと、フラフラと橋から離れた。
そして、橋へと徐々に流れ始めた人の流れに逆らいながら、一人落ち着ける場所を探す。
戻りかけた道の途中に、そういえば薄暗い神社があったことを思い出したあたしは、そこへと向かった。
薄暗い、神社。うっそうと社に草が生い茂り、わずかな空の星の光さえも遮ってしまう。
外灯もなく、ギイギイ・・と不気味な虫声がするその神社に、あたしはフラフラとまるで吸い寄せられるように入った。
普段なら日も暮れた時間、こんな薄暗い不気味な場所に一人で立ち寄る事などない。
でもそれが気にならずにこうしてやって来たのは、そういう感覚が麻痺しているのかもしれない。
「・・・」
あたしは、薄暗い神社の正面口、石畳の階段の上のお賽銭箱の前で立ち止まった。
その瞬間、

・・・ヒュルルル・・・ドーン!

「あ・・・」
あたしの背後、いや遙か後方上で、辺り一体に響く音がした。
社に生い茂る草が、サワサワ・・・揺れていた。
あたしはゆっくりと振り返った。
すると深い夕闇の一角で、色鮮やかな光の花が散り行くところだった。
どうやら花火が始まったらしい。
「きゃー!」
「おお・・・」
会場からも橋からも離れた場所なのに、花火の美しさにどよめく観衆の声が聞こえてきた。
逆を言えばそれだけ会場には人がいるということか。
「早く早く!もう始まってる!」
「はいはい、そんなに走ると転ぶわよ・・・」
花火会場に向かって、少し出遅れた親子連れが神社のすぐ前の道を走り抜けていった。
あたしのいるこの空間以外では、何とも楽しく何とも美しい時間が流れている。

「・・・」

・・・きっと。
こうして花火が鳴り響く会場のどこかで、乱馬と美由紀さんは寄り添って空を見上げているんだろうな。
そう思うと、きゅ・・・と胸が詰まった。
ドーン・・・ドーン・・・
遙か後方の遠い空で鳴り響く花火と音と一緒に、あたしの胸も鼓動する。
・・・乱馬に貰った指輪をつけて、二人で楽しそうに寄り添って。
そして、あたしにしてくれたみたいにもう来年の約束、するのかな。
来年も一緒に来ようって言っているのかな。
ううん、
RtoMと刻まれた名前に思いを込めているように、来年だけじゃなくて再来年もその先もずっと、二人で一緒に来ようって、約束するのかな。
「・・・」
夕闇を鮮やかに彩り、花と散り行く花火。その遙か下でそんな事を思い一人佇むあたし。
そのギャップがあまりにも大きくて、何だかより一層胸の中に寂しさが募る。
「・・・」
あたしは、賽銭箱の前の石段にゆっくりと腰を下ろした。
そして、そっと目を伏せる。
途端に、それまでかろうじて止まっていた涙が一気に溢れ出てきた。
「ああ・・・」
あたしは小さく声を洩らす。
寂しさと虚しさと悔しさと・・・それに耐え切れない心の弱さと。
いろんなものに押しつぶされてしまいそうだった。
あたしが大切な事を怠って、そして油断している間に乱馬は離れていってしまった。
何とかしようと思った時にはもう遅くて、
それでもお互い話し合って、乱馬をもう一度信じようと思った。そしてその証を求めたけれど・・・乱馬はそれを拒絶した。
こんな状況になって、今それをあたしに渡さなければ元に戻れないと・・・あの状況下、乱馬
だって分かっていたはずだ。
それでも、乱馬はあたしにその証を渡さなかった。
乱馬は、あたしではなく美由紀さんを選んだ。そう、思った。
だから・・・あたし達は別れるという道を選んだ。

「お前がそう思うなら仕方ない」

乱馬も、そう言った。
だから・・・終わり。そこであたし達は終った。
ここからは、あたしは自分で自分の気持ちに整理をつけなくちゃいけないんだ。
乱馬はもう美由紀さんと別の道を歩いているんだもん。だからあたしはもう自分で・・・
「あたし、乱馬がいなくても大丈夫だから」
あの時そう言ったように、いつまでもこんな風に泣いていないで気持ちの整理をつけなくちゃいけないのに。
・・・なのに、どうして涙は止まらないの?
整理しようとすればするほど、楽しかった頃の記憶ばかりが甦るの?
もうこれ以上、あたしが乱馬をどの位好きだったかを自分自身に思い知らせて、あたしはどうした言って言うの?
こんな・・・こんなことばかりじゃ、胸が潰れてしまう。

・・・

「えくっ・・・えっ・・・えっ・・・」
あたしは、一人声を上げて泣いていた。
空では相変わらず、生い茂る草をも揺らす花火の音。
あたしは花火の音に泣き声が紛れることをいいことに、大きな声で泣いた。
泣いたってどうにもならないし、時間は元には戻らない。
泣きながら何度も、手の甲で涙を拭った。
でも、手の甲で涙を拭えても、あたしの胸の中にある絡みあった複雑な気持ちは拭えはしない。

・・・一体どのくらい時間が経てば、あたしはこの記憶も、そして気持ちも前向きにできるの?
本当にそんな日は、来るの?
この辺りを包む夕闇と同じように、今のあたしには全然、そんな日が来るかどうかなんて見えない・・・。

「・・・」

あたしは時間を忘れてそこで一人、花火の音に紛れて泣きじゃくっていた。


と、その時だった。


俯いて泣きじゃくっているあたしの目に、黒い影が映った。
神社の石畳に移る、黒い影。あたし小さな影に覆いかぶさるようにそこにある。
あんまり大きな声で泣いているから、神社の前を通りかかった誰かが見に来たんだろう
か・・・。それとも神主さんか。
どちらにしても、誰か来たのならば急いで涙を拭いて場所を移動しなくてはいけない。
あたしはびしょびしょに濡れた頬と流れている涙を、既に涙のせいで少し重くなっている浴衣の袖で何度も拭った。
すると、そんなあたしに対して、
「・・・お前、本当に嘘つきだな」
そんな声が、発せられた。
その瞬間、あたしの背中に電気が走ったような・・・衝撃が走る。
聞いたことのある、声だった。
ううん、聞いた事があるとかそういうレベルじゃない。この声は・・・
「・・・」
あたしが驚いて顔を上げると、
「大丈夫だって言ったくせに」
「ら、乱馬・・・」
「俺がいなくても大丈夫だって、昨日言ったくせに。なのにこんなところでこんな顔で泣いててさ・・・お前すげえ嘘つきだ」
乱馬の後ろに美由紀さんの影はなかった。ここには一人で来たの・・・?それとも外で待たせ
ている・・・?
「・・・」
あたしがそんなことを思って乱馬を見ていると、 乱馬はそういって、石段に座っているあたしの目線と同じ高さになるようにすっとしゃがんだ。
そして、自分を見ているあたしの顔を、曇った表情でじっと見つめる。

・・・奇跡って、どうして本当に起こるの?
どうして会いたくないって・・・あれだけ思って怖がっていたのに、どうしてこうやって会っ
てしまうの?
どうして嫌な奇跡って、こういう時に限って起こるの?
・・・

「・・・」

あたしは、再び目を閉じる。閉じた瞳から拭ったはずの涙がまた溢れ出た。
あたしと乱馬は、しばらく何も話さずそうして薄暗い神社で向かい合っていた。

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