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神様、あと少しだけ

「もー、乱馬!ちゃんと乱馬もお願いしてよ!明日晴れじゃないと、プールに行けないでしょ!行きたくないの!?」
「プールって言ったって。俺、女の格好じゃなきゃ泳げねーじゃねーか。
一日中女の格好していなくちゃいけねーのに、素直に喜べるかよ」
「何よ、文句あんの?」
「はいはい、ありません」



とある日の、夜。
夏休みにもなったし、それじゃ皆で出かけるか…と、クラスメートと最近出来たばっかりのプールへ遊びに行く約束をした俺たち。
だけど、前日の今日の、いきなり大雨が降りだして。
「てるてる坊主!早く神様にお願いしなくちゃ!」
「はあ?」
「こういうのは、早い者勝ちなの!」
明日は降水確率五十%。
TVの天気予報でそんなニュースを見るなり、あかねがいきなり俺を部屋までひっぱってきてそう叫んだかと思うと、
「ほら!はやくこれ作って!吊るして!」
…そういって、「自称」てるてるボーズを、窓の外に俺に吊るさせる。

「てるてる坊主。…てるてる坊主か?これ…」

…どうみても、形のくずれたクラゲ。いや、物体X…?
窓の外へそれを吊るしながら俺がぼやくと、
「形はどーでもいいの!」
「…そうなのか?」
「そうなの!要は、どれだけあたしの気持ちが神様に伝わって、それを神様が汲み取ってくれるか!」
あかねは、てるてる坊主を吊るしている俺にそんな事を叫ぶと、
「さー…寝る前にもう一回、あたしと乱馬が神様にお願いすればきっと晴れるわよ!」
更に懲りずにそんな事を言って、ニコニコと笑っていた。
「…どーだかな」
…けれど。 俺はそんなあかねの言葉にそっけなくそう返すと、
「…神様なんて、あてになんねえから」
「なんでよ。そりゃあ、乱馬がテスト前にする”神頼み”とかはね、神様だって聞いてくれないかもしれないけど…」
「ちげーよ。それに俺、神様と喧嘩中だからなあ。神様だって仲が悪いやつのお願い事なんて聞いてくれはしねーだろ」
…そう言って、どさりとベッドの上に腰掛けた。
「神様と喧嘩?なんでまた…」
そんな俺を不思議そうな表情でみながら、あかねが横に腰掛ける。
「聞きたいか?何で俺が神様と喧嘩しているのか」
「聞きたい」
「しょーがねーな。じゃあ、話してやるか」
俺は、横に座ったあかねをよいしょ、と自分の膝の上に乗っけると、
ポツリ、ポツリと話し出した。



…そう。
俺はもう大分前から、神様と喧嘩をしている。
仲直りする事もなく、もう、随分と前から、ずっと…







俺が神様と喧嘩をしたのは、計三回。
まず一回目。
それは…あかねがまだ東風先生に片思いをしていた時のこと。
先生への想いで胸がいっぱいになって、どうにもできない気持ちをどこにもぶつけられなくて…一人で道場の影で泣いているあかねの背中を見た時だった。

「なあ、神様。…なんで、かすみさんなんだよ?」

俺は、そんな不満を神様にぶつけてやった。
…もし、先生の片思いの相手が「かすみさん」でなくて、全然知らないどこかの人だったら。
そしたらもっと、あかねは苦しまなくても済んだのかもしれない。
もっと純粋な「片思い」の悩み。それだけを苦しむだけで良かったんじゃないか。
…そう思った。
あかねはさ、東風先生の事も好きだったけど。
それと同じくらい、いやそれ以上に…かすみさんの事も大好きなんだ。
どっちもすげえ大切で、どっちもすげえ大好きだから…だから尚更苦しんだ。
自分の幸せを考えるよりも、自分の大切な人の幸せを考えてしまう。
その為には自分の「気持ち」を曲げてしまっても平気。
だけど…時々それが抑えきれない時だって、ある。

そんな不器用で、お人よしなあかねだからこそ…苦しんだんだ。
それを考えたら、何だか神様ってヤツは、すげえ意地悪な事をするんだなって。
俺はそう思った。

…次に俺が神様と喧嘩したのは、俺がお袋と晴れて対面し一緒に住み始めてから少し経ってのこと。
突然あかねがボソッと呟いたんだ。「乱馬はいいな…」…って。
初めは、「何がいいんだ?」って。そんな事を思っていた俺だったけど、ちょっと時間を置いて考えてみたら、わかった気がした。
…それは、前にTVを見ていたときに事だった。
なんかのTV番組で、母親と娘がおそろいの服を着たり、母親が料理を娘に教えていたり。
そんな「仲良し親子」を特集している番組だった。
「母親が料理下手だと、娘も下手なんだな…」
TVを見ながらそんな事をぼやく俺に、
「そうとは限らないでしょ。お母さんは料理が上手くても、娘だけ下手なときはあるわよ。
きっと娘の”料理を習おう”って気持ち次第なのよ」
横であかねがそんな事を呟く。
「あー、そうだよな。あかねんとこはそうだもんな。だいたい今時の女は母親に”料理を習おう”って気持ちがたりね…」
足りねえんだよ、きっと。
…そう言おうとして、俺は慌てて口をつぐんだ。
そうだ。
あかねの母ちゃんは、あかねがまだちっちゃい時に亡くなっちまったんだよな。
料理を習おうも何も、あかねが子供の時に亡くなっちまっているからそんなの無理だし。
あかねにとって「お袋の味」は…もしかしたら、かすみさんが伝えてくれた「かすみさんの味」なのかもしれないな。

「あ…ごめん、俺…」
俺が慌ててあかねに謝ると、
「な、なんであんたが謝るのよ。別に何も変な事言ってないでしょ」
あかねは俺にそう言いながら笑って見せた。
そして、
「いいのよ、あたしは別に。あたしは、これからおばさまに、たくさん教えてもらうから!
こないだだってね、料理を少し教えてもらって…」
そんな事を言いながら、俺に覚えたての料理をご馳走してやると意気込んで見せたりしていた。
…そんなあかねの笑顔を見て、俺は何だか…胸が痛くなった。
かすみさんがあかねに、かすみさんが見てたのと同じようにあかねに「母親の味」を教えたり。
俺のお袋が、まるで本当の母親のようにあかねに接して「自分の味」を教えたり。
二人の優しさがとても温かければ温かいほど。
二人の優しさが本当に柔らかければ柔らかいほど。
きっとあかねは、それを感じて喜ぶのと同時に思い出すんだ。
…幼い頃、亡くなってしまった自分の母親の事を。
「乱馬はいいな…」
ポロッとあかねがこぼした、弱い部分。
他の人には絶対に見せない、あかねの弱さ。
それを考えたら…俺はやっぱり神様ってヤツに無性に腹が立ってきた。
… なあ、神様。
なんであかねから、「お母さん」を奪っちまったんだよ?
まだまだ、母親の愛情を感じさせてやっても良かったじゃねえかよ。
…あかねの母ちゃんが天に召されると言う事。
それが「どうしても仕方ない事」。そう言われてしまえば仕方ねえよ。
でも、でもさ。
おじさんやかすみさん、なびきがいるからって。
他の家族にたくさん愛されて、それでも幸せだからって。
…だから、それでいいって言うのか?
あかねから、小さかったあかねから、大切な人を奪っちまってさ。
あんた、随分残酷なヤツなんだな。
…確か俺は、その時無性に腹が立って、無性にそんな事を思った気がした。

そして、三回目。
この時にした俺と、神様の喧嘩は…仲直りの余地なんてないぐらいの喧嘩だった。

 


中国、呪泉洞にて。
俺を助けようとして、発熱した武器に触り体中の水分を奪われ「人形」のようになってしまったあかね。
そんなあかねを助ける為に、そして呪泉の水を取り戻す為に…サフランとういう敵と戦った俺。
見事サフランを倒して、呪泉の水も手に入れて、
「あかねッ…呪泉の水だ!」
これを体中に浴びれば、お前は助かるんだ。
助かるんだぞ!
…そう叫びながら、身体いっぱいにあかねに水を浴びさせた、俺。
でも。
「あかね!」
ジュワッ…
まるで、乾燥ワカメが水をたっぷり含んで膨らんでいくようにあかねの身体が徐々に大きくなって、
そして俺の腕の中でしっかりと「元の姿」になったあかねにそう呼びかけた俺は、
俺は…

「あかね?」

…すぐには、その状況を受け止める事が出来なかった。
空からは、滝のように呪泉の水が降る。
その水の中で、元通りの「姿」にもどったあかね。


…ほら、あかね。
もう動いたっていいんだ。
水を浴びれば、お前は元の大きさに戻って元通りになるって。呪泉郷のガイドも言っていたぞ。
それにさっき、お前…笑ったじゃねえか。
サフランを倒したその瞬間に、俺に手を伸ばして笑っていたじゃないか。


…だからさ、あかね。
さっきみたいにまた、笑ったっていいんだぜ?
なあ。なあ?
何してんだよ。
やめろよ、お前、何息なんて止めてんだよ。
人形になっちまっていて、呼吸の仕方、忘れちまったのか?
ホントにお前、不器用だな。
息の仕方なんて、簡単だろ?
胸いっぱいに息を吸い込んで、吐き出すだけだよ。
ほら、その小さい胸にいっぱい息、吸い込めばいいんだって。

「…」

…おい、あかね。
今の、おまえが怒る所だぜ?
「小さいって何よ!余計なお世話よ!」
いつもみたいにそう言って、俺のことぶん殴る所だろ?
なあ。なあ?
…なあ!
「…」
そんな事を、あかねに向って言いつづけた俺は。
さんざいっぱい話し掛けてそしてようやく受け入れなくてはいけない「事実」。
それを思い知った。

…もう、あかねが「動かない」って事を。

それに気がついたとき、空から降るものすごい量の呪泉の水音が聞こえなくなった。
最後の最後まで、俺は…あかねが息を吹き返す、その呼吸音を聞いてやろうと思って耳を済ませた。
目もつぶった。
あかねを思いっきり抱きしめてみた。
ぶん殴られるの承知で、胸に耳までつけてみた。でも…

「あかね…」

…その事実は変らなかった。

「最後のお別れをさせてあげよう」
…皆がそんな事をいって、俺の側にやかんを一つ置いて立ち去った後。

俺は、のろのろと自分の上着を脱いで、あかねに着せて地面へ寝かせた。
そしてやかんのお湯を頭からかぶるとすぐ、
俺の服をまとってじっと目をつぶったままのあかねを再び地面か抱き上げ…抱きしめた。
地面の上になんて、長い時間寝かせたくなかった。
この女は、俺が腕に抱いてなくてはいけない。何だか無性にそう思った。

…柔らかかった。
あかねの身体は、服越しに抱きしめても柔らかかった。
そんなあかねの体を抱きしめながら、
俺はまた、動かないあかねに向かって語りかけた。

…はは。こんなに柔らかい身体してさ。
武道家としては失格だぜ?お前。
なのに、頑丈だし、ちょっとやそっとじゃ壊れやしねえ。不思議だよなあ。
でも、だめだぞ?そんなんじゃ。
日本に帰ったら、俺が特別に稽古つけてやるよ。
そんで、稽古終わったらいつもみたいに「クーラーの風の当たる場所」争奪戦とかしようぜ、居間で。
俺、負けねえぞ?
あ、でも自分が負けそうになるとお前いつも決まって「泣いたフリ」するんだよな。
あれ、汚ねえよ。
あんな風に泣いた振りされたら俺はおめーにかなわねえ。

…なあ、あかね。
ほら、俺はさ。
すぐに「今までどおり」のお前とのやり取りが思い浮かんだ。
戦いも終わったし、俺、日本に帰れるんだ。
お前も一緒に帰れるんだぞ?
そしたら、今までどおりに暮らせるんだ。
あかねがいて、俺がいて。
親父がいておじさんがいて。お袋がいてかすみさんやなびきがいる。
…そんな生活に戻るんだぞ。
なあ。なあ?
それなのにさ。
それなのにお前…

「…何で、こんなに冷たいんだ?」

…汗を掻いた時に、
「あたしだけが暑いのなんて許せない!」
そんな事を言って、めちゃくちゃ火照った体を勢いよく俺にぶつけて来るようなヤツがさ。
手、繋いでも…心臓の音まで伝わってくるくらいドキドキしながら手を繋ぎつづけて、
そんで、汗がにじんでくるぐらいの熱さ…俺に感じさせたじゃねえか。
それが、なんだよ。なんだよ、この温度。
水よりも、氷よりも…何だよ、この冷たさ。

…ああ、そうか。あかね、お前寒いのか?
寒くて、体が冷たいんだな?
俺がもっと強く抱きしめれば、この温度は上がるのか?
それとも、お湯か?お湯をかければ?
……

なあ、あかね。

「…」

動かなかった。


「…」


…俺は。
あかねをギュッと胸に抱きしめながら、天を仰いだ。
そしてこの時に始めたんだ。
仲直りの余地がない、神様との喧嘩を。



…なあ、神様。
神様よ。
あんたさ。あんた、何考えてんだよ。
あんたさ…一体、どれだけあかねから「大切なもの」を奪い取れば気が済むんだ?
片思いを成就させてやる事もなく、小さかったあかねから「母親」も奪った。
それなのに…それなのに、今度は、あかねの「命」まで奪うつもりか!
あんた、アホか!
何が、神様だ!…何が神だ!
なあ、頼むよ。
大切なものなんだ。
あかねの命は…あかねにも、俺にも・・・もっともっとその他の人にも。
大切なものなんだよ。
守ってくれよ。守ってくれよ!
あんた、すげえ人なんだろ!?
なあ!
たった一人の人間の命を守ってやれないで、何が神だ!
ふざけんな!
ふざけんなよ!
頼むよ。なあ、頼むよ!




「…でな?そうやって神様に暴言を吐きまくったのはいいんだけどー…ほら、お前その後目を覚ましただろ?
そしたら今度はそっちに夢中になっちゃったからさ。神様に”暴言吐いてすまなかった”て謝る機会を無くしてなあ。現在にいたるわけだ」
…どうして、俺が神様と喧嘩中なのか。
俺は、ゆっくりとあかねに話し、そう最後に締めくくりながら一人頷いていた。
「…」
あかねは、俺の話を膝の上でじっと大人しく俺の話を聞いていた。
でも、少し間を置いた後、
「…仲直りして欲しいな」
「え?」
「神様と。乱馬、仲直りしよう?」
あかねはそう言うと、俺の顔をじっと見つめた。
「な、なんだよ…」
そんな風にあかねにじっと見つめられ、ちょっとドキドキとしながら俺が呟くと、
「あのね、乱馬。あたしはね…神様の事、実はすごく信じているのよ」
あかねはそう言って、ドキドキしている俺に向って笑って見せた。
「信じているって…お前、だって色んなものを…」
奪われたし、命まで持ってかれそうになったんだぞ?
…俺がそう言おうとすると、あかねはそんな俺の唇にそっと指を当てて言葉を塞き止めた。
「奪わなかったわ」
「え?」
「奪わなかったもん。ううん、奪うどころか、あたしがお願いした通りに守ってくれたわ。
…すごく大切なもの」
あかねは、そう言って笑った。そして、
「あのね…」
ちょっとハズカシそうな顔をすると、俺の耳に口を近付けた。
「な、何…」
俺がそんなあかねに照れていると、
「あのね…」
あかねはそんな俺をちょっと笑いながら見て、そしてたった一言、呟いた。
「…乱馬」
「え?」
俺は、囁いたあかねからふと、離れた。
「俺…?」
俺がそんなあかねに聞き返すと、
「そうよ。乱馬よ。乱馬の…命。助けてくれたもん。あの時に」
「あの時…?」
「ほら、あたしが発熱した金蛇環に駆け寄ってお湯を塞き止めた時。
あの時にね、お祈りしたのよ。”神さま、乱馬を助けて!”って」
「…」
「考えたの。どんどんお湯が流れて、乱馬の体は変な糸で束縛されていって。
このままじゃ危ない!って…そんなときに、”じゃあ、あたしに何が出来る?”って。
”助けたい”ってコソコソ隠れてそう思っているだけじゃダメなんだって、思ったの。
”助ける為には、じゃあどうしたらいい?”って…それを考えて、
それで飛び出したのよ。お湯を止めなくちゃって」
あかねはそう言って、ちょっと目を閉じていた。
「あたしがお湯を止めに行くのが早いか、乱馬が糸に取り込まれるのが早いか…ドキドキしたの。
で、そこであたしは神様にお願いしたのよ。”乱馬を助けて”って。お願い、間に合って!って。
…そしたらね、ほら。
乱馬は助かったでしょ?だから、あたしにとっては、神様はとってもいい人なのよ」
「だから仲直りしなさい」…きっとあかねは、続けてそう言おうとしたに違いない。
だけど俺は、その言葉を遮った。
俺に話をしていたあかねに強引に唇を重ねて、
「ん…苦しい。苦しいってば」
そう言って俺から逃げようとするあかねをしっかり掴まえて。
気がついたら、ちゃんとあかねが息をすることが出来ないくらいに、何度も何度もキスをしていた。
「乱馬?あんた…」
…ちょっと唇が離れた瞬間にあかねがそんな事を呟いても、俺は黙って首を振って、そのままあかねにキスをしていた。
何だか理由はわからないけれど、どうしても今、俺はあかねにキスがしたかった。
この手に抱きしめて、独占したい。
…そう思った。
そう思ったら、自分でも分からないうちにこうしていた。

…自分でも気が付かないうちに、涙なんて流しちまいながら。
俺の命を助けたいからって…だからって、おめーが命を落としたらどーしようもねーだろーが。
何考えてんだ、お前は。


でも。
しょうがねーな。
しょうがねーから…あかねがそんなに言うんだったら、神様と、仲直りしてやってもいいかな。
結局は、あかねの「命」、奪わなかったし。俺からも、「大切な人」を奪ってかなかったし。
それにあんた、あかねの命がけの願いも・・・叶えてくれたんだもんな。
だから、あかねがそう思うんだったら、
うん、そうだな。しばらくぶりに、喧嘩していた神様と仲直りしてやってもいいよ。
俺は、
「…しょうがねーな。仲直りしてやるか」
唇を離した後に小さな声でそうぼやくと、そのままあかねの体を抱きしめる為に腕を回した。
「何よ偉そうに。今後も、テストと福引とかでお世話になるんだから、もっと友好的にしときなさい」
あかねはそんな事を言って、何故か目を閉じたまま、そんな俺に抱きついてきた。

「はいはい」

…ああ、あかねが目を閉じているおかげで、この泣き顔は見られなくても済みそうだ。
俺はそんなことにちょっとだけ安心しつつ、あかねの体を改めてぎゅっと抱きしめた。
そして、あかねがそうしているように、俺もゆっくりと目を閉じる。
俺の腕の中にいるあかねの体は、あの日、呪泉洞であかねを抱きしめたのと同じように、とても柔らかかった。
でも、体温は違う。
水よりも、氷よりも冷たかったあの日と違って、今俺の中にいるあかねはとても…温かい。
「ああ、この人は生きているんだ」
…端的な言葉だけど、そう感じた事がすごく嬉しかった。


…なあ、神様。
あかねがこう言っていることだし。
あの時に吐いちまった暴言をあんたが許してくれるんだったら、
俺、あんたと仲直りしてやってもいいよ。
だから…だからさ。
神様、あと少しだけ。
…あと少しだけ、俺が泣いているって事をあかねに気がつかせないでくれ。
そうしてくれることが、俺とあんたの仲直りのしたっていう証だと思うようにするからさ。
な?
男の俺が泣いているなんて、あんまかっこよくねえしさ。
それに…俺にとってはあんまりいい印象ないあんただけど、
あかねには「ちゃんと約束を守ってくれた人」なんだろ?
だったら、「俺の命を守る」とかよりも、全然簡単なこんな願い事くらい、叶えてくれたっていいだろ。
仲直りの証にさ。な?



…神様、あと少しだけ。


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