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銀色の8

「曲者ーッ捕まえろーッ」
「逃がすな!」

…「雷」の媒体によって魔導城がある亜空間へと召喚された乱馬たちであったが、運が悪い事に四人が降り立った場所は、魔導城の一角にある、騎士団控え室であった。
もちろん四人はあっという間に「曲者」「侵入者」として魔導城の兵士達から追われる羽目になっていた。
しかも。
乱馬達が普段接している「人間」の兵士達とは違い、ほんの少しの武力と、そして「魔法」の使い手でもある魔導城の兵士たちは、「火」・「水」・「風」…など、ありとあらゆる「自然の魔法」の力を使って、乱馬たちを捕獲しようと躍起になっている。
ただ幸いなことに、「逃げるものの足を止める」という便利な魔法を使える者はどうやらいないようで、乱馬達は、持ち前の逃げ足の速さを十分に生かして、城内を逃げ回っていた。

「はあ、はあ…」
四人は、とりあえず偶然たどり着いた、城の隅に設置されている「教会」の中へと逃げ込んだ。
そして、教会前方にある祭壇の隅に、こっそりとその身を隠した。
「運が悪いよな。なんであんなところに降り立っちまったんだ?」
「知るかよ・・。ばあさん、後で恨んでやる」
「しかし…この状況ではいつ見つかって捕まっても、文句は言えんぞ」
「どうしたものかのう…」
…乱馬たちがそんな事をひそひそと話していると、

ガタン!

…突然、教会の扉が開いた。
「!」
乱馬たちは、ハッとお互いの顔を見合わせながら息を潜める。
…が。
「誰かいるの?」
…聞こえてきたのは、女の声だった。
(追っ手じゃねえのか!?)
ちらっと祭壇の隙間から声のしたほうを見て確認すると、
「気のせいか。声が聞こえたような気がしたんだけど…」
入り口に立っていたのは、
どうもこの城の中で働くメイドのようだった。
手にはバケツとモップを持っていた。
どうやら、掃除をしに来ただけらしい。
「やべえな…掃除にしにきたって事は、この祭壇にもモップをかけに来るよな…」
敵ではないかも知れないが、 こうして隠れてる姿を見つかるのは厄介だった。
(…)
乱馬たちがいつ見つかるかも知れない緊張で、冷や冷やとその身を縮まらせていると…

「どーせこんなとこ、用がなきゃほとんど来ないし…」

そんな乱馬達の気持ちとは別に、メイドはそう呟くと、こほん、と咳払いをした。
そして。
「洗剤水よッ、床一面に広がれ!」
…メイドが突然そう叫んだかと思うと、バケツがふわり、ふわりと浮かび上がり、そして バケツの中の洗剤水が、バシャッ…と教会内にぶちまけられた。 続いて、
「モップよ…動け!」
そんな掛け声と共に、メイドの元にあったモップが、素早い動きで教会中の床を駆け巡った。
もちろん、乱馬達がこっそりと身を隠している祭壇の床も、モップはまるで「生き物」のように駆け巡っている。
(あ、あわわわわ…・)
乱馬達がそのモップの動きを邪魔しないように身体を動かしていると …掃除のとどめに、メイドはとんでもないことを言い出した。
「洗い流せ!」
…そのとたん、突然教会の天井から、大量の水が降り注いだ。

「ぐわ!」
「つめて!」

バシャ…ッ
…乱馬たちにも大量の水が、容赦なく降り注ぐ。
メイドは更に、
「乾け!」
と叫んだ。
その途端に、ブオオオオッ…と、まるで身が干乾びてしまうようなほどの熱風が吹き荒れた。
(うわちちちちちッ…)
…教会中にばら撒かれた水はその熱風で払拭できたが、それをまともに浴びてしまっている乱馬達は、声も出せずにオタオタとしてしまった。
「よし!お掃除終わりッ」
そんな乱馬達のことなど全く頭にないメイドは、一応は磨かれて、そして綺麗に洗われた教会に満足をしたのか、モップとバケツを持って出て行ってしまった。
「…」
教会の中に残された乱馬達は、無言のままお互いの姿を見つめあった。

メイドが去った今、教会の中にいるのは、一人の大男と豚・アヒル、それにおさげの女の子だ。
「な、なんて女だ…」
…メイドが完全に教会を出て行ったのを見計らって、頭から滴る水滴を手で払いながら、らんまがぼそっと呟いた。
すると、
「おお!おさげの女ではないか!お前も僕を追ってこの亜空間に!」
早速といっていいほど、九能が女姿のらんまにほおずりしながら抱きついてきた。
「さわんじゃねえ!」
「照れなくてもよいぞ!何ならいっそのことここで僕と永遠の愛を…」
「誓うか、ボケ!」
…水をかぶったとなっては、当然のことながら 乱馬は女に。良牙とムースは豚とアヒルに変身してしまうわけで。
「はッ…おのれ、早乙女乱馬!さては、敵が怖くて逃げ出しおったな!あの腰抜け目!」
…ただひとり、 乱馬がらんまと気がつかない九能だけは、目の前から突然姿を「消した」乱馬に対して悪態をついている。
「あかねくんの事は諦めたのだな!所詮あいつは腰抜けの腑抜けッ口先だけの男だったのだ!」
…そんな風に妙に自信万満にそう叫ぶ九能を、
「ちッ…仕方ねえな。ま、でも…この姿はまだ城の兵には見られてないし、移動するには楽なのかもしれねえな」
そう言いながら床に叩きのめした後、 らんまは、目の前で豚とアヒルになってしまった良牙とムースと共にため息をついた。
そして。
(…こんな時の為に密かに用意しておいて良かったぜ…)
…と、 こっそりと自分の荷物に忍ばせておいた「女物の服」に着替え、良牙とムースを連れて、教会から飛び出した。

 

「曲者はいたか!?」
「そっちもさがせ!必ずどこかにいるはずだ!」
…らんま達が再び城内の中心部へと戻ってくると、依然として城内は、兵士達がばたばたと走り回っていた。
兵士達はまさか「男」が「女」へと、「人間」が「豚」や「アヒル」へと入れ替わっているとは思わないので、自分達が探している「侵入者」達と、こんなにも堂々とすれ違っているとは、夢にも思ってないだろう。
らんまたちはそんな緊迫感に内心びくびくとしながらも、 それでも必死にあかねの姿を探してまわった。
と、その時だった。
「あら?あなた、こんな所を歩いて何をしているの?ここは、紫苑様の寝室がある階よ?」
廊下を歩くらんまの前に、一人のメイドが立ちはだかった。
(やべッ…)
らんまは一瞬ビクッと身を竦めたが、
「あのう、あたし紫苑様にお届け物をするようにと頼まれたんですう…」
ここで怯んでは全てが水の泡、と、お得意の「媚び技」を惜しげもなく披露した。
「届け物?」
…そんならんまの返事にメイドは一瞬怪訝そうな顔をしたが、
「ああ…もしかして、あの姫君の為にかしら?」
メイドは、ようやく納得したのか、フムフムと頷いていた。
らんまはとりあえずホッと、胸をなでおろした。
「…あの姫君だったら、紫苑様の寝室にいるはずよ?さっき、牢屋から連れてこられたみたいだから」
「牢から…?」
らんまは、メイドのその答えを聞いて、内心ぎくりとした。
(あのやろう。…手荒なまねはしてねえとかなんとか言ってやがッたくせに!なんであかねを牢になんかいれてッ…)
口には出さないが、あかねに対してそんな扱いをする紫苑に対し、らんまが怒りに震えていると、
「でも、今は避けた方が良いんじゃない?」
そんならんまに、メイドが一言そう言った。
「え?ど、どうしてですかあ?」
らんまがメイドに尋ね返すと、
「だって。お二人は近いうちに結婚されるのよ?寝室に呼んだって事は…何をするか、貴方だって女なら分かるでしょ?」
メイドはちょっと小声でらんまに戒めるようにそう言った。
「そ、そんなわけねえ!」
「え?」
「あ、いや…その、寝室に呼んだからって、何もそういうことをするのが目的って訳じゃ…」
一瞬カッとなって我を忘れて叫んでしまったらんまだったが、慌てて平静さを装うようにしてメイドに答える。
「それに、あの姫君はもう、元の世界に戻らないと思うわ」
「え?どうしてですかあ?」
「何でも、紫苑様の虜になってしまうような魔法…かけられちゃったみたいよ?」
「!」
…メイドの言葉に、らんまはハッと息を飲んだ。
「あら?あなた顔色悪いけど…どうしたの?」
メイドがらんまを気遣って声をかける。
「いえ…別に」
らんまは、眩暈がしそうなほど頭がガンガンと鳴り響いているのに耐えながら答えた。
「大丈夫?」
「あ、は、はい。あの、色々ありがとうございました」
「そ。他に何か聞きたいことはある?貴方には何でも教えてあげるわ」
すると。
お礼を言ったらんまに対して、メイドはそう言ってにこっと笑った。
「何でも、ですか?」
らんまは、ありがたいにはありがたいが、何でメイドがこんなに親切に色々と教えてくれるのが少し不思議だった。
なので、
「あの…何でこんなに色々と私に教えてくださるんですかあ?あなた、紫苑様のお世話係のメイドさんなんでしょ う?」
らんまは、極力警戒心をもたれないように振舞いながら、にこりと目の前で微笑むメイドに尋ねた。
…と。

「何で?…それは自分の胸に聞いてみるのだな」

…ふいに、らんまの問いに答えたそのメイドの声が、
突然、低くて太い、男性の声に変わった。
そして、それと同時にらんまの背中にゾッ…とするような感覚が走った。
(やべえ!)
…直感で、その背中に走る「感覚」が、自分に対しての「敵意」だと察知したらんまは、慌ててそのメイドから飛びのいた。
そのとたんに、今までらんまがいたその位置に、ひゅんっ…と鋭く空気を切りながらナイフが突き立てられた。
「…!」
間違いなくその場にいとどまっていたならば切り裂かれていたであろうその恐怖に、らんまは一瞬血が凍る思いだっ た。
「お前、ただのメイドじゃ…!?」
とっさにその攻撃を交わしたらんまがメイドに向って叫ぶと、
「くくく…言ったはずだぞ。私には、牙を立てた者に化ける能力があると。そして、その者の記憶や思い出なども全てコピーできる能力があると…」
…そういって、乱馬の目の前にいたメイドは一瞬にして、先日らんまの前に現れた魔導城の王・紫苑へと姿をかえた。
「他の兵やメイドは欺けても、私は欺けんぞ」
紫苑はそういって、らんまに対してゆっくりと左手をかざした。
そして、
「なんせ私には…あかねの意識と記憶がコピーされてるのだからな」
そう叫ぶや否や、小さな光を乱馬たちに向かって放った。

…ドオン!

紫苑の放った小さな光の衝撃で、らんま達のいる廊下の両側の壁がガラガラガラ…と崩れ落ちる。
「ようこそ、魔導城へ」
紫苑はそう言って、にやりと笑いながららんまを見た。
(やべえな…女のままじゃ勝てねえッ…)
…あかねを連れ去られた時に、「男」と「女」の圧倒的なパワーの違いを見せ付けられたせいもあり、こうして紫苑と対峙しながら、らんまは焦っていた。
自然に、らんまの背中には冷や汗が流れた。
「私の残してきた『媒体』を使ってここまでやって来た勇気はたたえよう。だが、そう簡単にはあかねにはあわせないし、渡さない」
「ぬかせ!」
「それに…」
紫苑はそこまで言うと、もう一度らんまに対して、左手を交わした。
そして、
「それに…もうすぐあかねは、あかね自らの意志で…私のものになる」
「なッ…てめえ何言ってやがる!」
「くく…」
紫苑は不敵な笑みを浮かべながら、再びらんまに対して光を放った。

ドオン!
…今度はらんま達が立っている床が、バラバラと陥没し始める。

「さあ、どうする?元許婚。このままここで私に殺されるか?それとも、自ら私のものになるあかねの姿を見届けるか?お前に残された道は、二つに一つだ」
紫苑は、足場の不安定な場所に立っているらんまに向って、更に光を放とうとしている。
…らんまにとっては、圧倒的に不利な状況だった。
「クッ…」
らんまは一瞬迷ったが、
「この技だけは使いたくなかったが…」
らんまはそう言ってぎゅっと拳を握り締めると、
「早乙女流奥義!」
紫苑に向ってそう叫んだ。
「奥義…?」
紫苑はその言葉に一瞬、怯んだ。
らんまはその隙を見逃さなかった。
「敵前…大逆走!」
らんまは一瞬の隙を見て走叫ぶと、
「くそー!」
崩れ落ちている壁の隙間から、城の外へと向って飛び出した。

…敵前大逆走。
それは、「走」「考」「攻」成り立つ早乙女流の奥義の一つ。
ようするに、逃げながら反撃方法を考える技だ。

「逃げたか!腰抜けが!」
「覚えてろよ、てめえ!絶対にあかねを取り返してやるからなッ」
…どう考えても負け犬の遠吠え状態になってしまったが、それでもらんまは紫苑に対しての反撃方法を考えるべく走リ去った。
が。
「あ!良牙!?」
そこでらんまは、とんでもないことに気がついた。
…どうやら、紫苑の元から逃げる為に城の外へ飛び出すとき、子豚姿の良牙をその場に落としてきてしまったようなのだ。
「良牙!」
らんまは慌てて飛び出した城の方に向って叫んだが、無論、良牙の返事は聞くことが出来なかった。
「…なんだ?お前は」
…そして。
タイミングの悪い事は重なるもので、らんまが良牙がいないことに気がついたその頃…紫苑が、そんな取り残されてしまった良牙をヒョイッと摘み上げていた。
「ぶきー!」
良牙は、「離せ!」とばかりに暴れるが、
「お前は確か…」
紫苑はそう言って、何かを考え込むように良牙の顔を見ていた。
そして、
「おまえは…あかねのペットか」
恐らく、あかねの記憶を呼び起こしたのだろう。
紫苑はそうつぶやいた。
あかねは、良牙が豚に変身する事を知らない。
なので、あかねの記憶の中では、「良牙」と「Pちゃん」は全く別のものなのだ。
それゆえ、そんなあかねの記憶をコピーした紫苑も、その事実は知らない。
「仕方ない。本来なら今夜のメインディッシュにでもしてやるところだが…あかねのご機嫌をとるのも含めて、お前は私が連れてゆこう」
紫苑は、子豚姿の良牙の首根っこを掴むと、そのままあかねの元まで運んでいってしまった。
敵に首根っこをつかまれたまま運ばれるというのはとても屈辱的なのだが、そんな姿のまま良牙が紫苑の部屋へとつくと、部屋の隅に設置されているベットに、見るからにぐったりとしたあかねが横たわっているのが見えた。
(あッあかねさん!)
良牙は、紫苑の手からバッ…と飛び出して、そんなあかねの元へと駆け寄った。
そして、
(あかねさんッあかねさんッ)
クイッくいっ…と、身にまとっている衣服を、必死で引っ張った。
「ん…」
すると、良牙のそんな行為に気がついたあかねが、うっすらと目を開けた。
そして、洋服を引っ張っている良牙の姿を見るなり、
「Pちゃん!」
決して、いつものような余裕のある優しげな笑顔ではないが、むしろ「安心」したかのような表情で、あかねは良牙を胸に抱きしめた。
「城内に招き入れた私の客人と一緒に、やってきたようだ」
紫苑がそう言いながら、あかねの元まで歩み寄ってきた。
「客人…?」
あかねがそんな紫苑に警戒するように、良牙を更にぎゅっと抱きしめながら尋ねると、
「そうだ。お前はよく知っているはずだぞ?…おさげの男を」
「!」
…ドクン。
良牙は、「おさげの男」と紫苑の口から話されたその瞬間に、あかねの胸が激しく鼓動したのを、強く感じた。
(あかねさん…)
その鼓動が、あかねが乱馬を思う気持ちなんだと、良牙は一瞬だけ胸が痛んだ。
…が。
「…さあ、あかね。楽しいゲームのはじまりだな。奴が私を倒し、お前を奪い去るのが先か。それとも、私がお前にかけた魔法の力が勝って、お前が自ら私のものになるのが先か…」
俯いたまま良牙を抱きしめているあかねにそう言い残し、部屋から出て行ってしまった紫苑の、その一言が妙に気に なり、うろたえてしまった。
(ど、どういうことですか!?あかねさんッ)
「ブキーッブキーッ」
良牙が必死であかねに叫ぶと、
「Pちゃん…」
あかねは、そんな良牙を一度だけぎゅっと抱きしめた。
そして、
「Pちゃんはきっと…乱馬と一緒にここへ来たのね」
あかねはそういって、キョロキョロと部屋を見回していた。
そして紙とペンを見つけると、それを手にとり何やらスラスラと書き出した。
「Pちゃん…お願い。これを乱馬に…乱馬に渡して。…詳しいことはこの紙に書いたわ…おねがい。Pちゃんなら、きっと私の言っている事、分かってくれるわよね?」
あかねは、良牙の巻いているバンダナに、その紙をぎゅっと結びつけた。
そして、
「Pちゃん…お願いよ」
そういって、紫苑の部屋の窓を開け、ベランダへ出ると、そこからこっそりと良牙を外へと逃がしてくれた。
「ブキーッ」
(あかねさん!)
良牙は、妙に思いつめた暗い表情のあかねが気になり振り返ったが、
「姫君、勝手に外に出られては困ります」
既にあかねは、城の兵に両脇を固められて部屋の中へと入れられた後だった。
「ぶきー!」
(あかねさん…俺は、君のこの意志、必ず…ッ)
良牙は、紫苑の話していた「ゲーム」の内容やあかねの思い詰めた表情が気になって仕方なかった。
…あかねの為にも、何が何でもらんま達と再び出会わなければ!
「ぶきーッ」
良牙は、走った。
…「人一倍方向音痴の良牙」が、城の中を走り抜けていった。

 

…乱馬達のあかね奪還への道は、まだまだ前途多難であった。


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