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銀色の月7

乱馬達が亜空の世界へと旅立ったのとちょうど同じ頃。
亜空にある魔導王朝の象徴…・城の地下牢では。

「もー!出しなさいってば!ちょっと!聞いてんの!?」
「えーい、やかましいわ小娘!少しは人質らしくおとなしくせんか!」

紫苑によって牢に入れられたあかねと、その牢の番人が、そんなやり取りをしていた。
牢に入れられて目覚めてからずっと、この調子牢から叫ぶあかねに、番人もほとほと手をやいているようであった。
そんなあかねと番人のやり取りを、あかねと同じ牢に入れられてる老人が
「ワハハ…元気がいい姫君じゃのう。こりゃ、紫苑も大変じゃわ」
と、笑いながら見守っている。
「とにかく!しばらくおとなしくそこにおればいいのだ!」
番人は、ガシャン…と牢を棍棒でたたきつけてから、牢のある部屋から出て行ってしまった。
「…何よ!」
あかねは、出て行った番人に向かって、べーっと舌を出してやった。
するとそんなあかねに、
「ふぉっふぉッ…姫君よ、あなたは本当に元気が良いおかたのようじゃな」
あかね達のやり取りを一部始終見ていた老人が、不意にあかねに話しかけてきた。
「だって…さらわれて来たことだって許せないのに、首噛まれた上にこんな牢に押し入れられて! あのヘンタイ男一発ぶん殴ってやんなきゃ気がすまないわ!」
あかねは、ぎりっと歯を食い縛りながらそう呟く。
「だがな、姫君。残念ながら、この牢は不思議な魔力が働いておってな。自分の力では破ることは出来んのじゃよ。だからわしはもう、ここに何日もおる」
老人は、一人怒っているあかねに優しい笑顔で笑いかけた。
「おじいさん!そんなのんきなこといってる場合じゃないわよッ」
あかねは、その老人に渇を入れるべく元気にそう叫んだけれど、

「…そういえば、おじいさんはだあれ?」

あかねはそこで大きな問題に気がついてしまった。

いつの間にかこうして話をしているけれど、 冷静に考えてみると、普通にこうしてこの老人と会話を交わしてはいたが気絶したまま牢に入れられ、目が覚めたと同時に番人に食って掛かっていたあかねにとっては、この老人…素性も何も知らないの初対面の人。
更によく考えると、老人とはいえ、男。
正体の分からぬ知らない男とこうしてしばらく一緒にすごしていたと思うと、急にあかねは怖くなった。
背中に、急に冷たい汗が流れ落ちてた。
が、
「怖がらなくてもよい。わしはな、姫君。この国で唯一の学者なんじゃよ。それも、王宮専属のな。わしの名は、翠麗」
老人・翠麗はそういって、顔を強張らせているあかねにもう一度優しく笑いかけた。
「私…私は、あかね」
あかねは、少し警戒したまま老人・翠麗を見据える。
そして、
「お名前はわかりました。…何で、王宮専属の学者先生がこんな地下牢へ入れられてるんですか?」
あかねは率直に翠麗に質問した。
「そうじゃなあ…」
翠麗はあかねの方を困ったように笑った表情で見ると、一度ため息をついた。
そして、
「紫苑をあのようにしてしまった報い、かのう…」
そういって、再び大きなため息をつく。
「報い?」
「そうじゃ。わしはな、姫君。この国の王宮学者であるとともに、紫苑の世話役でもあったんじゃよ…」
翠麗は、あかねに自分にまつわる事情を丁寧に話し出した。

 

古の時代とは違い、
人間の世界では生きていくことが出来ない身体を持ったものが多い、魔法の使い手達。
亜空へと城を築き、こうして長きに渡ってひっそりと暮らしてきてはいるが、食料や動物、そしていざと言うときに備えての武器…昼間、魔力が落ちているときに襲われたときに武装するた め…など、どうしても、人間たちが住む世界から調達してこなくてはならないこともある。
現魔導王国の王である紫苑は、自らがその役目を買ってでて、亜空の城で生活する民を守ってきていた。
民も、そんな紫苑を心から尊敬し、そして敬愛していた。

「それが、一ヶ月前…」

…翠麗がある日、城のバルコニーでひとりぼんやりと考え事をしている紫苑に声をかけると、
「…」
紫苑は、虚ろな目で翠麗のほうを振り返った。
翠麗がよく見ると、紫苑の右手には真っ白な包帯が巻かれていた。
「紫苑さま、そのお怪我はどうされたのですか?」
翠麗が紫苑の怪我を心配して尋ねるが、
「ちょっと、な」
紫苑はそういったきり、それについては答えようとしなかった。
が、そのかわり、
「なあ…翠麗。 私は…人間の女を好きになってはいけないと思うか?」
突然、紫苑がそんなことを言い出した。
「…好きな方が出来たのですか?」
紫苑のその発言に、翠麗はとても驚いた。
紫苑が生まれてからずっと、早くになくした両親のかわりにわが子同然に面倒を見てきた翠麗。
政治的相談を受けることはあっても、恋愛についての相談など受けることはなかった。
それに、今まで「国」「民」…そのことだけを考えて走ってきた紫苑が、だ。
「確かに、もうそろそろ妻を娶られても良いお年頃ではありますが…」
紫苑が結婚をして、子をなして、そして幸せになる。
それほど、幼い頃から紫苑を見守ってきた翠麗にとっては嬉しいことはなかった。
だが、
「…しかし…人間の娘なのですか?その方は」
翠麗は、そのことだけが気にかかっていた。

亜空の城でしか生活できない紫苑たち魔法使いに、普通の人間の娘が嫁ぐのだろうか…?

「どんな方なのですか?その娘は?」
翠麗は思い切って紫苑に尋ねてみた。
すると、
「名前も、家も、知らぬのだ。顔も、はっきりとは…」
「…は?」
「だが、美しい女だった。そして何より、あんなに品格のあるまっすぐな性格…行動力…今まで出会った女とは比べ物にならぬ」
紫苑は、はあ…とため息をつきながらそう呟いた。
そして、
「唯一はっきりしているのは、その女と手合わせしたときに飛び散った…女の血の味。この味を手がかりに探すしかない」
吸血能力があってよかった、と、紫苑は力なく笑っていた。
「紫苑様…」
翠麗はそんな紫苑を見ていて少し胸が痛んだ。

…恐らく。
幼い頃より「国」「城」「民」のことだけ考えていた紫苑にとって、
その美しい人間の娘に恋をしたということ…いや、誰かに恋心という特別な感情を抱いたと言うのは初めてなのだろう。
(何とかして、その娘との恋をかなえてやることは出来ないか)
翠麗は、紫苑の話しを聞きながら必死に考えた。
そして、あることをふと、思い出した。

「…紫苑様。この国に伝わる言い伝えを知っておりますか?」
「言い伝え?いや…」

赤き涙を誘う月、選ばれしものを守りたもう。
その月、人魅了しては次々と赤き涙、誘わん。
選ばれしもの道迷うときあれば、
九時の方向より光さすとき、古の扉の向こうに銀色の月あらわる。
二つの月が交わりしとき、 真実の光そこにさす。
真の宝もそこに現れん

 

翠麗は、まるで不思議な呪文のようにそう呟くと、紫苑の腰にさしている剣を指差した。
「紫苑様のその腰の剣…代々王族に伝わる剣ですよね?」
「ああ」
「先代のお父様から聞いてらっしゃらぬようなら私がお教えしますが、その剣こそ、この言い伝えの中に出てくる『赤き涙を誘う月』なのです。  ほら、その刀三日月型をしているでしょう?この言い伝えの後半の意味は私もまだ詳しくは知りませんが…赤き涙を誘う月は、人を魅了するとあります。その刀を使って、その人間の娘を探してみたらいかがですが?言い伝えどおりならば、その娘も必ず魅了されるはずです」
…翠麗がそう助言すると、
「『赤き涙を誘う月』か。この刀にそんな力があったとはな。父上は私が幼い頃に亡くなってしまったし、そのような話しは全く持って聞いたことがなかった」
「私も、古い書物で何度か読んだだけですので」
「よし、分かったよ翠麗。やってみよう。この『赤き涙を誘う月』で、俺はその女を必ず探し出してみせる。だから翠麗、お前は言い伝えの後半部分も訳してくれないか?女を捕らえてきたときに、その女に「宝」とやらを贈ってやりたい。私は、その女さえいてくれたら宝など興味はないのだから」
紫苑は翠麗に嬉しそうにお礼を言うと、
「では、私は部屋に帰ってこの剣の手入れをしよう…」
そんなことを言いながら翠麗の前から去っていった。
翠麗はそんな紫苑の様子を微笑ましく思いながらも、
(言い伝えの後半部分か…参考文献があれば良いのだが…)
久々に入った大きな「仕事」に、少しだけ緊張を走らせたのだった。

 

「じゃがな、…姫君。この言い伝え、とんでもないものだったんじゃよ」
「え?」
「紫苑の父君は、この言い伝えを知っていて、それであえて幼い紫苑には伝えなかったんじゃよ」
翠麗はそういって、大きなため息をついた。
「わしが、浅はかじゃった。『赤い涙を誘う月』というのはな、姫君。血を誘う剣、ということ。つまり、それが人を魅了すると言うのは…切られた者を魅了するのではなく、切った者を魅了するんじゃよ。人を切りつけることに魅了された紫苑は、それまでの紫苑とは打って変わったように冷酷非道になってなあ…。わしは、何とか紫苑の目を覚まさせようと、もう一つの「月」を探していたんじゃ」
「もう一つの月?」
「言い伝えの後半部分じゃ。道に迷いしときは…の後。九時の方向に光輝くとき、古の扉の向こうに銀色の月あらわる。じゃが、これの意味がさっぱり分からん。で、それを調べてるうちに…紫苑に逆らう不穏分子扱いを受けて、紫苑の手によってここへ投獄されてしまった んじゃ」
…そう言って力なく笑う紫苑に、あかねは何も答える事が出来なかった。
しかし、
「でも…そのもう一つの『月』の場所を突き止めれば、紫苑の目を覚ます事が出来るんでしょ?本当に何にも手掛かりはなかったの?」
「書物には、何もな」
「え?」
「この亜空の城に住む者は人間と違い長生きのものが多いんじゃよ、姫君。わしはまだ七十年くらいしか生きてはおらんが、厨房で働いておる晶ばあさんならば何か知ってるかもしれん…。彼女は、今年で確か三百歳じゃ」
「さ…三百歳!?」
あかねは思わず声を裏返らせてしまった。

…シャンプーのおばあさんの事をみんなが冗談で「齢三百歳の妖怪」とかからかうけど、ここにきて本当の三百歳の人に逢えるとは…。

「じゃあ、その人に話を聞いてみなくちゃ!」
あかねは、それ!とばかりに再び牢に飛びついてガシャン!ガシャン!と鉄格子を揺らすが、
「無駄じゃ無駄じゃ!この牢には、魔法の力がかかっていてそんな簡単には…」
紫苑は「諦めなされ」と首を振る。
「でもッ…このままじゃ!」
あかねは、どうにも出来ないこの状況に、イライラと気を立たせていた。

…と、その時だった。
「おい、娘。外に出ろ」
あかね達が投獄されている牢の前に、数人の兵がやって来た。
そして、
「ちょっと!何よ!離しなさいよ!」
そう叫んで暴れるあかねの腕を取り、牢から出した。
「どこに連れてく気よ!」
あかねが必死に抵抗すると、
「紫苑様が、お呼びだ」
「!」
兵は一言だけそう言い放つと、城の最上階にある紫苑の部屋へとあかねを連れて行き、
「連れて参りました」
そう言って、あかねの背中をトン、と押した。
「ちょっと!何すんのよッ…」
あかねがキッ…と叫んでその兵の方を振り返ると、
「あ、あれ?」
数人いたはずの兵が、いつの間にかいなくなっていた。
「あ、あれ?」
あかねがキョロキョロとしていると、
「彼らも魔法の使い手。邪魔者は消えてもらった…」
そんなあかねの元へ、紫苑がそう言いながら近づいてきた。
「!」
あかねは、そんな紫苑から慌てて離れ、ギッと睨みつける。
「そんな怖い顔をするな。せっかくの美しい顔が台無しだぞ」
紫苑はそんなあかねに戒めのように助言すると、スッ…と人差し指を向けた。
すると。
「キャッ…」
ポウ…
紫苑があかねに指をむけた瞬間、あかねの首筋に何かわからないけれども「熱い光」が走った。
そこは、先時紫苑があかねに牙を立てた、その場所だった。
「い、いや…」
その光は、不思議な事にただ熱を発するだけではなく、 徐々にあかねの身体の「力」を奪い始めた。
「くッ…」
それに抵抗しようとあかねが力をこめ、気をしっかり持とうとすればするほど、その謎の「熱い光」はあかねの全身から力を根こそぎ吸い取ってゆく。
「私に何をしたの…」
床に半分身体を沈めながら、あかねはゆっくりと自分に近寄ってきた紫苑に叫んだ。
紫苑はそんなあかねのすぐ目の前まで来て、しゃがみ込むようにしてあかねの顎に指を当て、自分のほうを向けさせ ると、
「…言い忘れていたがな、あかね。私に牙を立てられたものは、その姿をコピーされるだけではなく、時間が経つに連れて私に心も支配されてしまうの だよ…」
そう言って、にやりと笑った。
「な、何ですってッ…」
「本来なら何日もかけてゆっくりと私に支配されていくのだが…お前は別だ。魔法の効果を強めたから…そうだな、あと数時間もあればお前の心は私のものだ」
「じ、冗談じゃないわ!早く解きなさいよ!」
あかねは必死でそう叫んだが、紫苑は全く取り合わない。
それどころか、
「もしもそれを解除したいのならば、私の持つこの鏡を割るしか方法はないのだが…」
紫苑はそういって、あかねのに、自分の服の下に首から下げていた小さな鏡を見せつけた。

豪華な金のフレームに覆われた、小さな鏡。
フレームの中のその輝く部分は、まるでそこに「静かな海」でもあるかのような…そんな雰囲気を醸し出し、 触れれば水面が跳ねるかのように、そこ一面に張っていた。

「くッ…」
あかねがその鏡に手を伸ばそうとすると、紫苑はその手を簡単に払いのけ、そして笑いながら言った。
「この鏡は、古より王族に伝わる宝。王族の力の源。この鏡を破壊するという事は、この国の中でかかっているすべての魔法効果を解除するということ。そんな鏡を、そう簡単に他人に渡すわけないだろう?残念だったな」
「…」
あかねは、そんな紫苑に向けて再び手を伸ばそうと必死で体中の力を振り絞ったが、…とうとう、ガク、とその腕を再び床に沈ませてしまった。
いや、腕だけではない。
その瞬間、あかねの体中の力がすべて奪われてしまった。
あかねの身体は、床に完全に沈んだ。
「ようやく、静かになったか・・」
紫苑は、完全に床に沈んだあかねの身体を、そう呟きながら抱き上げた。
そして、部屋の隅に設置してある自分のベットへと運んだ。
「…やはり冷静さを欠いているときよりも、こうしているあかねが一番美しいな…」
紫苑は、ベットの上でぐったりとしているあかねの頬を手で触れ、撫でた。
そして、そっと顔を近づけようと身体をかがめようとした、ちょうどその瞬間だった。

「申し上げます!」

…けたたましいノック音と共に、先ほどあかねをこの部屋へと誘導してきた兵士が飛び込んできた。
「何だ、騒々しい!」
せっかくのチャンスを邪魔された紫苑が、イライラした口調で兵士を怒鳴りつける。
「紫苑様!侵入者でございます!何者かが城に潜入してまいりました!」
兵士はあまりのそんな紫苑の迫力にビクッと…身を震わせながらも、大きな声でそう報告をした。
「侵入者?」
紫苑が怪訝そうな顔をすると、
「は!どうやら、異世界のもののようですが…」
兵士はすかさず紫苑にそう報告をした。
「異世界のものか…・それはもしかしたら、私が招いた客、かも知れんな」
…紫苑には、その「侵入者」の正体に心当たりがあった。
「え?」
「…案内しろ。私が直に会いに行こう」
紫苑は、にやりと笑うと兵士にその「侵入者」の元まで案内させるべく、あかねが眠る部屋を出た。


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