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銀色の月6

…そして、手掛かりや進展があまり見られないまま、翌朝を迎えた。
が、この朝に…城では大変な事件が起こった。
「申し上げます!」
騎士団控え室で、コロンから借りた本を徹夜で読んでいた乱馬の元へ、朝凪が慌てて走ってきた。
「何だ?」
乱馬がしょぼしょぼした目をこすりながら朝凪に尋ねると、
「…奴が!あかね様を連れ去った奴が、現われました!」
「何!?」
「それが…団長を呼んで来いと…」
朝凪はそう言って、「中庭です!」と乱馬に告げた。
(ふ、ふざけやがって!)
乱馬はコロンから借りた本をバタン!と勢いよく閉じると、男が待っているという中庭へと走った。

…あかねをさらっておいて、堂々とここにやってきただけでなく、俺を呼んでこいだと?
ふざけんな!

「ふざけやがって!」

乱馬は、今度は声に出して思い切り叫んだ。
そして、 中庭で一人乱馬を待っているというそのナイフ男の下へと急いで駆けていった。


朝凪から知らせを受けた乱馬が急いで中庭へと走って行くと、
「…あれ?」
…そこには「ナイフ男」いぜんに誰もいなかった。
小鳥がさえずり、朝露輝く花々が咲き乱れる、芝の絨毯が敷き詰められた…いつもと変わらない中庭があるだけだ。
「朝凪、本当にここか?誰もいねえぞ?」
乱馬が後から自分を案内してくれた朝凪に叫びながら辺りを見回すと、
「ん…?」
ふと偶然目をやった中庭の隅の茂みに、何か黒いものを見つけた。
「?」
乱馬が慌てて駆け寄ってその茂みにかくれたモノを確認すると、それは気絶した人間だった。
しかもそれは…
「朝凪!?」
茂みで倒れていたのは、気絶した朝凪だった。
(どういう事だ!?今さっき俺を呼びにきたのも朝凪…)
乱馬が頭の中を必死に整理しようとしていると、
ザッ…ザッ…
先程より乱馬をココまで案内してきてくれた「朝凪」が、ゆっくりと乱馬の背後へ立った。
「おまえ…誰だ?」
乱馬は倒れている朝凪を再び茂みへ寝かせ、ゆっくりと「朝凪」の方を振りかえる。
「今頃気が付くとは…おまえの力もたいしたものではないな」
すると。
そんな乱馬を嘲笑うように「朝凪」はそういうと、バッ…と左手を自分の顔の前へあてた。
とたんに、あたり一面不穏な、重々しい空気が巻きあがる。
ぎゃーっぎゃー…
今まで美しい声でさえずっていた小鳥が、まるで魔物のような声で鳴きだした。
「くっ…」
凄まじい「妖気」に耐えるように乱馬が身構え、そして目を懲らすと。
…今まで「朝凪」が立っていた場所には、全く見たことのない人物が立っていた。

透き通るような、コールドグレーの髪。
整った顔だちに、印象的なコバルトブルーの瞳。
きっちりとした格式ある服装。
乱馬が今まであったことのあるどんな貴族や王族よりも、威厳というか気品さえも感じられる。

 

「おまえ…誰だ?」
乱馬が再び尋ねると、
「私は紫苑。魔導王朝の王…」
「朝凪」改め紫苑はそういって、じっと乱馬を見据えた。
「てめえっ昨日のナイフ男だな!?あかねはどうした!?」
初めてナイフ男の素顔を確認した乱馬が、今にもくいつかんばかりに紫苑に叫ぶと、
「あかねは私の元で大切に預かっている」
紫苑はさらりとそういい除けた。
そして、
「あかねを返せ!」
「それはできぬ相談だ」
「何!?」
「あかねは私の妻にすることに決めたのだ。返すつもりはない」
紫苑はそういって、二イッと唇を釣り上げて笑った。
「なんであかねがてめぇの妻になんて…」
だいたい、あかねの事を恨んでたのではないか?と乱馬が尋ねると、
「恨む?なぜ私が恨まなくてはいけないのだ。あえていうならその逆だ」
「逆…?」
「そうだ」
紫苑はフッ…と小さく笑って、そして続けた。
「私は王。古来より魔法を使い生けるモノ達を統べる王だ。その妻になるものも、それ相応の身分や品位が必要だ」
「だからって、なんであかねなんだよ!?」
「今まで出会った星の数ほどの女達のなかで、あんなに威厳と、品位と、そして美しさを兼備した女は初めてだ。おいはぎまがいの事をしようとした私を戒めただけでなく、私のプライドと面子も守るように場を収めた…頭も切れ るし、その力強さも天下一だ」
紫苑はそういうと、マントの下から何かを取り出した。

朝日をうけてギラッ…と輝くそれは、紫苑が通り魔をするときに使っていた三日月型のナイフだった。

「顔も、名前もうろ覚えだった私があかねを捜し出す手立ては、ひとつだけ。あかねと初めて出会ったときに私はあかねら飛び散ったわずかな血液を舐めた。それと同じ味がするものを探しだすよりほかはない」
「それで、関係ない城下の女どもに襲い掛かってたわけか…!」
「そうだ。…古い時代に比べ、魔導王朝で生きる魔法使い達は魔力が弱い。もっともその力を引き出せるのは、満月の夜だけ。それ以外は…遺伝の関係か、吸血鬼としての能力以外は使い物にならん。…私以外の者はな」
「!?」
「私は、王。たとえ吸血鬼でも、日の光にあたったぐらいでは死なん。それに…別の力も持っておる。たとえば…」
紫苑はそういって、着ているマントをバッ…と翻した。
そして、ファサッ…とそのマントが元の位置に戻った瞬間、乱馬の目に信じられない事が起こった。

「な…なんで…」

…乱馬の目の前には、
服装こそ紫苑だか、顔や姿形…そして、
『どうだ?コレが私のもうひとつの能力だ。』
声まで瓜二つ、いやそのままの「あかね」がいた。

「…」
乱馬が驚いて声を失っていると、
『私には吸血鬼としての能力の他に、血を吸ったものの姿をそっくりそのままコピーする能力があるのだ』
紫苑はそういって、再びマントを翻し元の姿に戻った。
「おい!てめえまさか…あかねの血を…」
乱馬がかっとなって紫苑の胸ぐらを掴みにいくと、
「気やすく触るな」
紫苑は、軽く手で乱馬を払い除け衣服をなおす。
「くっ…このッ…」
地面に吹っ飛ばされた乱馬がそれでも立ち向かって行こうとすると、
シュッ…
「!」
鋭く弧を描くように、紫苑が乱馬の鼻先に三日月のナイフを突き付けた。
「残念だ」
「何!?」
「あかねの姿をコピーするために、あかねの首筋にやむなく牙を立てたとき…最後の最後まで、あかねは心の中でお前に助けを求めていた。その思いが強ければ強いほど、牙を立てた私にも そんなお前の情報がコピーされるんだ。だから、それほどまでにあかねが強く思ったお前が、一体どんな奴だと思ってこうして見にきてみれば…フッ、情けない。私に軽くあしげに去れるような男ではないか!」
「何!?ふざけんな!」
乱馬は紫苑に再び飛び掛かるがひらり、とかわされる。
「お前などに、あかねはもったいない」
紫苑はそういって乱馬の前から立ち去るべくふわり、ふわりとその体を浮かべ始めた。
「ふざけんな!」
何度も地面にには吹っ飛ばされたが、乱馬とてこのままやすやすと紫苑を消えさせるわけにはいかない。
「逃がすか!」
乱馬は、ダンッ…と思い切り地面を蹴り上げ宙に飛び上がると、
「せや!」
浮かび上がる紫苑の懐に瞬時に飛び込み、思いっきりその顔に蹴り込んだ。
「…!」
不意を食らった攻撃に、紫苑はとっさに体を避けたようだが、軽く唇をかすったようで、
「…」
宙に浮いたまま切れた唇を拭い、乱馬をにらみつけた。
「空中戦は俺の流派の十八番だ!行くぞ!」
そんな紫苑をよそに乱馬は更に飛び掛かろうとしたけれど、
「ふ…ふははは…!これはおもしろい!」
そんな乱馬にたいして、紫苑は左手をかざした。

ドォン!

すると、小さな光の固まりが乱馬の周辺へと降り落ちてきた。
「うわッ」
乱馬がとっさにそれをよけると、
「私の顔に傷をつけたこの行為…万死に値する。…ふふ、よかろう。お前をわが亜空の城へ招待しよう。そして…あかねの前で、お前が私にしたこの非礼…懺悔させてやろうぞ…」
紫苑はそんな乱馬の様子を見ながら、今度こそ、フッ…とその姿を消してしまった。
「ま、待て!」
乱馬は慌てて紫苑のいた方向に手を伸ばしたが、既に消えてしまっている紫苑にその手は届く事はなかった。
「くそー!」
乱馬は、昨夜に引き続き再び紫苑を取り逃がしてしまった自分の不甲斐無さに、ダン!ダン!…と、地面を烈しく拳で突いた。
そんな乱馬の頭の上に、ヒラリ、ヒラリ…と、何かがゆっくりと舞い降りて来た。
「…?」
乱馬がそれを手にとると、
(こ、これは…!?)
…それは、白い紙だった。
乱馬が昨夜紫苑から引きちぎったマントの切れ端に描かれた図形に似たものが描かれた、白い紙。
その紙の背後に、なにやらうっすらと文字らしきものがかかれているようにも…見える。
(…)
『お前をわが亜空の城へ招待しよう』
そういった紫苑の言葉が乱馬には妙に耳についていた。
(くそッ…)
乱馬は、その白い紙をぎゅっと握りつぶすと、そのままコロンの元へと走り出した。

 

「そうか…ナイフ男が自ら婿殿の元へなあ…」
乱馬から知らせをうけたコロンは、乱馬から受け取った白い紙をいろいろと検証しながらそう呟く。
「あの野郎、ふざけやがって…」
先ほどのことを思い出しチッ…と舌を鳴らす乱馬に、
「どうじゃ婿殿?これを機に本当にあかねからうちのシャンプーに乗り換えては…」
「ばあさん!」
「ホッホッホッ…ま、考えておけい。それより、これを見よ、婿殿」
コロンは笑いながらそう言って、乱馬の前にその紙を置いた。
そして、
「どうやらこの紙…人工的に雷を作る役目を果たす媒体じゃな」
「え?」
「亜空の城…つまり、魔法を使うものたちは、古来より、雷が降り注ぐ時のみこの地上に姿をあらわす。つまりそれは、紫苑という男のように特別な魔力を持たないものは、雷が落ちるその時でないと、亜空と、この現実 の世界を行き来する事が出来ないという事じゃろう…。次に雷が降る夜が分からない以上、人工的に作り出して強引にその扉を開け…ということじゃろうな」
「…」
コロンの言葉に、乱馬はギッ…と、その媒体の紙を睨みつけた。
が。
「まあ、この雷の件は置いといてだな…わしにはコッチの方が気になって仕方がない」
コロンは、乱馬からその媒体を取り上げると、トントン…と指で紙の中央をついた。
「こっち?」
「この、媒体の後ろにうっすらと映ってる文字じゃよ。恐らくこの媒体を持ち出すときに、その紙の近くに記されていた魔法の言葉が転写しただけだと思うんだが…」
そして、乱馬にその文字を訳した紙を見るように指示をした。
「何だ?これ…」
乱馬はその紙をじろっと見据え、思わず首をひねってしまった。

『九時の方向に光輝く時、古の扉の向こうに銀色の月現る』

「ばあさん、これなんだ?」
乱馬がその文字を何度も読みかえしたりしながらコロンに尋ねるが、
「さあなあ。媒体に転写するくらいだから、亜空の世界でのなにかの出来事だとは思うが。とにかく、知っていればそんはないかも知れんので、念のため覚えておけ?婿殿」
コロンもその言葉の意味が良く分からないようで、とりあえずはその不思議な言葉を紙に書き写し、乱馬に手渡した。
「サンキュー、ばあさん」
「それじゃ婿殿。今夜…その媒体を使って亜空の世界へ旅立つ手助けをしてやろう。それまでに、準備をしておく のだぞ」
「ああ」
乱馬は、そんなコロンにお礼を言うと、足早に城へと戻った。

 

 

…そして、夜。
城の地下にある教会には、コロンが描いたなにやら不思議な魔法陣が床一面に描かれていた。
「うわあ…なんなんだ、これ?」
その魔法陣を遠目から眺めながら、ようやく城へと舞い戻る事が出来た「さすらい殿」…良牙が呟く。
「さあ。雷呼び出すのに必要なんだろ?」
その横で、乱馬もボソッと呟いた。
…亜空の城へと旅立つのは、乱馬・良牙・ムースそして九能の4人。いわゆる騎士団長達のみだ。
本当は、
「団長!私もお供させてください!」
今朝方、紫苑に血を吸われて気絶していた朝凪も名乗りをあげたのだが、その体力の回復がまだ充分ではないのと、すでに姿をコピーされている事から、今回はこちらの世界で乱馬達を支 援するようにと説得したのだ。
「乱馬くんー!あかねを、あかねを早く助けておくれ!」
「乱馬君、お願いね」
「今度はしっかりしなさいよ」
早雲、かすみ、なびきの面々も、準備をしている乱馬の元でそれぞれがそんなことを言っている。
「ああ」
乱馬は多くは語らず一度だけそう返事をすると、
「婿殿!準備が出来たぞ!」
「おう!」
コロンの声に答えて、
「行くぞ!」
「ああ!」
「仕方あるまい」
「あかね君、待っているのだぞッ…」
乱馬達四人は、コロンの描いた魔法陣の中央へと立った。

 

…魔法陣の中央に立った4人は、それぞれが必要と思う荷物を持っていた。
良牙は、なびきからしこたま買わされた非常食や、飛び道具。
ムースは、コロンが用意したと思われる薬など。
九能は、自分の屋敷の書斎にあると思われるいろんな書物。
そして乱馬は、一振りの太刀と…左手に赤い地引網…もとい、赤い「ミサンガ」。
このミサンガは、乱馬がかすみに頼んで、作り方を教わり完全な形にしたものだ。
本来ならば、あかねが作り上げて乱馬に手渡すはずだった、もの。
それを乱馬自身が最後「願いのビーズ」をつけて完成させ、自分の腕にはめている。
(あかねの奴、これみたら怒るだろうな…)
乱馬は、そのミサンガにそっと触れながら、ふとそんなことを考えた。
「あたしが作んなきゃ、意味ないでしょ!」
…意地っ張りなあかねの事だ。乱馬がこの赤いミサンガをしているのを見たら絶対にそう叫ぶに決まってる。
でも今は、そんな風にあかねとまた喧嘩するためにも、紫苑の手に落ちたあかねをまずは取り返すことが先決だ。
首筋に牙を立てられ、紫苑の腕に落ちるあかね。
その最後の瞬間まで、あかねが自分に強く助けを求めていたという事を聞くと、乱馬の胸は烈しく痛む。
(待ってろよ、あかね。俺が絶対に助けてやるからな)
乱馬は、腕に巻かれたミサンガを一度だけぎゅっと握り締め、そしてコロンの方を振り返った。

「いつでもいいぜ!ばあさん!」

…そして。
乱馬の合図と共に、コロンは大きく頷き、魔法陣の横でなにやら不思議な言葉を呟いた。
そしてその言葉の最後を呟くと共に、スッ…と紫苑が残していった媒体を天高く投げた。
媒体は、風もないのにふわり、ふわりと教会の天窓へと舞い上がっていった。
紙は、天窓の前でピタリ、と舞い上がるのを辞めたかと思うと、小刻みに震えだし…そして、
カカ!
あたり一面を覆う閃光を放ったかと思うと、天窓に先ほどまでなかった「黒雲」を生み出した。
その黒雲は徐々に大きさを増し、やがて教会の天井中を覆うくらいの大きさまでに成長すると、
ドオン!
…乱馬達の立っている魔法陣の上に、一筋の雷を降り落とした。
「うわ!」
「きゃあ!」
…教会の内部にいた者達が、思わずその落雷の衝撃で目を離した、その一瞬だった。
「…消えた…」
魔法陣の中に立った乱馬達は、衝撃が収まるのと同時に姿を消していた。

 

…こうして、乱馬達は紫苑が待つ亜空の城へと旅立っていったのだった。


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