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銀色の月4

「あかねー!」

…突如連れ去られたあかねを追う乱馬の声が、夜の城下で切なく響いた。
「乱馬君、とりあえず城に連絡しないと!」
叫ぶながらも呆然とする乱馬の背後で、なびきがそう叫ぶや否や、
「なびき様、参りましょう!」
店で働いている使用人が、なびきの手をくいっと引いた。
「そうね」
なびきは、呆然としている乱馬に「私が行くわよ」と言い残して、その使用人と城への道を急いだ。
「乱ちゃん、とにかくその肩の怪我を…」
右京が呆然としている乱馬の肩の傷を手当しようと、店の中から救急箱を持ってはくるが、
乱馬は、右京が自分の肩の手当をしようとしている事など気がつきもせず、そればかりか、しっかり乱馬を抑えていないと、今にでもあかねを連れて闇へと消えたナイフ男を追っていきそうな勢いだった。
「乱ちゃん…」
右京はそんな乱馬の心を思って、複雑な表情をするが、乱馬はそんな右京の事を気遣う余裕など、今は全く持てなかった。
(…くそ!なんなんだあいつはッ…)
乱馬は、ぎり…と歯を食いしばりながら、あかねを連れ去る寸前に自分がとっさに掴んだ、ナイフ男の衣服の切れ端をみる。
…その切れ端というか、その切れ端を構成している布は、触ったことのないような厚ぼったさと、そしてふわふわした柔らかさをしていた。
更に、その布の本当の端…布の隅には、見た事のないような「形」が描かれている。
(なんだ…この図形は?)
三日月に、幾重ものツタが絡まったナイフのようなものが突き刺さっているような図形。
一見抽象的な図形に見えるのだけれどだけれど、それとは別に、何かの「紋章」のようにも見えなくは…ない。
それは、名前も名乗らず、そしてあかねを連れ去る最後の一瞬まで顔を見せる事のなかったナイフ男の、唯一の手掛かりだっ た。

…俺の目の前で、あかねをまんまと連れ去っていきやがった。
乱馬は、それが許せなかった。
ナイフ男ももちろんだが、まんまとあかねを連れさらせてしまった、自分にも、だ。

「くそッ…!」
乱馬は、怪我の手当をしている右京の事をすっかり気が付かないまま急に立ち上がった。
そして、
ナイフ男の手掛かりとなるその切れ端を握り締めたまま…夜の城下を走り出した。
「あッ…ちょっと乱ちゃん!?」
右京は、ふいに乱馬に立ち上がられてバランスを崩してしまった。
「乱ちゃんってば!」
それでも尚、走り去った乱馬を追って行こうとしたのだけれど、ナイフ男の手がかりを掴もうとして必死になっている乱馬のその走ってゆくスピードには、全くもって追いつくことなど出来なかった。

 

「ばあさん!いるか!」
…そんな乱馬がやがて走りついたのは。
シャンプーと、シャンプーの曾ばあさん・コロンが住んでいるお店だった。
「あいやあ!乱馬、こんな夜中に訪ねてくる、私に会いに来たのだな!?」
既に店じまいをして、ゆっくりと入り口横のホールで本を読んでいたシャンプーが、乱馬の姿を見るなり、いつものように抱きつこうとしたのだけれど、
「シャンプー、ばあさんはいるか!?」
「部屋にいると思うが…それより、乱馬、その怪我一体どうしたか?」
その前に乱馬の肩から流れている血に気がつき、さっ…っと心配そうに表情を曇らせた。
「部屋だな!」
しかし乱馬は、怪我を心配するシャンプーを振り切り、ずかずかと店の奥へとあがりこんでいった。
そして、自室でゴロゴロとしていたコロンの元まで来ると、
「おお、どうしたのだ婿殿…・何だかえらい怪我をしてるようじゃが…」
「ばあさん、じつは…」
肩の怪我を心配したコロンに挨拶もそこそこ、乱馬はあかねがさらわれてしまったことやそのいきさつ、そしてあかねをさらった例のナイフ男の話をした。
「銀月のナイフ男か…城下では、ちょっとした噂になってたんじゃ。シャンプーにも、その事があって夜は出前をさせはしなかったんじゃが…。そうか、あかねがなあ…」
コロンは、乱馬の話を聞いて始めは暢気にそんな事を呟いていたが、
「それよりも気になるのは、ナイフ男が言った言葉の方じゃ。襲った娘の血を舐めて、婿殿や他の娘には『違う。』と言って、あかねには『見つけた』といったのだな?」
…コロンは、ナイフ男の具体的な正体や素性よりも、男があかねをさらう前に呟いた「言葉」の方が気になったみたいだった。
「…血、舐めてたんだぜ?そいつ…ばあさん、奴は尋常じゃねえんだよ!早くあかねを助けてやらないとッ…!」
「落ち着くんじゃ、婿殿!とりあえず今は、婿殿が受けたその肩の傷の手当てをしてから話そうではないか」
「でも…ッ」
気持ちがはやって、今すぐにでも手掛かりを得て、そしてあかねの元へと向おうとする乱馬を、
「そんな怪我で!」
と、コロンがまずは一喝した。
「婿殿。気持ちは分かるがな、一体そんな、肩に深手を負ったままの姿で…どうやってあかねを助けに行こうと言う のじゃ?返り討ちにされるのがオチじゃろう?少し落ちくんじゃ」
「…」
コロンの言葉に、乱馬はぐっと詰まった。
「今、シャンプーにその怪我の手当てをさせるから、ちょっと心を落ち着かせるんじゃ。ワシはその間、…」
コロンは、ようやく大人しくなった乱馬の手から、ナイフ男からちぎり取った例の布の切れ端を奪い取った。
「ばあさんッ…」
「婿殿が怪我の手当てを受けている間、ワシはこの布にかかれている『図形』のことをちょっと調べてやろう」
そして、部屋の入り口で心配そうに包帯やら救急箱やらを抱えているシャンプーと入れ替えに部屋を出ていった。
「乱馬、肩、よく見せるよろし」
「…すまねえな、シャンプー」
「何言ってるか。乱馬、助ける、当然のことね」
…そう言ってくれたシャンプーが、ようやく大人しくなった乱馬の肩に薬や包帯やらを塗ったり巻いたりしてくれてい る間。
乱馬は声には出さないけれど、いろいろなことを考えていた。

…銀月のナイフを持った、ナイフ男。
城下の女性を次々と襲っては、その襲った時に出た血を舐めて、「違う」と呟いていた。
乱馬とあかねを襲った時だってそうだった。
乱馬の血を舐めた時は「違う」といった。
でも、あかねを襲ったナイフを舐めた時は、「やっとみつけた」といった。

(何なんだ…あかねを見つけて、一体何をしようって言うんだ…!?)
乱馬の心は、ざわついていた。
そして…側にいながら、まんまとあかねを連れ去られてしまった自分に、非常に憤りを感じていた。
女の姿の自分は、まるで子供を蹴散らされるように…ナイフ男に足で蹴散らされてしまった。
必死でしがみつくも、みっともなく何度も吹っ飛ばされて。
ようやくお湯をかぶって男の姿になっても、時は既に遅し。
ほんの小さな布の切れ端を掴んだだけで、 ナイフ男をまんまと取り逃がしてしまった。
しかも、あかねと共に。
(くそッ…!)
乱馬は、行き場のない怒りを堪えるべく、ギリリ…と唇を思いっきりかみ締めた。

 

…と。
「婿殿。分かったぞ」
シャンプーの手当てが終わるのとちょうど同じ頃合に、別室で調べ物をしてくれていたコロンが乱馬の元へと戻ってきてそう言った。
「本当か!?ばあさん!」
乱馬が戻ってきたコロンの方へと詰め寄ると、
「分かったのじゃが…これはかなり厄介な事になりそうじゃぞ…?」
コロンはそう言って、深刻な表情で乱馬を見上げた。



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