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銀色の月3

一方。
らんまが良牙と連れ立って城下へいったと同じ頃。
騎士団控え室の近くを、あかねはウロウロしていた。
あかねは、城下にあるなびきの店に「あるもの」を取りに行こうとしていた。
本来ならなびきがお店に顔を出しに行く時に、城へと戻る時に持って帰ってきて欲しいと頼めばよかったのだけれど、 運悪いことに会うことも出来なかったし、頼む事が出来なかった。
しかも、時間帯はすでに深夜。
わざわざ今から出かけなくても明日でいいじゃないか…・とも考えたが、流行る気持ちを押さえ切れず、こうしてこんな遅い時間帯に、乱馬についてもらって一緒に城下に行こうと考えたのだ。

…実は。
あかねはなびきの店に「レッドビーズ」を取りに行こうとしていた。
それは、生まれて初めて自分で編みこんだビーズのブレスレットの材料。
いわゆる「ミサンガ」というやつの材料だ。
城下の女の子の間で密かに流行っている「作り物」。
糸を編みこんでブレスレットを作り、一番最後、結び目の先端に、それぞれの「願い」を込めて色違いのビーズをつけ るのだ。
「青」は友情を深めたい時に。
「黄」は運動能力を高めたい時に。
「緑」は心を癒されたい時に。
そして「赤」は…愛情を深めたい時に。
そうやって「願い」のビーズをつけたミサンガを腕につけ、自然にそれが解けた時にその願いが叶うという。
ちらほらと、本当に効き目があるらしい…と噂を聞きつけ、あかねも作ってみようと思い立ったのだ。

自分でも分かっているけれど、あかねは不器用だ。
そんな不器用なあかねが、かすみに教えてもらいながらこっそりと編みつづけ、ようやく「ミサンガ」(らしきもの)ができあがりそうだった今夜…
最後に飾り付けをしようととって置いた「願い」のビーズがなくなってしまっているのに気がつき、こうして待ちきれずに、材料を仕入れたなびきの店へと向かおうとしているのだ。 
…が。
たまたま部屋から出てきた兵士に尋ねると。
「乱馬は城下へ警備に行きました」
兵士は一言だけそう言うと、あかねに一礼をして去っていった。
(警備?こんな時間に?)
兵士の言葉に、あかねは首を傾げてしまった。
城下の警備は、だいたい夕方から夜も早い時間にかけて行うものだ。
このような深夜の時間帯に、なぜまた城下へと警備に出かけたのだろうか。
あかねがそんなことを考えていると、
「ん?何をしているのだ?こんな所で」
騎士団控え室から出てきたムースが、あかね…の横に飾ってあった「鎧」を指差しながら声をかけてきた。
「…ちょっと。どこ見てんのよ」
あかねがムースの指を自分のほうへぐっと向けると、
「やや!?おぬし、いつの間に分身の術など…」
「ちがーう!あたしは初めからここにいたわよッ。全く…」
そう言ってため息をついた。
「驚かせるでないぞ」
「勝手に驚いたんでしょうが」
「それはそうと、乱馬ならここにはおらぬぞ。奴は右京のところに行ったからな」
そんなあかねに。
ムースはさらりとそう言った。
「右京の…?城下の警備じゃなくて?」
ムースの言葉を聞いたあかねは、ドキッと心を動かした。
「おらも他の兵から聞いただけだから詳しい事は何も知らないが、何でも城下に住む許婚が通り魔に襲われて、その敵討ちをするためにものすごい勢いで部屋から飛び出してい った・・とほかの兵が言っていたから」
…本当は、玄馬に部屋から叩きだされただけなのだが。
一種の伝言ゲームと同じで、「りんご」と伝えたものが最後は「トマト」になってしまうのと同じように、噂や人伝の話には、色々と尾ひれがつくものだ。
「ほ、他の人は一緒じゃないの?乱馬一人で行ったの?」
あかねがなおもムースに聞くと、
「さあ…おらが聞いたところによると、一人で出てったらしいが…」
…本当は、子豚になった良牙と、さらに女姿でたたき出されたのだけれど。
噂話しか伝えられないあかねはそんなこと知る由もない。
「そう…。ありがと」
あかねはムースに早々とお礼を言って、その場から離れた。

…あかねと乱馬は許婚。
親同士が決めた許婚。
しかし、一国の姫君とただの騎士ゆえに、本人同士の気持ちとは別に、それを認めようとしないまわりの人々にいつも邪魔をされている。
それと同時進行で、右京と乱馬も許婚。
こっちは、子供の頃のいい加減な約束で今でもそうなってしまっているようだけど、城下で普通に生活する右京と乱馬は何の身分差もない。
それに…素直じゃないあかねとは違って、右京は乱馬にベタぼれだ。
その上、幼馴染というだけあって、あかねにはない思い出を二人が持っていること…
そんなことヤキモチを焼いても仕方ないのに、たまにあかねはそれが辛い時もあった。
なので、今日みたいに「乱馬が右京の為に慌てて城下へと飛び出していった」なんて人伝で聞くと、「通り魔に襲われたんだから仕方ない」と分かってはいても、何だか複雑な気分だ。
(何よ…何で一人で行くわけ??他の人も誘ってけばいいじゃない!)
…実際は右京のところではなく、ホントに城下の警備にたたき出されただけなのだけれど、そんなことを知らないあかねは何だかすっきりしなかった。
(…いいわよッ。あたし一人でなびきお姉ちゃんのお店に行くからッ。あたしは別に、乱馬になんて守ってもらわなくたって平気だもん…)
あかねは自分の部屋へと引っ込み、外に出ても目立たないように兵士から借りた衣服に着替えるとこっそりと城の外 へと出かけていった。

 

 

…その頃。
「おっかしーな。今日は現われねえってか?」
通り魔の噂のせいで人っ子一人いない夜の城下を、メイド姿のらんまと子豚の良牙がウロウロと歩いていた。
「開店休業かあ?通り魔の奴も」
らんまが城からここへやってきてから、すでにもう1時間。
しかし、どんなにらんまが隙を見せながら道を歩けども、「通り魔」はおろか、猫の子一匹、道を通りがからない。
「なあ、もう今日は現われねえのかな」
らんまが、横を歩いている良牙に暢気にそう話し掛けると、
「ぶきッ」
そろそろ帰ろうぜ…とでも言いたそうな声で、良牙も鳴いていた。
しかし、そうこうしているうちに良牙はいつの間にか乱馬の横からいなくなっていた。
…どうやら、途中で道を曲がる時にでも、曲がる方向を間違えてしまたのだろう。
「あーあ。良牙もどっかいっちまったし…今日はもう現われそうもないし…明日また見回りでもするか」
らんまもまるで自分に言い聞かせるようにそう呟いた、ちょうどその時。
「らーんちゃーん!」
…薄暗い道の向こう側から、そんな声と共に右京が手を振りながら走ってくるのが見えた。
「なッ…うっちゃん!?何してんだよ、こんな時間に!」
腕に怪我を負って家で大人しくしてるはずの右京の突然の登場にらんまが驚いていると、
「急に出前を頼まれてなあ、小夏もいなかったし仕方無しにうちが出前したったんだけど…きゃーッ、まさかこんな所 でこんな時間に乱ちゃんにまた逢えるなんて嬉しいッ」
右京はそんなことを言いながららんまに抱きついてきた。
「うっちゃん、通り魔に襲われたんだから、もうちょっと気をつけろよ」
らんまがそんな右京を引き剥がしながら右京を戒めようとするが、
「乱ちゃん、そんなにうちのことを心配してくれるん?!あー、うちは愛されてるわあ…」
右京はそんな乱馬の話など全く聞いてはいなかった。
「と、とにかく店まで送ってくから」
「おおきに!」
右京は懲りずにらんまの腕にしがみつくと、ぴったりと寄り添って道を歩きだした。
(…ったく)
らんまは、そんな右京の様子を見ながら大きなため息をついた。

らんまと右京が、右京の店に向う最中。
ひっそりと静まり返った城下の中で、唯一こうこうと明かりがともっているお店があった。
それは、この城下で唯一二十四時間営業の、一番の人気のお店。
そう、いわずとしれたなびき経営のお店だった。
「あらあ、乱馬君。それにうっちゃんも。こんな時間にどうしたの?デート?へえ」
二人が店の前をとおりがかった時に、絶妙のタイミングでなびきが店から出てきた。
そして、
「記念撮影してあげるわ」
と、右京に腕を組まれているらんまの姿をすかさず写真に取る。
「なびき!」
慌てるらんまを他所に、
「あとで焼き増ししてあげるわね、うっちゃん」
「おおきにー!」
なびきと右京はそんな会話をして話し込んでいる。
…どうやら、乱馬の写真やネタを、右京はよくなびきから買ってるらしい。
なので、いい機会だ…とばかりになびきからまた何か新ネタを仕入れようとしてるらしい。
なびきもそれが分かっているので、「顧客」を逃すまいとすかさず商売をしているのだ。
「おい、うっちゃん、そろそろ家に行こうぜ」
…いい加減城に戻りたい、というのもあり、らんまは話し込んでいる右京にそう声をかけた。
と。
「…家に行って、その後どうするわけ?」
「へ?」
…明るい店の中から、武術の稽古をする時に纏うような衣服に身を纏った人物がそう言いいながら出てきた。
「何するのよ、二人で家に行って」
「…あかね!?お前なんでこんな所に…」
らんまに話し掛けてきたのは、
城の兵から服を借りたのか、いつものドレス姿ではないあかねだった。
「いいじゃない、あたしがどこで何をしようが」
あかねは、不機嫌そうな顔で乱馬をじろっと睨むと、もう一度らんまに、
「あんたこそ何してるの?こんな時間に右京と二人で」
と、いかにもとげとげしい口調で尋ねてきた。
「なッ…別に俺はなにも…」
「そうは見えないけど?」
「俺はだなあ、ただ城下の警備に…」
らんまは必死でそう説明するけれど、
「乱ちゃん、おまたせー!さ、そろそろ家へといこか」
…右京がそんなことを言いながらまたらんまの腕をとってべっとりとくっついてきたので、らんまの言う言葉はいちい ち説得力がない。
「あれ?あかねちゃん、おったん?何やきょうはやけに色気のない格好しとるんやねえ…」
おまけに。
あかねの姿に気がついた右京が思ったままの事を口にしてしまうので、
「…余計なお世話よ」
あかねはさらに機嫌が悪くなる。
「と、とにかく!うっちゃんを送ったらすぐここに来るから、ここで待ってろよ!城まで送るか…」
「送ってくれなくて結構よ!一人で帰ります」
なので。
らんまが気を使ってあかねにそう提案するも、あかねはばっさりとその申し出を拒絶する。
「…」
あかねとらんまは、お互い険しい表情でにらみ合った。
「ちょっとちょっと、あんた達。また喧嘩?喧嘩するならよそでやんなさいよ」
そんな二人を、なびきは「しかないわねえ」となだめた。

 

その時だった。

「!」
らんまの背筋に、一筋の冷たい汗が流れた。
「…乱馬?」
「乱ちゃん?」
らんまの突然の異変に、あかねと右京はすかさず気が付いて声をかける。
「何か、来る…」
らんまは神経を研ぎ澄ませて、一言そう呟いた。
そして、道の向こう側の暗闇の一点をじろっと見据えた。
「何かって…?」
そう言ってあかねが少し前に出ようとすると、
「あかね、動くな!」
らんまはとっさに声を荒げてあかねの歩みを止めた。
「!」
その声に、あかねはビクッと身を竦める。
「動くな…何かがいる…」
らんまはもう一度、あかねにそう言って聞かせた。
…次の瞬間。
ヒュン!
空を切るような音がして、目に見えない「何か」が、らんま達の方へと近づいてきたような気がした。
「危ねえ!」
「お姉ちゃん、危ない!」
らんまは右京を、あかねはなびきをかばって、それぞれがその目に見えない「何か」の前に歩み出る。
その目に見えない「何か」は、
近づいた時にその姿がなんであるかをはっきりと一同の目に映し出した。
…ナイフであった。
三日月形をしたナイフが二本。いつの間にやら現われた「男」の両手にそれぞれ握られていた。
夜空に輝く月の明かりを受けて、 闇夜に白く鈍る光。
鋭く磨かれた刃が、まるで、光の弧を描くように辺りを照らしている。

「くッ…」
「痛ッ…」

右京となびきをかばったらんまとあかねは、それぞれ腕と肩にナイフによってかすり傷程度のダメージを負った。
「あかね!あかね、大丈夫か!?」
自分も肩を切りつけられたにもかかわらず、それよりも腕に怪我を負わされたあかねにらんまが声を荒げた。
「…」
ナイフ男は、そんな二人の様子をじっと見つめている。
手負いにしたにもかかわらず、ナイフ男はそれ以上二人に襲い掛かってこなかった。
そればかりか、両手に握ったナイフそれぞれについた二人の「血」を一度づつ舐めていた。
そして、
「一人は違う。一人は…やっと見つけた…」
と、なにやら不気味な事を呟いている。
それとは全く別に、
「おい!てめえ、よくも…ッ」
城下の人々を襲った通り魔への怒り、というよりも、目の前であかねに怪我を負わせた怒りを爆発させたらんまが、
「せや!」
素早く、自分の拳をそのナイフ男に対して突き出したのだが、
ヒュッ…
ナイフ男は、らんまのそんな攻撃をいとも簡単に交わすと、次の瞬間、思っても見ない行動に出た。
「きゃッ…」
…自分を攻撃する為に前へ出たらんまの隙をぬって、ナイフ男はあかねの目の前まで瞬時に移動をしてきた。
そして、腕を怪我してしゃがみこんでいたあかねを軽々と抱き上げた。
「な、何するのよ!」
男の中で驚いて暴れるあかねの額に、その男は黙って人差し指をあてる。
すると、パシュッ…という小さな空気音と光にその指先が包まれ、
「あ…」
それと同時に、あかねの体がビクン、と揺れた。
そして、いままで男に抵抗するべく休みなく動いていたその手が、突然力を失ったように…ブラン、と地面に向って 伸びてしまった。
「!」
…どうやら男は、何かの術の使い手のようだ。
暴れるあかねをいとも簡単に気絶させてしまった。
「なッ…てめえ!あかねを離せよ!」
拳は空を切ってしまったが、 らんまは慌ててあかねを抱き上げたそのナイフ男に飛び掛るが、
ドカッ…
「う…」
「男」と「女」という圧倒的なパワーの違いか、らんまはそのナイフ男に軽く足で蹴り飛ばされてしまう。
「なびき!お湯だッ…お湯持ってこい!」
それでも尚、あかねから手を離させるためにらんまはその男に必死でしがみつくけれど、男に言い様に足蹴にされては吹っ飛ばされてしまう。
「くッ…」
らんまがそれでも食って掛かろうとしていると、男へと向っていくと、
「もうここには用はない…」
男はそう言って、飛び掛るらんまを足で蹴散らしながら、あかねを抱く手とは逆の手に握られている三日月型のナイフ を、天にかざした。
すると。
ポゥ…
天にかざした、三日月型のナイフの先端に、円を描くように月の光が集まり始めた。
その光は徐々に徐々に大きくなって、 やがて、人を包みこめる位の大きさになった。
ヒュッ…・
光がその大きさになったのを確認した男は、天にかざしていたナイフをゆっくりと下に下ろし、 まるで何かの「魔法陣」でも描くかのようにナイフで空を切る。
すると、バシュッ…という音と共に、男とあかねの体が、大きな光の中に包まれてしまった。
「あ!」
らんまは慌ててその光に手を伸ばすが、殴れど叩けど、その光の中に手を入れることが出来ない。
「…さらばだ」
…フワリ、フワリ。
男とあかねを包んだ光が、徐々に宙に浮かび始めた。
と、そのときだった。
「らんま君、お湯ー!」
…ガコン!
らんまの後頭部に、ようやく届いたなびきのお湯入りやかんがぶつかった。
「痛え!」
あまりにも勢い良くぶつかったので、乱馬は思わず顔をしかめるが、
「待て!てめえ…あかねを返せ!」
ようやく男の姿に戻った乱馬が、先程よりも強い力で、その光に拳を突きつけた。
「!」
すると、一瞬ではあるが、その光がぐにゃり…と歪んで男の身にまとっていたマントのようなものを掴む事が出来 た。
「…」
男は、そんな乱馬の掴んだマントの上部をナイフでザクッと切ると、 再び空を切った乱馬を足で蹴り飛ばした。
「うわッ…」
乱馬が一瞬身体をその光から離した隙に、
フッ…
あかねを抱いたその男を包んでいた光が、 不意に乱馬達の目の前から消えてしまった。
「あ…」
乱馬は慌てて叩きつけられた地面から起き上がるが、 すでにあかねはその男に連れ去られた後だった。
「あ、あかねー!」

…静かな夜の城下に、乱馬の悲痛な声だけが響いていた。


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