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銀色の月14

(くそッ…なんで見つからねえんだよッ)
…夜通し「懺悔部屋」もとい「拷問部屋」を捜索していたにも関わらず、 乱馬達は『銀色の月』の手がかりを掴むことが出来なかった。
だが、無常にも時だけが着実に過ぎていた。
夜通し『銀色の月』の捜索の為に居座っていた教会も、日が昇ると同時に本日執り行われる予定の、紫苑とあかねの結婚式の準備の為に、人の出入りが激しくなった。
教会の上部の天窓から差し込むまばゆいばかりの朝日が、これ程まで憎らしく思えるのか…と、乱馬は心の中で 呟いていた。

昨夜、晶ババが乱馬に説明したように、
教会の中央にある小さな円形の広場の周囲に立てられている十二本の燭台には、ひとつ、また一つ…と、火が灯されていた。
円形の広場の床には、複雑な形をした、魔法陣。
元々、「教会」というだけあって霊的に安定した構造をしている建物だけれど、その十二本の燭台に火を灯す事により、更に「神秘的」な雰囲気が増したような感じがした。
その上、日の光を取り入れている天窓の付近にも、いよいよなにやら立派な飾りが取り付けられ、風が吹くたびに、その天窓から差し込む光がランダムに教会内に差し込まれるようになっていた。

「スポットライトじゃねえっつーんだよ」

…「懺悔部屋」もとい「拷問部屋」の小窓から教会内を見つめながら、乱馬はそんなことをぼやいていた。
「こら、青年。今はそっちを覗いている場合ではないわ。
『銀色の月』が見つからない以上、どうにかして、お前は恋人を。わしは紫苑様の暴走を止める手立てを考えねば ならんのだぞ?」
そんな乱馬に向って、翠麗がこっそりと叫んだ。
「なッ・・恋人じゃねえッあ、あかねは俺のい、い、許婚だッ」
「似たようなモンじゃろうが。いいから早くこっちへ来い」
「へいへい…」
乱馬は、真っ赤になりながらも翠麗たちが座っている部屋の隅へと移動する。
「『銀色の月』が見つからない以上…どうにかして式を妨害しないといけないのだが…相手はあの紫苑様。警備だって抜かりなく考えてる事じゃろう。むやみやたらに魔法を使っても、返り討ちされるのが関の山…。どうやって姫君に近寄り、そして姫君を教会の外へと連れ出して逃げ出すかをまず考えないといかんな」
乱馬が自分の近くへ座ったのを確認すると、早速翠麗はそう言って、ため息をついた。
「なあ。始めに確認したいんだけど…この国の結婚式は、どんな風に執り行われるんだ?」
そんな翠麗に、良牙が不意に尋ねる。
「花嫁のドレスが黒、ということ以外はおぬしらの住んでいた世界と同じじゃよ。まず始めに、婿となる男が祭壇の前に立つ。そしてあとから、嫁となる女が付添い人に付き添われて、祭壇への道を歩くのじゃが…」
翠麗はそこまで良牙に説明すると、ゴホン、と咳払いをして、
「…実はな。ここでとりあえず一つ、手を打っておいたんじゃ」
「手?」
「そう」
翠麗は一度頷くと、もう一度咳払いをしてから続けた。
「その、花嫁に付く付き人…晶ババにやってもらうようにお願いしたんじゃ。あのばあさん、何だかんだいってこの国 の中では融通がきくんじゃよ。まさに、年の功ってやつでな」」
「ナイスだ!じいさん」
「じゃから…少しだけその部分は融通が利く。姫君が紫苑様の元へたどり着くまでの間、晶ババが傍についてるの で、ここで上手い作戦を立てれば事はわしらに都合が良い方向に転ぶというわけじゃ」
「あ!それじゃあさ…」
と。
乱馬はそんな翠麗の話を聞いていてふと閃く事があった。
「あかねの付添い人に、ばあさんが付くんだろ!?ばあさん見た目は若いし、いっそのことあかねと摩り替わっちまう ってのはどうだ!?そしたらあかねは簡単に俺たちの所へ来れるじゃねえか!」
我ながら名案だぜ…と乱馬は声を弾ませて叫んだが、
「出来んな」
翠麗は、そんな乱馬の提案をさくっと退けた。
「な、何でだよッ」
乱馬がそんな紫苑にカッとなって言い返すと、
「紫苑様はな、子供の頃母親を亡くされてから…あの晶ババが乳母代わりになって可愛がってきたんじゃ。すぐにばれるに決まってるじゃろうが」
「でもッ…」
「それに…姫君と晶ババでは、雰囲気も、そして何より気品も品格も違いすぎる。魔法を使って姿かたちは似せても、そんなものまでは補いきれるものではない」
翠麗の冷静なその指摘に、乱馬はぐっと言葉を詰まらせた。

…元々持っている「品格」。
そういえば、紫苑が乱馬の前に初めて現われた時も、
『あかねは今までであったどんな女よりも品格違う。あんなに高貴な女を見たのは初めてだ』
そう言っていたはずだ。
(品格、かあ。俺と普通に話してるときはそんな品格とか何とかはあんま感じた事ねえんだけどなあ)
乱馬は、その部分が不思議で仕方なかった。
一国の姫君として他の人々に接するあかねと、自分の横で屈託ない笑顔で笑う、あかね。
(あかねの品格って、どんなんなんだろうか)
何だか自分の知らないあかねの一面を見ているようで、乱馬は妙に不思議な気分になっていた。
…が、今はそんな事をいっている場合ではない。

「何か、良い手は無いものか…」
一同は、なかなか良い解決策を導き出せないまま、ため息ばかりをついていた。

 

 

…一方。
「さあ、あかね。こっちを向いて」
…紫苑の部屋では、真っ白…ではなく、漆黒のドレスに身を包まれたあかねがメイドたちの手により綺麗に着飾られていた。
「姫様、素敵ですよ…」
「なんてお美しい…」
…紫苑でなくても、部屋で支度を手伝っていたメイドたちが自然とそう声に出してしまうほど…ドレスに身を包まれたあかねは美しかっ た。
女性達はうっとりとため息を付き、部屋を警護している兵たちもボーっと見とれているぐらいだ。
「私としては、純白のレスを着せてあげたかったんだけが…王の妃になるものは漆黒のドレスで婚礼を行わなければならない、というつまらない決まりあってな…勘弁して欲 しい」
紫苑は、そんな周りの人々に対して優越感を感じさせるような表情で笑うと、さも残念そうに振舞いながらそういっ て、
「おい、お前達。あかねに見とれるのも良いが…私の妃なのだからな。その辺はわきまえよ」
あかねの身支度をしていたメイドや兵士達を部屋の外へと出した。
「まあ、今まで出会ったことの無い美しい女を見れば皆そうなるのは仕方ないか。なあ?あかね」
紫苑は皆を外に出し、扉を閉めながらあかねに向ってそう言ったが、
「…」
あかねはソレに対して何も答えずに、壁に立てかけられた姿見の鏡の前で、漆黒のドレスを身に纏った自分と対峙していた。

…「心を、奪われてはならない」
昨夜、乱馬とつかの間だけれど出会って約束した、言葉。
その言葉が象徴するように、そう願う自分と、紫苑の妙な魔法で、紫苑に心が傾きかけている自分が今、あかねの中では激しく戦っていた。
…本当は。
抵抗するのを何度も止めてしまおう。もう諦めよう…。
あかねは何度となく絶望し、そして諦めかけていた。
しかし昨夜…ガラス越しにしたあの「キス」の感触が、あかねの中の何かを、変えた。
…指で唇を触れれば、今でも残っているあの時の感触。
それだけが、今のあかねの支えだった。
気持ちを持ち直す源になった。

乱馬は、絶対に助けに来る。
自分は、紫苑に心を奪われたりはしない。
あかねの心は、その二つの強い意志に支えられていた。

 

「あかね」
…と、その時。
そんなことを考えていたあかねの肩を、紫苑が馴れ馴れしく腕を回して抱いてきた。
「…離して!」
あかねは、そんな紫苑の手を振り払うと、部屋から出て行こうと入り口へ走り出したが、
「逃がさぬッ」
そんなあかねの背後から紫苑の小さな叫び声がしたかと思うと、それと同時に、あかねの首筋に付いている紫苑の「噛み痕」が熱く火照りだした。
「あんッ…」
あかねは、首筋を手で抑えながら、再び床に崩れ落ちた。
「一晩たってもまだ、私の魔法が効かないとは…・よほどお前は強い意思を持っているのだな」
紫苑は、床に崩れ落ちたあかねの傍まで近寄ると、倒れても尚自分を睨みつけているあかねの、あごに手をやって笑った。
「誰が…誰があんたなんかに・・ッ…」
「ほう…いつまでそんな威勢のいい事を言ってられるかな?」
そして、わめくあかねの赤く火照った首筋に指を当てた。
ビクンッ…その瞬間、あかねの身体が大きく竦んだ。
…紫苑が、あかねの噛み痕から直接魔法を流し込んだのだ。
「あ…」
苦しそうな顔で、ガクン…と力を奪われていくあかねを見下ろしながら、
「私が最初に見込んだとおりだ…高貴な女だよ、お前は。私の強力な魔法に抵抗しつづける精神力を持続させるのはよほど苦しいだろうに…」
紫苑はそういって、あかねの手を掴み、そのまま床に押させつけた。
そして、
「…早く、私の手の内へ落ちてしまえ。あかね」
紫苑はそういって、あかねにぐっ…と顔を近づけた。
…鼻と鼻が触れ合うほどの距離に、二人は近づいていた。
「…」
紫苑はじっと、あかねの瞳を見つめた。
あかねは、そんな紫苑の瞳を負けじと見詰め返し…そしてぐっと歯を食いしばると、
「…それ以上顔を近づけたら…この場で舌を噛み切って死んでやるから!」
静かだけど、でもはっきりとした声でそう呟いた。
それと同時に、涙が一筋、頬を伝った。
「…」
これには流石の紫苑も驚いたようで、
「…仕方ない。結婚式が終わるまでお預けか。その高貴さが身を助けたのだぞ、あかね」
そういって、あかねから顔を遠ざけた。
そして、
「しかしな、あかね。式が済んだら、泣こうが喚こうが…お前は私のものだ。それだけはよく覚えておけ!」
紫苑は、自分の腕の下で涙を流しながらも尚自分を身ら見つけているあかねにそう叫び、
「…よく、覚えておけよ、あかね」
あかねの身体を抱き上げベットに寝かせてから、部屋を出て行ってしまった。

…紫苑が、荒々しくドアを閉めて部屋を出た直後。
あかねはベットで横たわったまま涙を拭い、そしてそっと、自分の分の唇に指で触れた。
指の下の唇には、昨日からずっと残っている、あの「キス」の感触。
たとえガラス越しでもキスは、キス。
それに触れることで、あかねはまたも気持ちを持ち直した。
(…あんな奴に、乱馬と同じ場所にキスして欲しくない…)
あかねは、心の中で強くそう思っていた。
「乱馬…」

(約束どおり私…頑張ってるよ。だから…早く来て)

…あかねは、自由の効かぬ身体を震わせながら、声を押し殺して再び涙を流していた。



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