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銀色の月13

教会に着いた乱馬と晶ババは、とりあえず見せ掛けだけは掃除をしているフリを…と、モップを片手に、教会内の部屋を一つ一つ見て回る事にした。
「…ここの教会はね、ちょっと変わってるのよ」
「変わってる?」
「ええ。これは、今は亡きあたしのおばあちゃんに聞いた話なんだけどー」
晶ババそういって、ふと立ち止まった。
そして、教会の中央部分の天井を指差す。
「この教会はね、高い位置から見ると分かるんだけど、円形に作られているのよ」
「円形?」
「そう。教会を…というか城自体を設計したのが、設計士ではなくて、天文学の学者だったんですって。昔はね、学者が設計士の代わりに城や教会を設計するのが主流だった見たいよ」
晶ババはそういって、乱馬にも天井を見るように促した。
「ほら、天井部分に天窓があるでしょ?あそこから神の光を取り込むイメージなんですって」
「神の光?」
「そ。天窓の、あの高い位置から教会内全体に神の光が降り注ぐようにって。そしてその光が四方八方にも届きます ようにって、天窓の下を中心に四方向に通路まで作ったんですって」
「へえ」
乱馬は、晶ババの言葉を受けて改めて教会内を見渡してみた。

昼間教会の中を逃げ回って身を潜めていたりしていた時は気がつかなかったが、確かにこの城の教会は、乱馬たちが生活していた向こうの世界との教会とは、少し違った作りをしていた。
入り口の扉を開け、一番奥の祭壇に向ってまっすぐに通路が続いているトコロは同じだけれど、奥へと続く道の途中、その真ん中部分は、晶ババが言うように円形の広間が出来ている。
そして、その円形の広場から十字を切るように、四方へと通路が作られていた。
北は祭壇。
南は出口。
「なあ、ばあさん、」
「お姉さんとお呼び」
「じゃあ、お姉さん。あの東側の通路の奥の扉は何だ?」
乱馬が通路を走ってゆき、東側の扉の取っ手に手をかけると、
「そこは確か、牧師の控え室だと思ったわ。その隣は、この教会の資料室だわね」
晶ババが、そのドアの鍵をがちゃかちゃと開けながら乱馬にそう教えてくれた。
「へー…」
扉が開いたので乱馬がさっそく中を覗いてみると、机に腰掛け、そして本棚等、何の変哲も無い部屋がそこにはあった。
「ちぇッ手がかりはなさそうだな」
「そうねえ」
二人は部屋の中を一通り調査したが、特にこれといって手掛かりは見つからなかった。
晶ババもそういって、再び部屋の扉を閉めて鍵をかけた。
そして、
「なあ、おねえさん。じゃあ、西側の扉は?」
乱馬が今度は反対側の通路へ走りドアノブをガチャガチャ…とやると、
「その部屋は…懺悔室よ」
晶ババはそういって、通路の反対側、らんまがあけようとしているドアの鍵穴に鍵を差し、ドアを開けた。
「懺悔部屋、かあ。何だかやけに物々しいな」
らんまが思わずそんなことをぼやくと、
「懺悔部屋って言えば聞こえはいいけれど、この国では…単なる拷問部屋なのよ。ほら」
晶ババはそういって、らんまに部屋の中をよく見るように促した。
「…」
らんまが部屋の中を改めて見てみると…

「うわ…」

思わず、そんな声をあげてしまうような器具が所狭しと並んでいた。
壁に備え付けられた、鎖や身体を固定する器具。
壁際に立てられた棺のようなもの。
そして、ギロチン台のようなものまで。
「…さすがに、嫌な空気が流れてんな…」
らんまは、思わず顔をしかめて部屋から顔をそむけた。
「拷問部屋なんて、どこもそんなものよ」
同じ命を持つものに拷問を課すなんて、神経を疑っちゃうけれどね…と、晶ババも嫌そうに顔をしかめて、そして扉を閉めた。
らんまはため息をつきつつ、
「なあ、じゃあ隣の部屋は?」
今度は気を取り直しつつ、その「懺悔部屋」の隣にある、古めかしい木で出来た扉を指差した。
「ああ、そこはね、掃除用具入れじゃないかしら」
晶ババは、懺悔部屋の扉に鍵をかけながらそう教えてくれたが、
「ないかしらって、…ばあさ…いや、お姉さんこの扉を開けたことないのか?」
らんまが晶ババの言葉に反応してそう尋ねると、
「ええ。なんせほら、懺悔部屋の隣でしょ?皆も、気味悪がって使いたがらないのよ」
「へえ」
「昔はね、掃除用具をしまっとく部屋として使ってたみたいだけど、なんせ、ねえ?だから、ほら。あたし達も今はこうして、掃除用具は外からもってきて使ってるわけよ」
「あ、そういやそうだな」
「教会のお掃除するのなんて、朝早くか、夜遅くって決まってるわけだし。そんな、ただでさえ人がいなくて静かな時間に、わざわざ拷問部屋の隣の掃除用具室なんてだれも入りたがらない わ」
晶ババはそういってらんまに鍵の束を見せ、
「あんまりにも薄気味悪いからって、誰かがこの扉の鍵も、この束から抜いちゃったくらいよ」
「はは…すげえな、それも」
らんまが呆れたような表情をすると、晶ババも「そうなのよ」と肩を竦めて笑って見せた。

 

…この教会内部は、らんま達が住んでいた世界で利用していた教会とはデザイン的に大きく違っている。
中央の広場から四方向に伸びる通路はもとより、その中央の広場に対し、周りを囲うように、十二の燭台が立てられていた。
「何か、この広場に立ってると妙な気分になるなあ」
一通り教会内を見て、そして翠麗の部屋に戻る前に…と、らんまが中央の広場に立ちながらそんなことを呟くと、
「そりゃそうよ」
晶ババそう言って、笑った。
そして、再びこの教会について説明をしてくれた。
「昔はね、礼拝をする場所というよりも、宗教的な儀式を行う為に教会って場所は利用されてたのよ」
「へえ…」
「死んだおばあちゃんが昔ね、この広場の周りに立っている十二の燭台は、儀式の際に十二の精霊を呼び出す召喚用具として使っていたみたいっていってた。ここに灯がともるのは、そうね、大きな儀式…たとえば結婚式とかミサとか。幸福の神、死神…そういった神々を お呼びする時に燭台に火を灯すんですって」
「ふーん。でも、死神も呼び出すのか?」
らんまが、「死神なんて物騒だな…」と顔をしかめると、
「ばかね。死神っていうのは疎まれやすいけれど、本当は再生を司る神なのよ。生あるものは死を受け入れなければならない。でも、始まりがあれば終わりがあるように、終わりがあれば始まりも あるの。死神はね、一見恐ろしくて不気味かもしれないけれど…でも実はとても慈悲深い神なのよ…」
晶ババはそういって、今は火の灯っていない十二の燭台をぐるりと見回した。そして、
「私は、三百年生きているわ。その間に、たくさんの親しい人たちの死と出会わなくてはいけなかった。そのミサに出席するたびに、私はここへ召喚されてきた死神を見ているわ。…でも、一度足りとも、怖いと思ったことは無かった。神は、とても慈悲深いお顔をしていらっしゃったわ」
といって、遠い目をしていた。
「へえ…」
らんまは、外見は若作りをしている上に軽い感じのする晶ババの、真実の姿をそこで垣間見たような気がした。
「…だてに三百年生きてねえな。その話、妙に説得力あるぜ」
「だてには余計よ」
らんまは、ボコンとモップの絵で頭を叩かれた。
「いてッ」
「ったく、もう。それよりも…この教会の中で妖しい部屋といったら、やっぱあの拷問部屋くらいかなあ…」
首を竦めたらんまに、晶ババはそう言って、もう一度ぐるりと教会内を見回した。
「そうだな…。誰も入りたがらないし、開けたとしてもすぐに閉めたくなっちまうような不気味な部屋だし。モ ノを隠すには丁度いいかもなあ」
「ええ。出来れば入りたくないって思っちゃうような部屋ですもの。宝を隠すにはもってこいよね」
らんまと晶ババは、その報告結果を翠麗たちに伝えるべく部屋へと戻った。

 

「そうか。あの拷問部屋か…」
…ほど無くして。
翠麗の部屋にらんま達が戻ると、やはり調査を終えて戻っていた翠麗・ムースと、
「ここはどこだーッ」
そう叫んでいたところを、「もしや道に迷っているのでは?」と迎えに行った乱馬に偶然発見された為に戻ってこれた 良牙&気絶した九能達は再び集まってそれぞれの調査結果を報告しあっていた。
翠麗たちが調べてきた宝物庫も、良牙たちが調べていた資料室も。特には何も得ることが出来なかったようで、
「青年達が見てきたあの拷問部屋…それが何かの手掛かりになると良いのだが…」
「ああ。もう、あそこ以外考えられねえよ…」
確信を得る手掛かりが得られない今、乱馬達はわらにもすがる思いだった。
「とにかく、時間がない。今晩中に『銀色の月』を見つけなければ…」
「ああ」
一同は、(気絶している九能を除き)再び深夜の教会へと降りていった。
そして、
「…」
再び例の「懺悔部屋」もとい「拷問部屋」の扉を開けると、
「いいか?『銀色の月』は剣だ。この部屋の中で剣を見つけたら、どんな剣でも声をかけるのじゃぞ」
翠麗のそんな合図の元、
「おうッ」
乱馬達は一振りの剣を探すべく、不気味な拷問部屋の中に入っていった。

 

 

…が。
無情にも、拷問部屋の中からは「剣」など見つかる事がないまま、一同はそのままその部屋で朝を迎えることになったのだった。


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