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銀色の月11

前夜祭の会場に忍び込んだ乱馬達は、まずはそれぞれが持ち場についた。
良牙とムースは、紫苑の周りを警護する兵として忍び込みさりげなく紫苑の動きをチェック。
翠麗は、物陰に隠れて、良牙やムース達の「心」にダイレクトに通信する魔法を使い、全員への連絡の中継点とな る。
晶ババは、厨房で給仕をしながら全体の動きを上手くコントロールしている。
そして…乱馬は、やはり兵の格好をして、一人、あかねの部屋へと向った。
紫苑のかけてくれた魔法のお陰で、
乱馬達の身体からは「異世界から来た者のオーラ」を発しない様になっているらしく、
「ご苦労様」
「ご苦労様…」
…昼間、あれだけ追いまわしていたにも関わらず、城の兵たちは誰一人として、こうやって乱馬が城の中を堂々と歩いているとは思いもしない様子だ。

「紫苑様より、見張りのものも順次交代して前夜祭に出よ、とのことだ。俺は今まで参加してきたから、今度はお前が行くんだ。ここは俺が代わる」
「そうか。すまないな」

翠麗の作戦どおり、乱馬はあかねの部屋の前の見張りの兵をまんまと誤誘導して、摩り替わった。
そして、兵の姿が見えなくなたのを確認すると、 乱馬はゆっくりとあかねのいる部屋のドア伸びに手をかけ、回した。
…がちゃ。
ドアは、いとも簡単に開いた。
(あかね…)
乱馬は、急に激しく鼓動し始めた胸を抑えながら一歩、また一歩と部屋の中へと足を踏み入れる。
夜だというのに、部屋には明かりも灯っていなかった。
それに、やけに静かだった。
(あかね?いないのか?…)
乱馬は少し心配になりながらも暗い部屋の中で必死に目を凝らすと…

(あ…)

そんな乱馬の目に、窓際…ベランダのガラス扉の前でボーっと外を眺めているあかねの姿が映った。
(あかね…)
窓の外のわずかな月明かりで照らされたあかねの姿に、乱馬が思わず駆け寄ろうとすると、
「来ないで、乱馬!」
…そんな乱馬に対して、乱馬のほうを見ないまま、あかねが急に叫んだ。
「え、あかね…?」
今の言葉は、聞き間違いか?
…乱馬が思わず立ち止まりあかねに問い返すと、
「どうして来たの…逢いたくないって、伝えたじゃない!」
と。
やはりあかねが振り向かないまま、乱馬に向かってそう呟いた。
「…」
『逢えない。』
…そう手紙に書いていただけに、少しはそう言った言葉を返される覚悟はしていたものの、やはり実際に 「来ないでっていったじゃない」 そんな言葉を返されたら、分かってはいても乱馬の心はざわついてしまう。
あかねの吐いたその言葉は、乱馬の心を矢のごとく貫いていった。
ひどい言葉を口にしたまま、あかねはしばらく乱馬のほうを振り向こうとしなかった。
そんなあかねを見守る乱馬の瞳には、 心なしかあかねの肩が震えているように見えていた。
「手紙、読んだんでしょう?会えないって、あたし…書いたじゃない…」
「…」
乱馬はあかねの問いに答えず、あかねの背後までやってきた。
そしてそんなあかねに触れようと手をのばそうとしたが、
「触らないで!」
あかねがそんな乱馬に対して、先ほどよりも全然鋭い口調で叫んだ。
乱馬はその声のあまりの鋭さに、反射的にびくっと手をすくめてしまった。
「触らないで…」
あかねは、そんな乱馬に対してもう一度言った。
「…なんで?」
そんなあかねに。
乱馬は、小さな声で問い返すのがやっとだった。
「…あたしは…」
あかねは、少しためらうようにそう呟き、そして、
「…あたしの意思とは無関係に、あたしは今、紫苑にどんどん惹かれてしまう身体なの。今はまだ自分の意思や気持ちををコントロールできるけど、 一瞬だって気を抜いたら、すぐにあたしは…」
紫苑の事を愛してしまうのよ、とあかねは小さな声で呟いた。
「…そんな風に気張っている状況で乱馬に逢ってしまったら…あたしは乱馬に甘えてしまう。頼ってしまう。すぐに弱いあたしを見せてしまいたくなる。それじゃ、ダメなの…頑張れないの…」
そして、乱馬に背を向けながら、あかねは顔の辺りをこすっているようだった。
「…泣いてんじゃねえよ」
「泣いてないわよ。泣くわけないでしょ」
「泣いてるよ」
乱馬は、そんなあかねに無意識に手を伸ばしていた。
「触らないでッ…」
あかねは、そんな乱馬の手を払い、乱馬のほうを向いた。
「…やっぱ泣いてんじゃねえか」
乱馬は、ようやく対峙したあかねの顔を見てそう呟いた。
必死に泣くまいと顔を強張らせているあかねの、潤んだ瞳が乱馬の心にとても印象的に光る。

…本当なら。
こんな風に悲しい顔をしているあかねをすぐにでも抱きしめてしまいたい。
こんな風に苦しそうなあかねをどうにかしてやりたい。
とにかく、この腕で抱きしめてしまいたい。
「触らないで」
…こんなに拒絶されているのに。
それでもいい、 ほんの一瞬でもいいからあかねに触れたい。
拒絶されればされるほど、乱馬の気持ちは強くなっていった。

と、その時だった。
ガタン! ガラガラガラ…
「!」
部屋のドアの外で、ふいにそんな物音がした。
そして程なくして、
「姫様、お食事をお持ちいたしました」
数回のノックの音と共に、そんな声が聞こえてきた。
…紫苑の指示なのか、どうやら、前夜祭に顔を出さないあかねへ、メイドが夕食を運んできたのだ。
「い、いらないわ」
あかねが、震える声でドアの外に叫ぶと同時に、乱馬は慌ててベランダへの扉を開けて窓の外へ隠れる。
「悪いけど、下げてください」
あかねが続けてそう叫ぶと、
「でも紫苑様が、姫様がお食事を一口でも口にするのを見届けるまで戻ってくるなと…」
それを見届けなければ、私はひどくおしかりを受けます、と、そう言ったドアの外のメイドの声はひどく震えていた。
そして、
「とにかくここを開けていただけますか?」
メイドがそう言って、ドアのノブをガチャガチャがチャッと外から回した。
「わ、わかったわ。今、着替えてるの…だから、少し待って」
自分がドアを開けないことで、恐らくこのメイドは紫苑からひどいお咎めを受けるだろうとすぐにそうぞうができたあか ねは、
「着替えたらすぐに私からドアを開けます…」
ちらっとベランダで隠れている乱馬の方を見ながら、ドアの外のメイドへと声をかけた。
そして、
「…乱馬」
ベランダに隠れている乱馬の名を呼び、ベランダの硝子の扉越しに、あかねは乱馬と改めて向かい合った。
あかねは、黙ってガラスの扉に手を当てた。
「あかね」
乱馬も、硝子の扉越しに手を付いている、あかねにぴったりとその手を合わせた。

…直接触れる事を許してくれないのなら、
こうして、硝子越しに手を触れることは許してくれないか?

声には出さないけれど、 乱馬はあかねに対して、そう訴えかけているかのようだった。
「姫君、まだですか?」
その一方で、ドアの外からは なかなかドアを開けないあかねを、メイドがせかすように呼びつづける。
「…乱馬、もう行って」
あかねが、硝子に手を当てたままとうとうそう呟いた。
…二人には、これ以上一緒にいる時間はなかった。
「…明日、絶対に迎えに来るから」
色んな言葉を捜しては見たけれど、今の乱馬には、目の前のあかねにそう声をかけてやるしかなかった。
「…うん」
あかねは、そんな乱馬の言葉に力なく少しだけ笑うと、
「明日は…待ってる」
今にも消え入りそうな小さな声でそう呟いた。
「明日は絶対に迎えに来るから…だからそれまで…あんな奴のふざけた魔法に何か負けるな。な?」
乱馬は、そんなあかねの方へと硝子越しにぐっと、近づいた。

「…乱馬」

…あかねには。
そんな近づいた乱馬の手の温もりが、硝子越しなのにも関わらず、ひしひしと伝わってきた。
「負けないでいられるよね?がんばれば…」
あかねが、か細い声でそんな乱馬に答えた。
「負けないよ、あかねは」
乱馬は、そんなあかねにはっきりとした声で答えてやった。
そして、
「あかね。ちょっと硝子に近づいて」
「え?」
「いいから」
自分の言葉をじっと聞いているあかねにそう呼びかけて、自分も硝子に近づいた。
あかねがそんな乱馬を不思議に思いながらも、乱馬と同じ様に硝子にぐっと近寄ると、乱馬は、あかねが硝子に近寄ったのを確認し、そんなあかねに対して、
「…」
硝子越しにそっと、キスをした。
「乱馬…」
そんな乱馬の気持ちを受けて、あかねも、硝子越しの乱馬のその唇にそっと、自分の唇を合わす。

 

硝子越しなのにも関わらず、
今の二人の「気持ちの温度」を物語るかのように、お互いの唇の「熱さ」が、硝子を通してはっきりと伝わってくる。

「…気持ちが負けない、オマジナイ」
しばらくして硝子から離れた途端、乱馬がボソッとそう呟いた。
そして、
「だから、頑張ってくれ」
そういいたげな表情であかねに笑いかけると、ベランダの柵から、城の遥か下方にある茂みへと飛び込んで行った。
「乱馬…」
あかねはガラスの扉を開けてベランダへ飛び出し、乱馬が飛び込んでいった茂みの方を覗き込んだ。
「姫様。もういい加減入りますよ」
それと同時に、痺れを切らせたメイドが、外側からガチャッと鍵を開けてあかねの部屋へと入り込んできた。
「姫様、一体いつまで着替えてらっしゃる…あら?どうされたんです?涙なんか流されて…」
そして、ベランダにいるあかねを部屋の中へと連れ戻しながら、明らかに涙を流した形跡のあるあかねに気遣って声 をかけた。
「別に…何でもないわ」
あかねは、気遣ってくれたメイドにそれを否定するようにそう言うと、
「それより、あの男に伝えて欲しい事があります」
自分の周りでてきぱきと食事の支度を始めたメイドに向って、はっきりとした口調で呟いた。
「何を伝えればよろしいですか?」
メイドが不思議そうにあかねに尋ねるので、
「私は…私は、絶対にあなたには負けない、と。それだけ伝えてください」
あかねは、きっぱりとした口調でそう言った。

その言い切るあかねの表情は、
先ほどまでの切ないような悲しげな表情ではなく、なにか大きな「光」を得たような…はっきりとした「意志」を持っているかのような、強い表情だった。

「かしこまりました。…?」
…もちろん、あかねにおこっている状況を全て正確に知らないメイドは あかねが何を言っているのか全く分からない様子だったが、
「紫苑様には、必ずそう伝えます」
あかねに、しっかりと約束をしてくれた。
「お願いします」
あかねはメイドにそう頭を下げると、用意された食事の、飲み物だけに手をつけて、あとはかたずけるように指示をした。
メイドはあかねの指示通り食事をかたずけると、再び部屋から出て行った。
「…」
あかねはメイドが部屋から完全に離れたのを確認すると、再びガラスの扉を開けてベランダへと出た。
そして、漆黒の闇に浮かぶ無数の星を見上げながら心を、馳せた。

…乱馬が逢いにきてくれるまでは、
「逢いたくない」
「こんな姿を見られたくない」
そんなことを思っていた。
他の男に惹かれそうになっている自分を見て欲しくない。
そう考えていた。
でも…
「…」
あかねは、徐にそっと、自分の唇に指で触れた。
「…」
…その唇には、今尚残る硝子越しに交わしたキスの、感触。
(乱馬…約束よ。あたしも負けないように頑張るから。だから…絶対にあたしを助けにきてくれるって…信じる わ)
あかねは、その唇の温度をかみ締めながら、そう心に誓った。

 

…そして、その頃。
ベランダから遥か下方の茂みへと飛び込んだ乱馬に、ちょっとした事件が起こっていた。


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