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FBC 8

「あかねちゃん!どうしたのよ、その足はっ…」
…ロードワークから帰ってくるなり、玄関先で座り込んでいるあたしに向かって、かすみお姉ちゃんが半狂乱状態で 叫んだ。
靴下で覆われているはずのあたしの足は、まるでそこにタンコブでも出来たかのように…内側から腫れ上がってい た。
綿で出来ている靴下を、内側から思いっきり盛りあげるその足の腫れ。
それに伴う痛みは、ズキン、ズキン…とあたしの体中を波打つように駆け抜けていく。
「ちょっと、転んじゃって…」
あたしは、それでもかすみお姉ちゃんに心配をかけまいと笑顔でそう答え、
「こんなの、シップでもはっておけばすぐに治るから」
パッとその場から立ち上がろうと足に力を入れるも、
「痛っ…」
床に足を踏ん張った瞬間、ズキン…と激しい痛みがあたしを襲い、
「あたたたた…」
ヘナヘナ…と再びその場に座り込んでしまう。
「あかねちゃん、無理しちゃダメよっ」
「へ、平気よっ…」
「平気なわけないでしょっ。そうだわ、彼に電話をして今から来てもらいましょう?看てもらった方がいいわよっ」
すると、顔をしかめるあたしに、かすみお姉ちゃんがそんな提案をした。
そして、
「ちょっと待っててね、今電話を…」
怪我しているあたしを置いて、廊下の隅にある電話の所まで向かおうとした。
…でも。

「…だめ!やめて!」

あたしは、そんなかすみお姉ちゃんに向かって、大きな声を出して呼び止めた。
「え、え?」
あたしがあまりにも急に大きな声を出したので、かすみお姉ちゃんがビクン、と身を竦めたのが分かった。
「あ、ご、ごめん…でも、東風先生には電話しないで」
…あたしだって、かすみお姉ちゃんに声を荒げた事なんてなかった。
でも、これだけはどうしても譲れない。
そう思ったからこそ、あたしはお姉ちゃんに向かって怒鳴ったんだ。それだけは、自分でも分かっていた。
そして、
…この怪我を、東風先生だけには知られてはいけない。
あたしはそう、思った。
「でもあかねちゃん、ひどい怪我なのよ?ちゃんと手当てしないと…」
「酷く見えるだけよ!こんなのちょっと冷やしておけばすぐに治るわっ」
「でも、明日の試合は無理よ。そんな足でバスケの試合なんて…っ」
「大丈夫だってば!ほら、ほら!」
…あたしは、気が狂いそうに痛い足を我慢し、わざとかすみお姉ちゃんの前でジャンプをして見せた。
ズキン。
ズキン。
ジャンプして着地するたびに、あたしの全身に駆け抜ける激痛。
無理して笑顔を見せている、その顔さえも、しっかりふんばっていないと歪んでしまいそうだ。
「…そうなの?でも、本当に痛かったら試合、延期にしてもらった方が…」
「痛くないわよっ。大丈夫、ほら!」
どうしても信じてくれないかすみお姉ちゃんと、痛さを必死で隠しながら明るく振舞う、あたし。


…お願い、神様。このことを東風先生には知られたくないんです。
あたしは、キャプテンとして明日の試合、任されたんだもん。
先生が結納でいない間、あたしががんばって皆を引っ張っていく…先生だってそれを望んでいるんだもん。
かすみお姉ちゃんにも、妙な心配事を抱えたまま結納、して欲しくないんだもん。
お願いよ、
お願いよ、神様…
二人の「迷惑」になるのが一番嫌なのっ…・


痛さで気が狂いそうなのを我慢しつつ、あたしは笑顔でかすみお姉ちゃんを見る。
「…でも…」
かすみお姉ちゃんは、それでも心配そうに顔をゆがめている姿勢は変えてくれない。
…どうしたらいいの?このままでは、本当にかすみお姉ちゃんは先生に連絡してしまう。
「…」
あたしは、いよいよ我慢している痛みで脂汗をにじめた顔を少し俯かせながら、必死でその方法を考えた。
…と、その時だった。
「こんばんわー」
ガチャ。
あたし達が話をしている玄関のドアが、突然開いた。
そして、
「お袋が、これ作りすぎたから持っていけって…」
そんな事を言いながら、煮物かなんかが山盛りにされているお皿を持った乱馬が姿を現した。
「あ、乱馬君、ちょうど良かったわ。ねえ、乱馬君も思うでしょ?この怪我じゃ、明日の試合なんて無理だって」
かすみお姉ちゃんは、現れた乱馬に向かってさっそくそう問い掛けた。
「…怪我?」
そのかすみお姉ちゃんの質問に対して、のほほんと家の中に入ってきた乱馬の表情が、ぴくっと動いた。
「…」
乱馬は、玄関先で座り込んでいるあたしをゆっくりと見つめた。
あたしは、そんな乱馬に対し、かすみお姉ちゃんにはばれないように小さく口を動かして見せた。
…お願い
そして、じっと乱馬の顔を見つめる。
「…」
…そのメッセージが通じたのか通じないのかは分からないけれど、
「かすみさん、このくらいの怪我なら全然大丈夫ですよ。俺、捻挫とかがすぐに治っちまうコールドスプレー持ってます から、俺が処置します」
やがて乱馬はあたしから目を逸らし、いつも皆の前で見せているような調子の良さそうな笑顔を、かすみお姉ちゃん に向けた。
「スプレーで治るもの?やっぱり東風さんに…」
「なーに、こんな捻挫でわざわざ東風先生を呼んだんじゃ、申し訳ないっすよ。それに先生だって、明日の準備で忙し いだろうし」
「でも…」
「大丈夫、捻挫とかしなれている俺が言うんですから間違いないですよ。それにあかねも、気力で治しちまうから。な?」
「う、うん…」
「だから、大丈夫ですよ」
「そう?乱馬君がそこまで言うんだったら…」
…乱馬の強引な説得に、かすみお姉ちゃんもようやく折れたようだった。
「本当に大丈夫ね?あかねちゃん」
「大丈夫よ!心配してくれてありがと」
あたしも、それを畳み掛けるようにお姉ちゃんに笑顔でそう宣言する。
「そう…だったらいいんだけど。無理そうだったらすぐに言うのよ?」
かすみお姉ちゃんは、先程よりも少しホッとしたような表情であたしにそう告げた。
そんなあたしと、かすみおねえちゃんのやり取りを、乱馬も明らかに作ったような笑顔で見守っていた。
そして、
「それじゃあかすみさん、ちょっとあかね、借りますね。あ、これお袋から預かった煮物です」
「ありがとう、乱馬君。それじゃあ宜しくね」
「はーい」
乱馬は抱えていた煮物の皿をかすみお姉ちゃんに手渡すと、
「行くぞ、あかね」
…そう言って、玄関に座り込んでいたあたしの身体を、ひょいっと抱き上げた。
「きゃっ…ちょ、ちょっと!」
それは、いわゆる「お姫様だっこ」という奴。
女のあたしでは、到底出来ないような力技だ。
…乱馬の奴、いつの間にあたしを抱え上げられるほど力が強くなったんだろう。
あたしは、一瞬そんな事を考えてしまうも、
「お、お姉ちゃん、あたし乱馬に手当てしてもらってくるね」
「分かったわ」
「行ってきます」
今は、そんな感傷に浸っている場合ではない。
あたしは慌てて気を取り直し、かすみお姉ちゃんに笑顔でそう告げてから、乱馬と共に家の外へ出た。
バタン。
乱馬に抱き上げられたあたしが、両手が塞がっている乱馬の変りに、玄関のドアを閉めた。
そして、
「乱馬…」
ありがとう。あたしが小さい声で乱馬に礼を述べると、
「…とにかく、俺の部屋に行くぞ」
乱馬はそれには答えず、先ほどまでの笑顔を一蹴した真剣な表情で、そう呟いた。
「…」
あたしは、静かに頷いてそのまま乱馬に運ばれて乱馬の部屋へと行った。


「痛いっ痛いってばっ…」
「我慢しろよ、そんだけひどい捻挫だってことだ」
「っ…」
…それから、十分後。あたしは、乱馬の部屋で乱馬による手粗い手当てを受けていた。
乱馬は、ゆっくりとあたしの足から靴下を脱がした。
そして、そっと、指で患部を触れる。
「あつっ…」
その瞬間、ビクン、とあたしは身を竦めてしまった。
「…」
乱馬はそんなあたしの様子を覗いながら、片手ではあたしの腫れていない部分の足を掴み、片手ではコールドスプ レーを患部へと吹きかける。
「いやっ痛いっ痛いってばっ…」
あたしは、足を掴んでいる乱馬の手をバシバシと叩きながら、涙を浮かべて叫ぶ。
あまつさえ、
「痛いー!」
ゴスっ…
あたしが乱馬の顎を片方の足で蹴り上げてしまうと、
「だーかーらっ。ちょっとは我慢しろっ。我慢してれば痛みだって慣れるっ」
「だ、だって…」
「だってじゃねえよっ。それに、初めてじゃねえだろ、これぐらいっ」
乱馬は、あたしに蹴られた顎をさすりながらそんな事をぼやいた。
と、あたし達がそんなやり取りをしていると、
がちゃっ…
何故か部屋のドアが急に開き、乱馬のお母さんとお父さんが部屋の中へとなだれ込んできた。
「ん?どうした?お袋、オヤジ」
「あ…こ、こんばんわ」
手当中の乱馬と、痛さで顔をしかめているあたしが二人に向かってそう挨拶すると、
「…」
おじさんとオバサンは、何だかホッとしたような、でもどことなく残念そうな笑顔で微笑み、再び部屋を出て行ってしま った。
「…何だ?」
「さあ…それよりっ。もっと優しくしてよっ」
「優しくなんて手当てしてたら、全然腫れなんてひかねえぞ。言っておくけど、明日の試合、無理だぞ。この足じゃ」
おじさんとおばさんが出て行った後、再びジタバタと暴れながら叫ぶあたしに、乱馬はため息をつきながらそう言っ た。
「え…」
あたしが、はっと息を飲むと、
「当たり前だろ。触っただけであんだけ痛がるんだ、ただの捻挫じゃねえよ。下手したら折れてるかも」
「っ…」
「たく、どこでこんな怪我したんだよ。帰ってくるときは大丈夫だったじゃねえか」
乱馬はそういいながら、あたしの足にコールドスプレーを吹きかけつづける。
「…ロードワーク、しようと思ったのよ」
あたしは、足に吹きかけられるコールドスプレーを見つめながら、呟いた。
「ロードワークが原因なのか」
「うん…」
「無茶して走ってて転んだのか?」
「ううん。ロードワ−クから戻ってきて…ちょっと考えごとしながら家の中に入ろうとしたら、玄関先にあった植木蜂に けつまづいて…」
「…おい。それじゃロードワークが原因じゃねえじゃねーか。バカか、お前」
「う、うるさいわねっ。しょうがないでしょっ転んじゃったんだからっ」
あたしは、スプレーを吹きかけている乱馬の頭をバシッと叩いてやった。
「それよりっ…どうにかしてよ、お願いよっ。あたし、どうしても明日の試合はっ…」
「どうにかしてって…折れてるかも知れねえ足に対してできることなんて、時間ギリギリまで足を冷やして、あとはぐ るぐる巻きに固定するくらいだろ」
「乱馬、慣れてるんでしょ!?」
「慣れてるけど。でも、慣れで対処できるか出来ないかぐらいは、お前だって分かるだろ。…ほら、出来た」
乱馬は、必死な顔で叫ぶあたしの足に、今度はグルグルと包帯を巻いて固定した。
そして、あたしがはいていた靴下をそっと、履かす。
「っ…」
包帯で固定していても、乱馬に少し持ち上げられただけで、あたしの足には激痛が走った。
「…かすみさんの目は誤魔化せても、女バスの奴らの目は、これじゃあ誤魔化せねえよ。もちろん、真之介のいる 高校の奴らもな」
「…」
「それに。床に足をつくのだって辛いんだろ?走れるわけねーじゃねーか。バスケはそんなに甘くねえんだよ」
乱馬は、そんなあたしに容赦なく言葉を浴びせ、
「…かすみさんが言ったみたいに、東風先生にちゃんと見てもらったほうがいいんじゃねえのか?」
と、促す。
「だめよっ…それはだめっ」
あたしは、そんな乱馬の言葉を遮るようにして、叫んだ。
「何でダメなんだよ」
「…明日は、お姉ちゃんと先生の結納なのよ。余計な心配、かけたくないのよっ…」
「それとこれとは別問題だろ」
「別じゃないわよっ。…あたしは、先生に任されたんだもん」
「え?」
「あたしがキャプテンだから、大丈夫って。だから先生は安心して、結納にいけるんだもんっ。あたしがっ…あたしが しっかりしていないとダメなんだもんっ」
あたしは、乱馬にではなく自分に言い聞かせるように、そう叫んだ。
そして、
「みんなにはばれないように、もっとちゃんと足を固定するもんっ。痛み止め飲んで、我慢するもん。痛くないって、そう 思えば平気だもん!」
…俯きながらそう呟き、ぐっと歯を食いしばった。
ポタっ…
俯いたあたしの瞳から、大粒の涙が腿に、落ちる。
「…」
乱馬は、そんなあたしの姿をしばらくは何も言わないでじっと見ていたようだった。
が、
「…ったく、ホントにしょうがねーな」
「乱馬…」
「おめー、不器用なんだし。自分ひとりで足を上手く固定するなんて、出来ねーだろうが」
「な、なによっ…」
「…明日、朝何時に集合なんだよ」
「えっ…し、七時半だけど…」
「じゃあ、七時に家に来い。こっから駅まで五分だし、二十分もあれば足の一つや二つ、固定してやる」
ぼろぼろと涙を流すあたしに、ティッシュペーパーを差し出し、ぶっきらぼうな口調でそう、言った。
「いいの?」
あたしが、差し出されたティッシュペーパーで鼻をかみながら尋ねると、
「いいの?もなにも、オメー一人じゃできねーだろーが。この優しい俺様に感謝しろ」
乱馬は照れ隠しなのか、偉そうな口調でそう言って、咳払いをした。
「…その代り、試合が終わったら、すぐに病院にいけよ。捻挫だってほっとくとクセになるし、それに捻挫とはかぎら ねえんだからな」
「ありがとうっ…ありがとう乱馬っ」
あたしは鼻をかんでいたティッシュをゴミ箱に投げ入れ、咳払いをしている乱馬に力いっぱい抱き付いた。
「わっ…な、なんだよっ」
そんなあたしに対し、乱馬は裏返ったような声で叫ぶ。
「ありがと、乱馬っ。やっぱりあんたは、あたしの幼馴染ねっ。大好きよっ」
あたしは、ちょっと前まで何だかぎこちなく接していた事も忘れて、興奮気味に乱馬に抱きついてそう叫ぶと、
「じゃあ、明日七時に来るからねっ。ちゃんと起きててよっ」
ありがとうねっ…ともう一度御礼を言って乱馬から離れ、そして乱馬の部屋を出て行った。
…そう、東風先生の為にも、
それにお姉ちゃんの為にも。
そして、明日のために練習してきた皆の為にも…あたしは、こんな怪我くらいでへこたれるわけには行かないの。
「…」
怪我をしたおかげで、さっきまでずっとぐちぐちと悩んでいた事、それに迷いが吹っ切れたあたし。
「…」
…明日は、絶対に頑張んなくちゃっ。
あたしは、包帯でぐるぐるに固定された足を引きずって歩きながら、改めて心の中でそう誓った。



…もちろん、
「幼馴染で、大好き、ねー…」
そんな事を呟きながら、家へと戻っていくあたしの姿を窓から眺めている乱馬の複雑な胸中など、全く気がつかない まま。

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