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FBC おまけ(夏の思い出編)

「ねえ、らんま。ここどこ?お父さんは?お姉ちゃんは?」
「わかんない…」
「こわいよぅ…帰りたいよぅ…」
「なくなよぅっ。あかねは俺が守ってやるからっ」
「ほんと?」
「うん。あ。あかね、これみてっ」
「え?わあ…きれいな石ぃ」
「これはきっと、神さまがくれたんだっ。こんなピカピカしてるんだもん、絶対そうだよっ」
「うんっ」
「あかね、これ持ってろ。これ持ってればきっと帰れるよっ。これは、神さまがくれた石だからっ」
「ほんと?これもってれば、なんでもお願い事が叶う?」
「うんっ」
「じゃあね、じゃあね、あかね、この石に早く帰れるようにお願いするっ。それが叶ったら、今度は次のお願いもするっ」
「次い?」
「うんっ。あのねっ…」



…あたしには、もうすっかりうろ覚えだけど、子供の頃に、乱馬と二人でパトカーに家まで送られた経験がある。
それは、冒険をしようとして隣町まで行って、帰ってこれなくなった…というのが原因。
途中で日も暮れるし、見たことがない場所へ迷い込むし。
小学生にもならない小さな子供には、耐えられないような恐怖だ。
おかげで、遠い街…だと思っていた隣町で発見され、パトカーに乗せられて家についた瞬間に、お父さん達に怒られるよりも前に、あたし達は二人してワンワンと、大泣きしたっけ。

あたしの記憶には、そういうおおまかな事だけはっきりと残っている。
大泣きしたあたし達は、不思議な事に、「もう大丈夫だよ」と言われても、しばらくはずっと、ずっと繋いでいた手を離さなかったらしく、
それについては今でも時々、うちのお父さんや、乱馬のお母さん…早乙女のおば様に、
「あの時はもう、本当に驚いちゃったわ。子供なのに、すごく強い力で手を繋いじゃって、離れないんだもの」
と、笑い話としてされることがある。
こういう細かい事については、お父さんなりおばさまなりに聞かないとあたしは思い出せない。
しかも、
「あかねちゃん、変な石を握りしめていて、捨てろってあかねちゃんのお父さんに言われても、捨てなかったのよ」
おば様がそういうように、どうやらあたしは、妙な「石」を握り締めていたらしい。
それに関しては、乱馬と二人で石を見つけて持ち帰ったというイベントがあったということ自体は、覚えている。
でも、なんでそんなに意固地になって握りしめて離さなかったのかは、覚えていない。
記憶はずいぶん曖昧だ。


「うーん…」

…夏休みに入り、バスケットの地区予選の練習に更に熱が入るある日。
試合も近いし、たまには身体を休めることも練習の内、と、コーチである東風先生の提案により、その日はいつもよりも数時間早く練習を解散した。
だったら今の内に宿題でもやっておこう、とあたしは真っ直ぐ家にかえってきて机に向かい、宿題をしがてらふと…そんな事をぼんやりと考えていたの だ。
きっと、今あたしがやっている宿題が、
『夏の思い出について英語で簡単な文章を書け』
…なんていうものの、せいだろう。
そうでもなかったら、宿題をしながらこんな事を思い出すなんて、ことはない。

「なんだっけなー…」
あたしは休憩がてら、自分で用意しておいた麦茶を飲みながら、自分の机の引き出しをあけた。
引き出しの中には、キーホルダーとかメモ帳とか、いろんな雑貨が入っている。
その雑貨のなかに、小さな紙の箱があり、更にそれを開けてみると…リリアンとかおはじきとか、いわゆるあたしの「宝物」の雑貨があって、
その雑貨類の中に一つ、薄いピンク色をした小さな石が、混ざっていた。
「…」
そう、これが早乙女のおば様があたしによく話す、あたしが「握り締めて離さず、捨てろといわれても捨てなかった」という石、だ。
「この石がねー…」
あたしはそんな事を呟きながら、箱の中のその石を指でつまみ取り上げ、
ちょうど窓から差し込んでくる強い午後のひざしに、透かしてみた。
薄いピンクの、表面が滑らかな小さな石。
小さな石の粒子が差し込む光で七色に反射して、石を覗いているあたしの視界は、まるで虹のカーテンでフィルタを掛けられたかのようだ。
名前もしらない、ただの石。
拾っただけだから、価値なんて全くありはしない。
でもこの石、あの時のあたしにとってはとても、とても重要だった気がする。

…なんでだっけ?

「うーん…」
石はこうやって大事に取ってあるけれど、いくら考えても、その理由が思い出せない。
まあ、思い出せないってことは、それほどたいした理由ではないからなんだとは思うんだけど。
でも、これだけ考えてわからないのも、何だか悔しいというか何というか。複雑な気分だ。
「…」
ああ、それに思い出すことができたら、この今やっている『夏の思い出』っていう宿題にも書けると思うんだけどなあ。
面白いのに。
「…」
…乱馬なら、覚えてるかなあ。
あたしはどうしても諦めきれず、ふと乱馬の事を思い出した。
あたしの記憶は曖昧だけれど、もしかしたら一緒にあの時いた乱馬なら、何か覚えているかもしれない。
そう考えたからだ。
「…」
あたしはそんな事を思いながら、自分の部屋の窓をあけた。
そして、
「乱馬ー」
部屋の窓の向う側、
男子バスケ部も今日は早く練習が終わったのか、のんびりと雑誌を読みながらベッドに寝転がっている乱馬に声をかけた。
が、乱馬からは反応はない。というより、こうして窓越しに読んでいる事に全く気がついていないようだ。
そんなに読んでいる雑誌が面白いのだろか。夢中になって、その雑誌を読みふけっているようだ。
「…もーっ」
エッチな雑誌だったら、取りあげておば様に持っていってやるんだから。
あたしはそんな事も考えつつ、読んでも気がつかないのなら強行突破…と一度深呼吸をしてから自分の部屋の窓を開け身体を外へ乗り出した。
そして、
ダンっ…
ヒラっとミニスカートをなびかせながら、乱馬の部屋のベランダへと飛び移ると、
窓をノックする間もなく突然窓を開けてやって、
「よいしょっと」
無防備にくつろぐ乱馬の部屋へと、お邪魔してやった。
「うわ!」
…もちろん、まさかあたしが窓を越えてベランダからやってくるなんて思っていなかった乱馬は、それまで夢中になって読んでいた雑誌を放り投げ、慌て てベッドから飛び起きた。
「呼んだんだけど返事ないから、来ちゃった。何読んでたの?」
あたしはそう言いながら素早く、乱馬がほうり投げた雑誌を拾い上げる。
「…」
それは、ごくごく普通の、情報誌だった。イベント会場特集というか、話題のスポットを集めて取り上げている雑誌だった。
海の近くにあるテレビ局のイベントとか、ワールドクラスのアミューズメントパークとか、隣町に出来た新しい映画スポットとか。
これ一冊抑えていれば、かなり夏休みは充実して遊べそうだ。
しかもよく見ると、雑誌の所々折り目がついていた。
わざわざこんな風に調べたりして、乱馬の奴、どこか行きたいところでもあるんだろうか?

「ふーん」
あーあ、乱馬は真面目なのね。エッチな雑誌だったらある意味面白かったのに。
あたしはこっそりと心の中で舌打ちをしながら、飛び起きた乱馬の横へと腰をかける。
「お、お前なあっ…い、いきなり窓から入ってくんなよなっ」
乱馬は、腰掛けたあたしから雑誌を奪い返すと、途中何度かどもりながらそんな事を叫んだ。
「いいじゃない、別に」
「男には男の事情ってもんがあんだよっ」
「いいじゃない、別に着替え中に乱入したわけじゃないんだし。それとも、いきなりこられちゃ困るような事、している時とかあるわけ?」
あたしがじーっと乱馬の顔を見つめながらそう尋ねると、
「そ、そんなんじゃねえよっ。俺はそういうのは抜かりなくっ…あ」
乱馬はやけに動揺した後、あ…とため息をついていた。
そして、
「…で?なんだよ。夏休みの宿題なら、見せてもらうつもりではいるけど見せるものはねえぞ」
と、この話はもうおしまい、とばかりに乱馬は話題を変えた。
「あんた何えばってんのよ」
そうだった。そろそろ本題に入らなくちゃ…あたしも自分がやって来た理由を思い出すと、勉強に関してはかなり他力本願の乱馬の額を指ではじき、
「聞きたい事があるの」
そう言って、先ほど机の引き出しの宝物箱から取り出した石を、乱馬にみせた。そして、
「この石…覚えてる?」
「え?」
「乱馬と迷子になった時にこれ、拾ったんだよね。神さまがくれて、持っていれば願いが叶うって」
「…」
「でもさ、家にかえれますようにって願いは叶ったのに、あたし、お父さんに言われてもこの石、捨てなかったんだよね。どうしても、その理由が思い出せないの。乱馬、覚えてる?理由」
と、乱馬にあたしが先ほどから考えていることを尋ねてみた。
すると、
「そ、それはっ…」
乱馬はなぜか、みるみるうちに顔を赤くした。
そして、
「そんなの今更、無理に思い出さなくたって…その、い、いいんじゃねえかなっ」
と、そんな事を言いながら、あたしに背を向けてしまった。
「あ、乱馬、覚えてるのね!?ね、ね、だったら教えてよっ」
「イヤだ」
「なんでよっ。ねー、いいじゃないっ。気になって今日、眠れないっ」
「じゃあ寝るな」
「なにそれっ」
「と、とにかくいいんだよっ。おめーは余計な事考えないで、ずっとその石持ってりゃいいの」
「な、何よー、けちっ」
どんなにねだっても、乱馬は絶対に口を割らない。
宿題を半分やってあげるから、と甘いエサを出しても、一瞬迷うも、「それでもだめだ」と譲らない。
何だか、随分と頑なな意志だ。
「もー…じゃあいいわよ」
気にはなるけれど、でもこんなに口を割らないのならば仕方がない。
あたしは大きなため息をつくと、
「あーあ。教えてくれないならいいわよー。宿題、別のこと書くから」
乱馬からの情報収集は諦めて、再び窓から自分の部屋へと戻ろうとベッドから立ち上がった。
すると、
「あ、ちょ、ちょっと待てよっ」
「何よ」
「その…隣り街に、新しいシネマステーションができたらしくて、映画、安いんだって」
「へー」
「その…よく考えるとそこ、その石を拾った場所のすぐ近くだしっ」
「え、そうなんだ」
「俺からは理由は話さないけどっその…そこに行けばお前が思い出すかもしれないしっ…お、俺、明後日の日曜日に偶然行こうかなって思ってたんだけど…お前もいくか?」
乱馬は、窓を開けてベランダの手すりを飛び越えようとしていたあたしに、そう声をかけてきた。
「…」
偶然行こうと思っていた、なんていっているけれど、そこの場所、さっきの雑誌でしっかり折り目、つけてなかったっけ?
「…」
あたしは一瞬ちらっとそんな事を考えつつも、
「ふーん、思い出せるかもしれないんだったら、行こうかな。映画、乱馬のおごりみたいだしね」
「げっ…あ、でもまあ、それくらいならっ…」
「少し早めに家を出て、たまにはお昼、外で食べようよ」
「お、おおっ」
「それも乱馬のおごりなんでしょ?」
「それもかよっ」
「当たり前でしょ」
と、ちゃっかりと乱馬におごらせる約束をさせ、その誘いを受けた。
「…」
これってもしかして、デートなのか。
いや、でも相手が乱馬だし、ただ遊びに行くだけよね。だって、二人で出かけるのなんていつもの事だし。

「…」
そんなことが気にならなくも無いけれど、
とりあえずは忘れていた記憶を思い出せるかも…とほのかに期待をしつつ、あたしは再び、自分の部屋へと戻ったのだった。
…結局。
すぐには理由なんて思い出せなかったし、乱馬も教えてくれなかったし。
それに、日曜日に思い出の場所に行ってみないと分からない。
という事は、
「あーあ、じゃあ宿題にすぐに採用するのは、無理かあ…」
今すぐに英語の宿題に石の事を書くことは、無理だという事。
「宿題、早く終わらせたいしなー…」
日曜日まで待って、結局書けないとなると何だか時間が勿体無い。
あたしは宿題に石の事を書くのは諦め、当り障りのない出来事を、何とか英語にして宿題はかたずけてしまった。


ところがその日の夜。
あたしは、妙な夢をみた。
夢だから、夢を見た時ははっきりとその夢を覚えていても、翌朝になったら忘れてしまう。
なので、翌朝起きた時には夢の内容までは覚えてなかったけれど、見ていた夢が、なにかとても「大事」な内容だったことだけは、あたしは覚えていた。
「…」
考えても、夢の内容は思い出せない。
でも、なんだろう。何だか夢を見ながらあたしは、すごくドキドキしていたのだけは、覚えていた。
「…」
…なんだっけ。
寝起きにベッドの上で首を傾げつつ、あたしはまた増えてしまった疑問に対してため息をついたのだった。
それにしてもあたし、何でこんなに記憶力が悪いんだろう。
そんなこともこっそりと思いながら。




「ねえ、らんま。ここどこ?お父さんは?お姉ちゃんは?」
「わかんない…」
「こわいよぅ…帰りたいよぅ…」
「なくなよぅっ。あかねは俺が守ってやるからっ」
「ほんと?」
「うん。あ。あかね、これみてっ」
「え?わあ…きれいな石ぃ」
「これはきっと、神さまがくれたんだっ。こんなピカピカしてるんだもん、絶対そうだよっ」
「うんっ」
「あかね、これ持ってろ。これ持ってればきっと帰れるよっ。これは、神さまがくれた石だからっ」
「ほんと?これもってれば、なんでもお願い事が叶う?」
「うんっ」
「じゃあね、じゃあね、あかね、この石に早く帰れるようにお願いするっ。それが叶ったら、今度は次のお願いもするっ」
「次い?」
「うんっ。あのねっ…あのね、あかね、らんまとずっと一緒にいれるようにお願いするのっ」
「ほんとっ?あかね、俺と一緒にいたいのっ?」
「うんっ」
「じゃあっじゃあっ俺もその石にお願いするっ。俺、大人になったらあかねと結婚するんだからっ」
「らんま、あたしと結婚するのっ?」
「そうだよっ」
「やったー!ねえねえ、約束だよっ」
「うんっ。あかねがその石をずっと持ってたら、俺達のお願いごと、叶うからなっ。だからその石、無くすなよっ」
「うんっ。あかね、絶対にこの石、無くさないっ。ずっとずっと持ってるからっ…」


−−−−−−ずっと、この石大切に持ってるから。


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