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FBC2 9

春季リーグは、この地区の高校がこぞって参加する、いわばスポーツ学生の春の祭典。
とりわけうちの学区は、バスケットボールが盛んのようで、わりと強豪校が多いみたいだ。
都大会で、うちの男バスも含めて上位常連組みがちらほらとしていたりもする。
でも、そんな中でも優秀なのがうちのバスケット部。
もちろん、男子の方。
乱馬を初めとする「新生・風林館高校チーム」は、初回はダブルスコアで勝利、その後も快進撃を続け、あっという間に決勝進出。
真之介君率いる青稜学園高校と、午前中最後の試合をすることとなった。・・・




「がんばってくださいね、良牙様」
「ああ!」
決勝戦が始まる前のつかの間の休憩時間。
あたし達女バスとマネージャーのあかりさんは、男子バスケ部の元に集まり再びエールを送ったりしていた。
あかりさんはみんなに声をかけながらも、良牙君の傍に寄り添って微笑んでいる。
「がんばりやー、勝ったらデートしたる」
「うそつけ」
「ホントやって。せやからうちらも応援してや?」
愛情と応援は表裏一体、ギブアンドテイク。
右京や他のメンバーも、男子部員の緊張をほぐすべくそんな事を話しながら笑っていたり、皆それぞれがラスト試合の前にリラックスをして過ごしていた。
「・・・」
・・・せっかくだから、あたしも乱馬に声をかけようかな。
皆の様子を見ていたあたしは、ふと、そんな事を思った。
そしたら、あの中学の時の春季リーグの時みたいにがんばってくれるかな。
あの時は特にそれに対してなんとも思わなかったけど、
もしも今、あたしが何かを言う事で乱馬があんな風にがんばってくれるんなら、すごく嬉しいなあ・・・。
「・・・」
そ、そりゃああたしは女バスのキャプテンだから?
そ、そうよ。あくまでもキャプテンからキャプテンへエールを送るって事くらいしても・・・
「・・・」
・・・ううん、本当はそれだけじゃないってことも自分では分かっているんだけど、
こんな状況になってまで、あたしはそんな理由付けをして乱馬と話をしたいと思った。
ここ数日、あたしのせいでギクシャクしていたから、
でもこの間のお礼もろくにちゃんと言えてなかったし、さっきも何か言い掛けで終ってしまったし。
それに・・・「違うよ」が夢なのか現実なのか、確かめたいし。
も、もちろん、こんな試合前の時間にそれを確かめるなんて出来ないけど。
でも、少しくらいはあたしも、乱馬と話をしたいなあ。
良牙くんとあかりさんみたいには和やかに行かなくても、ちょっとくらいは・・・
「・・・」
あたしは部員達の中にキャプテンである乱馬の姿を探した。
でも、普段試合の前とかは嫌ってくらい存在感がある乱馬が、珍しいことに見当たらない。
水でも飲みに行ったのかな?
「ねえ、乱馬は?」
「え?あれ、そういえばいねえな」
「・・・」
他の部員に聞いてみたけれど、誰も乱馬の所在を知らないらしい。
・・・ばかねえ、アイツ。時間がないんだから、勝手に行動したら皆だって困るのに。
キャプテンなんだから、誰かにちゃんと言っていかなきゃだめじゃないの。
「探してくるわ」
「おお、頼むよ」
あたしは、一応皆に断って体育館から出た。
そして水のみ場へと向かおうと歩を進めた・・・ちょうどその瞬間。
「あ!」
・・・思わず小さく声を上げて、その場に立ち竦んだ。



あたしの目線の先には、タオルを首から提げている乱馬と、
そして・・・バスケなんて普段は興味も示さないって行っているはずのなびきお姉ちゃんが、そこで楽しそうに話している姿が目に入った。


「・・・」
・・・なんで?
何でお姉ちゃんがいるの?
普段、バスケなんて興味がないって言っているくせに。
あたしの試合だって、応援に来る?って聞いても「興味がないからつまらない」って断ったくせに。
今朝、断ったくせに。断ったくせに・・・断ったのに。
・・・
それなのになんで?


「・・・」
二人はあたしがそこで二人を見ているなんて全く気がついていないけれど、あたしの目線は二人をじっと見つめて離さない。
ドクン、ドクンと胸が徐々に大きく鼓動し始めるのを自分自身で感じていた。



「・・・」
楽しそうに、何かを話している二人。
・・・ああ、そうか。
乱馬の試合だから、お姉ちゃんは来たのか。
あたしの試合、じゃなくて「乱馬の試合」を見に来たのか。
大好きな彼の試合だから・・・だから。
だから乱馬も今日は、がんばったんだ。お姉ちゃんが来るから。
お姉ちゃんに優勝した所を見せたいから。だから・・・。
そして、大事な決勝戦の前の、この少しの休憩にコソコソと会って話をして、更に元気を貰おうと。
・・・
「・・・」
・・・そっか。
乱馬をがんばらせる元気の源って、もうあたしなんかの応援じゃないんだ。
そうよ、だってお姉ちゃんがいるんだもん。
こんな風に試合前にコソコソとあってるくらいだもん。
別にあたしがエールなんて送らなくても・・・
・・・
「・・・」
・・・嘘つき。
「違うよ」って言ったのに。
あ、でもそうなるとあれは、やっぱりあたしの夢だったんだ。
それじゃ、別に乱馬は嘘つきじゃないんだ。あれはあたしの、妄想というか夢だったんだ。
・・・こんなことではっきりするなんて、ちょっと悲しいけど。
あたしはそんな事を思いながら、ぎゅっと唇をかみ締めた。
「・・・」
・・・声、掛けないで戻ろう。
もうすぐ恋人になる二人が楽しそうに話しているの、邪魔するほどあたし、馬鹿じゃないし。
みんなには、適当にごまかして・・・そしたらその内乱馬だって、戻ってくるもん。
・・・
あたしは、二人に気づかれないようにそっと来た道を引き返した。
トボトボと廊下を歩くあたしの胸に、今さっきの二人の姿がくっきりと残っている。
「・・・」
・・・もう、これで諦めがついたじゃないの。
だから、もうやめなくちゃ。
春季リーグに専念するって、自分で朝誓ったのに。
もう、結果だってはっきり出たじゃないの。だから、すっぱり諦めないと!
・・・
あたしは、ごちゃごちゃする頭を慌てて振って、バスケに専念しようと試みる。
「試合、試合、試合に専念・・・あたしにはバスケ以外に何もない・・・」
まるで念仏のようにぼそぼそとそんな事をつぶやきながら、あたしはに手を突いて立ち止まる。
そんなあたしの脇を通りがかる人たちは、「何この子。危ない子?」みたいな感じで冷たい視線を浴びせるも、今はそんな事を気にして入られない。
「・・・」
あたし一人の個人的事情で勝手に落ち込んだり混乱していて、今日のために一生懸命練習してきたみんなの足を引っ張るわけには行かない。
お姉ちゃんと乱馬のことは、とりあえず今は忘れてバスケに専念する。
この試合が終わって、二人が正式に付き合うことになったら・・・そしたらその時、考えればいいじゃない。
どっか出掛けて思い切り遊んで、そんで気持ちの整理をつけて・・・応援してあげればいいよ。
最初は、割り切れなくて苦しいかもしれないけど・・・
「・・・」
あたしは乱馬を選んでも、乱馬はそうじゃなかった。ただ、それだけの事じゃない・・・
「・・・」
あたしは大きなため息を一つついてざわついている胸を少し落ち着かせると、
「試合・・・試合・・・」
再びぶつぶつと呟きながら皆の元へと戻っていった。













・・・お姉ちゃんのおかげかどうか分からないけど、乱馬は決勝戦ですごくいい動きをしていた。
青稜学園高校も強いはずなんだけど、今日はうちの学校のほうが勢いがあるみたい。
「いけー!良牙くーん!」
「こら、良牙もっと早く走らんかー!あかりちゃんに愛想つかされるでー!」
「そ、そんなことないですーっ」
・・・それぞれが思い切り大声で、時には会場を笑いに誘うような声を上げて応援をする中、あたしはそっと、一般観客席を見回した。
そこには、お姉ちゃんの姿はない。
一般席で見ていないのかなあ?
それとも、さっき乱馬と会えたから他の人に怪しまれないように外に出て、終わってから乱馬とまた・・・
「・・・」
あたしがコートの中ではなく一般席を見ながらボーっとしていると、
「あー!危ないっ」
それまでワイワイと応援していた右京たちが、そんな声を上げた。
はっと我に返ってコートを見ると、ちょうど相手チームの反則すれすれのブロッキングにより、乱馬が床に転んでしまったところだった。
おかげでこちらはフリースローを打てることになったけれど、
「うわー、今乱ちゃんのみぞおちに手刀はいったよなあ?」
「痛そうですわ」
「許せないあるな」
・・・青稜学園高校の選手、だいぶ焦っていたのだろうか。
明らかなる反則、しかも悪質・・・ということで、その選手は退場処分になったほど。
まあ、学生ルールということもあり、欠員ではなく新しくメンバーを一人相手チームが入れ替えて再びゲームはスタートするわけだけど、
「悪い」
「・・・」
真之介君が、床から起き上がった乱馬に頭を下げていた。
乱馬はその手をとって立ち上がり、複雑な表情をしていた。
・・・普段は何を考えているか良く分からない調子のいい真之介君も、試合に関しては立派なプレーヤーでもありキャプテンでもあるんだな。
不謹慎だと思いつつ、あたしはそんな事を思っていた。
そうこうしているうちに、コートのほうでは動きがあった。
乱馬が、審判の合図でコートの中央に付近のサークルへと歩いていった。
フリースローを打つ場所へと立ったのだ。
「乱ちゃーん!がんばてっやー!」
「ここでゴールを入れたら、スターあるぞ!」
フリースローを投げるコートの位置に立ち、ボールを持ってじっと動かない乱馬。
そんな乱馬に声援を送る、右京やシャンプー。そしてレギュラーメンバーやベンチサイド。
乱馬はその声援を受けながら、じっとボールを打つタイミングをうかがっているかのようだ。
「・・・」
あたしは、何も言わずにじっと、その乱馬を見つめている。
・・・少し前、体育館であたしがフリースローの練習をしていた時フラリと現れた乱馬は、いとも簡単にゴールを奪った。
その乱馬のことを良牙君が、「あいつは無駄にシュートが上手いんです」って、説明してくれたっけ。
でも、乱馬だって一応普通の男の子だ。
こんな風にわりと大きな試合会場で、しかも春季リーグの決勝戦。
どんなにシュートが上手くたって、皆が見守る中、全く緊張しないで打てるはずがない。
それに、これを入れれば多分ゲームの流れは完全にうちの方に流れてそのまま勝てるだろうし。
外せば、そこでもしかしたら雰囲気が変わってしまうかもしれない。
結構大きな分岐点のシュートであることは確かだ。
「・・・」
乱馬は、じっとボール見つめて深呼吸をしている。
そんな乱馬へ送られる声援は、体育館の窓がびりびりと震えるほど大きくなっていた。
さすがは、春季リーグの決勝戦だ。
「乱ちゃーん!」
「早乙女くーん!」
「乱馬、頼むぞー!」
右京たちと、男子部員、そして乱馬を知っているらしい他の学校のバスケ部員達。
青稜学園高校の生徒達は、乱馬に見えないプレッシャーを与えるがごとくフォーメーションをがっちりとってその場で乱馬を見つめている。
「・・・」
・・・お姉ちゃん、乱馬を応援してあげて?
きっと今、乱馬の奴いっちょまえに緊張してドキドキして、落ち着かないんだと思うの。
お姉ちゃん、きっとお姉ちゃんが応援してくれれば乱馬も・・・
「・・・」
あたしはそんな願いをこめて観客席を見回すも、お姉ちゃんの姿はない。
「・・・」
肝心なときに、どうしたんだろう?どこかで、見ているのかな?
あたしはそんな事を思いながら再びコートに視線を戻し、ボールを持ったまま動かない乱馬を見た。



と。


「・・・」
乱馬と、なぜか目が合った。
目が合った乱馬は、小難しい顔をしてあたしに向かって口を動かしている。
「え?」
何か、言っているみたいだ。
周りの声援がうるさすぎて、乱馬の声までは聞こえない。
でも、何かをあたしに向かって言っていることは確かなので、あたしは必死にその口の動きを読み取る。
乱馬は、五回ゆっくりと唇を動かしていた。
一回目であたしがそれを読み取れなくて首をかしげると、乱馬は更に小難しい顔になりもう一度同じ動きをあたしにする。
・・・えーと?
母音で「お」「う」「え」、でしょ?
あとは口をつぐんだから「ん」?かな。そして「あ」。
「お」「う」「え」「ん」・・・応援?
最後は「あ」の母音を持つ言葉・・・あ、もしかして「応援は?」って言っているのかな。
それってあたしに応援をしろってこと?
「・・・」
あたしが、自分を指差しながら乱馬を見ると、乱馬は今度は違う単語をあたしに伝えるべく口を動かした。
えーと、今度は・・・「い」「お」「え」「あ」「い」って母音かな?
いおえあい、いおえあい・・・あ!「聞こえない」って言ってるんだ。
・・・中学のときの春季リーグで、「俺を応援する声が小さい」って文句をつけてあの時もあたしに自分の応援をさせた乱馬。
今日はお姉ちゃんが応援しているからいいんじゃないの・・・あたし、そう思っていたのに。
こんな状況でも、乱馬、あたしの声が聞こえないと文句を言うんだ。
お姉ちゃんじゃ、言いづらいのかな。それとも、会場にいないこと、知ってるから?
・・・
あたしは、「応援は?聞こえない」といった乱馬に一度頷いた。
そして、
「乱馬ー!えっと・・・」
なんて応援したらいいんだろう・・・そんな簡単な事が一瞬分からなくなるあたし。
「乱馬・・・頑張れ・・・頑張れー!」
ようやく、簡単だけど精一杯の気持ちを表現する言葉を見つけたあたしは、
皆が乱馬に声援を送るその大音量の中、一生懸命、乱馬に聞こえるように声を張った。
すると乱馬は、そんなあたしに向かって一瞬だけ・・・にやりと笑って見せた。
「・・・」
あたしが「え?」という顔をすると、乱馬はあたしから顔を背け再びゴールをじっと見つめる。
「ん?乱ちゃん、今笑ってなかった?」
そんな乱馬の不敵な笑みに、あたしだけでなく右京も気がついたようだった。
「・・・そうね」
何だろう、今の不気味な笑顔は。
あたしがそんな乱馬を見守っていると、
「・・・」
乱馬は一度、大きく深呼吸をした。そして・・・
シュッ・・・
茶色のバスケットボールを、ゆっくりと遠くのゴール向かって、投げた。
会場は、水を打ったようにシーン・・・となった。
茶色のボールは、緩やかな弧を描いてゴールネット目指して飛んでいく。
スローモーションがかかったように、今この場にいる全ての人間の目線を独占したボールは、ゴールネットへと徐々に近づいていく。
そして、バン!・・・と大きな音を立ててゴールネットとゴールリングをくっつけている板へと当たると、
ザンッ・・・
そのまま直下、まるで吸い寄せられるようにゴールへと沈んでいった。
ボン・・・ボンボン・・・
ゴールをすり抜けたボールは、ゆっくりと床へ落ちバウンドして転がった。
ピー!
・・・一瞬静かな空間があり、その後主審がスリーポイントを認めるホイッスルを吹く。
「やったー!」
「でかしたー!」
「すごい!乱ちゃん、すごいやーん!」
メンバー達は、乱馬に抱きついたりもみくちゃにして喜び、ベンチでは歓声に沸く面々。
今にも飛び出していきそうなメンバーを、あかりさんもうれしそうな顔をしながらせき止めるのがやっとだ。
青稜学園高校のメンバーは、がっかりした表情で落胆ムード。
「まだ終わってねえだろ!」
キャプテンの真之介くんが必死に皆を励ますも、「やられたなあ」という表情は隠せない。
「・・・」
良かった・・・あたしも皆と一緒に抱き合って喜んだりはしないけれど、ほっとしたような表情で乱馬を見つめた。
そのまま試合が再開したからそれ以上乱馬と言葉を交わすことはなかったけれど、
結局このシュート成功が更なる風林館高校の快進撃の引き金となり、
128対70で、この春季リーグ男子の部は我が風林館高校男子部が見事優勝をした。
そして、恐らくこのシュートを決めたことと全体的に目立つ活躍をしていたことから、乱馬が男子の部のMVPプレーヤーを受賞するのではないかと噂になった。
あかりさん曰く、同じことを男バスの顧問の先生もベンチで呟いていたそうだから、まず間違いないだろう。
中学三年、高校一年と連続で受賞する選手はそうめったにいないし、乱馬としてもそうなったら嬉しいのではないだろうか?
・・・
「お疲れー!」
「お疲れ様ー!」
・・・試合後、盛り上がるベンチサイドに試合をしていたレギュラーメンバーが戻ってきて、皆がそれぞれの選手をとり囲んでワイワイとはじめた。
あたしはその中へと入らずに外まきからそれを眺めていた。
すると、
「おい!」
皆に一番囲まれてワイワイとされていた乱馬が、その波を抜けてわざわざあたしのところへとやってきた。
ただ、晴れて優勝、晴れて恐らく今年のMVP間違いなしだとされているにも拘らず、何だか不満そうな顔をしている。
「あ・・・お、おめでとう」
あたしが慌てて乱馬に祝辞を述べると、
「おせーんだよ」
「は?」
「ずっと前に、言っただろ。俺を応援する声が小さいって。学習能力がねえのか、お前は」
乱馬は妙に偉そうな口調でそういって、自分が汗を拭いていたタオルをわざわざ、汗を掻いていないあたしのきれいな髪の上にかぶせた。
「・・・」
やっぱり乱馬も、中学三年の時のあのこと、覚えていたんだ・・・それは不思議に思いつつ、
「いやーっ汗くさいっ」
あたしには、それよりも頭にかぶせられたタオルが気になって気になって仕方がない。
「応援が遅い罰だね」
「な、何で罰なんて受けなくちゃいけないのよ!大体あたしの声なんて、みんなの中に混じっていたら分からな・・・」
「分かるの」
「え?」
「分かるんだよ、声。だから、俺が催促するまでちゃんと応援しなかった罰だ。ま、俺のありがたーい汗でも被って午後の試合はがんばってくれよ」
乱馬はそういうと、嫌がるあたしの頭に自分のタオルをこすりつけるようにそう呟いた。
「きーたーなーい!」
「汚くねえ!俺の汗は清々しさや清涼感八割で構成されているだぞっ」
「後の二割は?」
「下心」
「そんな汗いやー!」
「わがまま言うな!」
あたしと乱馬はそんなやり取りをしながらタオルを押し付けあっている。








・・・お姉ちゃん。
どうして、さっきの試合見ていなかったの?
あたし、応援しちゃったよ?
お姉ちゃんの応援じゃなくても、乱馬・・・がんばっちゃったよ?
あたしの声、聞こえるって。聞こえたからがんばったって・・・言ってるんだよね?乱馬。
お姉ちゃんの彼、になるんでしょ?
その人が、こんなこと、たとえお姉ちゃんの妹でも・・・あたしにそう言っているんだよ?
・・・お姉ちゃん。
あたし・・・これじゃ困るよ。
これじゃまた、望みがないのに期待を・・・
・・・





「ありがたくこのタオルを受け取れ!」
「嫌よ、汚いっ」
「汚くねえっ」
…顔は笑っていても、
こんなにそばにいても・・・実はお互い別の人を見ているだなんて。
こうやって久しぶりにじゃれあったり話すのは楽しいけれど、胸の中は複雑だ。
あたしはそんな複雑な胸のうちを乱馬に悟られないよう努力しながら、そんな事を考えていた。












そして午後、今度はあたし達女バスが春季リーグへと挑んでいくわけだけれど、
この午後が終ればあたし達の試合の命運だけでなく、
複雑にもつれこんだあたしの恋の行方まで決着がつくことになるとは、この時のあたしは思いもしなかった。

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