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FBC2 7

窓の外は、まるでバケツをひっくり返したような雨。
隣の家の屋根さえも、見ることができないほどだ。
ガラスを容赦なくたたきつける水音は、部屋の中で何も言わずに向かい合っているあたしと、そして乱馬の呼吸の音さえも消し去ってしまいそうだ。
でも、シーンとしている空間に身を委ねるよりも、こうやって何かの音にあたしたちの沈黙が紛らわされるのならばそれはそれでうれしい。今日ばかりは、この荒れ狂う雨を歓迎しようとあたしは思っていた。
・・・






「真之介には触れさせたくせに」
あたしに触れることを拒まれた乱馬は、そういったまま黙っている。
もっと他に、何かを言いたそうな顔をしていた。
でも、乱馬が何を言いたいのかあたしにはわからない。
「…あたしは別に真之介君に触れさせてなんてないもん」
あたしは、そんな乱馬に背を向けて頭の上から被っていたタオルを取った。
ようやく口を開くことができたら、そんなかわいくない言葉。
これではまた、乱馬に嫌われてしまいそうだ。
しかも、乱馬のことを意識しているせいか顔がほてったように熱くなっていた。
あたしはそれを気づかれないようにと乱馬から目線をそらし、そしてタオルを机の上に広げて置くと、
「真之介君とは一緒に出かけただけだもん」
「何で一緒に出かけるんだよ」
「何でそんなこと乱馬に言わなくちゃいけないのよ」
「何で隠すんだよ」
「隠してなんか…あたしがどこで、誰と何をしようと乱馬には関係ないじゃない」
あたしはそういって、きゅっと唇をつぐんだ。
…自分は、なびきお姉ちゃんとコソコソデートしているくせに。
何よ、それなのになんであたしのことも気にしたりするの?
自分は、あたしには何も言わないくせに…それなのに何で。
あたしが俯きながらそんなことを思っていると、
「…何かされたのか?」
背中越しに、乱馬の声が聞こえてきた。でも、あたしが思っているよりもだいぶ近いところで聞こえたような気がした。
「え?」
あたしがふっと後ろを振り返ると、
「ひゃっ…」
思わずそんな声を上げてしまったほど、乱馬はあたしのそばにいた。
二の腕ひとつ分は離れていたはずなのに、今のあたしと乱馬の距離は、こぶしひとつあるかないか。
「な、何よ…」
いくら幼馴染といえど、おんぶとか悪巧みでヒソヒソ話とか…そういうのをする時以外に、これほど顔を近づけたことはない。
「…」
乱馬は、あたしのそばに立ってじっと、あたしの顔を見ていた。
何か…言いたそうな顔。何か、苦しそうな顔。
「な、何…」
あたしは思わず後ずさりをした。でも後ずさりをしたらその分乱馬が一歩、あたしに近寄ってきた。
そして、
「…」
乱馬はじっとあたしの顔を見つめた後、次の瞬間そのまま顔を近づけてきた。
「えっ…ちょっ…」
…ま、まさか!何!?こ、これってもしかして…
「っ…」
思いもしない展開に、あたしは思わずぎゅっと目をつぶる。
体を近づけて、顔も近づけてってことは…もしかしなくてももしかして?
で、でも何で乱馬が!?乱馬があたしに…キスしようとしている?
目は閉じたもののパニックを起こして頭にカッと血が上ったあたしは、顔を近づけてきた乱馬に何もすることもできずにただ、その場に立っている。
何で、どうして、何で乱馬が…あたしに?
声を出すことができない分、あたしの胸も頭も大混乱だ。
キスなんてしたこともないし、まさか初めての相手が…ええ?!
やだ…やだ、どうしよう。
違う、嫌じゃないけど…どうしよう。乱馬はお姉ちゃんが好きなはずなのに、何であたしと…

微かに震える体を感じながら、あたしはそんなことを思っていた。




ところが。



…ゴスッ。
乱馬はそんなあたしにゆっくりと顔を近づけてきたはいいけれど、あたしの唇は奪わずにそのまま自分の額だけを、あたしの額へとぶつけた。
しかも、わざと若干強めにぶつけてきたが為に、小気味のいい音がはっきりと部屋の中にする。
「はうっ…」
思いもよらぬ衝撃に、あたしがフラリと体を後ろにそらしそうになると、
「熱!」
「は?」
「は?じゃねえよ!ったく、真之介なんかとフラフラ出掛けるからバチが当たったんだ」
乱馬はそういって、自分の頭突き…に等しい検温のせいでゆらゆらと揺れているあたしの腕をがしっと掴むと、
「いいから早く着替えてベッドに寝ろ!俺が氷もってきてやるからっ」
「へ?」
「寝ろっての!」
そういって、あたしの体をグイッと強引に引っ張って、ベッドの上へと座らせた。
そして、
「あの野郎、無駄に引っ付いて傘に入っていたわりにはあかねに熱なんて出させやがって!今度あったらただじゃおかねえ!」
とか何とかぶつぶつ言いながら、あたしの部屋から出て行った。もちろん窓からではなく、台所に氷を取りに行くために部屋のドアからだけれど。
「な、何…?」
予想もしなかった展開にしばらくボーっとしてしまったあたしだったけれど、とりあえず落ち着こうと、自分の額に手を当ててみた。
「…ホンとだ」
あたしの額から、どう考えても「温い」というよりは「熱い」温度が手に伝わる。
机の上にある鏡に手を伸ばし覗いてみると、なるほど…はっきりと顔も赤い。
そういえばさっき、「下を向いて俯いていたし、乱馬のことを意識しているから顔が赤い」なんて自分では思っていたけれど、
何だ、物理的に熱があったのか、あたし。
しかも本人は気がつかないというのに。乱馬には分かったんだ。
ふーん・・・何でだろう。
・・・
それにしても、ただの熱を「恋の熱」と勘違いしたあたしはかなり恥ずかしい。
しかも、その熱をおでこで調べてくれようとした乱馬が、「あたしにキスしようとしているかも」と勘違いしたことがさらに恥ずかしい。
一体あたしは、何を考えているんだろう。

「はー…」
…カマをかければ失敗して、恥ずかしい勘違いばっかりして。あげくに雨に打たれて風邪引いて。
なんだか踏んだりけったりだ。
あたしは自分の間抜けさにほとほと嫌気を覚えつつも、そのうちあたしの頭を冷やすために氷を持って戻ってくる乱馬よりも早く着替えるべく、のろのろと濡れた制服に手をかけた。







「あ、あの…」
「なんだ」
「いや、なんだじゃなくて…もう大丈夫なんだけど…」
「気にするな」
「で、でも…」
…それから一時間後。
あたしは乱馬が指示したとおりにパジャマに着替え、ベッドに横になっていた。
乱馬が氷と一緒に持ってきた体温計で調べたところ、三十八度五分。なかなかの高熱だった。
とりあえず市販の解熱剤を飲みベッドに体を横たえたあたしに、乱馬は持ってきた氷を乗せてくれた。
枕にもアイスノンを強いてくれたり、雨戸を閉めて部屋を暖かくしてくれたり色々と気を使ってくれるのはありがたいのだけれど、
「…」
そうやってベッドで横になっているあたしの顔をじーっと見つめられながらすでに一時間も看病をされていると、なんだかありがたいけど居心地が悪い。
自分の好きな人にやけに凝視されながら闘病する姿ほど、なんだか気恥ずかしいものはない。
大体、熱で衰弱しているこの姿が色っぽいわけでもない。汗だってかいてるし顔だって赤いし。
しかもここ数日、ろくに会話もしていなかったし。余計に居心地が悪い。
乱馬は居心地、悪くなのかしら。まあ、居坐っているくらいだから悪くはないとは思うけど。
・・・
「・・・」
…ああ、そうか。
もしかしたら、乱馬はあたしのことをなんとも思っていないから、そんな姿を見てもどうとも思わないのかもしれない。
あたしが「恥ずかしいな」と思うようなそういう気持ち、もっていないって言う証拠なのかな。
もし熱を出したのがお姉ちゃんなら…お見舞いに部屋に来てくれるようなスタンス、取るだけかもしれないし。
こんな風に看病するなんて、やっぱり幼馴染、いや友達とか家族とか…むしろただの「病人」くらいのレベルでそんな風にあたしのことを見てるってことだ。
愛情ではなく、同情か・・・それに気がついたあたしは、なぜか複雑な気分になった。
「解熱剤も飲んだし、一晩ゆっくり眠れば明日には下がるだろ。春季リーグも近いのに、しっかりしろよな」
「ご、ごめん…」
「真之介の野郎には俺が厳しく言っておくから。あの野郎、ただじゃおかねえ!」
…そんなあたしの気持ちなんて知らないで、乱馬はそんなことをいいながらあたしの額においている氷を変えている。
「あ、あの…」
「なんだ」
「自分で氷とか変えられるから、もう平気だから・・・」
あたしはそう言って、あたしの額に氷を置いてくれた乱馬を見つめた。
病人を看病してくれるのはありがたいし、その気持ちは本当に嬉しいけれど、
照れてしまうのもあり、なんだか申し訳ないのもあり・・・あたしはそんな気持ちをこめて乱馬に言った。
でも乱馬は、
「そんなこと言ったって、お前不器用だし、寝ながら一人で氷を額に乗せるなんて芸当できねえじゃねえか」
「そ、そんなこと・・・」
「いいから。お前が眠るまでここにいるから。寝たら帰るから、勝手に」
そんな事を言って、定期的にあたしの額の氷を変えてくれている。
「・・・」
そんな乱馬をあたしが不思議そうに見つめていると、
「・・・」
乱馬は小さくため息をつきながら、そして何故かボソボソと小声で、自分を見つめているあたしの額を手で触れながらいった。
「だって・・・こうでもしなきゃ俺、触れねえじゃねえか」
「え?」
「真之介の野郎ばっかりに触らせんの、何か腹が立つ」
「・・・」
「・・・だから、お前は何も気にすんじゃねえよ。さっさと眠って早く熱下げろよ」
乱馬はそう言って、そっぽを向いてしまった。あたしはそんな乱馬の言葉を聞きながらそっと目を閉じ、乱馬の呟いた言葉の意味を辿った。
・・・こうでもしなきゃ触れないって、どういう意味なの?
それって、あたしに触れないって・・・ことだよね?
そういえば乱馬、あたしに額をぶつける前に、「真之介には触れさせたくせに」って言っていたっけ。
それって、真之介君の傘に入るのにあたし達が身体を寄せ合っていた事を言っているのかな。
あれ?何で乱馬はそれを知っているんだろう。
そうだ・・・確か交差点で真之介君と信号待ちをしている時、真之介君、何度か後ろを振り返っていたっけ。
もしかしてそれって、乱馬が後をつけてきたことに・・・気がついていたのかな?
・・・
何で、乱馬が後をつけてくるの?
何で、あたしと真之介君が一緒に傘に入っていることが気にいらないの?
だからって何で、乱馬があたしに「触れたい」って思うの?
「・・・お姉ちゃん」
「ん?」
「お姉ちゃんのこと、好きなくせに・・・」
・・・熱が上がって来たせいなのか、それとも目を閉じている内に乱馬が傍にいるままだということを忘れてしまったのか、あたしは心の中に思ったことを思わず口に出してしまった。
すると、
「・・・」
そんなあたしの額をペンペン、と何度か叩きつつ、乱馬がため息をついた。
そして、小さな声であたしに一言呟いた後、
「・・・ほら、もう寝ろよ。俺ももう帰るから」
そう言って、最後に一度氷を変えて額に置いてくれた。
あたしは小さく頷くと、氷に触れないように目の辺りまで蒲団をかぶった。
乱馬はうちの台所から持ってきた氷桶を抱え、ベッドの傍から立ち上がったようだった。
そして、今度は窓ではなく玄関から帰るべく部屋の入口へと歩いていったようだ。
・・・あたしは混乱する頭と熱のせいでボーっとする頭のせいでそのまますぐに眠りに落ちてしまったので、その後のことはよくわからないけれど、その後は、看病役が乱馬からなびきお姉ちゃん、そしてたまたま東風先生のところから帰ってきていたかすみお姉ちゃんへと変ったみたいだ。
おかげで翌朝起きた時には、
「良かったじゃないの熱が下がって」
「雨に濡れて帰ってくるなんて、ホントまぬけね」
と、熱も下がって一安心だった。
多分温かくして薬も飲んでよく眠ったのが一番だったんだろう。
自分でも、どの瞬間から眠ってしまていたのかわから無いほどだったわけで。
じゃあ、



「・・・違うよ」



・・・乱馬があたしの額を叩きながら小さな声でたった一言、そう呟いたのを聞いたような気がしたのは、気のせいだったのか。
熱にうなされながら夢でも見ていたのかな。
幻聴?それとも・・・
「・・・」
熱が下がってスッキリしたはずの頭の中が、昨日よりも更にごちゃごちゃになる。
とりあえず昨日の看病をしてくれたお礼だけは言わなくちゃ、と思いつつ、あたしは大きなため息をついた。

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