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FBC2 6

雨は時間がたつごとに強さを増していた。
練習場所の情報を提供するかわりに真之助くんとデートをすることになったあたしは、小さな折りたたみ傘に彼と身を寄せるように歩いていた。
デートとは言っても本格的なものじゃなくて、
あたしが新しく携帯電話を買うにあたり、一緒に行ってもらうようなそんなレベルだ。
だけど、東風先生と乱馬以外の男の人とこんな風に二人きりになる機会なんてないあたしには、こうやって体を寄り添わせて歩いたって、何を話していいのか分からないし何だか居心地が悪い。
大体、真之介君とバスケ以外の事で一体何を話したらいい?

「携帯はどこの会社のにするの?」
と。
不意に真之介君が話しかけてきた。
「え?あ…えっと…」
あたしははっと我に返り、お父さんが準備してくれた書類を真之助くんに見せる。
「ああ…この会社か。ここなら駅近くにお店があるよ」
「そうなんだ」
「俺のとは会社が違うから詳しくは説明してあげられないけど、でもうちの部の奴らが使ってるの知ってるし、オススメの機種とかはわかるよ」
真之介君はそういってにこりと微笑む。
優しくて、温かい笑顔だった。
「…」
お互い、実はあんまり良くお互いの事を知らない、しかも学校だって違うのに。
そんな相手と一緒にデートなんてして楽しいのだろうか。
真之介君の顔が優しければ優しいほど、あたしにはそれが不思議で仕方が無い。
「ねえ、真之介君…」
雨足がまた強くなり始めた、大きな交差点の信号待ち。
あたしは、傘を打つ雨の音に油断すると打ち消されてしまいそうな程小さな声で話し掛けた。
「ん?どうしたの?あかねちゃん」
あたしの小さな声を聞き取ろうと、真之介君が身を屈めた。
「あの…あのね…真之介君は、緊張しない?」
「緊張?何の?」
「だ、だってあたしと二人でその…」
デートなんて。あたしは最後は消え入りそうな程小さな声で呟いた。
すると真之介君は一瞬何かを考えたあと、
「緊張はしないよ。それより楽しいかな」
そう言って、微笑んだ
「楽しい…?」
あたしは首を傾げる。
「だってさ、あかねちゃんと二人きりで出掛けられるんだぜ?それだけでも楽しいじゃん」
「で、でもあたしの事も良く知らないのに…」
「俺は知ってたよ」
「え?」
「いつもアイツから聞いてた」
「アイツ…?」
「アイツって言ったらアイツだよ。俺があかねちゃんの傍に寄ろうとすると、保護者みたいに偉そうに、いつも割り込んでくるアイツ。早乙女乱馬」
「…そんなこと…」
「だからー、初めて河原で会えたときも嬉しかったし、それにね、聞いていた通りの子だって思った」
「聞いていた…通り?」
「そ」
真之介君はそう言いながら一瞬後ろを振り返った。
雨の雫が制服に垂れるのが気になるのか。
「あ、傘…」
あたしが気を使って傘を少し真之介君へ押し返し、後ろを振り返ろうとすると、
「あ、いいから」
「でも濡れちゃう…」
「平気」
真之介君はそう言って、あたしの視線を前に向かせ、ニッコリと微笑む。
そして、
「それよりさ…男ってのはさ…割りと計算高いんだぜ?」
先ほどまでの話題をまんまと上手く摩り替えてしまった。
本当はあの先を聞きたかったけれど、仕方がない。
「計算?」
あたしが改めて真之介君にそう尋ねると、
「男ってさ、何だかんだ言って女の子を誘う時っていうのは、その気があるときなんだよ」
「その気…?」
「賭けとか、ギブアンドテイクとか用事とかなんとか言ってても、要は好きだから誘いたいってこと。気の無い女の子とみすみすデートなんかしないってこと。だから俺があかねちゃんを誘ったのは、そういう気持ちがあるからってことで、楽しいわけだ」
真之介君はそう言ってまた笑う。
「好きだから誘う…」
あたしがその部分だけ言葉を繰り返すと、
「あ、うっかり言っちゃったけど・・・やべー、これじゃ俺、何か告白しちゃったみたいで恥ずかしいな」
真之介君は、少し困ったような顔をしてそう言った。
「もう、冗談ばっかり」
「いや、別に冗談でもないんだけど」
「色んな人にそんなこと言ってるんでしょ?もー」
「い、いやそういうわけじゃ…」
「あたしの緊張をほぐそうとしてくれて、真之介君ていい人ね」
乱馬とライバルの真之介君。でも、こういう女の子に対しての気の使い方は乱馬とは大違いだ。
あたしは何故か苦笑いの真之介君の心遣いに感謝しつつも、
真之介君の「好きだから誘いたい」というその言葉から、全く違う事を連想して黙り込む。




…男の子が女の子を誘う時って、その気がある時。
何だかんだ理由を言って誘っても、ただ好きだから一緒にいたいだけ。
真之介君はそう言った。
じゃあ…
じゃあ乱馬がなびきお姉ちゃんを誘ったのはやっぱり…?
好きだから、なんだかんだ理由をつけて誘ったのかな。
皆に気付かれないようにわざわざ裏門で待ち合わせなんてして、夕方…




全て、つじつまがあう。
乱馬はお姉ちゃんが好き。それが立証されたって事じゃないの。





「…」
「…あかねちゃん?どうしたの?」
あたしがぼんやりとそんな事を考えていると、そんなあたしの顔を真之介君が覗き込んだ。
「あ…ううん、何でもない。大丈夫」
あたしは慌てて我に返ると、
「それより、本当に今日は付き合ってくれてありがとう。あたし、携帯のこととかよく分からないから、すごく助かるわ」
「今日だけじゃなくても、いつでも付き合うよ」
「またまた、もう冗談ばっかり」
「い、いやホントに冗談てわけじゃ…」
「真之介君、優しいね」
何故か腑に落ちないような表情をしている真之介君に御礼を言って、再び道を歩きだした。
雨は先程よりも更に強くなり、真之介君の傘だけでは防げないほどあたしの身体を濡らしていた。
視界を遮るようなその激しい雨はまるで、あたしの心の中にある、自分ではよく分からない感情を表しているような気がした。
…よく分からない?
ううん、それは嘘だ。
お姉ちゃんと乱馬の関係を認めなくちゃいけないって改めて思った今、その感情の正体はあたしにははっきりと分かっている。
あたしは、悲しいんだ。あたしは、寂しいんだ。そしてあたしは…
「…」
…また、好きな人とは結ばれないんだ。
ああ、そうか。あたし…




乱馬の事、好きだったんだ。




…バカみたい、あたし。
前はずっと、乱馬と右京をくっつけようと頑張っていたくせに。
早く乱馬にも彼女が出来れば良いのに、何て思っていたくせに。
なのに、
なのにこんな状況になって、ようやくその気持ちに気付いてしまうだなんて。
しかも乱馬は、お姉ちゃんのことが好きだというのに。お姉ちゃんだって、きっと…
「…」
…東風先生の時は、先生とお姉ちゃんを応援したじゃない。
二人お似合いだからって、そう思うようにしたじゃない。
だったら今度も、お姉ちゃんと乱馬はお似合いだからって思えば良いじゃない。
なのに何で?
何でこんなに…考えるだけで胸が苦しくなるの?
「…」
降りしきる雨では、この複雑な気持ちは拭えない。
雨に濡れ冷たくなる体一杯でそんな事を感じながら、あたしは再び真之介君と歩きだした。













「ちょっとあかね!あんたこんなびしょ濡れになって何やってたのよ、こんな時間まで!」
…それから一時間後。時刻は既に、午後七時を回っていた。
携帯ショップで携帯電話を作ったあたしは、家まで送るといってくれた真之介君の気持ちだけを貰う事にして、最寄駅で彼と別れた。
そして、濡れた身体に傘なんて差すのは無意味だとばかりに、雨の中を走って家まで帰ってきた。
勿論、新しく作った携帯電話は濡らさないように制服で守って、だ。
「傘忘れたの?何でコンビニで買わなかったのよ」
「なんとなく…」
「とりあえずお風呂にでも入ったら?風邪引くわよ」
なびきお姉ちゃんは、玄関でぬれねずみになっているあたしに、ふかふかの白いタオルを持ってきてくれた。
お姉ちゃんにしては珍しい気の回し様だ。
あたしがそんな事を思いつつ、荷物を玄関に置いて身体を拭いていると、
「あら?ああ、あんた携帯を作りにいってたのね?」
お姉ちゃんは、あたしが下に置いた荷物の中に携帯電話ショップの紙袋があることに気が付いたようだった。
「う、うん…」
あたしが小さな声でそれに答えると、
「あとで番号教えなさいよ。登録しておくから」
「う、うん…」
「メールアドレスはもう決めたの?」
「ううん…」
「決める時はちゃんと考えた方が良いわよー。人に教えるのに、恥かしくなるようなアドレスだと後々苦労するから。それに…」
お姉ちゃんはあたしに携帯電話に関するアドバイスをアレコレとし、
「ま、あたしに教えてくれるのは、友達に教えた後で構わないから」
と言いながらさっさと家の奥へと入っていってしまった。
あたしはノロノロと身体を拭いて、濡れた荷物を持ったまままずは部屋に行った。
そして、必死で濡れないようにと守ってきた携帯電話ショップの袋を開けて中身を取り出す。
…今はやりの、少し薄めのタイプの折畳式携帯電話。やたらと分厚い説明書がくっ付いている。
元々機械に疎いから、説明書を読んだ所で使いこなせるかどうかは分からない。
第一、そんなに自分が使うようになるとは思えない。
そう、携帯電話を欲しがったのだって、本当は乱馬の…
「…」
…乱馬の携帯電話の番号を知りたかっただけだったから。
携帯電話を買うって言ったら教えてくれるかなと思ってカマをかけたら、あっさりとかわされてしまった。
ということは、電話を買おうが買わまいが、乱馬はあたしに番号を教えてくれる気持ちがないってことだ。
「…」
お姉ちゃんに対しては恋心。あたしには…友達以下?
お姉ちゃんに対する恋心が素直に表現できるようになったら、なんだか乱馬が急に…遠くなってしまったような気がした。
…あたしが携帯電話なんて持っていたって、何が変るわけでもないのに・・・

「…」
あたしはまだピカピカの携帯電話を手に握り締め、そんな事を思いながらため息をついた。
と、その時だった。
ゴンゴンゴンッ…
「!?」
不意に、カーテンの閉まっている窓ガラスの向こう側から、ガラスを叩く音がした。
外は豪雨だ。まさか風も強くなったりして、木の枝でも飛んできたのだろうか?
「危ないなあ…」
あたしはとりあえず携帯電話を机の上におき、とりあえず窓際まで行き、カーテンを開けてみた。
すると、
「え!?ちょ…何やってんのよ!」
「…」
…窓ガラスの向こう側。大雨の降りかかるベランダに、何故か機嫌の悪そうな乱馬が立っていた。
「濡れちゃうっ…い、今開けるから…」
濡れるのが嫌で機嫌が悪いのなら玄関から来れば良いのに…と、心の中で思いつつ、あたしは慌てて窓を開けた。
「…」
乱馬は何も言わずに部屋の中に入ってくると、あたしの事をじっと見ている。
「な、何よ…」
さっきまで乱馬の事を考えていたこともあって、なんだかこうして対面しても、今まで見たいに気軽に話なんか出来ない。
動揺しているのを悟られないようにしつつ、あたしが窓を再び閉めながら乱馬を見ると、
「…」
乱馬はあたしと向かい合うように立つと、あたしが手に持っていた白いタオルをさっと取り上げた。
そして、そのタオルをあたしの頭の上にバサッと掛けると、
「今帰ってきたのか?」
タオルの上からあたしの頭を手で押さえるように、そんな事を尋ねた。
「べ、別に関係ないじゃない…」
「あたしがその手から逃れようと首を振ると、
「…どこ行ってたんだよ」
乱馬はその手を離そうとはせずに、なぜかあたしにそう尋ねた。
もちろん、真之介君と一緒にデートもどきをしていたとは言えないあたしは、
「何でそんなこと、乱馬に話さなくちゃいけないの?」
「何で聞いちゃいけないんだよ」
「何でって…とにかく離して」
といって適当に誤魔化そう身を捩るも、
「…真之介とはあんなにくっついて傘、入ってたくせに」
「え…?」
「…俺が触るのは嫌なのかよ」
乱馬のその台詞を耳にした瞬間、あたしは思わずギョッと身を竦める。
「どうして…」
…真之介君とデートをする事は、誰にも黙っていたはずだったのに。
しかもどうして乱馬がそれを知ってるの?
それに…どうして?
たとえあたしと真之介君がデートしていたからって、どうして…乱馬があたしに触れようとするの?
「…」
お姉ちゃんのこと、好きなくせに。
自分だって、お姉ちゃんとコソコソデートしているくせに!
なのに、どうしてあたしの事なんて…

「…」
あたし達の間に、妙な緊張が流れた。
…窓の外では、依然として雨が降り注いでいた。
雨が絶えずガラス窓を叩きつける中、あたしと乱馬は何も言わず部屋の中で向かい合っていた。

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