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FBC2 5

翌日。


「へー?今日は男子が体育館を使うんだ?」
「いいご身分あるな」
「さすが県下の強豪チームは扱いが違いますわね」
「まあ、仕方がないわよ…急に決まったみたいだし。あたし達も早くそうなるように頑張ろう。はーい、イーッチニ、サーンシ…」
昨日の乱馬からの伝言を部の皆に伝えたあたしは、若干不満そうな部の面々を引き連れて、体育館の外で準備体操の号令をかけていた。
「それにしても、試合前に体育館を追い出されるっちゅーのはイタイなあ。今日は東風先生もおらんのやろ?」
ストレッチで身体をぐん、と後ろへ反らせながら右京がぼやく。
「うん。だから、あたし達は自主練で、屋外のバスケットコートを使うことになるわね」
あたしも右京と同じ様に身体を反らしながら答えると、
「…あかね、今日の天気知っているあるか?」
「え?さあ…」
「夕方から降水確率80%あるぞ…基礎トレーニングを終えた辺りまで天気が持てばいいあるが」
その横で、屈伸運動をしながらシャンプーがぼやいた。
「ええ!?」
あたしが慌てて空を見上げると…なるほど、空は不吉なくらい鉛色で重々しい雲を一面に侍らしている。
確かにシャンプーがいうように、あたし達が準備運動とランニングを終える頃までその天気が持つかどうか微妙な所だ。
時折あたし達の間を通り抜ける風が、どことなくしっとりと肌にまとわりつき、雨特有の匂いを運んでくるのも気になるところだ。
「雨が降ったら、私達は練習、どうするあるか?」
「そ、そうね…」
「うちらだって、春季リーグ近いんやし…やっぱりフォーメーションの練習とかしたいやん」
「そうね…」
雨が降ったら、外のコートは使えない。
かといって、体育館の中では練習できない。見学なんて勿体無いし…

「うーん…」
キャプテンとして、何とか練習場を確保せねば。
「…」
今にも崩れそうな空を睨みつけ、あたしが思わず唸り声を上げていた、ちょうどその時だった。
「あかねちゃん!」
…空を睨んでいるあたしの背後から、聞き覚えのある男子の声がした。
「ん?」
あかねちゃん、何てあたしのことを呼ぶ人は、今のところ二人しかいない。
一人は、東風先生。そしてもう一人は…
「合同練習の前に会えるなんて、何か今日はついてるなー!やっぱこっちの学校に場所が移動になってよかった」
「し、真之介君…え、じゃあ今日の男バスの練習相手って、真之介君の学校・・・?」
「そ。うちの都合でさ、急遽こっちでやらせてもらう事になったんだけどね」
以前にあたし達が合同練習と練習試合をして大敗を記した青陵学園高校の、男バスキャプテン・真之介君だった。
あたし達より一年先輩で、そして県下では乱馬とも好敵手である。
「あいやあ、またお前か」
「今日の相手はあなた達でしたか」
真之介君の登場に、うちの面々も「どうも」なんて軽く会釈をする。が、
「やあ、君たちも久し振りだね。えーと、丸橋・轟・森下・服部・キャサリンだっけ?」
「だーかーら!加藤・林田・九能・久遠寺・シャンプーだって何度も言ってるやろ!」
…相変わらず自分達の名前を、しかも一文字も掠らず覚えていない真之介君にそう叫ぶも、
「まあまあ、伊集院さん。そんなに起こらないでサ」
「うちは久遠寺やって!全く、何であかねちゃんの名前はしっかり覚えてるのにうちらはそんなにゾンザイなん?」
「人の記憶力なんてそんなもんだって」
真之介君は右京の追及をさらりと上手くかわすと、
「ところで、どうしたの?空なんて見上げて」
「ああ、実は…」
あたしは、真之介君に練習場所を探している旨を話した。もちろんこれは家の学校の事情なんだから真之介君に愚痴をこぼしても仕方が無いかな、とはわかっていた。
ところが、
「練習場所が無いの?だったら、市民体育館に行ってみたら?」
「え?市民…体育館?」
「あそこさ、平日の午後だったら空いてると思うよ。屋内コートを借りるとお金がかかっちゃうけど、屋外…とはいっても、ルーフ屋根がついてるから雨も防げるし、そこだったら無料で解放しているはずだから」
「え、ほ、ホント!?」
「俺らも時々使うんだよ。間違いないよ」
真之介君はそう言って、笑った。
…そう、あたし達が住んでいる地区は広い。
だから、
真之介君の住んでいる場所とあたし達がいる場所は電車で行き来するような距離だけど、一応は同じ市の中に位置している。
公共の施設は、同じものも使えるのだ。
「それは良い考えあるな!市民体育館なら、ここからなら五分くらいでいけるある!」
「よっしゃ、あかねちゃん、そしたらもう最初からそこでやろ!」
「それがいいですわ」
真之介君から情報を得た右京達は、さっそく部室に戻りバックにボールやタオルを詰めて外へと歩いていく。
「あかね、あたしは一応男バスの先生に報告しておくね。東風先生いないから」
「うん、お願いね」
マネージャーのゆかが、とりあえずあたし達の居所を報告に一人、別方向へと向かう。
全く出来たマネージャーだ。
「真之介君、ありがとう」
あたしは、貴重な情報を提供してくれた真之介君に素直に頭を下げた。
「いやいや。困ったときはお互い様」
真之介君はそう言って、屈託の無い笑顔を浮かべる。
「本当に困ってたのよ、何て御礼を言ったらいいか」
あたしが更にそう付け加えると、
「ふーん…じゃあさ、お礼じゃなくてデートしてよ」
真之介君は、笑顔のままであたしにそう、言った。
「デート?」
「そ。今日の放課後、練習終ったら。何か用事、あるの?」
「今日…あの、携帯電話を買いに行こうと思って…」
「じゃあ、一緒に行こうよ。これならさ、ギブアンドテイクだろ?」
「う、うん…」
「じゃ、練習終ったら、門の所で待ち合わせね」
真之介君は、笑顔のままであたしにそう言って、ぽんぽん、と軽く頭を叩き…体育館の方へと去っていった。
…ギブアンドテイク、か。
ギブアンドテイクでデートとは、それで本当にチャラになるのかしら?
真之介君、あたしとデートなんてして楽しいのかなあ?
ま、こっちの町で遊ぶ分には、あの真之介君の学校の女バスのキャプテンにはばれないんだろうけど…。
あ、ばれるって言いかたはおかしいか。
二人は確か付き合っているわけじゃなくて、向うの女の子のほうが片思いしているみたいだし。

「…」
デート、か。
何か成り行きでこうなっちゃったけど、そういえばあたし、乱馬以外の男の人と二人で遊んだ事、ないかも。
た、例えつけ刃の条件でするデートとしても、何か緊張しちゃうなあ。

「…あかねー!何やってんの、早く行くよー!」
「あ、う、うん…」
いつの間にか報告を終えたゆかが、校門の所でまだ出発もせずぼーっとしているあたしに向かって手を振って叫んでいた。
あたしは慌てて気持ちを切り替えると、
「今行くー!」
まずは練習に集中すべく、荷物を急いで詰めて、ゆかの元へと走っていった。





「集合ー!整備体操後、解散!」
…約、二時間後。あたし達が市民体育館で練習を終え、小雨の降る中急いで学校の体育館に戻ってくると、真之介君達と合同練習をしていた男子バスケ部が、ちょうど練習後の体操をしている所だった。
みると、良牙君も乱馬も、肩で息をしながら真っ赤な顔で体操をしている。
いや、その二人だけではなく、他の面々も時折汗を拭いながら、体操で息を整えるのに必死だ。
端っこを通るだけなのに、ムワー、とした熱気が残る館内。
男子バスケ部の荷物をかたずけているマネージャーのあかりさんでさえも、額に汗を掻いてしきりに拭っている。
随分と熱の篭った練習だったこと、間違いない。
「あー、何かくやしいなあ。うちらかて今度、体育館貸しきろうなあ」
「そのためにも春季リーグ、勝ち抜かないといけないね」
体育館の隅を通って部室へと向かう最中、右京とシャンプーがそんなことをぼやいていた。
「そうね…」
もちろんあたしもそれに対して相槌を打つけれど、でも今のあたしの頭の中にはもっと別の事がこう、充満していた。
…そう。
練習が終ったという事は、あたしと真之介君のデートの時間が近づいてきたという事だ。
「あー、うち傘持ってこなかったわ!」
「あいやあ、なんたることか」
「そういうシャンプーは持ってるん?」
「私は用意周到ある」
「私は、召使が迎えに来ることになっていますわ」
「右京、私が途中まで入れていってあげるわよ」
「あー、さゆりありがとうなあ」
他のメンバーは、傘の有無だとかどうやって帰るとかそんな話を着替えながらしている。
「あかねちゃんは?」
「え?あ、な、何が?」
「もー、傘の話してたんやろ?あかねちゃんは傘、持ってきたん?」
「あ、ううん…」
なので、突然話を振られても全く会話についていけなくて困るわけで。
あたしが慌てて首を振ると、
「まあ、乱ちゃんが持ってたら入れてもらえばええだけの話やね」
右京は「羨ましいなあ」と、あたしの肩をポンポンと叩きながら笑った。
「…」
…でもあたし、今は乱馬と一緒にいると何だか心苦しいし、それに今からあたしは…。
「…あたし、先に帰るね」
「え?まだ男バス着替え終わってないんちゃう?乱ちゃんもまだ…」
「あー…うん、そうかもね。でもいいの、うん…それじゃあ…」
あたしは適当に右京達の質問をかわすと、部室を出た。
そして、真之介君と約束した校門のところへ向かうべく、玄関口へと続く廊下を歩く。
…ああ、どうしよう。何だか急に緊張してきちゃった。
今日、雨だし…あ、日を改めてもらうってのはどうかなあ。
こんな雨の日に連れまわしちゃうのも悪いし…
「…」
門へ向かうあたしは、いつの間にかデートを断る方向に持っていこうと必死だ。
別に真之介君が嫌いなわけじゃないけど、何か緊張するし、心の準備も出来ていないし…
「…」
ふと立ち止まり、すぐそこまで見えてきた入口から雨に濡れる校門を眺める。
…とそこへ、
「あかねちゃん、お待たせ!」
「し、真之介君っ…」
「待たせちゃってごめんね、さ、行こうか」
きっと、急いで着替えて飛び出てきたのだろう。
少しだけ肩で息をしながら、真之介君が廊下を走ってきてあたしへと追いついた。
「あ、あの…真之介君、雨…」
雨が降っているし、今日はやめない?…あたしは何とかそう切り出そうと真之介君に話し掛けるも、
「大丈夫、俺、折りたたみの傘持ってきたから」
真之介君は笑顔でそう言うと、鞄の中から折りたたみの傘を取り出し、広げた。
彼は、意外にマメな人間らしい。
そして、
「さ、行こう」
「あ、う、うん…」
「くっつかないと濡れちゃうから…」
何だか歯切れの悪いままのあたしの態度などもろともせず、真之介君は何故か一度、校舎の中を振り返った。
「どうしたの?」
何かあったのかな?あたしも思わず振り返ろうとしたけれど、
「何でもないよ、さ、行こう」
真之介君は笑顔であたしの視線を前方へと誘導すると、傘に入ったあたしの肩をぐっと、抱いた。
そして、普通の傘よりも少しだけ幅の狭いその空間に二人して身を寄せるように歩きだした。



あたしと真之介君の目の前は、降り止む事のない雨。
狭い傘幅に収まるように寄せられた、身体。
そして、そんなあたし達の姿に校舎の廊下の向うで気が付き、玄関まで追ってきていた・・・乱馬。
降り止む事のない雨は、あたし達の行く末をまるで暗示するかのように、冷たくそして乱暴に地面を打ち付けていた。

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