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FBC2 4

「あかねー、お前携帯電話が欲しいんだって?お父さんちーっとも知らなかったよー」

その日の夜。部活を終えて家に帰ったあたしに、なびきお姉ちゃんから話を聞いていたのか、お父さんがそんなことを言いながら近寄ってきた。
近くに行われる春季リーグの為の練習で疲れているのと、すぐにシャワーで汗を流したかったのと、昼間の事で頭の中が一杯のあたしは、
「別に…」
「なびきが書類を貰ってきてくれたみたいだから、お父さんそれ署名しておいたよ。お金と一緒にこの封筒に入ってるからね」
「そう…」
「なびきが持っているんだから、あかねも欲しいのは当たり前だよなあ…お父さん、気付くの遅くてごめんな」
と、お父さんから書類とお金の入った封筒を半分上の空で受け取り、そのまま自分の部屋に向かった。
そして、荷物をドサドサと床の上に投げ捨てて、ベッドの上に身を横たえ天井を見上げる。
…別にあたしは、携帯なんて欲しくない。
携帯よりも、欲しかった物があった。でもそれは、あたしの手には入らないものだった。
だから、こんな風に書類とかお金とか貰っても、何だか全然嬉しくない。
せっかく、お父さんが用意してくれたのに…
「…」
寝転んだベッドの上で、あたしはお父さんが用意してくれた封筒をじっと見つめていた。
…きっとあたしが携帯を持ったところで、何も変らない。
乱馬は自分からあたしに番号とか教えてくれることは無いだろうし、こんな状況じゃあたしから乱馬に話すことなんて、ない。
こういうのって、人伝に教えてもらったり教えたりするのはおかしいし…あたしの友達はまだ、携帯を持っているこの方が少ないし。
持っていても、宝の持ち腐れになりそうな気もする…
「はあ…」
何だか、口から出るのはため息ばかりだ。
あたしは、封筒をひっくり返したり電気で透かしたりしながら何度も何度も、ため息をついていた。
と、その時。
カツン…
不意に、カーテンの閉まっている窓の向こう側で、何かがぶつかる音がした。
「ん…?」
音がした窓の向こうは、ベランダだ。
ベランダに洗濯物でも干していたっけ…?それが窓に当たったのかしら。
あたしはノソノソとベッドから身体を起こし、窓にかかっているカーテンをサっ…とひいた。
すると、
「っ…」
ドン、ドン
窓の向こうで、もう一度ガラスを叩く音がした。
ガラスの向う、ベランダで、「ここを開けろ」とばかりにブスッとした表情で立っている人物がいる。
乱馬だ。
どうやら、自分の部屋のベランダからあたしの部屋のベランダまで飛び越えてきたらしい。
「な、何よっ…」
その姿を確認して、目があってしまった以上、ガラス戸を開けないわけには行かない。
何だかいつも以上にドキドキする胸を隠しながら、あたしはガラス戸の鍵を開けて乱馬に声をかけた。
「よ、用があるなら玄関から来れば良いじゃないっ」
あたしがそんな不安定な心を誤魔化すように強気な口調で乱馬に叫ぶと、
「コッチの方が早いから」
乱馬はそんなことを言いながら、勝手にあたしの部屋に入り、ベッドにどかっと座った。
「ちょっとちょっとっ…」
あたしが慌てて窓を閉め、ベッドに座った乱馬を床に降ろそうと近寄ると、
「…練習」
「え?」
「春季リーグが近いから、女バスも練習、ハードなんだろ?」
「え、あ、ま、まあ…」
「練習キツクて、もしかして疲れて寝てたのか?」
乱馬はそう言って、近寄って来たあたしの顔を見上げた。
何だか曇った表情だ。もしかして、心配でもしてくれているんだろうか。
「べ、別にそんなんじゃ…それに、疲れているのは男子も一緒でしょ」
そんな心遣いが嬉しいのと、でもその反面何だか複雑なのと…以前のあたしなら、「乱馬って優しいのね」なんて暢気に思っていたけれど、何だか今日は素直に喜べない自分がいた。
「…」
「…」
…会話が、途切れる。
いつもなら、くだらない話や部活の話や学校の話なんて、わざわざ探さなくたって沸いてくるというのに、今日は探しても探しても、会話が見つからない。
乱馬との会話って、こんなに難しかったっけ…?
あたしは内心焦っていた。
…と。
「明日…」
「えっ?」
「明日、男子バスケ部は春季リーグ前の練習試合で体育館を全面借り切ることになった」
「え、何でそんな急に…」
「本当は今週末、俺たちが向うに行く予定だったんだけど、向うが都合が悪くなって、それで急に」
「そうだったの」
「だから女バスは、外のバスケットコートを使って欲しいって。さっき、良牙から連絡があった」
乱馬はそう言って、黙り込んでいるあたしへと目線を移した。
「乱馬がキャプテンなのに、何で良牙君から?」
「マネージャーのあかりちゃんが顧問から伝言を受けて、それを俺に連絡するのに良牙を介したってことだろ。例えメールでも、あかりちゃんは良牙に気を使ってんだよ」
俺も良牙も、そこまで考えてはないんだけど…乱馬はそう言って、ちょっと笑っていた。
「メール…」
でもあたしは、もっと別の事が気にかかって、笑う気にはなれなかった。
メール…ああ、またメールの話題があたしの元に振りかかってきた。
良牙君も、あかりちゃんも知っている乱馬のメールアドレス。
なびきお姉ちゃんも知っている、乱馬のメールアドレス。
でもあたしは…
「…」
あたしがそんなことを考えながら黙り込んでいると、
「おい、何だよ急に黙り込んで」
「え?あ、べ、別に…」
「…だから、明日の練習場所、女バスの皆に伝えといてくれよ」
乱馬は「分ったか?」と言いながら、ベッドから立ち上がった。
そして、「じゃあな」と、すれ違いざまにあたしの頭をぽんと叩いて再び、ベランダの外へと出て行く。
…たったそれだけ伝える為に、わざわざベランダを飛び越えてきたの?
こんなの、明日学校で伝えてくれたっていいことだったのに。
何でわざわざ、あたしの部屋まで来るのよ。
ここ数日、乱馬とろくに話もしてなかったし、乱馬だってあたしに話し掛けづらかっただろうに…
「…」
…だから、なのかな?
あたしに何となく避けられていることが分ってるから、
何とかして話す機会を作ろうとして、わざわざ…?
「…」
何とも、自分に都合のいい解釈だ。
でも、乱馬がわざわざ今日、こうして部屋にきた理由がどうしてもぴんと来ないあたしは、そんなことを勝手に考えた。
そう考えると、何だか気持ちに歯止めが利かなくなる。
気が付いた時にあたしは、
「…乱馬っ」
…あれだけ会話に困ったり避けたりしていたくせに、自分でも無意識にそう叫んでいた。
「何だよ」
乱馬は、あたしの突然の叫び声に驚いたような表情で振り返る。
「あの…」
勢い良く叫んだにも関わらず、あたしはそう言ったきり黙りこんだ。
呼び止めたのはいいんだけど、どうしよう。
何を言ったら言いの?
メール…そう、メールのことを何か、乱馬に伝えなくちゃ。
簡単じゃない、「メールアドレス教えてよ」って、言えばいいのよあたしは。
「あ、あの…あの…」
それなのに、あたしの口から「メール」の「メ」の字も出てこない。
「はあ?何だよお前は、人を呼び止めて」
あたしの様子を、怪訝そうな顔で乱馬が見つめる。
「あの…あたし!」
「何だよ」
「あたし…だから、その…」
「だからなんだよ」
「あたし…あたし、携帯電話、買うの…」
…散々どもった挙げ句にあたしは、ようやく言葉を発した。
当り障りの無い、言葉だった。
メールアドレス教えてよ、を直接言えないあたしは、ちょっと遠回りをしてその話題に持っていこうと咄嗟に考えたのかも、しれない。
携帯を買うって事は、もちろん携帯のアドレスを持つということだ。
それならば乱馬とも立場は対等。
「あ、俺も携帯もってるんだ。じゃあ…」と、そんな展開になるかもしれない。
「…」
あたしは、ちらり、と乱馬の表情を伺った。
乱馬はそんなあたしの言葉に対し、何も言わない。
「明日、買いに行こうと思って…部活帰りに」
あたしは、乱馬の表情を伺いながら更にそう続ける。
すると、
「…そうか、良かったな。携帯は便利だぞ、持っていると」
しばらく黙って何かを考えていた乱馬が、不意に笑顔になりそう言うと、「じゃあな」とそのままベランダへ出て行ってしまった。
そして、自分の部屋へと再びジャンプして戻っていく。
「ら、乱馬っ…待って!」
…それだけ!?
あたしは慌てて乱馬を追ってベランダに飛び出すも、既に乱馬は自分の部屋へと戻ってしまったあと。
「…」
あたしは一人、ベランダで佇んでいる。

…乱馬の奴さっき、何か考えていた。
考えていたくせに、結局はぐらかした。
自分だって携帯持ってるって、教えてくれると思ったのに…


「…」
…はぐらかされちゃった。


そんなにあたしに教えるの、嫌なんだ…。
今まで、何でも秘密なんてなかった乱馬が。
お姉ちゃんと付き合うかもしれなくなったら、急に何にも話してくれなくなった。

携帯も教えてくれないなんて、もしかしてあたし、友達以下?
そんなにあたしには興味、無いの?

学校で話してくれてもいいことをわざわざ部屋に来て教えてくれる乱馬と、
携帯のアドレスや番号を絶対にあたしには明かさない乱馬と。
一体、どっちが本当の乱馬なんだろう。
あたしにはそれがわからない。
でも、
…少なくてもあたしの存在は、乱馬にとってはなびきお姉ちゃんよりも遠い存在なんだって。
それはよく、分かった。



「…」
あたしは無言のまま自分の部屋に戻ると、のろのろとカーテンを閉めそのままベッドへと突っ伏した。
勿論そんなあたしは、あたしの部屋の閉められたカーテン越しの窓ガラスを、
「…」
あたしの姿が消えたのを確認した後に、乱馬が窓から顔を出し見つめていた事なんて気がつかなかった。

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