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FBC2 3

「なあ、あかねちゃん」
「何?」
「乱ちゃんと喧嘩でもしてるん?」
「・・・」

お姉ちゃんと乱馬がどこかにコソコソと出かけた日から、三日。
あたしが乱馬に質問してからはぐらかされた日から三日が、過ぎた。

「もういい」
真実を聞くことを、あたしはそんな言葉で誤魔化した。

・・・何だか歯切れの悪い乱馬に、それ以上お姉ちゃんとの事は聞けず、聞こうともしなかったあたし。
結局それっきりあたしは、乱馬とも何を話していいのか分からなくなって、
翌日にたまたまクラスで席替えがあり席が離れた事をいいことに、会話すら交わさなくなった。
部活で同じ体育館を使っていても、すれ違っても挨拶すらしない。
乱馬があたしに話し掛けようとしているのは、分った。でも、そうさせないようにあたしは他の人と話をしたりして、「暇じゃないの」と言わんばかりのモーションを見せる。
たまたま部活終了の時間が同じになったとしても、「用事があるから」なんてとってつけた理由でわざわざ遠回りして帰ってみたり。
それは、こんな風に様子を見かねた右京が心配して声をかけてくるほど、周りからも露骨に見えているのだろう。


「…」


・・・別に、乱馬が悪い事をしたわけじゃない。
あいつは、ただ、自分の好きな人と楽しく時間を過ごしただけ。
お姉ちゃんと一緒に出かけて、お姉ちゃんと楽しく過ごしただけなんだ。
それに対してあたしが勝手に、辛くなったり苦しくなったりしているだけ。
こんなの、喧嘩にもなりはしない。あたしが、自分の心をもっともっと広くもてばいいだけの話なのだ。
そう、あたし次第なのに。

「・・・喧嘩なんてしてないわよ」
「そうなん?でもなーんか、おかしゅうない?あかねちゃん、乱ちゃん避けてるみたいやし…」
「…」
ただ・・・今までのあたしと乱馬の間柄から考えて、ここ数日のこの接触の無さは他の人にも異常に見えるのは仕方がないこと。
特に、乱馬のことを好きだった右京にしてみれば、余計に目に入るのだろう。
「何か、言いにくい事でもあるん?あ、もしかして何かされたとか?」
「別に・・・」
・・・何かされるどころか、あたしには何も無さ過ぎるのだ。
心の中でそう思えども、もちろんそんなこと、右京に言えるはずも無い。
お姉ちゃんと乱馬が付き合い始めるかもしれない・・・そんなこと、仮にも乱馬のことを好きだった右京には言えない。
あたしは心の中でそっとため息をついた。
すると、
「なあ、あかねちゃん。口で直接言いづらかったら、メールで送ってみれば?」
ため息をついているあたしに、右京がそんなことを提案してきた。
「メール・・・?」
誰に?とあたしが首をかしげると、
「話の流れからして、乱ちゃんに決まってるやん。直接いいにくかったら携帯のメールで言えばええんちゃう?」
右京はそういって、制服のポケットに忍ばせていたらしい携帯電話を、取り出した。
まだピカピカの、女の子らしい薄いピンク色の携帯電話だった。もちろん表面には、カメラのレンズもついている。
サイドには、今はやりの動物キャラのストラップが、ちゃらちゃらと音を立てて揺れていた。
ざっと数を数えたら五本も付いていた。
重くないのかしら…あたしはそんなことをふと、思う。それにしても、
「右京、携帯なんて持ってたの?」
今時の高校生とはいえ、まさか右京も持っていたなんて・・・とあたしが驚いた表情をすると、
「ついこの間買ったばかりなんよ。だから、まだぜーんぜん使いこなせても無いんだけど、バスケ部関係で携帯持ってる子のアドレスとか情報は入っているよ」
右京はそういって嬉しそうに携帯電話を振って見せた。
「バスケ部関係で持ってる子、他にもいるの?」
「女子は、うちと、小太刀だけやね。男子は、殆ど持ってるみたいやな」
右京は、携帯を所持している部員の名前を次々と挙げていく。
その中には、なんと乱馬の名前もあった。あたしの胸がドキッと小さく鼓動した。
「乱馬も・・・」
・・・そんなの、知らなかった。
あたしがボソッとそう呟くと、
「買ったばかり見たいやね。うちもアドレスと番号教えてもらったの、昨日だけど・・・え?何であかねちゃん知らないん?」
逆に、右京の方がそれに驚いたようだった。
右京にしてみれば、幼馴染だし他の誰よりも仲が・・・よく見えるあたしならば、買ったその日に知っていてもおかしくないんじゃないかと、思ったらしい。
「あ、きっとほら、なかなか話すきっかけが無かったから、教えられんかったんじゃないかなあっ。ねえ?」
「・・・」
「きっと今日にでも、教えてくれるって。だって、あかねちゃんが知らんなんてありえんもん!」
あたしがじっと俯いて考え込んでしまった事に焦ったのか、右京はそんなことを言いながら必死に場を取り繕うと、
「あ、でもほら、メールじゃねえ、大事な事はあかんよねえっ・・・」
さっきは、「言いづらかったらメールにすれば」なんて言っていたくせに、一転そんなことを言い始めると、
「さー、トイレでも行ってこよーっと・・・」
まるであたしの前から逃げるように、教室を出て行ってしまった。
「・・・」
一人その場に残されたあたしは、何だか頭の中が混乱していて眩暈を覚えた。

・・・今まで、乱馬はあたしに隠し事なんてすること、無かった。
いつも乱馬は、こっちが聞きもしないのにいろんな事を教えてくれた。
良くも悪くも、テストの点とか。
おば様の誕生日にプレゼントを買うために、必死で貯金していた事とか。
父の日におじ様にプレゼントを買おうと思っていたけど、その前日に喧嘩をしてあげるのをやめちゃった事を後悔したこととか。
どこの高校を受験しようとしていたとか、将来の夢とか、部活で何を悩んでいる事とか。
いつもいつも、あたしが聞きもしないのにいろんな事を、話してくれた。
でも・・・最近の乱馬は、何だか変った。
「乱馬の好きな人」のことから始まって、色々な事をあたしに話してくれる割には、乱馬は肝心な事は皆、あたしには隠しているんだと、最近あたしはそんな風に感じた。
好きな人のことも、お姉ちゃんとのデートの理由も、そして、携帯電話のこととかも・・・。
どうでもいい事はあたしにも話して、大切な事はあたしには話さない。
それって、ただの友達よりも酷い存在じゃないの…
「…」
そんなことを考えていたら、ふと寂しさがこみ上げてきた。
…もしかしたら乱馬、皆に知られないように・・・それはあたしにも含めてだけど、お姉ちゃんとやり取りをするために携帯、買ったのかな。
自分の友達とか、ましてや好きな人には、我先に携帯を買ったこととか教えるものでしょ。
それを買ってからもう数日たつみたいだし、あたしは右京とこんな話をするまでは全然、その事を知らなかった。
ということは、乱馬はあたしには教えるつもりは無いって、ことだろう。
「・・・」
・・・お姉ちゃんなら、知ってるのかな。
フラフラと学校の廊下を歩きながら、あたしはそんなことを思った。
そうだ。
もしも、この時点でお姉ちゃんが乱馬の携帯のこと知ってたら、
乱馬はまず先に・・・そう、友達の右京よりも先に、お姉ちゃんにその事を教えていたってことになる。
どうでもいい相手とか、嫌いな人にはそんな事、しないはずだし。
もしも本当に乱馬がお姉ちゃんの事好きなら、絶対にそうしているはずだ。
・・・
「・・・」
・・・確かめたら、今度こそはっきりするかもしれない。
あたしが「かもしれない」「きっとそうなんだ」と推測だけでグジグジと考える事が、無くなるはず。
「…」
あたしは、眩暈のする頭を振りしゃっきりとさせると、そのままお姉ちゃんのクラスへと足を運んだ。
こんな事確かめたって、もしかしたら自分が傷つくだけなのかもしれない。
でも、うじうじとあれこれ考えて落ち込んだりしているより、はっきりと白黒ついたほうがまだ、マシ。
乱馬の十年以上の片思いの相手が、お姉ちゃんだった。
一つの決着がつけば、あたしだって「もしかしたら…」なんて、妙な事を思わなくて済む。
・・・理屈では、そう分かっていた。
でも、もし実際そうだったら・・・?そう思うと、確かめるのは、怖い。
けれど、いつまでもお姉ちゃんと乱馬の関係を認めないままでいるわけにも行かない。
あたしだって、前に進めない。
・・・
「あの・・・」
「あら?貴方なびきの・・・」
「お姉ちゃん、いますか?」
「ちょっと待っててね」
あたしはお姉ちゃんのクラスの入り口で呼び出しを頼むと、大きく深呼吸をした。
もちろん、心を落ち着かせるためだ。
でも、
「ごめんねー、どこかに行ってるみたい」
「そうですか・・・」
「急用?」
「あ、いいです・・・そんなんじゃないですから・・・」
・・・あたしにしてみれば、非常事態発生くらいの重要緊急度事項だけど、他の人にしてみればなんのこっちゃの事なわけで。
気合を入れてやってきただけに、肩透かしを食らったような残念感があたしの胸に充満していた。
でも、何となくほっとしたような感も、ある。
「…」
自分でも理解不能な複雑な思いを胸に抱えたまま、とりあえずあたしは、お姉ちゃんの教室を後にした。
と。
「あかね?あんた、何やってんの?」
「お、お姉ちゃん・・・」
「どうしたのよ、あたしのクラスまで来るなんて」
自分の教室に戻ろうと歩き始めようとしたあたしに、それまでどこかに出かけていたお姉ちゃんが、声をかけてきた。
途端にあたしの胸が、ドクン、と大きく鼓動した。
「あ、う、うん・・・」
「何か困った事でもあったの?」
お姉ちゃんは、不思議そうな顔であたしを見つめる。
そりゃ、そうだ。あたしがこうやってわざわざクラスを尋ねてくることなんて、めったに無いのだから。
家でも顔を合わせてるんだし、わざわざクラスに出向いてくるなんて、よっぽど何かがあったのかと、思っても不思議ではない。
「あの・・・」
・・・お姉ちゃん、乱馬の携帯のこと、知ってる?
本当は、素直にそう聞いてしまいたい。でも、なかなかその言葉があたしの口からは出ない。
「何よ」
「あ、うん・・・」
「どうしたのよ、ココじゃ言いづらいわけ?屋上でも行く?」
もごもごと言葉を濁しているあたしに、お姉ちゃんがそんなことを言いながら話しかけてくる。
「ううん・・・あの・・・あのねっ・・・」
・・・言いづらい。でも、いづれは問いただしてみないといけないことだ。
あたしは、意を決してお姉ちゃんに質問しようとそう切り出した。
ところが、
「・・・あ、ごめんちょっと待って」
あたしが話を切り出そうとしたタイミングで、プルルルル・・・と味気ない電子音が付近に鳴った。
携帯の呼び出し音みたいだ。
なびきお姉ちゃんは、機械や流行にうといあたしとは違い、常にそう言うものの最先端にいる。
だから、携帯電話だってとっくに持っているし完璧に使いこなしているのだ。
ただ一つ、着メロだけは抵抗があるようで、こうして呼び出し音は全て、デフォルトの物を使っているみたいだけれど。

お姉ちゃんは手際よく制服のポケットから携帯を取り出すと、ピッピッ・・・とボタンを幾つか押して再び電話をポケットにしまった。
「電話・・・いいの?」
あたしがそう尋ねると、
「いいのよ、メールだから」
「でも・・・」
「どうせ乱馬君だったし、教えてあげた事に対してのお礼のメールみたいだから、返す必要もないし」
お姉ちゃんはさらっとそういって、「で、何?」と再びあたしを見つめる。
でも、あたしにとっては今のお姉ちゃんの回答で、全てが事足りてしまった。
・・・お姉ちゃん、今、何ていった?
『どうせ乱馬君だったし・・・』って言ったよね?
てことは、今お姉ちゃんにメールを送ってきたのは乱馬で、
ということは、乱馬はお姉ちゃんの連絡先を知っているというわけで。お姉ちゃんも乱馬の連絡先を知っているというわけ。
・・・
何だ、聞きたかった事、もう分かっちゃったじゃないの。
「・・・お姉ちゃん、よく携帯でメール、するの?」
乱馬と、とは言わなくとも、あたしは小さな声でボソッとそう呟いた。
「そうねえ、クリスマスにお父さんにねだって買ってもらって以来。六割はメールに使ってるわねえ、携帯」
「そうなんだ・・・」
「あ、もしかしてあんたも携帯、欲しいの?」
「え?」
「何だ、だからこんな風にあたしに頼みにきたのね?」
「え、や、あたしは別に…」
「分かった分った、じゃああたしがお父さんにお願いしておいてあげるわよ」
するとお姉ちゃんは、「そんなことであたしのところに来るなんて、あんたも真面目ねえ・・・」とか何とか言いながら、自分の教室に入っていってしまった。
「・・・」
・・・違うよ、お姉ちゃん。あたし、携帯なんで別に欲しくないもん。
あたしが欲しいのは、携帯自身じゃなくて、
「俺、携帯買ったんだ」
・・・たった一言、聞きもしないでも教えてくれるそんな言葉だったの。
でも、
そのあたしの欲しかった言葉は、もうお姉ちゃんが先に貰ってしまったんだね。
・・・
「・・・」
・・・バカみたい、あたし。真実がわかったら傷つくのなんて分かっていたはずなのに。
覚悟をしてこうやって聞きに来て、それですっきりして前に進めるはずじゃなかったの?
「・・・」
知ったら知ったで、またなんだか胸が苦しいよ。
「・・・」
ズキ・・・と、体中に痛みが走り抜けた。
胸を走る痛みは、体を軋ませて容赦なく心にも響いてくる。
あたしはフラフラと歩いて自分の教室に戻りながらも、制服の上から軋んでキュウキュウと音を立てている胸を押さえつけていた。



この痛みは、何だろう。
東風先生とかすみお姉ちゃんが婚約したってことを知った時の痛みと似ている…?
ううん、あの時よりももっと、もっと胸の奥まで深く、強く貫いている気がする。
何だかとっても、息苦しい…。

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