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FBC2 2

その日、七時を過ぎてもなびきお姉ちゃんは家に帰ってこなかった。
お姉ちゃんが帰ってこないということは、一緒に出かけている乱馬も帰っていないと言うことだ。
部活が終わった後、人目につかない校門裏で待ち合わせていた二人。
みんなに内緒で、こんな時間まで・・・一体どこで何をしているんだろう。
・・・
「・・・」
かすみお姉ちゃんは、東風先生のところにお嫁に行ってしまったのでもう家にはいない。
お父さんは夕食の支度をあたしに任せて、お風呂に入っている。
・・・とはいっても、料理が苦手なあたしのことを考慮して、おかず自体はお父さんが作ってくれているし、
隣の乱馬のお母さんが、うちのことを気にしてよくおかずを分けてくれてるんだけれど。
・・・
「・・・お姉ちゃん、遅いなあ」
居間の時計を見ること、この三十分で既に十回以上。
あたしは幾度となくそんなことをぼやきながら、お父さんと早乙女のおば様が作ってくれたおかずをテーブルに並べていた。
と、その時だった。
「ただいまー」
ガララ・・・
ちょうど良いタイミングで、玄関の戸が開く音が聞こえた。
「っ・・・」
あたしはテーブルを拭いていたふきんを握り締めたまま、お姉ちゃんを玄関に迎えに行く。
「ただいま・・・って、何よあんた、そのふきん」
お姉ちゃんは、あたしのその奇妙な格好を不思議そうに見る。
あたしはそれには答えずに、
「お姉ちゃん、遅かったね。どこに行ってたの?」
と、お姉ちゃんにストレートに尋ねた。
「誰と」出かけていたかを聞きたいんじゃない。そんなの、知りたくなかったのに知ってしまったし。
あたしが聞きたいのは、「どこで」「何をしていた」か。
お姉ちゃんと乱馬が、二人で何をしていたかを知りたいのだ。
勿論、そんなあたしの問に、
「あんた、嫁入り前の娘を持つ父親じゃないんだから。お父さんが聞くならともかく、何であんたが聞くの」 変な子ねえ・・・おねえちゃんは、あたしの質問には答えずにそのまま家へとあがろうとする。
「いいじゃない、教えてくれたって!」
でも、あたしはそんなおねえちゃんの前に立ちはだかり・・・思わず大きな声を出した。
「なんなのよ、あんたは。どうしたの、急に」
お姉ちゃんにしてみれば、迷惑千番だ。何で妹に、そこまで詳しく話さなくちゃいけないの?という感じなの だろう。
でも、あたしにとっては大事で。、
「・・・それとも、あたしに言えないようなこと、誰かとしてたの?」
例えば・・・彼氏、とか・・・。
相手が「乱馬」だってわかっているのに、あたしはわざとそんな風に尋ねた。
乱馬は、あたしの幼馴染であると同時にお姉ちゃんとも幼馴染。
幼馴染同士が出かけるのに、何でここまで気にしなくちゃいけないの・・・自分自身にそう問い掛けて戒めよう としても、あたしは質問を止めることが出来なかった。
あたしだって、乱馬とは映画に行ったり買い物に行ったりする。
別にそこで何かがあるわけじゃない。
・・・乱馬はあたしの「もの」では無いんだから、別に誰と何をしてようが構わないはずなのに。
右京が乱馬の事を好きだって言った時、応援すらしようとしていたのに。
なのに、何でお姉ちゃんが相手だとあたしはこんなに拘るんだろう。
「・・・」
・・・右京の時は、右京が乱馬を思っていたけれど、
お姉ちゃんの場合はもしかして、乱馬の方がお姉ちゃんの事を好きだからかもしれないから?
だからって、何であたしが・・・
「・・・」
自分で質問をしておきながらも、あたしの頭の中はごちゃごちゃしていた。
「デート、だったの?」
・・・願わくばそうであって欲しくないのに、不安な心が先行して、その不安を確認するかのように、あたしは そんなことを口にしていた。
すると、
「・・・」
そんなあたしを、なびきお姉ちゃんはしばらくじっと見つめていた。
そして・・・何やら少し考えた後に、
「今日は、乱馬くんと出かけてたのよ」
お姉ちゃんは、あたしに対して正直に、そう答えた。乱馬、の名前を耳にした途端、あたしはビクッと身を竦 めた。
お姉ちゃんはそんなあたしの様子を、決して見逃しはしなかった。
「何をしていたかは、直接乱馬君に聞きなさい。その方がいろいろはっきりとするから。あんたの為にもその 方がいいわ」
お姉ちゃんは、あたしからじっと目を離さないまま続けてそう言った。
そして、
「夕飯はいいわ。あたし達、軽く外で食べてきたから・・・といっても、あの貧乏の乱馬君におごってもらうん じゃ、ファーストフード位だけどね。あー、体に悪い」
とか何とか、そんなことを言いながら廊下の隅の二階への階段を上がっていってしまった。
一人玄関先に残されたあたしは、なんだか頭を殴られたような、クワーン、クワーンと妙な頭痛を覚える。
自分が知りたくて質問して答えてもらったくせに、何だか妙な気分だった。
「・・・」
そっと自分の胸を抑えてみると、信じられないくらいドクンドクンと胸が鼓動していた。


・・・何よ、何で教えてくれないのよ。
「あたしの為にも直接聞け」って、何よ。
何があたしの為なの?
乱馬は、「あかねでは役不足だから」ってことでお姉ちゃんを連れて行ったんでしょ?
やましい事が無ければ、お姉ちゃんが話してくれてもいいじゃない。
何なの?言えない理由でも、やっぱり、あるの?
・・・


「・・・」
・・・まさか、後々乱馬とお姉ちゃんと付き合うことになりそうだから、
同級生でクラスメートのあたしは、乱馬からもちゃんと話を聞いておいたほうがいいってこと?
「・・・」
・・・頭の中に浮かぶのは、自分にとって都合の悪い推測ばかり。
人間、悪いことを考え始めると全てを負の方向に考え始めるものだ。今のあたしが良い例だわ。
あたしはそんなことを、思う。
でも、お姉ちゃんの言っていた言葉をあたしが理解するには、そんな風な変換ツールしか存在しないのも確か だ。
あたしと一緒にどこか行った時は、当たり前のように割り勘にする乱馬が、ご飯をおごるくらいだもん。
それだけ、お姉ちゃんに気を使っていて特別に思ってるってことだ。
あたしの知らない、お姉ちゃんと乱馬の秘密が、そこにはあるのかもしれない。
・・・
「・・・」
二人の、秘密。そんな言葉に、胸が異常にドキドキしていた。
変な、あたし。
乱馬がお姉ちゃんを好きなのかもしれないって、そんなの合宿の時に気がついていたことなのに。
乱馬だって、右京に話したじゃない。
「十三年間も片思いだ」って。
幼馴染の、あの乱馬の恋愛がようやく実ろうとしてるんじゃないの。
「大事にしたい」
乱馬がその人のことをとっても大切に思っていることを、あたしだって知ってるはずじゃないの。
素直にお祝いしてあげればいいじゃない。
なのに、何で・・・
「・・・」
・・・頭では、わかっているつもりだった。
でも言葉が素直に出ない。笑えない。
「・・・」
あたしは、手に持っていたふきんを更にぎゅうっと握り締め、大きなため息をついた。
あたしは一体、どうしたいの?
そんな問いかけを自分に対して何度もしてみながら・・・




翌朝。
何だかいろいろと考え事をしていて眠れなかったあたしは、日課のロードワークに出るも集中できずにいた。
おかげで、道で三回毛躓き、挙句の果てには車に轢かれそうになった。
そんな風にあたしが考えたって、二人が付き合うかもしれないという事実は変るわけが無いのに。
悩むだけ仕方がない、事実は事実で受け入れなくちゃいけないのに・・・頭では勿論そうやって分っているけれ ど、どうしてか心が何だか割り切れない。
「・・・」
それでもどうにかこうにか、いつも立ち寄る川原へとたどり着いたあたしは、
大きく深呼吸をしてストレッチをしながら、頭の中を整理しようと試みる。
と。
「よー」
背後から、聞きなれた声がした。
この声は、乱馬だ。あたしの胸がドクン、と鳴った。
「お、おはよう」
あたしは、乱馬と視線を合わせないように挨拶をする。
「?何だよ。何かおかしいぞお前」
目を合わせないあたしが不思議なのか、乱馬はわざとあたしの前に回ってきてあたしの顔をのぞき見ようとす るけれど、
「な、何でもないってばっ」
あたしはそんな乱馬から逃れるように、身をかわした。
「何だよ」
もちろん、そんな避けられるかのような態度をすれば、自分に比が無い乱馬にしてみれば、更に納得がいかな いのは当たり前。
ブスっとした顔で、あたしを見つめていた。
「・・・」
あたしはそんな乱馬に対して小さくため息をつくと、
「ねえ・・・」
・・・一人であれこれと推測をしていても、何も解決はしない。
お姉ちゃんも言っていたように、思い切って昨日のことを乱馬に聞いてみることにした。
「何だよ」
あたしの改まった様子に、乱馬は少し戸惑っているようだった。
「・・・昨日、なびきお姉ちゃんとどこに行ってたの?」
「え?」
でも、あたしのその質問に対し乱馬は、「ああ、実は・・・」とすぐに明確な答えを言わず、あたしの顔を見つ めたまま何かを考えているようだった。
「・・・」
・・・何で、すぐに答えないの?
やましい事が無ければ、教えてくれたっていいじゃない。
・・・
あたしの胸が、その沈黙時間が長ければ長いほど早く鼓動する。
どうして?何で?
そんな思いが、口から出ずとも胸に満ちている。
なんでもなければ、すぐに答えればいい。
でも答えに困ると言うことは、何か言葉を選んで言わなくちゃいけない秘密がある・・・あたしの中で、勝手な 憶測が更に負の思考を進化させていく。
「・・・」
乱馬はそれでも、あたしへの解答を考えているようだった。
時間的には数秒だったのかもしれない。
でも今のあたしにとってその数秒は、長くて、重くて、そして世界で一番居心地が悪い数秒だった。
・・・逃出してしまいたい。数秒前に遡って、馬鹿な質問をした自分を消してやりたい。
そんなことさえ、思った。
でも。
沈黙こそが、すべてを肯定する。
そうやって答えをすぐに出せない乱馬に対して、あたしはそんな風に勝手に答えを結論ずけた。
ああ、やっぱり乱馬とお姉ちゃんの間に何か秘密があるんだ。
・・・あたしは、そう感じた。
「・・・やっぱり、いい。今の質問、聞かなかったことにして」
それを実感したのなら、もうその先の答えなんて聞かなくたっていい。
聞いたところでその勘が正しかったことを思い知るだけだ。あたしは、じっと黙り込んでいる乱馬にそう言っ た。
「あ、いや別にたいしたことじゃ・・・」
・・・そんなあたしの様子に、今まで何かを考え込んでいた乱馬は慌てて弁解をしようとしたけれど、
「いい、たしたことじゃないなら、余計言わなくていい」
「な、何だよそれ」
「もう、聞きたくなくなった」
あたしは、自分で聞いておきながら、更にきっぱりとそんなことを乱馬に言ってしまった。
乱馬にしてみれば失礼な事だとは分っていたけれど、あたしの耳が、これ以上の言葉を聞き入れることを拒絶 していた。
もやもやした思いをはっきりさせたいって思って質問したのに、いざその事実を聞かされようとすれば怖くな って拒否するなんて、あたしは・・・卑怯だ。
うん、卑怯だ・・・でも、卑怯でも、怖い。
「実はさ、なびきに告白したんだよな。上手く行くかもしれねえ」
・・・もしも乱馬の口から、そんな言葉が出て来たらどうしよう。
そんな言葉を聞いてしまったら、あたしは・・・卑怯者で臆病なあたしは、思わず耳を両手で塞いでしまう。
「おい、あかね」
乱馬は、そんな支離滅裂なあたしの、耳を塞いだ手をとろうとした。
でもあたしは、その腕から逃れるようにさっと身を引き乱馬から一歩、また一歩とあとずさると、
「あたし・・・今日は先に戻る」
「おい」
「あたし、今日日直なの。知ってるでしょ?」
「日直ったって、まだ六時半じゃねえか」
「いいのっ・・・あ、ぶ、部室にも寄りたいしっ・・・とにかくごめん、今の質問忘れて、ね?」
と言って、困ったような顔であたしを見つめている乱馬に、わざと笑って見せた。
そうやって無理やり表情を作っていないと、情けない胸のうちがすべて顔に表れてしまうような気がした。
卑怯で臆病なあたしが唯一自分の身を守る、防衛手段だった。
「・・・変な奴」
乱馬は、そんなあたしをいぶかしげな顔で見ている。
あたしはそんな乱馬から顔を逸らし、背を向けた。そして、ぎゅっと唇をかみ締めて目を閉じる。
「・・・」
・・・答えが、出たじゃないの。あたしが知りたい、答えが。
そして、そんなことを自分に言い聞かせた。
「・・・それじゃ」
その後すぐ、あたしは乱馬を置いて一人、家へと向かって走り始めた。
乱馬はあたしのあとを追ってくることはなく、そのままそこでストレッチを始めていた。
あたしは、乱馬の姿が見えなくなった辺りでふと立ち止まり、空を見上げた。
・・・今日は、晴れ。
雲ひとつない、澄みきった青い空がそこには広がっていた。
どこまでも高く、遠く・・・地上に立っているあたしのほうが、逆に空に吸い込まれてしまいそうな空。
「・・・」
そんな、上を向いたあたしの目が、徐々にじんわりと熱くなる。
最近、ご無沙汰していたこの感覚、この温度。
ああ、乱馬の前では現れてくれなくて、良かった。
「・・・」
晴れた空は、好き。澄んでいて清清しくて大好き。
でも、今日は雨だったら・・・良かったのにな。
そしたらこんなあたしの涙、混ざっちゃって絶対に分からないのに。
・・・高く遠く澄んだ空を仰ぎながら、あたしはそんなことを思っていた。
「・・・」
知りたかった答えを知ることができただけなのに、どうして涙が出るんだろう。
自分でもどうにもしようにない思いを抱えたまま、あたしはしばらくそうやって空を見上げていた。

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