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FBC2 1

三月も初め、学期末テストも終わり、それまで中止されていた部活も解禁になったある日のこと。
一年生ながらに風林館高校女子バスケット部キャプテンでもあるあたし・天道あかねは、一人張り切って、体育館へと向かった。
キャプテンたるもの、部員の誰よりも早く部室へ行って準備しなくてはいけないのだ・・・と、あたしは自分にそう言いきかせて道を急ぐ。
肩に担いだ、少し大きめのボールケース。
一キロ以上はあると言うのに、全くその重みを感じない。楽しい気持ちと言うのは、人の力を倍増させるのだろうか。
それに加え、ちょっと汗の染み付いたボールの匂いが、部活の楽しさをあたしに思い出させては気を焦らせる。
・・・名門男子バスケット部に比べると、出来たばかりだし実績も無いあたしたち女子バスケット部。
でも、もうすぐ行われる春季リーグ戦を一勝でもするぞ、と皆で決意新たに練習してきただけあり、と老舗の男子バスケット部に負けないくらい、雰囲気は いい。
「さー、今日も頑張るわよー!」
・・・誰も聞いていないと言うのに大声でそう叫んだあたしは、気合新たに廊下を走っていた。


風林館高校女子バスケ部は、六名プラス顧問の東風先生で構成されているクラブだ。
キャプテンのあたし、
お嬢様の小太刀、留学生のシャンプー、関西出身の右京、そして中学の時からの知り合いのさゆりとゆか。
顧問の東風先生は、夏にあたしのお姉ちゃんと結納を交わした相手。
だから、東風先生はあたしの義理のお兄さんになる訳ね。
そんなあたしたちは、実は東風先生以外みんなバスケ初心者と言う、本当に寄せ集めもいいメンバーだけれど、
色々な経験をして、皆真剣にバスケに取り組むようになった。
そう、夏に行われた、隣町の名門校との、負けが分っていて送り込まれた練習試合。
あの時味わった悔しさをバネに、あたしたちは練習を重ねてきたのだ。
そんなあたし達のよき協力者と言うか、なにかとお世話してお世話されているのが、男子バスケ部の面々。
マネージャーのあかりさん、その彼氏の良牙君。そして・・・
「お前、バスケなんて出来るのか?心配だなあ・・・」
「あんたに心配されなくてもできるわよ!」
「お前じゃねえよ、練習相手が心配なんだよ」
「なんですって!」
・・・減らず口を叩かせたらこの学校一。
あたしの幼馴染で隣の家に住んでいる、一年生ながらにキャプテンを勤める、乱馬。
乱馬は中学時代から有名な選手でもあって、態度はでかいけれど本当にバスケが上手。
秋口に行われた大会で、うちの学校が都大会ベストフォーまで進めたのは、乱馬の活躍のおかげだと、男子バスケ部の顧問も喜んでいたくらいだ。
もっとも、選手では有能な乱馬も、あたしにしてみれば腐れ縁の幼馴染。
ベランダを乗り越えてお互いの部屋にもしょっちゅう行き来するし、お互い家族ぐるみの付き合いをしている。
何かといっしょに行動する機会の多い乱馬とあたしは、何だか「一緒にいるのが当たり前」みたいな、そんな関係なのか。
・・・だからといって、別に恋人同士というわけではないんだけど。
例えばバレンタインにチョコレートを渡しても、それは一応「義理」というわけで。
今年もそれは例外にあらず、乱馬もあたしからチョコをもらっても、
「しょうがねえなあ。もらってやるか」
そんなことを言いながら、それを受け取った。
別段その後、何があったとかそう言う事は、何もない。
ただ、
「・・・」

恋人。

その言葉を頭に浮かべた時、あたしは思わず廊下を走る足を止め、ため息をついた。
・・・そう、この言葉は最近、あたしの胸を悩ませる。

「俺には好きな人がいる」

あれは、夏合宿のときだった。
右京が乱馬に告白をした時、乱馬はそう言ってきっぱりと右京の告白を断った。
・・・あたしが知らない内に、乱馬には思いを寄せる人がいた。
それを聞いた時には何だか頭が真っ白になり、眩暈がした。
いつまでも「幼馴染の悪がき」くらいにしか思ってなかったのに、何だか乱馬だけ一人、あたしを置いて大人になってしまったような、気がした。
それに・・・
「・・・」
右京に乱馬への想いを口にされたとき、「応援してあげる」なんて言っていたくせに、あたしはいざ右京が告白し様としているのを見て、複雑な気持ちに 刈られていた。
胸がモヤモヤして、気だけが焦る。
この妙な感覚の正体が分らなくて、あたしは胸を痛めた。
ただ、

「あのな?乱ちゃんなー…もう十三年も片思いやって」

合宿の帰り。右京があたしに、乱馬の思い人のことをそう教えてくれた。
右京は、乱馬から直接その人の名前を聞いたらしい。
それを聞いてあたしは、ドキッと胸を鼓動させたのを覚えている。
出会って十三年。小さい頃から一緒にいるあたしを含め、そんなに長く乱馬が付き合っている人物なんて数える程度だ。
だから、すぐに候補が絞られた。
そのうちの一人は、あたしの、東風先生と結納をした以外のお姉ちゃん。
あたしより一つ年上で、小さい頃はよく、あたしと乱馬を面倒見てくれた。
今では、同じ高校の一年先輩で、写真部。
まあ写真部とは言っても、ろくに部活に参加しているところは見た事が無いんだけど。
「なびき!お前また、うちの部の写真を撮って売りさばいただろ!」
「だってしょうがないでしょ。欲しいって言う女の子がいるんだもん」
おまけに、写真部として正式に撮影していった写真を、男子バスケ部のファンに横流ししているらしく、乱馬と顔を合わせるとそんな話をしていた。
夏合宿まではそんな光景を見ても、
「ああ、又やっているなあ」くらいしか思わなかったあたしだったけれど、
右京の話を聞いてからは、そんな二人のやり取りがあたしは気になって仕方がなかった。

・・・もしも乱馬が好きなのが、なびきお姉ちゃんだったら?

なくは無い、可能性。
乱馬がどうしても大切にしたくて、守りたくて手に入れたいものがお姉ちゃんだったら。
そしたらあたしは・・・あたしはどうする?
「・・・」
そう、それは考えられなくは無いのだ。
だって、そうでしょ?
もしも乱馬が…たとえばあたしのことが好きだったとしたら、
あたしがバレンタインに義理でもチョコレートを渡せば、もっと喜ぶだろうし。
それにずっと一緒にいるんだもん、何かリアクションを起こしても良いような物だ。
それが、全く無い…そう考えると、やっぱり乱馬がお姉ちゃんに気があるという可能性は捨てきれない。
「…」
それを思うと、何だか複雑な気持ち他ならなかった。
いつも一緒にいるのが当たり前だった、乱馬。
それが、お姉ちゃんの恋人・・・
「・・・」
・・・そんなの、考えたくない。でも・・・
はっきりしない現状、確かめられない勇気のなさに、あたしはため息をついた。

と、その時だった。

「はー?なんであたしが一緒に行かなきゃならないのよ」
「だ、だってこういうのはよく知ってる奴と行くのが一番だって言うじゃねえか!」
「年寄りか、あんたは。あかねとでも一緒に行けばいいでしょ」
「あ、アイツはこういうのウトイからダメなんだよ!」
・・・廊下の端、部室へと続く廊下の入り口で、そんな男女の言争う声が聞こえた。
「・・・」
聞き覚えのある、声。
あたしがそう思いながら、声の主に気付かれないように近づいていくと、
「・・・ま、そこまで言うなら一緒に行ってあげてもいいけど。あんたの部活終わるまで待ってる間のジュース代くらいは奢りなさいよ?」
声の主の一人・・・この女王様のような口調は、あたしのもう一人の姉、なびきお姉ちゃん。
なびきお姉ちゃんはそう言って、相手に向かって手を差し出した。
「わ、分ったよ。じゃあ、部活が終わる五時半に、正門・・・あ、でも皆に見られるから、裏門の所で待ってろよ」
相手は、そんななびきお姉ちゃんに待ち合わせ場所を指定すると、おずおずと百円玉を差し出した。
「百円?しけてるわね」
「購買なら十分だろっ」
「ま、仕方ないわね」
なびきお姉ちゃんはそう言って、渡された百円玉を握り締め、その場から去ろうとした。
でもすぐにまた相手のほうに向きかえり、
「ねえ、今日の事はあかねに黙っておいた方がいいの?乱馬くん」
「えっ・・・あー・・・でもその内ばれる事だから」
「あ、そ」
そう言って、去っていった。
あたしはなびきお姉ちゃんに見つからないように、物陰に身を潜めるけれど、
「・・・」
二人の今交わしていた会話に、胸がドキドキとしていた。
なびきお姉ちゃんの今の話相手は、乱馬のようだ。
しかも二人は、今日待ち合わせてどこかにいくらしい・・・しかも、人目につかないように、わざわざ待ち合わせ場所を指定して。
「・・・」
高鳴る鼓動と、震える唇。
あたしがきゅっと唇をかみ締めながら一人残された乱馬を見ようと身を乗り出すと、
「・・・さー、部活を早いトコ乗り切って、今日こそなー・・・」
乱馬はそんなことを言いながら、部室に向かって既に歩き出していた。
その後ろ姿を見ながら、あたしは更に、胸をドキドキと高鳴らせる。

・・・今日こそ、何?
お姉ちゃんをわざわざ部活が終わるまで待たせて、待ち合わせてどこに行くの?
今日こそ、何するの?
その内ばれるからって・・・何が?

夏から抱えていたモヤモヤが、一気にあたしの胸へと充満する。
もしかしたら・・・
そんなことを考えると、何だかいてもたってもいられない。


「ら、乱馬!」
・・・なので。
あたしは、偶然今ココにやってきたかを装って、歩いていく乱馬へと声をかけた。
「あかね。なんだよ」
乱馬はあたしの声に気付き、いつものように振り替える。
「あ、あのさっ・・・あの・・・今日、部活終わったら、映画でも行かないっ?」
「え?」
「乱馬、見たい映画があるって言ってたじゃない。ほら、あの外国映画!あれね、今日は学生サービスデーで安く見れるんだって!い、行こうよ」
あたしは、乱馬が今日、なびきお姉ちゃんと約束をしていると分っていて、わざとそんな誘いをかけてみた。
・・・そう、あたしは乱馬を試してみた。
乱馬がなびきお姉ちゃんのことが好きだったら、絶対にあたしの誘いは断るだろうし、
お姉ちゃんとの予定を別に後日に延期してもいいんであれば、この誘いに乗ってくれるかなって、あたしは考えた。
いつもだったら、
「お、いいなそれ。今日は良牙と約束してたけど急ぎじゃないし・・・行くか」
・・・そんな風に、あたしの誘いに乗ってくれる乱馬。
今日はどうなんだろう。
あたしがドキドキしながらそんなことを考えていると、
「あ・・・今日は悪りい。ちょっと用事があってさ・・・」
乱馬が、すまなそうにあたしに頭を下げた。
ドクン、とあたしの胸が大きく鼓動した。
「そ、そう・・・誰かと約束でもしてるの・・・?」
あたしが冷静を装ってそう尋ねると、
「ああ、まあそんなとこ」
乱馬はそれ以上は何も説明せず、
「映画、また今度行こうぜ」
あたしにそれだけ言うと、さっさと部室に入っていってしまった。
「う、うん・・・」
そんな乱馬の様子に、あたしはまだ、ドキドキと胸を鼓動させていた。


・・・乱馬に、誘いを断られた。


相手がなびきお姉ちゃん、と言う事もあり、
別段何でもないような事でも、何だか大きくあたしの胸に影を落とす。


二人は今日、どこに行くんだろう。
「今日こそは」
・・・乱馬は、何をしようというんだろう。


「・・・」
…それまで肩に担いでいたボールケースの重荷が、突然増したような、気がした。
あたしはボールケースの肩紐をぎゅっと握って、そのままその場所で立ち尽くしていた。

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