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FBC 合宿編1

「あかね、忘れ物はないかね?」
「うん、ない!」

…世間では一週間近くもの大型連休になろうという、ある日のこと。
あたしは、お父さんに見送られながら、大きな荷物を片手に家を飛び出した。
とはいえ、それは別に旅行にいくわけでもなんともなく、ましてやこんなに元気ハツラツに家出、というわけでもない。
そう、実はこの大型連休の前半…二泊三日で、あたしたち「風林館高校女子バスケット部」は合宿をすることになった。
それも、学校の宿泊施設に泊まる…なんて、初めてのこと。
通っていた中学では、そんな行事は無かったからだ。
昼に勉強をしている学校とは違い、夜の学校に泊まる。
同じ学校は学校。校舎は校舎。
でも、それを考えただけでなんだかとても、ドキドキする。
「うふふふ…」
しかも。
こうして合宿に向かうあたしの荷物の中の半分は、「花火」で占有されている。
そう、合宿の打ち上げかてらに…と、二日目の夜に「花火」をすること。
もちろん顧問の東風先生同伴で、ということだけれど、しっかりと校長先生から許可を得ているのだ。
練習はきついかもしれないけど、それを乗り越えた後にそういったお楽しみがある合宿・・・それが、あたしには楽しくて仕方が無い。

と。

「朝っぱらから何をニヤニヤしてんだ、いやらしい」
「な、なによー」
あたしが玄関を出て、道でニコニコとしているちょうどそのタイミングで。
隣の家から、不意に乱馬が出てきた。
休日というのに、乱馬も制服姿。そして、手にはやけに大きな荷物。
…そう、実は時同じくして、男子バスケ部も学校で合宿をすることになったらしい。
「ふっ…あまっちょろい女子バスケ部とは、レベルの違う練習を見せてやるぜ」
一年にして、その実力でキャプテンになった事もあり、乱馬はあたしを小ばかにしたかのようにそういうも、
「へー…すきありっ」
「あ!」
あたしはそんな乱馬の戯言を軽く聞き流し、乱馬が手に持っていたカバンをひったくる。
そして、
「どれどれ?」
「あー!何すんだよっ。あけるなっ…」
…慌てる乱馬を無視して、素早くそのカバンのチャックを空けるも、
「…で?レベルの高い男子バスケ部の皆さんは、水着とアヒルのおもちゃで何の練習をされるんですか?」
「…・水泳」
…やっぱりあたし同様、荷物の半分をおもちゃで埋め尽くされている乱馬のカバン。
あたしにそれがばれたことで開き直ったのか、
「やっぱりオモチャは必需不可欠だ」
なんて。乱馬はそんな事を一人呟いている。
「…」
カバンなんて覗かなくたって、乱馬がおもちゃを持ってきていることぐらい分かっていた。だって、昔からそうなんだもの。
幼稚園の時のお泊まり会も、家族同士での旅行でも。乱馬はいつだって、自分のカバンにオモチャを詰め込んできて、あたしと一緒に遊ぶんだ。
ふふ。
高校生になって、ちょっと大人っぽい外見になったって、偉そうな事言ってたって。根本的な部分は全く変っていないみたいだ。
「…花火も大事よ」
「水着もな」
結局の所、似たもの同士。
あたしたちは、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。そして、「合宿に必要なグッズは何か」なんて、そんな会話を交わしながら、学校へと向って行っ
た。


「じゃあな、あかね。また体育館で」
「うん」
校門に入り、部室棟までやってきたあたし達は、そこで別れた。男子バスケ部と女子バスケ部は部室棟が違うのだ。
乱馬と別れたあたしが自分達の部室へと歩いていくと、
「遅いよ!」
「やっぱりあかねが一番遅い!」
「時間厳守ですわ」
「なにしてたか」
「あいかわらずやなあ」
…そんなあたしの事を、なんとすでに他のメンバーは着替えて待っていたようで、
「あ、ごめんごめん」
あたしは慌てて、部室へと入ってジャージに着替える。
中でも、
「あかねちゃん、食事の下準備は終わらせといたで」
「ありがと、右京。よろしくね」
「まかせとき!」
この二日間食事当番をも引き受けてくれた右京は、みんなよりも二時間近く早く、学校で準備をしてくれていたようだ。
料理が得意で、家も店屋をやっている右京。
そんな彼女は女子バスケ部だけでなく、男子バスケ部の分まで食事を作ってくれると申し出てくれたのだ。
これには、
「わあ!助かりますっ…。いつも一人で大変だったんです」
と、男子バスケ部のマネージャーでもある良牙君の彼女・あかりさんも、大助かりのようだった。
「私は中華料理以外は苦手ね」
「料理は、使用人がするものですわ」
留学生のシャンプーも、そしてお嬢様育ちの小太刀も。大勢の人に振舞う為の料理、となると苦手なようだ。
それは、さゆりや、そして最近ではすっかりマネージャー業が板についてきたゆかも同様のよう。
なんにせよ、台所に強力な助っ人登場で、皆は大助かりなのだ。
「なあ、あかねちゃん。一応は準備したんやけど、メインディッシュをどうするか迷ってんねん」
「メイン?」
「そう。若鶏のガーリック焼きか、甘酢あんかけか」
「お、美味しそう…どっちでもいいわよっ」
聞いただけで、何だかよだれが出てくるわ。あたしがそんな事を呟きながら右京に返事するも、
「そこでなー…なあ、あかねちゃん。早乙女君て、どんな料理が好きなん?」
右京は、他のメンバーに聞こえないような小さな声で、あたしにそう尋ねて来た。
「乱馬?食べられるものだったら何でも食べると思うけど」
好き嫌いなんて聞いたことないわ。あたしは即答するも、
「でも、割りと好きなもんかてあるやろ?」
「そうねえ…」
…乱馬の好物なんて、そういえばあんまり真剣に考えた事なんて無かった。
おばさまに聞いたほうが早いのかもしれないけれど、あたしはそれでも自分の記憶を遡っていろいろと考えてみる。
「…」
…でも。
どの記憶を遡っても、あたしと一緒にご飯を食べる乱馬は、いつだって何でもおいしそうに食べる。
それってイコール、食べ物は何でも好きって事なんだろうけど…。違うの?
あ、でも。
確かあれは、今年のバレンタインの時。お父さんにあげる予定だった、「大好き」ってかかれているハート形のチョコ。
せっかく買ってきたのに、お父さんがお腹を壊して食べれなかった。
だから、自分で食べるのもなんだし…と、乱馬に渡す分にこっそりとそれも混ぜて処理してもらおうと思ったとき。
乱馬の奴、何だか妙に嬉しそうに、そのチョコレートを食べてたっけ。
…ということは、
「…甘い物かなあ」
あたしがぼんやりとそれを思い出しながらそう右京に答えると、
「甘い物やな?よっしゃー!じゃあ今日のメインディッシュは若鶏の甘酢あんかけに決定!」
右京は嬉しそうにそう叫び、「じゃあ練習前に、肉の下ごしらえだけしてくるわー」と、家庭科室へと向って行った。
「右京、本当にいい子ねえ…。あたしが彼女にしたいくらいだわ」
あたしがボソッとそう呟くと、そんなあたしの横で、
「二日目の花火の時に、早乙女乱馬、呼び出すって言ってたね」
「え?」
「花火に紛れて二人消えて、告白する。合宿の定番ね」
シャンプーがそんな事を呟く。
「告白?右京が乱馬に?」
ドクン。
好きなんだから、告白するのは当たり前。それに、右京が乱馬の事を好きだってとっくに知っているというのに。
何だか、あたしは不思議と胸がドキドキしていた。
「最後のチャンスだと、思っているんですわ。告白して、諦めるって言ってました。分かっているんですね」
ドキドキしているあたしの横で、小太刀がそう呟いた。
「諦めるって…どうして!?だって、告白して上手く行くかもしれないんだよ?何で…っ」
小太刀のそんなぼやきに、あたしは驚いてそう反応するも、
「…・」
なぜか小太刀も、そしてシャンプーも。いや、傍にいたさゆりやゆかまでもが、あたしのその言葉に対して、大きなため息をついた。
「ちょ…な、何よその反応はっ」
あたしが揃いもそろったこのみなの反応に少したじろぐと、
「…これだから、タチが悪いんですわ」
「鈍感もここまでくると、大罪あるな」
「乱馬君も可哀想にねえ…」
「前途多難だって事かしら」
四人はそれぞれ勝手なことを呟きながらあたしの肩をぽんと叩き、さっさと体育館へと向かっていってしまった。
「え!?ちょ、ちょっとちょっと!なんなのよっ…」
そんな皆を、慌てて追いかけていくあたし。あたしには、皆が言っていることがの意味が全く分からなかった。
…だって、そうでしょ?
告白する前から、諦める事を決めているなんて、おかしいよっ。
違うの?


今から少し前の、青陵学園高校との練習試合。
そこで、初めて「負ける」という悔しさを味わったあたし達は、それから色々と話し合って練習方法も変えてきた。
かすみお姉ちゃんとの婚約も済ませ、六月に結婚式を挙げる東風先生も、式の準備の忙しい中、そんなあたし達の練習に付き合ってくれた。
それぞれが、プロの試合を見て研究したり。他校の練習メニューを教えてもらって、組み込んでみたり。
男子バスケ部に頭を下げて、たまに相手をしてもらう事だってある。全く歯が立たないけれど、でも得る物は多い。
「絶対に、次は勝つ」
大好き、だけでは終わらせたくない。
それぞれが、そんな目標を胸に練習に臨むようになった。
だから、もちろん花火とかの楽しみだってあるけれど、この合宿のメニューは、それなりにハードだ。
午前中は、ストレッチに体力作り。基本練習をみっちりとやる。
そして、午後はフォーメーションの確認と3on3。マネージャーのゆかを抜くと一人足りないのだけれど、そこは東風先生が入ってくれてカバーをする。

「はあっ…はあっ…」
ハードな練習の合間の、ほんの少しの休憩。
肩で息をしながら、ゆかが用意してくれたスポーツドリンクを飲む。
冷たい体育館の床に、火照った身体がすぐに馴染んでしまう。
「これは、夕食が楽しみだなー」
あたしが、床に寝転びながらそんな事を呟くと、
「おめーが作る以外のものならなんでも上手いしなあ」
「なっ」
…たまたまあたしの傍を通りがかった乱馬が、さりげなく毒を吐いていった。
「そ、そりゃ今日は右京の料理が待ってるけどっ」
「なら安心だ」
「あたしだって、いろんな料理くらいはっ」
あたしがそんな乱馬の後ろ姿にタオルを投げながら叫ぶと、
「頼むから、この合宿中は作ってくれるな」
乱馬は、意地悪く笑いながらそう言って、タオルをあたしのほうへと投げ返していった。
「なっなんて男なの!」
あたしがそんな乱馬に対して「べーっ」と舌を出してやると、
「まあまあ。でも、確かにそれが賢明かもねー…」
「ゆかまで!」
「とにかく、食事の支度は右京と雲竜さんに任せておきましょう。あかねはバスケに専念。大丈夫、料理が下手だって、乱馬君は平気みたいだし今更焦らなくても平気よ」
そんなあたしを宥めながら、それまで笑顔であたし達を見守っていたゆかが、更にトドメをさすような一言を囁いた。
「…」
別に、乱馬に言われて焦ったわけじゃないもん。
あたしだって、料理くらいは出来るもん。でも、この合宿は右京が作ってくれるって言うからっ…
「…」
あたしは、ブスッとした顔でコクンと頷いた。
…そして、その日の夜。
案の定右京の料理は好評で、
「おかわりっ」
「俺も俺もっ」
男子バスケ部のメンバーは、大喜びだった。
もちろん良牙君も、そして乱馬も、
「うめーっ。すげえなあ、これ作ったのか」
なんて。素直に感動しては、おかわりをしていたっけ。
「あかねちゃん、ありがとな!早乙女君、めっちゃ喜んでくれてるみたいやっ」
「あ、うん…」
もくもくとご飯を食べているあたしに、右京が嬉しそうにそういっていた。
でも、
「…」
こうなる事は分かっていたのに、何だかあたしは、素直に喜べない。
何でだろう…。
そんな事を考えていると、
「食事を作ってくれたお礼じゃないけど、後かたずけ、手伝うから」
「えっ…そ、そんな疲れてるんやし、ええってっ…」
「気にすんなよ。それに疲れているのはお互い様だろ?」
…そんな会話を、あたしの隣で右京と乱馬がしていた。
乱馬は、男子バスケ部の代表として食後のかたずけを手伝うという。
「…そ、それじゃあ」
もちろんそんな事、右京にとっては願ったり叶ったりだ。
控えめだけど、でもすごく嬉しそうに笑いながら、右京は乱馬の申し出を受け入れていた。
「…」
…こうやって、乱馬と右京が仲良くする事を、あたしは望んでいたのに。
なんだろう、このモヤモヤした気持ち。
「…」
美味しいはずのおかずが、まるでゴムのように何の味もしなくなった。
あたしは、二人の会話を耳にしながらも、そんな事を思いながら食事を口に運んでいた。


「…」
食事も終わり、皆が食堂を出た後。
中に残った右京と、乱馬。
あかりさんは、乱馬が手伝うという事で後かたずけのみお役ごめんのようだ。
その二人が、
「明日は何を作るんだ?」
「明日はなー…そうやねえ…」
…シンクの横でそんなことを話ながら、楽しそうに笑いあっている姿を横目でチラッとめにしたあたし。
「あかね、行こうよ」
「あ、う、うん…」
皆に呼ばれて家庭科室から離れるも、何だか必要以上に心がドキドキする。
「…」
家庭科室のある棟から外へ出て、寝泊りする為の部屋へと移動する最中、もう一度、通りがかる渡り廊下から、家庭科室のまだ電気のついた窓を見あ
げてみる。
そこに並んでいる二つの影。
時折楽しそうに揺れているようにも見えるその影を見上げながら、あたしは何だか複雑な気分になっていた。


…明日の夜は、またこうやってご飯を食べた後、花火、やるんだよね。

「…」
そしたらそこで、右京は乱馬に告白するんだ。
いいじゃない。
上手くいきますようにって、あたし、自分で朝、言ってたじゃない。
なのになんで…
「…」
家庭科室に並んで揺れる二つの影。
その二つの見慣れた影を、あたしはなんともいえないような、モヤモヤとした気分でしばらくの間見あげていた。

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