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永遠の記憶8

婚礼の儀を知らせる鐘と共に開かれたドア。
あかねは、そのドアの向こう側へとゆっくりと歩みを進めた。
まばゆいばかりの、灯り。
いっせいに鳴り出す、楽団の演奏。
そして、「お美しい…」とそこかしこからもれてくる、あかねへの賛辞。
あかねは、それらに何の反応を見せる事なく、無表情のまま、部屋の一番奥で待つ瑪瑙の元へと進んでいく。
そんなあかねの横を、瑪瑙の側近らしい兵士がニ名、しっかりとガードしている。
仮面をつけることがこの国の兵の正装なのか、ニ人とも仮面をつけていた。
両脇をしっかりとこのニ人に固められるため、あかねはもう逃げる事も出来なくなっていた。
瑪瑙の元へと続く、足元の赤い絨毯を、真っ直ぐに進む事しか許されなかった。
(…乱子)
そんなあかねの脳裏には、なぜかあのおさげのメイドの顔が浮かんでいた。
(こうなる前に…最後に会いたかったわ)
あかねは、心の中でそう呟いていた。

 


…記憶の中では、あかねは瑪瑙にとても大事にされ、命がけで守られている。
記憶の中では、あかねも瑪瑙の事もとても大事に思っている。
なのに、なぜ…今こうして本人を目の前にすると、拒絶してしまうのか。


自分の心と、記憶をつかさどる頭の中が、全く結びつかない。
特に、あの「おさげ髪」の男の子の残像を見るようになってから。

「このまま、心が壊れてしまえばいいのに…」
…こんなバラバラな気持ちのまま瑪瑙と結婚するくらいなら、いっそのことそうなってしまえばいい。
あかねは、無表情のまま赤い絨毯を歩きながら、そんなことさえを思っていた。



…やがて。
あかねは、瑪瑙のすぐ近くまで到着した。
「さ、姫様」
脇を固めていた兵士のひとりが、そういってあかねの手を取った。
そして、瑪瑙の待つ階段の上までゆっくりとエスコートしようとするが…


ドオン!


その時突然、部屋の内部でそんな爆音がしたかと思うと、ガラガラガラ…と右側の壁が崩れ落ちた。
「何事だ!」
部屋中が騒然となる中、崩れた壁の起こした粉塵を振り払うように男が一人、現われた。
「…ここは、どこだ!?」
…良牙だった。
良牙もあかねを救うべくこの部屋へと向っていたはずだったのだが、方向音痴な為、入ってくる入り口を間違えて、今まで迷子になっていたのだ。
それが奇跡的にも、壁を壊して進みながら、この部屋へとたどり着いたようだった。
そんな良牙の後には、良牙が率いる騎士団の姿もあった。
「くそ!乱馬の奴、間に合わなかった見てえだな!!あかねさん!あかねさんはこの響良牙が必ずお助けしますからね!」
良牙は、一人でそんなことを呟くと、自分の後ろに控えている騎士団に、「GO」サインを送った。
その瞬間、「わー!」と掛け声を上げながら、騎士団はいっせいに会場になだれ込む。
「おのれ!邪魔ものどもが!」
瑪瑙はそう叫ぶと、部屋に待機していた自国の兵士たちに合図を送る。
そのとたん、良牙の騎士団と、瑪瑙の騎士団の戦いが始まった。
「こんなこともあろうかと、上の階にも会場を用意していたのさ」
瑪瑙は、そんな良牙たちをあざ笑うかのようにそういって、一気に階段を駆け下りて、階段の下でオロオロしているあ
かねに手を伸ばそうとするが、
ビュッ!!!
そんな瑪瑙の足元に、良牙の武器の一つである「バンダナ」が突き刺さる。
「貴様の相手は、この俺だ!」
良牙がそういって、あかねと瑪瑙の元まで走り寄ってきた。
「ふん、ザコが…貴様の相手をしてるひまなど無い!」
瑪瑙はそういって、足元に刺さったバンダナを良牙に向って投げ返した。
「とにかく、あかねさんは返してもらう!!」
良牙はそのバンダナを簡単に避けると、すぐ側にいるあかねの方を見て叫んだ。
すると、そんな良牙を睨むように、あかねの手をエスコートしていた兵士が立ちはだかる。
あかねは、もう一人の兵士の手へとゆだねられてしまった。
「あかねさん!」
良牙は再びあかねの方へと歩み寄ろうとしたが、
「瑪瑙様の邪魔はさせん!」
瑪瑙の側近のその男は、そんな良牙を再びさえぎるように立ちはだかる。
「…貴様。俺を響良牙と知っての狼藉か」
「相手が誰でも、瑪瑙様の婚礼の邪魔をする奴は、許せん!」
「ふ…おもしろい」
良牙はそういうが早いか、素早く頭に巻いていたバンダナをシュルシュル…と取ると、
「ならば…相手をしてやろうじゃねえか!」
その兵士に向って勢い良く投げつけた。
「なんの!」
兵士は、その凶器と化したバンダナを振り払うように、ランスを振り回す。
「せや!」
その隙を突いて、良牙がその兵士に蹴りを入れた。
「まだまだ!」
兵士はそんな良牙の蹴りを上手く避けるように、ランスを良牙へと向ける。
「…」
ニ人は一瞬動きを止めてお互いの顔を見合った。
そして、一呼吸置くと、
「せやあ!」
「さー!」
また激しくその場で打ち合いを始めた。
「さ、今のうちに行くぞ、あかね!」
…そんな良牙たちの様子を尻目に、瑪瑙がそういって、あかねに手を伸ばした。
「…私…」
あかねは、そんな瑪瑙から逃れるように、もう一人の兵士の横にたつ。
「どうした、あかね。私達は許婚同士ではないか。今まで、お互いの事をあんなに思いあっていたではないか。今更な
にがそんなにお前を躊躇させるのだ?」
瑪瑙は、そんなあかねを苛苛したよな目で見た。
あかねは、そんな瑪瑙をギッと睨み、
「…確かに、記憶の中ではあたしはあなたの事を大事に思っているわ。でも…今目の前にいるあなたの事は、どう
してもそう思えないのよ」
と言い放った。
すると瑪瑙は、そんなあかねの事を急に哀れみの目でみると、
「かわいいそうなあかねよ。きっと急に結婚する事になって、不安なんだな。不安だからそんなことを考えるのだ」
そんなことを言い出した。
「違うわ!」
あかねは抵抗したが、瑪瑙はそんなあかねを全否定するように、
「違わない!いいか、あかね。お前は俺の許婚だ。お前はもう、俺のものだ。お前は誰にも渡さない!」
強い口調でそう言い放った。
そして、あかねの腕を掴んでいる自分の側近の兵士に向って、
「おい、あかねを早くこちらへ連れてくるのだ!」
と叫んだ。
「…」
仮面をつけたその兵士は、無言で、自分の横で今にも泣きそうな顔をしているあかねの腕をとった。
そして、そのまま瑪瑙の方へとあかねを連れて行く。
…はずであった。
「…」
仮面をつけた兵士は、素早い動きであかねを自分の背中へと隠してしまうと、
「…!」
無言のまま、腰に刺していたランスを抜き、瑪瑙に向って投げつけた。
「な…貴様!血迷ったか!」
瑪瑙がそういって、兵士が投げたランスをはじき返す。
ガシュ!
そのランスは、兵士の仮面へと当たり、床に落ちた。それと同時に、兵士の仮面もはじけとぶ。


「な…貴様は!!!」
…兵士の仮面がはじけ飛んだ瞬間。
瑪瑙の表情が、さっと恐ろしいものに変った。
「そうか…貴様か。どこまでも邪魔し追って…!!!」
瑪瑙は、その兵士の顔を見て、ブルブル…と震えている。
(…この人…。)
そして。
その兵士の背中に追いやられていたあかねは、その兵士の後ろ姿を改めて見て、ハッと息を飲んだ。
仮面が取れてから、まだ一度もこの兵士はあかねの方へと振り返っていないけれども。
あかねの目には、非常に興味深いものが映し出されていた。


…おさげ髪。


「あなた…誰?」


あの、乱子というメイドにしては、体格が良すぎる。
それに、この後ろ姿は間違いなく…男性のもの。
あかねの胸が、急に激しく鼓動を打った。
(この人…この人まさか…!)
「…」
…そんなあかねを見るように、その兵士が振り返った。
「あなたは!」
あかねは、思わず声をあげる。
…それは、あかねが何度も見た、あの残像の中の「おさげ髪の男の子」だった。
「ああ…」
記憶を無くしたあかねにとっては、このおさげ髪の少年と現実で出会うのは初めてのはずなのに。
知らず知らず、涙があふれてくる。
「…あかね!」
そんなあかねの気持ちを振り払うべく、瑪瑙があかねに向って手を伸ばしてきた。
「おっと」
おさげ髪の兵士…乱馬は、その瑪瑙の手を落ちていたランスを拾って振り払うと、あかねをもう一度かばうように立った。
「乱馬!」
…乱馬の姿に気がついた良牙も、自分の戦っていた兵士を殴り倒して、そばにやってくる。
「おのれえ!」
瑪瑙が悔しそうに乱馬を見据えるが、
「今日こそ決着つけてやる!あかねの記憶、返してもらうぞ!」
乱馬はそういって、あかねの手を取って、部屋の入り口へと走り出した。
「良牙!雑魚兵どもの足止めしとけよ!」
「仕方ねえな!」
そんな走り去る乱馬達を助けるべく、追おうとする兵士たちを良牙が必死に食い止める。
「逃がさぬぞ!」
瑪瑙は、そんな良牙の攻撃をいとも簡単にかわすと、ただ一人、乱馬達の後を追って、走り出した。
「待って!あなた…誰!?」
…そんな瑪瑙の前を走りながら。
自分の手を引いて走る乱馬に、あかねは必死で呼びかけた。
が、乱馬は何も答えない。
「ねえ、あなたは…乱子の知り合いなの?どうして乱子に似ているの?」
あかねは尚も色々と乱馬に尋ねるが、乱馬は何も答えない。
乱馬は、あかねに何も答えないまま、塔の中の、中庭のような場所へとあかねを引っ張ってきた。
その庭は、随分と高い位置に作られている。そのため、中庭…と言うよりは、「空中庭園」というのが一番良い表現ではないかと思われた。
そこからは、遥か眼下の地上へと飛び降りるか、塔の最上部にある時計台の方へと飛び登るしかない。
「待て!」
ニ人の後ろからは、だんだんと瑪瑙の声が大きく聞こえるようになってくる。
「…だめよ。瑪瑙様からは、きっと逃げる事は出来ない!」
あかねは、中庭の端で遥かしたに見えている地面を見下ろしながら乱馬に言った。
乱馬は、そんなあかねを無視するように、黙ってじっと、中庭の上…塔の最上部の時計台を見据えている。
「…」
あかねは、そんな乱馬の様子をただ黙って見つめていた。
「どこだ!?」
折りしも、瑪瑙の叫び声がとても間近で聞こえてくるようになった。
よく耳を澄ませば、床を走る音までも聞こえる。
(ああ…もう逃げられないわ。)
あかねは、ぎゅっと胸の前で手を握りながら、目をつぶった。
(せっかく、このおさげの男の子に逢えたと言うのに…。)
そして、何だか分からないけど、とても嬉しかったのに。
あかねは、こんな状況でもそんなことを思う自分が少し不思議だった。


 


…と。
「行こう、あかね」
ぎゅっと目をつぶって黙り込んでいるあかねに、乱馬が声をかけた。
「行こうって…?」
あかねが乱馬に聞くと、乱馬は上方にある時計台を指差して、
「あそこに飛び移るぞ。アイツとはあそこで決着をつける!」
…そう、前に戦って、奴に黒い霧を浴びせられた、あの忌まわしい場所で。
「無理よ!瑪瑙様から逃げる事なんて出来ない…!」
あかねは、乱馬にそういって食って掛かったが、
乱馬は大きく深呼吸をして、そんなあかねに向って、ゆっくりと手を出した。
「え?」
あかねは、その動作に思わずドキッとする。
乱馬は、そんなあかねの様子をみながら、はっきりとした声で言った。
「…俺と一緒に、逃げませんか?」
「!」
…その言葉に、あかねの心臓は大きく鼓動を打った。
「あ…」
ドキドキしながら黙り込むあかねに、乱馬はもう一度、言った。
「俺と一緒に、逃げませんか?」
「…」


 


…その言葉に。
その仕草に、その全てに、あかねの心は震えた。


 


記憶の中では初めて会う人物のはずなのに。
こんなにも、この人のこの言葉を待っていたかのような、この気持ちは何なんだろう…?


 


「…はい」
あかねは、一言だけそう返事をして、乱馬の手を取った。
「…」
そんなあかねを、乱馬は黙って一度抱きしめると、
「…行くぞ!」
そういって、あかねの体を抱き上げ、塔の上部へと飛び移っていった。
ニ人の姿が、月明かりに照らされながら塔上部へと消えていく。
「待て!」
そんなニ人の姿を追って、瑪瑙も塔の上部へと飛び移っていった。


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