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永遠の記憶7

「瑪瑙様の命令だ!ここでしばらく大人しくしておれ!」
…兵士の一人が、そう言って気を失っているらんまの体を地下牢の中へと放り込んだ。
ドサッ…と石畳の床に、らんまの体が叩き付けられる。
「う…」
そのおかげで、らんまはようやく目を覚ました。
「しまった…おい!開けろよ!ここから出せ!!」
目を覚ましたらんまは慌てて地下牢を覆う鉄格子にしがみつくが、とき既に遅し。
見張りは牢のある部屋から出て行ってしまっていた。
(ちくしょう!時間がねえって時に…!)
ガン!
らんまは、びくともしない鉄格子を思いっきり殴りつけた。
が、「女」の姿になっているため、パワーが半減している。
殴りつけた手のほうが、痛みとなってらんまに返ってくる。
折りしも、遠くの方では、
リンゴーン…と、鐘の音が聞こえた。金の音は、無情にもただ一つだけ。
(あと、一時間…)
婚礼の儀まで、あと一時間を切ってしまった。
今ごろ、瑪瑙の奴は早々と会場入りをして、ドレスアップしたあかねを待っているはずだ。
昼間みた、純白の美しいドレスに身をまとったあかねを。
「くそー!ここから出せよ!」
らんまは、再び鉄格子を両手で掴み、ガンガンと揺さぶった。
…と。
「ブキーッ!」
地下牢の、明り取りの窓の隙間から、子豚の鳴き声が聞こえた。
(良牙!?)
らんまは、自分が閉じ込められている地下牢の、はるか上のほうに取り付けられている明り取りの窓を見上げた。
「良牙!」
すると、黒豚の姿になってはいるが、良牙が子豚の蹄でその窓をバシバシバシと叩いていた。
どうやら、その明り取りの窓はちょうど地上の高さにあるようだった。
「良牙!ここだ!」
らんまが叫ぶと、良牙は何とかしてその窓を叩き割った。
「良牙!」
らんまがそう叫ぶと、
「うおお!おさげの女〜!いますぐ、この九能帯刀が助けてやるからな!」
なんと、良牙が呼んだのかたまたまそこに居合わせたのか、九能がそう言って地下牢へと飛び降りてきた。
「バ、バ、バカヤロー!!テメエまでここに降りてきてどうすんだー!!」
「はっはっは。いっそのことここで2人の愛の巣を築こうではないか!!」
「俺によるんじゃねー!!」
状況をまったく理解せずに抱きついてくる九能をらんまが殴り倒しす。
すると、
「ブキー!」
良牙がそう言って、小さな容器を地下牢へと投げ入れた。
それは、携帯用のお湯だった。
「ありがてえ!」
らんまは急いでそのお湯を被ると、
「先輩、コレ借りてくぜ!」
倒れている九能の腰から木刀とランスを抜き取ると、地下牢と地上の真中辺りの壁へと勢い良く投げつけた。
ドカ!
木刀は、勢い良く壁につつき刺さる。
「よっ…と」
乱馬はその木刀をワンクッションとして、軽々と明り取りの窓から地上へとでた。
そして、
「良牙、すまねえな」
そう言って、自分が先ほど被ったお湯の残りを良牙にかけた。
「あんまり世話やかすんじゃねえ!」
良牙が元通りの人間の体に戻りながら、乱馬の胸倉を掴んだ。
「すまねえって」
乱馬は良牙の手をはずしながらあやまり、
「それより、婚礼の儀まで1時間切ったぞ。魔法陣の位置は突き止めたんだろうな!」
そういって、表情を改めた。
「あたりまえだ!そっちの方は、今ムースが見張りをしている」
「…大丈夫なのか?近眼のムースで」
「平気だろ。それに、魔法陣は婚礼の儀が執り行われる予定の部屋の、ちょうど真上の部屋にあるんだ」
良牙はそう言って、茂みに隠してあった洋服を着ている。
乱馬も、いつまでもメイドの格好をしているわけには行かないので、とりあえず近くを歩いていた兵士の洋服を奪い
取って身を包む。
「…で?九能の方は何だって?」
乱馬は、明り取りの窓から、下の地下牢でまだ伸びている九能を見下ろしながら呟いた。
「ああ、その事なんだが…何でも。魔物の世界で一番美しいものというのは…『花』なんだと」
「花…?」
「そう。しかも、全く混じりけのない真っ白い花こそ、『魔物の世界で一番美しいもの』らしい」
良牙はそう言って、乱馬と同じように九能の姿を見下ろす。
「その花は、魔物の世界でもあまり見かけないような場所に咲いてるため、入手困難とのことだが…」
良牙はそう言って、今度は乱馬の方を振り返ったが。
乱馬はすでに城の内部に向って走り出していた。
「こら!乱馬きさま…」
良牙が慌てて後を追うと、
「その花なら、俺には心当たりがある!お前は先に行って、婚礼の儀の会場へ乗り込んでろ!」
「何を…」
「いいか!俺が行くまで、あの野郎があかねに指一本触れないように阻止しとけよ!」
乱馬はそう言って、儀式が執り行われる塔の入り口とは全く正反対の方角へ走っていってしまった。
「…ふん!言われなくてもそうするに決まってんだろ!あかねさん、この響良牙が今すぐ行きますからね!」
良牙は走り去った乱馬にそう悪態をつくと、婚礼の儀が執り行われる塔の入り口…とは別の入り口に向って走り出した。
…そう。乱馬も良牙もこの状況ですっかり忘れていたが。
良牙は極度の方向音痴なのだ。
実は乱馬が閉じ込められた地下牢にたどり着いたのも、本当に偶然だったのだが…ニ人は、この状況ですっかりそれを忘れていた。

 


ダッダッダ…
そして。
城の中を、出会う兵士をなぎ倒しながら走っていた乱馬がたどり着いたのは、例の宝物庫…の近くにあった、あの
地下庭園への入り口のドアの前だった。
偶然だったが、乱馬はここで「白い花」をみた。
あの「白い花」こそ、「魔物の世界でもっとも美しいもの」であり、そして失われた記憶を取り戻す鍵になるものだった
のだ。
(瑪瑙の野郎は、この国の軍資金をつくるために、ちょっとずつこの花をメイドに摘んでこさせて…闇市に売りさばい
てたってわけか…)
なびきが以前に、あの飴は「闇市から仕入れた」と言っていた。
恐らく、魔法関係に詳しい商人にでも、この希少価値の花を高値で売りつけていたのだろう。まさか、飴に練りこん
で売っていたとは思いもしなかっただろうが。
そして、その飴が自らの術を無効にする効果を発揮する「爆弾」となってしまった事など、考えもしなかっただろう。
(魔物の奴がこの世界に召喚されたとき、資金源にしようとしてこっそりと魔物の世界から持ってきたんだろうな。それをこの地下庭園で培養してたってわけか!)


…乱馬は渾身の一撃で、その扉につけられている鍵を打ち破った。
そして、地下へと続く長い階段を一気に駆け下りると、地下庭園へ繋がる最後の扉を勢い良く開けた。
その瞬間。
「ギヤー!」
何かが、乱馬の近くでうごめく気配がしたかと思うと、無気味な声をあげて、襲い掛かってきた。
「うわ!」
乱馬が紙一重でそのうごめく何かを交わす。
「ギイ…」
そのうごめく何かは、不気味な声をあげながら、乱馬のすぐ近くへとはっきり姿をあらわした。
…鳥だった。
辺りは薄暗いのに、鳥が、この部屋の中を自由自在に舞っている。
普通では、絶対にありえないことだ。
「そうか…お前、瑪瑙の手先の魔物だな。ここの番人ってことか」
乱馬は、暗闇でギラギラと目を光らせているその魔物をじろりと見据えた。
そして、先ほど九能から奪っておいたランスを持って、構えた。
「悪いが…俺も時間がねえ」
そして、
「ギヤア!」
荒れ狂ったように襲い掛かるその魔物をすばやい動きで交わすと、
「大人しく、寝てろ!」
魔物の背中を、持っていたランスで思い切り突き刺した。
「グアアアアア!」
魔物は、まるで水に浮かんだ泡のように、シュワシュワシュワ…と姿を消してしまった。
「ハア、ハア…」
乱馬は、息を整えながら、ランスを再び腰に刺す。
そして、庭園一面に咲き誇っている美しいあの「白い花」を何輪か摘んだ。
(この花さえあれば…)
乱馬はそう思って花を摘んでいたのだが、重要な事に気が付いてしまった。
…魔物と人間を切り離すのに、この花を使う事まではわかった。
この花を練りこんだ飴を食べれば、妙な術を無効化できることまでは、知っている。
しかし。
実際に魔物と人間を切り離すには、この花をどうやって使ったらいいんだろうか?
(食べさせる?貼り付ける?何だ…何をすればいいんだ…?)
乱馬は、花を掴んだまま必死で考えた。
しかし中々いい考えが浮かばず思わず天を仰いでしまった。
この庭園の天井は、薄暗い「光」を人工的に作り出している装置や電燈がわざわざ設置してあった。
どの時間でも、同じような暗さを保つためなんだろうか。
(…そういや、俺がこの間来た時も、こんな暗さだったよな…)
乱馬は、その装置を見上げながらしばし考えてみた。
「…そうか!」
…そして。ある考えをひねり出す事に成功した。
「イチカバチか…やってみるしかねえ!」
乱馬は、覚悟を決めた。
そして、摘んだ花を腰の下げ袋に突っ込むと、再び長い階段を上り城内へ戻った。
「あ!貴様!何をしている!」
…が。
運悪い事に、宝物庫を守っていた兵士に、庭園から出てきたその瞬間を見られ…あっという間に囲まれてしまった。
(しまった!)
「おい、貴様!そんなところで何をしていた!そこは瑪瑙様の特別なお部屋ゾ?」
兵士の一人が、乱馬の顔にピタ、ピタと剣を当てながら尋ねる。
「ちょ、ちょっと頼まれまして…」
乱馬がそういって、後ずさりをすると、
「ほう?ではその腰袋に入っている、頼まれたモノとやらを見せてもらおうではないか」
兵士たちはそう言って、ジリ、ジリ…とにじり寄ってきた。
(くそ…!あと少しだってのに!!)
乱馬は内心焦っていた。
そしてあれこれと逃げる手段を考えている内に、ふと、あることを思い出した。
『乱馬君。もしものときは、この袋を兵士に敵に投げつけなさい。きっと、役に立つはずよ。』
…なびきの手紙に書いてあった、袋の存在だった。
そういえば、かすみからもらったメイド服や傷薬は使っても、
なびきが渡してきた謎の「袋」はまだ中身も見ていなかった。
(ええい・・いちかばちか…!!)
「それ!!!」
乱馬は、素早い動きで腰袋の中にしまってあったその袋を取り出すと、
なびきに言われたとおりに敵に投げつけてみた。
バサッ!!
…袋は中で破けて、その中から無数の紙が飛び出し、辺り一面に散らばる。
「な…こ、これは!」
兵士たちは、その紙を見るやいなや、急に顔色を変えた。そして、
「俺のだ!」
「何を!?俺のだ!」
…乱馬のことなど見向きもせず、急にその散らばった紙を無我夢中で集め始めた。
(な、何だか知らんが助かった…)
乱馬はその隙に、兵士たちの中からこっそりと逃げ出し、婚礼の儀の会場へと走り出した。
(それにしても…一体なんだったんだ?あの袋)
走りながらも気になった乱馬は、廊下に散らばった紙の一枚を、走りながら拾って…見て絶句した。
「な、な、な、なびきの野郎〜!!」
…それは、なびきのお店で売られている一番人気の商品。「女姿のらんまの隠し撮り写真セット」だった。どうやらこの写真セット、麝香皇国でも人気のようである。
何となく釈然としない乱馬だったが、とりあえず国に戻ってからなびきに文句をいってやろうとこらえる。
そう。乱馬には、そんなことよりもやらなくてはいけない問題があるのだ。
(だいぶ時間をロスしちまった…急がないと!!!)
乱馬は、走るスピードを一気に上げて、婚礼の儀が執り行われている塔の入り口へ飛び込み、長い階段を駆け上が
った。


 


一方。
「さ、姫様。この扉の向こうで、皇子様がお待ちですよ」
…婚礼の儀が執り行われようとしている部屋へと続く扉の前で。
白いドレスに身を包んだあかねは、メイドに手をひかれ、その扉の前へと連れてこられた。
「…」
が、あかねはなかなか、その扉を開こうとはしなかった。
「姫様?どうなさいました?」
「お加減でも悪いのですか?」
メイドは、黙って俯いているあかねに気を使って、声をかける。
「…」
あかねは、ただ首を振るだけだった。
…何も、答える事が出来なかった。
あの「おさげの男の子」の映像を見るようになってから。
あかねの心の中で、瑪瑙を拒絶する気持ちが一段と強くなっていたのだ。
「瑪瑙様は姫様の許婚」
メイドが何度もあかねにそう言い聞かせるが。
あかねの記憶の中には、瑪瑙とあかねが過ごしてきた時間がしっかりと刻み込まれているというのに。
(記憶の中では、あたしは瑪瑙様の事をすごく好きなはずなのに…)
なぜ、現実にいる今のあかねは、こんなにも瑪瑙を拒絶しているのだろうか…?
「…ねえ。乱子は?」
あかねは、身にまとっている純白のドレスをギュと握り、メイドに尋ねた。
あかねは、またあの「乱子」というメイドに無性に会いたくなっていた。
あかねが見る「おさげの男の子」と乱子が似ていたからだろうか…。
「申し訳ありません。この忙しいのに、何処かで油を売っているみたいでして…」
しかし。
メイドたちは申し訳なさそうに、あかねにそう謝ってきた。
「そう…乱子、いないのね」
あかねは、ポツンとそう呟いた。
と、その時。
ゴーン…ゴーン…
遠くで、先ほどまでとは違う、重々しい鐘の音がした。
「…さ、姫様。婚礼の儀が始まる合図です」
メイドはそう言って、あかねの手を再び引いた。
「…乱子」
あかねは最後にそう呟いて、目を閉じた。
そして。
ギイ…
…別のメイドの手によって、儀式が執り行われる予定の扉が、ゆっくりと開かれた。


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