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永遠の記憶2

…乱馬が、麝香皇国に向けて道を急いでいる頃。
「一体どういうつもりなの!?早くあたしを帰しなさいよ!」
強引に連れ去られてきたとらわれの姫君…とはあまりのかけ離れたイメージのあかねは、自分を押さえつけようとしている麝香皇国の騎士たちを次々と殴り倒しながら叫んでいた。
「やれやれ、噂どおりの元気のある姫君ですな」
そんなあかねを、遠巻きからみて嬉しそうにしている、男。
この男こそ、あかねを城から連れ去った張本人:瑪瑙だった。
「あんたね!?あたしをこんなところに連れてきたのは!さっさと城に帰しなさいよ!」
あかねは、自分の鉄拳を喰らって床に転がった騎士達を飛び越し、瑪瑙に駆け寄りながらそう叫んだ。
「それは出来ません。言ったでしょう?あなたは私と結婚するのです」
が、瑪瑙はそんなあかねをちっとも取り合わない。
まあ、「待て!」と言われて待つ泥棒がいないのと同じような原理ではあるのだが。
しかし、それがまかり通ってしまうのならば問題なんて起きてはいないのだ。
「冗談じゃないわ!どうして私があんたなんかと!」
あかねはそういって、床に転がっていたランスを拾い、瑪瑙に向かって差し向けた。
「…だから、さっきからも言っている通りです」
が、瑪瑙はあかねが差し向けたランスを軽々と手で掴み、その動きを止めた。そして、強引にあかねの手からランスを奪い取ると、
「以前より私は、あなたに憧れていた。太陽よりも眩しくて、星よりも美しく輝くあなたは、まさに高嶺の花…近寄る事さえも出来ずに、いつも思いだけははせていた。でも…今の私は違う」
そういって、ガシッ…とあかねの両肩を掴むと、近くの壁へと押さえつけた。
「きゃ!」
不意を付かれたあかねは、その突然の痛みに顔をしかめる。
「私は、力を手に入れた。たった今から、あなたは私だけのものだ」
瑪瑙は顔をしかめたあかねに対してにやりと笑うと、あかねの歪んだ顔へとゆっくりと顔を近付けた。

「!」
…乱馬にだって、こんな風に顔を近付けられた事ないのに。
あかねの中に言い知れぬ嫌悪感と、不安が過った。
「あなたにそんな顔は似合わない。あなたに似合うのは笑顔…私にだけ微笑む、笑顔だ」
瑪瑙はそう言って、あかねの不安に歪んだ唇を軽く指で撫でた。
あかねはビクッと身を竦め、その指を振り払うべく顔を左右に振る。
「…どんな奴が来ても、もうこの城にいる以上、あなたは絶対に渡さない。たとえそれが…身分の違う、無礼な許婚殿だとしても、だ」
瑪瑙は、そんなあかねの様子を小さく笑うと、真っ直ぐにあかねの瞳を見詰めながらそう言った。
「…乱馬は、あなたなんかに負けないわ」
あかねは嫌悪感と不安で地作震えだした身体を抑えながら、それでも強い口調で瑪瑙に言い返した。
「くくく…」
すると。
そのあかねの言葉に対しては何も言い返さず、瑪瑙は不気味な含み笑いをしながら,あかねから離れた。
「どうやら、噂は本当のようだ」
「噂?」
「あかね殿が多くの求婚者を蹴散らすのは、もう心に決まった相手がいる。二人は一見仲が悪いように見えるが、実は固い絆で結ばれていると」
「な、何よそれ!あ、あたしは別に…!」
「信じたくはなかったのですが、あなたの様子を見て分かりましたよ。そうやら、その噂どおりのようだ。あなたはどうやら本当に…その乱馬、という男が好きなのですね」
「!」
…人は、心の奥に隠そうとしている事を見抜かれると絶対に動揺を隠せないものだ。
あかねが瑪瑙の指摘に思わず身を竦めると、
「…本当はこんな手は使いたくないのですが、あなたを手に入れるためには仕方ありません」
「な、何よ…」
「だったらまずは、その許婚殿に…あなたを諦めていただきましょう」
「何ですって!?」
「少し手の込んだ方法を、取らせて頂きますよ」
瑪瑙はそういって、身を竦めたあかねの顔の前で、自分の大きな左手を広げた。
そして、口の中で何やら妙な呪文を呟くと、広げた手を一度閉じ、そして左の人差し指でであかねの額の中心を軽く押した。
…カカッ!
指があかねの額に触れた瞬間、あたり一体に、閃光が走った。
「い、いやあ!な、何よこれ…!」
突然の事だったので、逃げることも出来なかったあかねは、閃光の向こう側に居る瑪瑙を見ることもできない。
「さあ、目を開けて。こちらを見てごらん」
「…」
それでも、瑪瑙の声に反応してゆっくりと目を開けると、閃光の向こう側の瑪瑙は、その瞳を赤く光らせてあかねを真っ直ぐに見つめていた。
「!」
…ドクン!
その瑪瑙の瞳を見た瞬間、あかねの胸が奇妙な胸騒ぎで鼓動した。
嫌な、予感がした。しかし、慌てて目を離そうとしても目が離れない。
瑪瑙は、あかねの目線を奪う事に成功したのを感じたのか、あかねを見つめたまま口元だけに笑みを浮かべた。そして、
「あなたと許婚殿の記憶を、盗ませていただきます。そしてその記憶があった場所に…架空の記憶…つまり、あなたが許婚どの過ごして来た記憶を、全てあなたと私が過ごしたという記憶に、置き換えます」
「何ですって!そんなの冗談じゃないわ!」
「冗談ではありませんよ。私は本気だ」
「!」
「そうすれば、たとえ許婚殿があなたを迎えに来たとしても、あなたには全く彼が誰なのか、わからないでしょう?あなたの記憶の中には、彼は住んでいないのだから」
瑪瑙はそういって、更に強い閃光をあかねの額から送り込む。
「やめて!やめてってば…!取らないで…あたしから乱馬を、乱馬を取らないで!いやああ!!」
あかねは必死でその閃光から逃げ出そうとするが、思うように体が動かない。
額から流れ込んでくる閃光は、徐々にあかねの頭の中を蝕んでいった。
白い閃光は、あかねの頭の中をその色の如く真っ白にしていく。その代り頭の中に広がるのは、黒くモヤモヤとした霧のような「記憶」。
一度も過ごした事のない男との「幸せな記憶」だ。
(助けて…助けて!あたし…あたし、忘れたくないのに…)
白い閃光が頭の中を満たしきる最後の最後の瞬間まであかねは抵抗したが、
(あたしは…)
…あたしは、一体誰に助けを求めたの?
光が頭を満たしきった時、すでにあかねの記憶からは乱馬は消え去ったあと。
「…」
白い光は黒いモヤに変り、今度はあかねを頭痛で苦しめる。
あかねはドサリ、とその場へと倒れこむと、そのまま気を失ってしまった。
「可哀想な、我が后よ。今、ベッドへと運んでやるからな」
瑪瑙はそんなあかねの体を抱き上げると、部屋の隅にあるベットへとあかねを寝かせた。
そして、
「いいか。我が后になるこのあかねを、この部屋から一歩も出すな。もしも外に出る場合は、必ず誰か側につけ!婚礼までは絶対に目を離すな!」
「かしこまりました、瑪瑙様」
「それと…不審な男があかねの周りに現れたら、すぐに報告しろ。いいな!」
「承知いたしました、瑪瑙様」
部屋の入り口で事の成り行きを全て見守っていたメイド達をベッドの脇へ呼び、命令をした。
メイドたちの従順な返事を確認した瑪瑙は、
「…」
満足そうな表情でベッドに横たわっているあかねの頬を一撫ですると、部屋から出て行った。
…こうしてあかねは、乱馬の記憶を奪われ、そして別の記憶を植え付けられてしまう事になり、
更には「瑪瑙の許婚」として目を覚ます瞬間まで、メイド達に監視されながら眠りについたのであった。


 


その頃。
瑪瑙とあかねがいる麝香城の外では、一足早くあかね救出に向かった九能やムース・良牙たちの騎士団が、ぼーっとしながら、「なぜ自分達はこんな場所にいるのか」などと話しながら、元来た道を戻っているところであった。
…そう彼らは、麝香城に着いて一応は瑪瑙と対峙はしたものの、例の「黒い霧」を浴びてしまい、「あかね誘拐」の記憶と「あかね救出に向かっている」というその記憶まで、まんまと盗まれてしまったのだ。
玄馬の当初の予想通り、見事「返り討ち」にあってしまったのである。
「俺達はなんでこんなところにきてるんだ?」
「わからねえだ」
「解せぬ」
兵たちが記憶を失っているのだ、勿論団長の良牙・ムース・九能とてそれも同じである。出動した騎士団はすごすごともと来た道を引き返していた。
「…」
…そんな、異様な光景を。
ようやく麝香王国へとたどり着いた乱馬は、近くの茂みの中に身を潜めながら覗いていた。
(やっぱりな…親父の言った通りだったぜ)
乱馬は、三人と三人の騎士団が目の前を通り過ぎるのを待ち、再び麝香城への道を急ぐ。
(やみくもに城に飛び込んでも、あいつらと同じ目に遭うだけだ。偵察だって何か工夫をしないと…)
とりあえず少し休憩をしながら、乱馬はその事を考えてみる。
が、そんな風にすぐに何か思いつくような優秀な頭脳を持ち合わせているはずもなく、乱馬はため息をつくばかりだった。
気持ちは逸るのに、頭がついて行かない。
「…」
一体どうしたものか。
何か突破口はないか。乱馬は頭を捻る。
と、そこで出掛けになびきから渡された「荷物」の事を思い出した。
わざわざ別の部屋に準備してあった、なびきからの荷物。もしかしたら何かあるのかもしれない。
「…」
乱馬は藁にもすがる思いで、なびきから渡された荷物を解いてみた。
すると。
「…」
中からは、恐らく他の兵士たちが持っていったものと同じ薬・食料。その他に、「女メイドの服」「女ものの靴」更には、謎の小さな紙袋がでてきた。
よく見ると、それらの荷物の下に、何やら手紙のような物も挟まれている。
「…な、何だこれ?」
全く想像もしなかったその中身に、乱馬が驚きつつ、その手紙のような物を開くと、
『乱馬君へ
行ったからにはからには、あかねを絶対に連れて帰ってくるのよ?分かっているとは思うけど。
だから、その為に必要そうな道具を、私とかすみお姉ちゃんで準備したわ。あ、今回は勿論無料でいいわよ?まあ、どうしても感謝の気持ちをお金で表したいって言うのなら拒まないけどね。
メイド服と靴は、かすみお姉ちゃんが調達してくれたのよ。乱馬君は女装して城の中に忍び込むだろうと思って調達してくれたんだから、感謝しなさいよ。
私からは、小さな紙袋。それは、乱馬君が邪魔な敵国の騎士の注意を逸らしたい時にでも、封を切って中身をばら撒いて。きっと効果があるはずよ。それじゃ、よろしく。』
「…」
一部、妙な請求書のような文面も無きにしも非ずだが、あかねを心配し、そして乱馬の為に色々と尽力してくれた事は間違いない。
「…ありがてえな」
乱馬にとっても、そしてかすみやなびきにとっても、形が違えど「愛」は強いのだ。皆があかねの帰りを望んでいるのは間違いはない。
乱馬は、ニ人の心遣いに心底感謝した。そして、
(かすみさんの言うとおり、まずは…)
乱馬は一瞬考えた後、まずは自分の腰に備え付けていた、水分補給用の水筒のふたを開け、中の水を一気に頭から被った。
そう、せっかくメイド服と靴があるのだ。それを着用しない手はない。
「ホホホホホ…メイドとして城に忍び込んでやる!」
あかねの前では、本当は常に男の姿でありたい。
しかし、状況が状況だ。背に腹は変えられない。
冷たい水を頭から被り、一気に女になったらんまは、メイド服を纏っていよいよ麝香城へと乗り込んで行ったのだった。


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